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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 静岡県の県有施設における県産材利用の取組

 

1. はじめに

日本列島のほぼ真ん中にある静岡県(以下,本県)には,世界文化遺産の富士山やユネスコエコパークの南アルプス,世界ジオパークに認定された伊豆半島など,世界クラスの資源があります。手つかずの自然が残る南アルプスから,日本三大人工美林の天竜地域,三保の松原をはじめとする海岸林まで,多様で豊かな森林が県土面積の64%に及びます。
 
その中で,天竜地域をはじめとして,大井川,安倍川流域,富士山麓,伊豆半島など県下全域で植林が行われ,民有林のうち59%が人工林であり,全国平均の人工林率46%を大きく上回っています。人工林資源を構成する主要樹種は,スギとヒノキで,特にヒノキの面積は全国3位となっています。
 
また,戦後,全国に先駆けて植林した人工林が,他地域より10年近く早く成熟し,現在では,実に人工林面積の9割が,柱や板など木材としての利用適期となっており,豊富な森林資源を活用した林業・木材産業の飛躍の時を迎えています。
 
この豊かな森林資源を活用するため,本県では,公共建築物をはじめ,民間の住宅,非住宅建築物にいたるまで,県産材の利用拡大に取り組んでいます。
 
今回,この場をお借りして,本県の県有施設における県産材利用の取組を紹介させていただきます。
 
 

2. 公共建築物における県産材利用

本県では,県産材の率先利用を進めるべく,平成13年度に副知事をトップとする全庁横断的な会議を設置し,県産材の利用目標と取組,推進体制などを定めた「“ふじのくに”公共建築物等木使い推進プラン」を策定しました。以降,これに基づき,公共建築物で県産材を率先して利用しています。
 
この成果としては,平成27年に竣工した,県草薙総合運動場体育館「このはなアリーナ」など,静岡県のシンボルとなる多くの県有施設に,県産材をふんだんに利用してきました。
 
 

3. 県有施設における県産材利用の事例

以下に,県産材を有効利用し近年整備した施設について,木材利用の視点から紹介します。
 



●草薙総合運動場体育館(このはなアリーナ)

  


所在地:静岡市駿河区栗原
開館日:平成27年4月2日
設計者:株式会社内藤廣建築設計事務所
施工者:鹿島・木内・鈴与JV
延床面積・階数:13,509㎡・地上2階,地下1階
構造:地上部:RC造 屋根:木造+S造
県産材利用箇所:構造材(鉄骨造の屋根を支持),内装
県産材利用量:940㎥(主にスギ)
木材の主な産地:天竜地域
 
静岡県草薙総合運動場リニューアル事業の一環で,建替え工事として整備しました。
 
この体育館では,特殊なサイズ(36cm×60cm×14m)で,高強度(ヤング係数※1 E65・75・85)なスギ集成材を256本使用しています。集成材を構成するラミナは,厳密にヤング係数を測定し,同一等級で構成しました。
 
RC造の下部躯体に免振装置を載せ,その上の256本の集成材がS造のトラス屋根を支えています。集成材を45度から70度傾けることで,独自の楕円形の木造曲面に囲われた空間になっており,大きな負担がかかる45度の箇所には,ヤング係数E85 の集成材が使われています。
 
納材に至るまでに,県内の天竜地域の森林認証材を中心とした8万7,000本の立木を伐採しており,選別基準外の丸太や端材は,競技フロアの天井や壁面のルーバーなどに使われ,すべてを有効利用しました。
 
 

静岡県富士山世界遺産センター

 


所在地:富士宮市宮町
開館日:平成29年12月23日
設計者:株式会社坂茂建築設計
施工者:佐藤工業・若林組JV
延床面積・階数:3,411㎡・地上5階
構造:S造
県産材利用箇所:展示棟「逆さ富士」を模した木格子
県産材利用量:74㎥(ヒノキ)
木材の主な産地:富士地域
 
富士山の保存管理の拠点,自然,歴史・文化に加え,周辺観光等の情報提供を行うなど,訪れる多くの人々のニーズに対応する拠点として整備しました。
 
建物の特徴である逆さ富士の木格子には,富士山麓の富士市・富士宮市で育まれた地域ブランド材である富士ひのきを使用し,日本初のSGEC/PEFC(森林認証)プロジェクト認証※2を取得しました。
 
木格子は,14cm角の富士ひのきの角材から3次元(曲線・ひねり)加工により12cm角に削り出したひとつひとつ形の違う部材,約8,000ピースから組み上げられています。これらの部材は,丸太4,385本から加工されました。
 
また,耐久性を高めるために,超耐候性木材撥水剤を塗布しています。
 
 

ふじのくに茶の都ミュージアム

 


所在地:島田市金谷富士見町
開館日:平成30年3月24日
設計者:株式会社大瀧建築事務所 ほか
施工者:角丸建設株式会社 ほか
延床面積・階数:4,532㎡・地上3階
構造:SRC造,木造(茶室)
県産材利用箇所:外構の吹き寄せ壁,内・外装
県産材利用量:55㎥(ヒノキ・スギ,吹き寄せ壁はヒノキ)
木材の主な産地:大井川地域(吹き寄せ壁),天竜地域(内・外装)
 
静岡茶の魅力を国内外に発信し,茶業の振興を図るため,「島田市お茶の郷」を「茶の都」の拠点としてリニューアル整備した施設です。
 
当施設全体のデザインコンセプトである「綺麗さび」を象徴的に表現した外壁は,格子部に県産ヒノキを使用し,和のイメージを醸し出しています。吹き寄せ壁はFSC(森林認証)プロジェクト認証※2を取得しました。
 
また,この吹き寄せ壁は,木材を規格化し,H形鋼とつなぎ合わせることで,木材の取り替えが容易で安価になり,将来的に新旧の木材が組み合わさっても違和感のないデザインとし,メンテナンスに考慮した設計となっています。
 
 

富士山静岡空港(旅客ターミナルビル増築・改修)

 
 
所在地:牧之原市坂口
開館日:平成30年4月10日
    国内線ターミナルエリア供用開始
    平成30年10月30日
    国際線ターミナルエリア供用開始
設計者:株式会社坂茂建築設計
施工者:戸田・大河原特定建設工事共同企業体
延床面積・階数:18,200㎡・地上3階
構造:S造+木造
県産材利用箇所:屋根構造材,内装
県産材利用量:228㎥(スギ)
木材の主な産地:大井川地域,天竜地域
 
リニューアルオープンした富士山静岡空港旅客ターミナルは,地元川根本町や天竜産のスギを約1,700本使用した集成材が,内部の梁から外部の庇(ひさし)まで伸びる印象的なデザインの施設です。
 
集成材は,すべてFSC森林認証材からできており,今年4月にFSC(森林認証)プロジェクト認証※2を取得しました。梁は,鉄鋼梁と県産材の木梁を組み合わせたハイブリッド梁で,火災で木梁が焼失した場合でも,鉄骨により屋根の落下を防ぐことが可能となっています。
 
また,機能性とデザインに配慮した県産材の椅子(108席)も新たに設置され,南側は全面ガラス張りとなっており,明るく温かみのある施設となっています。
 
 

●日本平夢テラス

 
 
所在地:静岡市清水区草薙
開館日:平成30年11月3日
設計者:隈研吾建築都市設計事務所
施工者:木内建設株式会社
延床面積・階数:965㎡・3階
構造:S造
県産材利用箇所:木架構,ルーバー,階段等
県産材利用量:95㎥(ヒノキ・スギ)
木材の主な産地:主に静岡市
 
日本平の歴史的・文化的な価値を多くの人に知ってもらい,世界遺産富士山をはじめ,駿河湾,伊豆半島,南アルプスなど360度の眺望を楽しんでいただくための施設として,静岡市が整備した展望回廊と一体的に整備しました。
 
展望施設内部の3層にわたる八角形の吹き抜け空間には,人をさらに上へ上へと導く階段が伸び,その先には屋根を支える伝統的でシンボリックな木組みが広がっており,これらすべてに県産材を使用しています。
 
建物内部と外部の木架構をはじめ,ルーバーや回廊下部の木組みなど,内外装のいたるところに県産材を使用し,富士山を望む自然環境に調和した,美しく品格のあるたたずまいが特徴の施設です。
 
 

 


※1 ヤング係数:材料に対して荷重(曲げ・圧縮・引張り)を負荷した際の変形しにくさを表す物性値。値が高いほど変形しにくい。
※2
SGEC/PEFC:SGECは日本の森林を対象とした森林認証制度。各国の森林認証制度を相互承認していく認証プログラムであるPEFCと,2016年に相互承認され,国際的な森林認証制度となった。
FSC:世界共通の原則・制度に基づいた国際的な森林認証制度。
森林認証:持続可能な森林経営が行われている森林を第三者機関が認証する制度。
プロジェクト認証:認証林から生産された木材を使って建設される建造物等そのものを第三者機関が審査し,認証する制度。
 
 

4. おわりに

「“ふじのくに”公共建築物等木使い推進プラン」策定から17年が経過し,木材関係者と設計・建築関係者の連携と努力が実を結び,県産材をふんだんに利用した,美しく品格のある公共建築物が県内全域で整備されてきました。
 
県有施設における県産材利用を契機に,市町の公共建築物や,住宅分野,店舗や企業の社屋等の非住宅分野においても,県産材を利用する機運が高まりつつあります。
 
こうした中,木材供給側では,新たなニーズに的確に対応できるよう,地域の製材工場のネットワーク化による供給体制の強化や,森林認証林の拡大による認証材の供給体制の構築,「しずおか優良木材」やJAS・JIS製品を使用した,品質の確かな県産材製品の利用拡大に取り組んでいます。本県では,今後も引き続き,シンボリックな木材利用の事例を県内外に発信し,県産材利用の促進を目指していきます。

 

 
 
 

静岡県 経済産業部 森林・林業局 林業振興課

 
 
 
【出典】


建築施工単価2019夏号



 

 

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