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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 生物多様性保全と外来牧草の適正な活用

 

はじめに

斜面・法面緑化に生物多様性保全に関する取組みが本格的に求められるようになったのは,2005(平成17)年の「外来生物法」施行以降のことであり,環境省のHPに「要注意外来生物リスト」が掲載され,緑化植物として活用されてきた主だった外来牧草がリストアップされたことにより,「要注意」を「悪者」と読み替えが行われ,さらには2007(平成19)年に生物多様性の保全を「行政の内部目的化する」としたことにより,外来牧草の自粛の強要が強められていった。斜面・法面緑化工は,市場単価を用いて設計・積算を行うことが常態となっているため,市場単価に組み込まれている植物(主体種子)より外来牧草を抜き在来種を多用する方向へと進められることとなった。市場単価に組み込まれている在来種とは,国外でわが国に自生する同種を採種・輸入した(外国産)在来種であり,亜種レベルでは遺伝的に異なるもので,生物多様性保全の本質に対し反するものであった。しかし,その点を意識することなく,在来種を用いることが生物多様性保全なのだという言葉のレトリックにより,(外国産)在来種を多用する方向へと向かった。
 
環境省では,生物多様性保全の取組みに逆行している(外国産)在来種を多用する方向を是正すべく,2015(平成27)年に「生態系被害防止外来種リスト」を作成のうえ,「要注意外来種リスト」を廃止し,外来牧草の主立ったものを「産業管理外来種」として位置付けた。すなわち,外来牧草の位置付けの見直しが行われ,要注意という扱いを廃し,適切な管理を行い活用すべきものとしたのである。同年「自然公園における法面緑化指針」を公表し,自然公園内における(外国産)在来種の使用を禁止した。併せて,増加する災害などに対応するため自然公園内においても外来牧草の使用を認める特例を示した。
 
外来牧草を「産業管理外来種」とし,「自然公園における法面緑化指針」の公表により,自然公園内での(外国産)在来種の使用を禁じ,外来牧草の使用を認める特例を示したことによって,外来牧草の使用をも許容しつつ生物多様性保全に配慮した斜面・法面緑化を行うという方向へと大きく方向転換がなされたのである。しかし,依然として「外来牧草」は「悪者」という考えが強く定着し,(外国産)在来種を多用することが生物多様性保全に配慮した緑化だとする風潮は現在も根強い。
 
本稿は,このような現状を踏まえ,斜面・法面緑化における生物多様性保全と外来牧草の適正な活用について述べる。
 
 

1. 斜面・法面緑化による植生遷移と生物多様性保全

1.1 外来牧草の使用による自然回復・生物多様性保全

1950(昭和30)年代から2005(平成17)年に至る半世紀以上の長きにわたり,斜面・法面緑化は外来牧草を緑の絆創膏として用い急速に緑化・被覆を図り,侵食防止を行いつつ,時間をかけて自然の回復力である植生遷移により自然回復を進めてきた。その結果,およそ全てにおいて周辺自然植生に置き換わり,周辺自然植生の定着により外来牧草は被圧され衰退し,樹林状の植生となり自然回復・生物多様性保全がなされている。これは,外来牧草を用いて斜面・法面緑化を行った足尾鉱山の煙害による足尾荒廃地の緑化,東名・名神高速道路の法面を見れば一目瞭然である。
 
1959(昭和34)年に,旧日本道路公団が京都東山道路法面で外来牧草を用いた緑化試験を行っているが,60年にわたる追跡調査では,使用した草種により植生遷移速度の違いは認められるものの,7年後にはススキやアカマツが侵入し,19年後にはアカマツ林となり,40年後にはマツノザイセンチュウによる「松枯れ」被害によりアカマツは枯死した。結果,アカマツ林の下層を形成していたリョウブ,ネジキ,ソヨゴ,コバノミツバツツジなどの中低木が繁茂するようになり,60年後の現在は常緑のカシ林へと遷移している(写真−1)。すなわち,外来牧草は短期間で衰退し,周辺自然植生に移り変わっているのである。
 

写真−1 60年後の植生状態



名神・東名・中央高速道路法面の植生調査では,施工後2〜4年後は外来牧草が優占しているが,施工後7〜9年後には外来牧草に混じりススキ・アカマツが侵入・定着し,施工後13〜14年でアカマツが混生するススキ草原となり,施工後18〜19年でアカマツが優占する状態となり外来牧草は衰退しほとんど消滅している(図−1)。
 
筆者が1998(平成10)年の三宅島の噴火の際の植生回復に資するべく行った三宅島の法面緑化地に対する植生推移に関する調査3)では,施工後1〜4年は外来牧草が優勢であるが,5〜9年でツルソバ・ススキ・ツワブキの混在する状態に移行し,10〜19年で外来牧草は衰退し,ススキ・トベラなど中低木の優占する状態に遷移している。風衝地など乾燥が激しい立地では,植生遷移が遅れ外来牧草が残存している。置苗工を実施し木本類苗木を導入した場合,5〜7年で中低木林を造り出すことができ,外来牧草による緑化と比較して,植生遷移を10年ほど短縮できるという結果となった(表−2)。
 
島嶼部に関しては,他に御蔵島に関する調査がある4)。1995(平成7)年に御蔵島を襲った台風によりスダジイ,タブなどの常緑広葉樹林地が崩壊した。崩壊地に地域性種苗が移植されたが,その後,侵食防止のため外来牧草のヘリ散布が行われた。施工後1年から3年は外来牧草の優占する状態となったが,その後木本類の侵入により外来牧草は衰退し,10年後にはほぼ消失,自然植生へと遷移しつつある。外来牧草により被覆した箇所は木本侵入が遅れる傾向が認められ,三宅島における置苗工による木本類の導入と同様の結果といえる。
 
送電線の鉄塔敷の侵食防止に用いた外来牧草の生長についての調査を行っている5)。鉄塔敷は草刈り管理を行っているため周辺植生の侵入定着は遅れるが,外来牧草は施工後経過年数とともに減少し,10年程度で繁茂指数20〜10以下となり,さまざまな在来種と混生した状態となる。30〜40年が経過すると,外来牧草はほとんど消滅している。
 

図−1 本州中部地方の法面植生の遷移系列

 

表−2 三宅島法面の植生推移



1.2 生物多様性保全型緑化と従来緑化の時間差は10年程度

以上より,外来牧草を用いても草刈りなどの管理を行わなければ2〜7年程度で周辺より侵入してきたススキなどの草本類と混生する状態となり,10年程度でススキと木本類の混生する状態へと推移。20年以降樹林が形成され,自然回復が進み生物多様性保全が図られていくことが理解できる。ススキの侵入・定着と同時に木本類も定着するが,生長の速いススキに被圧され,木本類がススキの頭を越えるまで20年近い年月が必要である。ススキの頭を越えた段階で日光を浴び旺盛に伸長するため,30年後には中高木林が形成される。たとえ,草刈り管理を行い続けたとしても10年程度で牧草は衰退し周辺から侵入定着した草本類の被覆する草原状の植生へと推移する。
 
外来牧草よりススキ草原となる遷移系列では,置苗工や自然侵入促進工などにより,施工当初から木本類の活着が可能な状態と比較し,樹林状の景観が形成される期間が10年程度遅れるという結果となっている。
 
高温多雨なわが国の場合,自然植生は最終的に樹林状の植生となるため,生物多様性保全に配慮した緑化を行う場合,樹林が形成されるまでの10年という年月を,どのように評価するかが問題となる。
 
早急に生物多様性保全に配慮した緑化,すなわち樹林状の植生を造成しようとする場合は,置苗工などによる地域性種苗利用工,表土利用工(埋土種子の活用),自然侵入促進工などを用い木本類の導入を行うこととなる。木本類は初期生長が遅いため草本類により被圧されないよう,施工後数年間は裸地状の法面を維持することが必要となる。このため,乾燥害などが発生しやすく確実性に劣るため,地域性種苗の採取(種),生産および施工後のモニタリングと,必要に応じた誘導管理が必要となり,多年度にわたる予算の確保が重要となる。
 
自然の時間の推移という観点からは10年という時間は極めて短期間とも考えられるが,手間と経費を投じ短期間で生物多様性保全に配慮した緑化を行わなければならない箇所と,外来牧草で安価に被覆を図り侵食防止を図りつつ,自然の推移による樹林状の植生成立を待ちながら,10年程度遅延することを許容できる箇所の地域区分(ゾーニング)を行うことが必要となる。そして,多様な植物材料を使用することを可能とするためには,これらのことを踏まえて,関係指針,手引き等を見直す必要があり,これに伴い緑化計画や設計,仕様,積算も指針等に基づいて作成するとともに,積算で使用する市場単価の構成内容についても,適正にこれらを反映させた見直しが必要となる6)。
 
早急に樹林状の植生を成立させることのみが,生物多様性保全に配慮した緑化だという風潮が強いが,時間をかけ樹林状の植生の成立を待つという方法も,生物多様性保全に配慮した方法として位置付けることが重要となる。
 
 

2. 生物多様性保全に配慮した法面緑化とは

2.1 斜面・法面緑化に関する生物多様性保全の定義

1992(平成4)年に開催された地球サミットにおいて,生物多様性の定義が示された。そこでは,「すべての生物(陸上生態系,海洋その他の水界生態系,これらが複合した生態系その他 生息又は生育の場のいかんを問わない)の間の変異性をいうものとし,種内の多様性,種間の多様性及び生態系の多様性を含む」とされた。すなわち生物多様性とは,立地環境との応答・適応により,形態的には同一種とされるものであっても遺伝子レベルでは多様であり,かつ多様な種類が存在することによって網の目状の物質循環のネットワークが形成され,多様な生態系が存在することにより生命・生物社会の安定性が保たれている。種・種間・生態系,ミクロからマクロな世界を包含する重層的な生物社会の概念として示されたものである。
 
これを受けて締結された生物多様性条約は,①生物多様性の保全,②生物多様性の構成要素の持続可能な利用,③遺伝資源の利用から生じる利益の公正な分配を目的とするものである。これらは,生物多様性の構成要素である遺伝資源の持続的な利用と利益分配,すなわち各国の生物資源・遺伝子資源戦略の調整を目的とするものである。
 
ところが,わが国では生物資源戦略という側面は希薄化されて?の生物多様性の保全のみが強調され,その中身は自然保護的な観点からの取組みを進め,外来種を駆除し,現状のまま固定すること,と解釈されてしまった。このため,生物資源戦略,すなわち利用・活用という側面が置き忘れられ,在来種を守ることが善,外来種は悪者という自然保護的な色合いが強い。
 
生物多様性条約締結により生物多様性国家戦略の作成が義務付けられたが,わが国の生物多様性国家戦略は,生物多様性の危機として(1)人間活動や開発による危機(自然保護的),(2)自然に来牧草をする働きかけの縮小による危機(里山など),(3)人間によって持ち込まれたものによる危機(外来種),(4)地球環境の危機(地球温暖化・気象変動)が挙げられている。これにより,より理解しやすい(3)の外来種による危機のみが声高に叫ばれ,併せて(1)の自然保護的な色合いが強められ,外来牧草は悪者という風潮が造られた。結果,市場単価の主体種子の中から外来牧草を排除し,(外国産)在来種を多用するという方向となったのである(表−3)。
 
条約締結に始まるわが国の生物多様性保全に関する定義は,地球サミット,生物多様性条約,生物多様性国家戦略などによるものである。
 
生物多様性保全とはこのように政策的な取組みであるが,外来種は悪者というイメージを造り出し,自然保護的な切り口のみで外来牧草の使用を制限するという方向へ進めてしまった。これにより,生物多様性保全の定義に示される種内の遺伝的多様性の保全を看過し,亜種レベルで遺伝子配列の異なる(外国産)在来種を多用することを許してしまったのである。
 
元来,外来牧草はわが国に自生しないものである。そのため,遺伝的な交雑を発生させず,周辺植生の侵入によりたやすく被圧され消失してしまうため,種内の多様性に関して影響を与えるものではない。生物多様性保全上の観点からは(外国産)在来種に比較するならばより安全なものといえ,取組み順位の低いものである。にもかかわらず外来牧草を悪者に仕立て上げ排除することを最優先課題とし,生物多様性保全上,問題の大きな(外国産)在来種を使用することを許容してきたのである。
 
元来,侵略的と称される外来種が生育している場は自然地ではなく,人為的に自然を改変した裸地に近いところ,草刈りなどの維持管理を行い明るく開けた箇所である。外来牧草の定着は立地条件が悪化していることを示す指標種として用い,立地環境の改善に努めるべき所なのだが,外来牧草の存在のみを問題としてしまったのである。
 
斜面・法面緑化における生物多様性保全とは,種内の遺伝的多様性を指すものであり,地域に自生する植物と同種の植物を,亜種レベルで遺伝的に異なっていると考えられる遠隔地から持ち込むことを避けることが本質である。
 
従って,斜面・法面緑化を行う上での生物多様性保全の定義・本質は,「地域に自生する植物と亜種レベルで遺伝的に異なる遠隔地に生育する同種を持ち込まない」ということになる。
 

表−3 生物多様性保全の目的・階層性,危機



2.2 生物多様性保全と会計検査

1992(平成4)年に生物多様性条約を締結した後,生物多様性国家戦略の策定,要注意外来生物リスト,外来生物法,生物多様性基本法,外来種被害行動計画,生態系被害防止外来種リスト,自然公園法面緑化指針と,生物多様性保全に係わる取組みが進められてきた。ここでの問題は,これらの法では,全国一律に生物多様性保全に配慮した取組みを行うことが求められていることである。ここでいう生物多様性保全の取組みとは,生物多様性保全型緑化工とされる地域性種苗利用工,表土利用工,自然侵入促進工などを用いているかということである。生物多様性国家戦略で示す外来種,「悪者」とされている「外来牧草を使用することは適法か」という観点,合規性の観点からの会計検査である7)。検査の結果,いまだ全体として責任ある合意の形成が行われていない分野であるとの判断から,今後の動向を注視したい。ただし,外来牧草の使用が継続する場合は,合規性の観点から,これを放置できないとする流れも否定できない,としている。
 
短期間で生物多様性保全に配慮した緑化を行おうとするならば,事前の地域性種苗の採取(種)・栽培,および施工後のモニタリング・管理を必要とし,多大な経費が必要となる。
 
 

2.3 自然公園法面緑化指針の内容理解

環境省は,外来生物法が施行されてから12年が経過した2017(平成29)年に「自然公園における法面緑化指針」を作成し公表した。筆者も指針作成の際,検討委員として参画した。
 
この指針の大きな特徴は,これまで生物多様性保全に配慮した取組みを行うためと称し多用してきた(外国産)在来種の使用を自然公園内で禁じたことである。相次ぐ災害の発生に配慮し,また人為度の高い地域などでは,たとえ自然公園内であっても外来牧草を用いることを特例として認めたことにある。
 
また,地域性種苗の採取(種)範囲を小流域の範囲と明示し,必要量が入手できない場合は,順時流域の範囲を拡大するものとした。さらには,生物多様性保全に配慮した緑化を行うためには地域性種苗の入手が必須となることから,施工に先駆けて地域性種苗(野生の植物)の採取(種)・生産が必要である。また,発芽にバラツキを持ち,初期生長の遅い野生植物を用いることから,天候任せの不確実性の伴う技術となるため,施工後,長期にわたるモニタリング・管理が必要で,多年度にわたる予算の確保が必要であるとした。
 
すなわち,植物材料の入手から,モニタリング・管理を行い,目標とする植物群落を造成するところまでを生物多様性保全に対する緑化として位置付けたわけである。これにより,生物多様性保全の取組みがより実際的な方向へと切り替えられたといえる。
 
生物多様性保全に配慮した緑化を行っても,木本類を生育させるためには施工後,粗な植生状態を保たなければならないため,セイタカアワダチソウやオオアレチノギクなど外来の強害畑地雑草の侵入・定着を許したり,クズに覆われ被圧されたり,著しい場合,植生は衰退し裸地化してしまう場合が多いからである。
 
このため,生物多様性保全に配慮した緑化を行う場合は,「自然公園における法面緑化指針」の示す事前の地域性種苗の確保および施工後のモニタリング・管理のため多年度にわたる予算の確保を行い,実行することが重要となる。また,硬質急勾配地の場合は,勾配補正などを目的とした緑化基礎工を併用し,植物生育基盤の安定・保持を図らなければならない。
 
このためには,地域性に応じた緑化の目的・目標などを含む指針,手引きの類の見直しも必要であろう8)。
 
 

3. 現場の実情に即した生物多様性保全に配慮した緑化を行うためには

斜面・法面緑化の取組みの多くは現場の裁量に任されてきた。(外国産)在来種を多用する緑化が多くなされてきたといえるが,この問題を解決するためには,地域性に応じたルールの作成が必要である。
 
このため当協会では,生物多様性保全に配慮した緑化を無理なく行うための地域区分(ゾーニング)の実施などを提案している6)。
 
施工当初から置苗工などにより木本類(地域性種苗)を導入する,表土利用工,自然侵入促進工による植生回復を図るならば,施工当初は裸地状であり侵食防止効果は低いが,木本類の生長を阻害しないため施工後5〜10年程度で樹林状の植生を造成することができる。一方,外来牧草で被覆する場合,確実に侵食防止を図ることができるが,樹林状の植生が回復するには15〜20年以上の期間が必要となる。いずれを選択するかで樹林状の植生が生育するまでに10年程度の期間の差ができるが,外来牧草による被覆からスタートしても,当初から木本類の導入を行っても,いずれも樹林状の植生回復を行うことで自然回復が図られ,生物多様性保全が行われることとなる。従って,いずれの方法を採用するかについては,地域性,樹林状の植生回復期間の要求度,費用対効果などより総合的に判断することが必要となる。
 
このような提案に対して,外来牧草を用いると逸出し拡大するため,生物多様性保全の面から避けること,逸出に対するリスク管理が必要だとする意見がある。
 
しかし,送電線鉄塔敷に用いた外来牧草の逸出状況に関する調査5)では,逸出範囲は外来牧草の施工地から25mの範囲に開けた空間がある場合に限られていたという結果が出ている。開けた空間とは鉄塔管理のための巡視路などであり,人為的に切り開かれた空間である。
 
高速道路周辺での外来牧草の逸出状況の調査では,芝草のトールフェスクは,高速道路盛土法面では植栽樹木の生長に伴い衰退し,高速道路周辺の工場造成法面,農業用排水路法面などでは生育が継続,あるいは分布が拡大している,としている。
 
樹林地など大型の植物が繁茂する場所では外来牧草は被圧され消失に向かい,逆に,人為的な裸地,日当たりの良い開けた場所では外来牧草は持続している,ということを示している。
 
開けた空間への到達範囲は25m程度とされていることから,施工地周辺の30〜50m程度の範囲に存在する人為的に造成した空間,開けた空間を監視することにより外来牧草の逸出の管理は可能となる。併せて,緑化工実施の際に用いるプラント周辺にシートを敷設し,施工の際のこぼれ種の発芽・定着を防ぐなど,施工地周辺の開かれた空間への逸出を防ぐことにより,外来牧草の逸出は抑えることができるといえる。
 
また,ススキなどの大型草本類や低木類の定着・伸長による被圧により,外来牧草はたやすく消失するものであり,矮性の改良品種を用いる播種量低減手法や点縞状緑化などにより,早期に外来牧草の衰退を図ることは可能である。植生推移を早期に進行させ,大型草本類,木本類の侵入定着を促進することにより外来牧草の逸出は回避可能といえる。
 
 

おわりに

2015(平成27)年に斜面・法面緑化に関する生物多様性保全に配慮した取組みの考え方,方向性が大きく転換したため,啓発を行い,理解を得ることが喫緊の課題となっている。しかし,「自然公園における法面緑化指針」に示された方向,外来牧草の使用の許容を単純に理解してしまうと「地域性種苗が入手できないから,その代替として外来牧草を播種する」となってしまいかねない。これでは,単に過去へ戻るということとなる。このような逆行を防ぐためにも地域区分(ゾーニング)を行うことが重要である。なぜならば,これにより各地域内での年間の地域性種苗の必要量を把握することが可能となり,また適正な市場を形成し,事前採取(種)・生産ができるようにするためである。また,従来の緑化植物種子よりも高価となる地域性種苗を用いるためには斜面・法面における侵食防止・保護と生物多様性保全の適正な取組みを深く理解し,かつ取り組むためのルールの確立が急がれる。
 
 

参考文献
1) 吉田博宣(2019)京都東山道路法面の植生遷移と自然回復について,緑化工技術-第40集-:39-54.
 
2) 亀山章(1984)道路法面の植生遷移から見た緑化工の検討,緑化工技術-第6集-:11-23.
 
3) 中野裕司・二見肇彦(2004)見取り調査による三宅島切土法面の植生推移,緑化工学会誌:30(2)383-388.
 
4) 荒瀬輝夫(2018)御蔵島台風崩壊地の植生回復 -外来牧草の導入の可否について-,緑化工技術-第39集-:63-77.
 
5) 津田その子(2019)電力設備における外来緑化植物の利用と生物多様性保全への配慮について,緑化工技術-第40集-:1-18.
 
6) 中野裕司(2019)法面緑化の現状と課題,積算資料公表価格版(特集・斜面防災):特集13-特19. https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/22463
 
7) 芳賀昭彦(2018)会計検査院の法面緑化に対する指摘と設計・管理について,緑化工技術-第39集-:59-60.
 
8) 中野裕司(2019)斜面・法面緑化工の標準化について-1-緑化の目的・目標,工法選定フロー,吹付基盤材の品質など-,緑化工技術-第40集-:116-155.
 
9) 簗瀬智史,夏目壽一(2014)外来植物種の道路用地内外の逸出状況追跡調査,日本緑化工学会誌:40(1)295-297.

 
 
 

特定非営利活動法人 日本緑化工協会 理事長  中野 裕司

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年6月号



 
 

 

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