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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 土木工事標準歩掛の改定について

 

国土交通省総合政策局公共事業企画調整課

 

1.はじめに

土木工事標準歩掛(以下「標準歩掛」という)は、
施工合理化調査等の実態調査に基づき土木施工に必要とされる標準的な機械、労務、材料等の所要量を工種ごとに設定しています。
 
また、標準歩掛は「中央建設業審議会(中建審)」の建議を踏まえて、
昭和58年3月に67工種を「土木工事標準歩掛」として整備・公表し、
その後、現行標準歩掛の改定や新規制定を重ねて、平成26年4月時点で140工種を公表しており、
土木工事費積算の基礎資料として国、県、市町村の発注官庁をはじめ民間でも標準的な指標として広く活用されるに至っています。
 
 

2.平成26年度標準歩掛の改定概要

土木施工は、各種施工制約の増加などの社会環境の変化あるいは使用機械の多様化、
新技術・新工法の開発などによる施工形態の変化等に対応するため、
標準歩掛は施工実態を反映した適正な資料とする必要があります。
 
今回、維持修繕工事は、新設工事に比べ手間がかかり、人件費や機材のコストも割高になりやすいことを考慮し、
「橋梁補修用歩掛の新設(3工種)」「維持修繕用歩掛の改定(3工種)」を行っています。
加えて「地盤改良用歩掛の新設(1工種)」を行うほか、
「適用範囲、日施工量、資機材等の改定(8工種)」「排出ガス基準値及び保有形態の改定(22工種)」を行っています。
 
さらに東日本大震災の被災3県(岩手県、宮城県、福島県)においては、
被災3県の現場状況を反映した専用の積算基準(復興歩掛)を制定し、平成25年10月から適用していましたが、
施工状況を考慮し、土工における日当たり作業量の補正を10%から20%に改定しています。
 
また、直轄工事において施工実態の少ない1工種を廃止するとともに、平成24年10月から施工パッケージ型積算基準が導入され、
平成25年10月から拡充されたことを受け、標準歩掛から44工種を施工パッケージ型積算基準へ移行しました。
 

(1)全面的な改定を行った工種(15工種)

①橋梁補修用積算歩掛の新設(3工種)
社会インフラの老朽化に対応するため、「断面修復工」「ひび割れ補修工」「表面被覆工」の3工種の歩掛を新設しました。
 

写真-1 断面修復工(左官作業)

写真-1 断面修復工(左官作業)


 
断面修復工は、コンクリート構造物の劣化により、欠落した部分等の断面を修復する工法で、
劣化した部分のコンクリートはつり、鉄筋防錆処理、断面修復(左官)作業を歩掛化しました。
 
写真-2 ひび割れ補修工

写真-2 ひび割れ補修工


 
ひび割れ補修工は、コンクリート構造物の劣化により、ひび割れした部分を充填剤等を用い補修する工法で、
ひび割れ部の清掃、注入孔の設置、注入剤の注入、仕上げまでの一連の作業を歩掛化しました。
 
写真-3 表面被覆工

写真-3 表面被覆工


 
表面被覆工は、コンクリート構造物のコンクリート表面を被覆材で覆う工法で、
下地処理から塗装までの一連の作業を歩掛化しました。
 
今までは積算を行う際に見積もり等を徴収する必要がありましたが、
歩掛を制定したことにより、受発注者の積算に関わる負担が軽減すると見込んでいます。
 
②維持修繕用歩掛の改定(3工種)
維持修繕用歩掛のうち、「堤防除草工」「道路除草工」「切削オーバーレイ工」の3工種を改定しています。
 
堤防除草工および道路除草工については、年間の除草回数の減少により施工効率が悪くなっていることを考慮し、
単位当たり施工数量の見直しを実施しました。
 
写真-4 とび石防護(堤防除草工)

写真-4 とび石防護(堤防除草工)


 
加えて堤防除草工については、現道脇での除草作業もあることから、とび石防護を行う場合の歩掛を新たに追加しました。
 
切削オーバーレイ工については施工規模4,000㎡以下の場合の歩掛を新設し、小規模な維持修繕工事に対応できるようにしました。
 
③中層混合処理工の新設(1工種)
 
中層混合処理工法と他の地盤改良工法との適用範囲の違い

中層混合処理工法と他の地盤改良工法との適用範囲の違い


 
軟弱地盤処理工法として「中層混合処理工」の歩掛を新たに制定しました。
今までは改良深度2m以下および3m以上の地盤改良については歩掛がありましたが、
本工法はその中間に位置するもので深度2~13mの範囲を全面的に地盤改良するものです。
今回、敷鉄板の敷設、位置決め、地盤改良、移動までの一連の作業を歩掛化しています。
 

  • 写真-5 中層混合処理機

    写真-5 中層混合処理機

  • 写真-6 人力施工状況

    写真-6 人力施工状況

  • 写真-7 機械施工状況

    写真-7 機械施工状況

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
④適用範囲、日施工量、資機材等の改定を行った工種(8工種)
深礎工、トンネル工(NATM)(機械掘削工法)、防雪柵設置および撤去工、足場工、支保工、
大型土のう工、架設支保工、公園植栽工の8工種について、適用範囲、日当たり作業量、資機材などの改定を行いました。
 
深礎工では、杭径4mまでの範囲について人力施工を標準としていましたが、
小型の電動バックホウでの施工が増え、施工の効率化が図られてきた状況を考慮し、
当該施工範囲について人力施工から機械施工へ歩掛の改定を行いました。
 
仮設工のうち足場工については、単位当たり施工数量の見直しを行っています。
また支保工については小規模な施工現場に対応するため、パイプサポート支保の設置数量が40空㎥以下の場合の歩掛を追加しました。
 
トンネル工(NATM)(機械掘削工法)では、コンクリート吹き付け機をコンプレッサ搭載型に変更したことに加え、
1日(16時間)当たりの掘進長の見直し等を行いました
(歩掛改定の詳細については、国土交通省のホームページに記載 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/constplan/sosei_constplan_tk_000024.html )。
 

(2)排出ガス基準値および保有形態の改定を行った工種(22工種)

排出ガス対策型建設機械の活用が進んだ工種については、排ガス基準値を1次基準値から2次基準値への改定を行っています。
 

図-1 クレーン設置数の推移

図-1 クレーン設置数の推移


 
また移動式クレーンのうち、トラッククレーンについては、市場での流通が少なくなっている状況(図-1)を考慮し、
5t以上から100t未満については、原則としてホイールクレーン(ラフテレーンクレーン)への機種変更を行っています(表-1)
 
表-1 排ガス基準値、保有形態、クレーン機種変更を行った工種一覧

表-1 排ガス基準値、保有形態、クレーン機種変更を行った工種一覧


 

(3)東日本大震災の被災地で適用する土木工事標準歩掛の改定

東日本大震災の被災地3県(岩手県、宮城県、福島県)においては、早期復興に向け大規模な復旧・復興事業が推進されており、
工事量の増大による資材調達不足等で、標準歩掛と施工実態とに乖離(日当たり作業量の低下)が生じているため、
平成25年10月から日当たり作業量の補正を行っていましたが、施工実態を踏まえ、
土工における日当たり作業量の補正率を10%から20%に見直すこととしました
(コンクリート工については10%補正を継続しています)。
 

(4)土木工事標準歩掛の廃止

直轄工事において施工実態の少ない「断熱型枠工」を平成26年度から廃止することとしました。
 

(5)施工パッケージ型積算基準への移行

平成25年10月から施工パッケージ型積算基準が拡充されたことにより、
土木工事標準歩掛のうち44工種を施工パッケージ型積算基準へ移行しました(表-2)
 

表-2 施工パッケージ型積算基準へ移行した工種

表-2 施工パッケージ型積算基準へ移行した工種


 
 

3.おわりに

公共事業を円滑に執行するためには、現場の施工実態や資機材の需給動向など、時事変化する事象を的確に把握し、
工事の品質および安全の確保、環境の保全等に十分な配慮がなされているかにも着目した上で、
標準歩掛を整備していくことが必要です。
 
引き続き、必要な標準歩掛の整備・改定を推進する等、適正な予定価格の設定に努めて参ります。
 
なお、標準歩掛は、実際の施工における工法や機械を規定するものではなく、
標準的な施工を想定した予定価格を算出するためのツールです。
任意と指定を正しく理解し、適切な運用をお願いします。
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2014年5月号
月刊積算資料2014年5月号
 
 

最終更新日:2014-08-19

 

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