• お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

建築資材、土木資材をはじめとした建設資材、機材、設備、工法等の
データを収録し、スピーディな検索を実現した建設総合ポータルサイト

建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > Ai-MAPシステムの導入「技術伝承の高度化について」

 

はじめに

27年前,施工現場の生産性向上という観点から,タイムラプスビデオを用いたビデオメモモーションという手法で,人の作業の効率化,熟練工から若手への技術伝承を試みた。時代は流れ,建設機械における自動化,熟練オペレータの作業をほぼ忠実に実現するMC(マシンコントロール)建設機械が,普通の現場で活用されるようになった。しかし,鉄筋工・型枠工・コンクリート工などの人力による作業の効率化,技術伝承は,人手不足等の影響もあり熟練工から若手へ適切に伝承されていない。
 
人力による作業の効率化・技術伝承についても,8年前から定点カメラによる画像解析および動線解析を用いた研究を実施してきたが,工場内と違い広いフィールドと太陽光による影響や影を識別するなど,試行錯誤が続いてきた。ここにきて今まで培った経験や失敗を経て,また各種センサー等の技術開発により,従来の課題を解決することができた。
 
土木工事の作業現場における技能者の動態計測を,各種センサーにより情報収集し,そのデータをAI(人工知能)の活用による動線解析・画像解析等により,技術支援・技術伝承・技能者のスキル評価等に活用する手法について紹介する。
 
 

1. 技術伝承について

従来の技術伝承では,技術の指導者(親方や先輩等)が若年者に対して指導するが,ほとんどが「見様見真似」的な指導法であり,現在の人手不足の状況では,半人前であっても独り立ちさせることが多く,そのためスキルの向上に時間を要する。土木施工技術は,経験工学的な要素が高く,定まった手法等も少ないことから,指導者(親方等)の癖がそのまま伝承されていく。指導者の癖がそのまま伝承されていくということは,その癖との相性によっては,スキル向上に時間を要することも考えられることから,指導者と若年者の相性をマッチさせることで,向上に要する時間の短縮やより高度な技術を伝承することも可能である。
 
そのためには,より多くのサンプルを準備しておく必要があり,指導者の癖だけでなく,指導者との相性,現場条件等によっても指導する手法が変わってくると考えられる。このような技能維持に関する取り組みは,建設産業における生産性向上対策の鍵であり,次世代への技術資産の継承を目的として取り組む価値のある業務である。
 
 

2. 実証試験について

本技術を実際に検証するため,「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に(株)淺沼組,(一財)先端建設技術センター,(国立大学法人)岐阜大学,(株)ミオシステムが共同で「アイマップイノベーションコンソーシアム」を組んで実施した。
 
実証現場としては,近畿地方整備局発注の「大和御所道路曲川高架橋曽我地区下部工事」の橋梁下部工事の基礎工として,オールケーシング掘削工で実施した。

2-1 機器構成(データ取得)

現場試行計画として,①作業者の稼働状況計測,②データの記録保存,データ通信,③作業場所の稼働状況計測,を実施した。試行計画を進めるための機器としては,次のとおりである(図−1)。
 

図−1 データ取得・計測機器構成



2-2 データの記録保存(出力媒体)

ヘルメットロガー(Ai-LOGGER)により,データの記録保存を実施するもので,出力媒体としては,次の通りである(図−2)。①映像データは,基礎工3名,バックホウ,クローラークレーンの視線映像を取得し抽出の簡便性を配慮し,時系列で保存を行っている。②動線軌跡図は,各作業員の作業に合わせた動線軌跡を図化する。③稼働状況グラフは,各作業員の稼働状況(滞在時間,平均速度,移動量)を図化する。
 

図−2 データの記録保存



2-3 検証対象となるデータの取得(活用媒体)

検証対象となるデータの取得は,以下の通りである。①エリア毎稼働状況図は,任意のエリアにおける滞在時間を表示させることで,工種毎の稼働率を算出することも可能となる(図−3)。②最適人員配置は,生産の進捗を予測し,生産速度の変化点を管理のポイントとして把握でき,最適な人員配置計画の立案に活用できる。実際には,人員配置を変えることはなく,最適人員配置にならない場合の要因を抽出し,改善するために活用する。③その他として,本現場においては活用する場面が無かったが,「動線シミュレーション」「作業形態の最適化(機械・車両・設備)」として活用できる。
 

図−3 検証対象となるデータの取得



3. 試行結果

3-1 映像マニュアルによる活用

作業者の目線の映像を編集し,動作の違いを「見える化」することで,スキル向上の気付き発見を促す。本作業では,鉄筋の結束などの手作業の微細なコツが生産力の基本である。また,掘削時における鉛直性の確認は,2方向から目視と合図によって行われているが,施工班の調和の重要性が確認できるとともに,どのタイミングで確認すべきかが明確になる。これらの「見える化」は,施工班毎のスキルの違いを見出すことにも効果的である(図−4)。
 

図−4 作業者の眼線による映像の編集



3-2 その他(生産予測システムによる生産管理への活用)

Ai−MAPシステムは,技術伝承だけではなく,工事全体を通した生産性向上のために,生産予測や生産管理等の日常管理にも活用ができ,軌跡図による映像データを抽出することで,各作業員・建設機械の軌跡から,安全管理にも活用が可能である(図−5)。
 

図−5 生産予測システムによる生産管理への活用



生産予測システムでは,生産速度の変化点を管理のポイント(TP)として表示することでエラー防止の気付き発見を促す仕組みとなっている。つまりこの時点でのフローの変化を注視しておくことで遅延などのエラーを防止できる(図−6)。また,グラフの変化点における映像を確認することで,要因をより明確に把握できる。
 

図−6 管理ポイントの把握による日常管理



4. 試行結果による考察

今回の試行試験によって,下記の項目について確認できた。
 
 

4-1 生産効率の高い作業計画の実施

シミュレーションにより生産予測が可能となり,生産の遅れを事前に予防する計画(案)にも活用できる。
 
実作業の記録を保存し,次回の解析データとして保存できる。

4-2 管理者の気付き発見を促進

動画データ及びグラフによる技能の「見える化」は,気付きを促す効果的な手段である。
 
繰り返し確認ができることで,新たなポイントの発見につながり,他現場への応用も可能である。

4-3 労働生産性向上の実現

エラーを生じさせない生産管理の手法を,現場の条件に合わせて管理者が見出し,従事者に伝達することで生産能力は維持され,その継続が生産性向上に繋がるものと考える。
 
 

5. 今後の展開

今回のAi-MAPシステムを活用した実証試験によって,Ai−MAPの活用範囲が大きく広がったと考える。
 
活用の範囲をさらに具現化するための方策として,次の内容を提案する(図−7)。
 

図−7 今後の展開(Ai-MAPシステムによる生産管理モデル)



5-1 生産性向上および働き方改革への対応

工事の作業プロセスを詳細に分析,把握できることから,進捗状況の把握,工程管理,品質管理,安全管理まで,情報取得から帳票作成までを一連で自動化することが可能となり,技能者のみならず元請けの職員の業務も簡素化が可能となる。

5-2 災害対応および点検業務の支援システム

Ai−LOGGERの基幹システムであるAi−MAPシステムを活用することで,災害現場へ未熟ではあるが体力のある技術者を派遣し,災害対策本部から学識者が欲しい情報・画像を派遣した技術者に指示してデータを取得し,現地の状況分析に活用することが可能となる。
 
橋梁やトンネル点検については,変状検出を目的とした画像解析とAIによるデータ分析から,橋梁やトンネルの詳細な点検・診断が可能となる。

5-3 技能者・技術者の技術伝承および技能者の地位向上,個人のスキル評価システム

技能者の技術伝承だけに留まらず,技能者の地位向上,個人のスキル評価に活用することが可能となる。具体的には,個々の技能者の細かい作業内容がカメラで見られることから,技能者の作業内容,動き,技能者の目線,手先の動きまで解ることで,暗黙知でしか表せなかった技術を「見える化」することが可能となり,技術を伝承しやすくなる。
 
また,個々の技能者の能力を画像として取得しておくことで,技術レベルを適切に評価することが可能となり,技能者の地位向上を図ることができる。熟練者の感覚や目線をVR(仮想現実)やAR(拡張現実)とのデータ統合による体感的教育訓練システムとして発展させることで,技能伝承の活性化を目指す。
 
 

6. 今後の技術伝承の方向性

技術伝承とは,それまで培ってきた技術を次の世代や社内の関係者に伝達し,時間的・組織的に引き継いで活用することである。 少子化・高齢化が社会的な課題となり,技術・技能伝承を進める場合は,全社レベルで技術や技能を引き上げるか,あるいは固有ノウハウの継承かをまず明確にする必要がある。
 
これからの技術伝承とは,古くからある技術・技能をそのまま伝承するのではなく,建設技術は時代によって変化し,新しい材料を使用すればそこに新しい技術・技能に変化する。
 
センサーが変わり,道具・工具・設備が導入されれば,技術・技能も影響を受ける。「今ある技術・技能を伝える」ことよりも,「今ある技術・技能を現代化し,状況に合わせた技術・技能」へと変化しなければならない。
 
また,技術・技能に含まれる暗黙知を明確化し,背景にある原理・原則,科学を明らかにして,今の時代にあった現代的な技術・技能にリファインすることが重要である。技術伝承とは,技術・技能の創造でもある。
 
指導者についても,次世代の指導者は今いる指導者を越える指導者とならなければならず,技術伝承とは,指導者を越える後継者を育てることでもあり,「人の可能性を開花させるような技術伝承」でなければならない。
 
 

おわりに

今後,少子高齢化の進展に伴い労働生産人口が減少する中で,今まで以上に熟練者からの技術伝承は難しくなってくる。特に技術伝承の中でも,最も表現しにくい事項としては,現場感や空気感といわれる「目に見えない感覚・雰囲気」というものをどのように表現するかが課題である。これからの技術伝承のあり方を次のように考える。
 
一つ目は,「人を楽にさせるための技術伝承」で,技術のもたらす経済性や利便性を追求する技術の伝承である。
 
二つ目は,「人の可能性を開花させるような技術伝承」で,人間の潜在性を発揮させ,育てる技術の伝承である。
 
今回の目的は,「人を楽にさせるための技術伝承」と技能者のスキル評価であるが,今後は,技能者を育てる,「人の可能性を開花させるような技術伝承」ためにどのような新技術(AI等)を活用して進めるかを検討していきたい。
 
 
参考文献
1) 稲垣孝:作業動線解析を活用した熟練技能維持システムの開発について 建設マネジメント技術,2016年5月号,pp.37〜43,2016
 
2) 田村泰史・稲垣孝・桑原茂雄・田中優:土木学会論文集F4(建設マネジメント)Vol71 No,4特集号,pp.I-131〜I-138,2015
 
3) 森和夫:技術・技能伝承とは何か 技術・技能教育研究所 2017.4.18
 
4) 田村泰史:映像解析技術の活用による技能伝承と生産性向上の取り組み 建設マネジメント技術,2018年12月号
 
 
 

一般財団法人 先端建設技術センター 先端建設技術研究所 研究部 次長  稲垣 孝

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年6月号



 
 

 

同じカテゴリの新着記事

メルマガ登録

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品