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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 文明とインフラ・ストラクチャー 第54回 国際ビジネスマンの条件 ーどこでも眠れて,何でも食べて,誰とでも親しくなるー

 

水フォーラム吉村理事の講演

NPO日本水フォーラムの吉村和就理事の講演を聞く機会がありました。国連で勤務経験のある吉村氏は水プラントエンジニアです。吉村氏はユーモアを交えて,世界の水ビジネスの現状,日本企業が世界へ進出する際の課題などをお話になっていました。
 
その中で,国際的ビジネスマンの3条件を挙げられたのが印象的でした。それは,
 
①どこでも眠れること
②なんでも食べられること
③誰とでも親しくなれること

 
でした。国際人としてのこの3条件はとても分かりやすく感心しました。
 

【吉村理事による講演】



タフな人

この3条件は,見知らぬ土地で,初めての人々と会い,交渉をしていく国際ビジネスマンにとっての必須の条件なのでしょう。
 
1番目の「どこでも眠れる」ことは,精神的にタフだということを意味しています。どんなホテルでも,周囲が騒がしくても,部屋が狭く汚くても,シャワーが水だけであっても,ともかく眠ることが大切です。海外で睡眠不足になり,注意が散漫になったら大変です。国際ビジネスマンは,どこでも眠れるタフな精神を持つことが必要なのです。
 
2番目の「なんでも食べる」ことは,肉体的にタフだということを意味しています。他国では初めて食べる料理ばかりです。何かわからない食材,食材は肉,魚,野菜でも味付けが異なります。辛い味付け,甘い味付け,香辛料が効いた味付けと,日本人の舌が馴染んだものとは異なります。この異国の料理をおいしく食べるタフな胃腸が要求されます。タフな胃腸というより,食欲が常にわいている健康な身体が必要なのです。
 
 

親しくなる

3番目の「誰とでも親しくなる」は深い意味を持っています。
 
ビジネスの基本は,世界中で共通しています。その基本は相手との信頼関係です。相手を信じられるか。自分を信頼してもらえるかです。どんなに良い商品を仲介にしていても,相手を信じられなければ商談は進みません。ビジネスはモノではなく,相手への信頼なのです。
 
吉村氏のいう「親しくなる」は,相手に信頼を感じていくこと,自分を信頼してもらうことです。信頼関係の構築です。
 
日本国内でのビジネスでは,信頼は時間をかけてフンワリと醸成されていく場合が多いです。名刺への信頼,信用できる仲介紹介者の信頼がベースとなります。そして,雑談で出身地や出身校を知って信頼を増し,共通の知り合いが多いとなるとより一層,強い信頼関係が形成されます。
 
しかし,国際ビジネスの世界では異なります。外国と日本の地形,気象は異なり,歴史は全く異なります。宗教が異なり,習慣が異なり,社会的ルールが異なります。その異文化の人々と初めて出会い,話し合い,交渉していかなければなりません。名刺や紹介者の効力は極めて限定的です。出身校や出身地など話にも出ません。日本国内でなんとなくフンワリと信頼関係を得ていく手法は通用しないのです。
 
それでは,国際ビジネスの場で,信頼を構築して,親しくなるにはどうしたらよいのでしょう。
 
 

馬を合わせる

親しくなるには会話するしかありません。ベースになるのが語学力ですが,語学力は優秀な通訳の方がいれば十分補えます。問題は会話の内容です。
 
まず,相手の会話内容を理解し,的確に応答できるか。そして,自分の考え方を的確に伝えられるか。伝える内容を持っているかです。その会話の中で信頼感が少しずつ構築されていきます。信頼が生まれれば,親しみが得られます。親しみが増せば,仕事以外での付き合いも始まり,さらに信頼関係が形成されていきます。相手の話す内容が理解できない,自分が話すものを持っていない場合には信頼は得られません。もちろん,親しみも得られません。
 
この会話で信頼を得るには,高度な教養が要求されます。
 
教養といっても,モノを知っていることではないのです。劇作家で演出家の故・福田恒存氏が看破したように「教養とは,誰とでも馬を合わせること」なのです。単に相手の言葉にうなずくのではなく,単に自分の考えを一方的に話すのではない。言葉によって,相手と自分の共通点を見いだすこと。お互いの相違点も理解し合うこと。
 
それは,誰とでも馬を合わせることなのです。その国の政府の高官とでも馬を合わせられるか。下町の居酒屋で一緒になったおじさんとでも馬を合わせられるか。それが福田恒存氏のいう教養です。
 
 

荒野の7人

馬を合わせるといえば「荒野の7人」という60年前の西部劇を思い出します。私の青春時代の思い出の映画です。日本の黒澤明監督の「7人の侍」を,ジョン・スタージェス監督がリメイクした名作です。
 
6人のガンマンと1人の若者が,大勢の無法集団と戦うために小さな村に向かう場面です。映画好きの私の一番好きなサウンド・トラックが軽快に流れる場面でもあります。
 
7人が荒野を駆け抜け,川を渡り,森を抜けて行きます。若者以外の6人のガンマンは,お互いに凄腕と認め合う仲間です。その6人は馬のスピードと,馬のリズムを見事に合わせて荒野を快適に進んで行きます。
 
この時点では若者はまだ仲間に入れてもらえません。そのため6人とは別行動で進んで行きます。後からついていったり,先回りして行ったり,6人とは全く馬を合わせられません。
 
馬を合わせて進む6人は,お互い同士を勇者として尊敬し,一緒に戦っていく仲間であるという信頼感で結ばれています。しかし,若者はまだ6人のガンマンと馬を合わすことができず,仲間として信頼されていないのです。
 
このことが見事に表現されていたシーンでした。
 
私がこの映画を観たのは,もう半世紀以上前になります。そして,いつもこの映画の6人が馬を進めていくシーンを思い出します。なぜ,このシーンを思い出すのか,何十年間もずっと分かりませんでした。それが福田恒存先生の「教養とは馬を合わせること」という文章を読んだとき,この映画のシーンとピッタっとはまったのです。
 
どこでも眠れる強靭な精神,何でも食べられる強靭で健康な肉体,そして誰とでも会話できる教養を備えた人。
 
国際ビジネスマンになるのは,意外に難しいのです。
 

 
 
 

竹村 公太郎(たけむら こうたろう)

非営利特定法人日本水フォーラム代表理事・事務局長,首都大学東京客員教授,東北大学客員教授 博士(工学)。神奈川県出身。1945年生まれ。東北大学工学部土木工学科1968年卒,1970年修士修了後,建設省に入省。宮ヶ瀬ダム工事事務所長,中部地方建設局河川部長,近畿地方建設局長を経て国土交通省河川局長。02年に退官後,04年より現職。土砂災害・水害対策の推進への多大な貢献から2017年土木学会功績賞に選定された。著書に「日本文明の謎を解く」(清流出版2003年「本質を見抜く力(養老孟司氏対談)」(PHP新書2008年)「小水力エネルギー読本」(オーム社:共著),「日本史の謎は『地形』で解け(PHP研究所2013年),「水力発電が日本を救う」(東洋経済新報社2016年)など。
 
 
 

特定非営利活動法人 日本水フォーラム         
代表理事・事務局長 
竹村 公太郎

 
 
 
【出典】


積算資料2019年5月号



 

 

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