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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > ふるさと目黒の桜を後世に伝える「目黒のサクラ保全事業」

 

はじめに

目黒区を代表する目黒川の桜は,毎年大勢の観光客が訪れる都内でも有数の桜の名所となっています(図−1)。目黒区内には他にも,約20種類の桜が楽しめる駒場野公園や,桜並木が続く呑川本流緑道など,地域に親しまれる桜の風景がたくさんあります(図−2)。しかし,老齢化や環境の変化により樹勢の低下や倒木などが懸念されることから,樹勢回復や植え替えなどの取組みが必要となっています(図−3)。目黒区では,ふるさと目黒の桜を後世に伝えていくため,「目黒のサクラ基金」を設立して,平成27年(2年)度からサクラ保全事業を行っています。
 

図−1 目黒川

図−2 駒場野公園

図−3 積雪により倒木した桜




 

1. 目黒のサクラ基金

桜は区民の方の愛着や関心が高いことから,区民の方とともに桜の保全に取り組んでいくこととし,平成26年(2014年)3月に目黒のサクラ基金を設立しました。皆さまからいただいた寄附金は,桜の樹木診断や保護,植え替えなどのサクラ保全事業に活用しています。
 
 
 

2. 目黒のサクラ保全事業の取組み

目黒のサクラ保全事業では,区内の道路緑地,公園,緑道などの約2,200本の桜を対象とし,樹木診断,サクラ再生実行計画作成,保護・植え替えの3つを柱に事業を進めています。

2-1 樹木診断

まず初めに,樹木医などの専門家による樹木診断を行い,個々の桜の状態を把握しています。すべての桜について初期診断を行い,倒木などの危険性の高い樹木を迅速に発見するとともに,より専門的な診断を必要とする樹木を抽出します。抽出された樹木については外観診断により,詳細な診断を行います。さらに精密診断が必要と判断された樹木については,樹木診断機器により精密診断を行い,内部の腐朽や空洞の状況を把握します。
 
平成27年(2015年)度から平成29年(2017年)度にかけて実施した樹木診断の結果では,65%の桜が健全であると診断されましたが,6%の桜については倒木の危険があるなど不健全と判定されました。不健全と判定された桜については状況を確認し,安全確保のため先行して伐採を進めています(図−4)。
 
平成27年(2015年)度には,地域の桜の現状やサクラ保全事業についての理解を深めていただくため,樹木診断見学会を開催しました。また,桜を伐採する際には,1か月程度前から掲示を行って周知するなど,地域の皆さまの理解を得ながら事業を進めていくように努めています。
 

図−4 伐採した桜の切株



2-2 サクラ再生実行計画作成

桜の保全を計画的に進めていくため,保全方法や植え替え品種など,地域に合った桜の将来像を検討し,地域ごとに「サクラ再生実行計画」を作成しています。樹木診断結果に基づき,地域の方のご意見や樹木医の見識などを取り入れながら計画を作成しています。
 

①事例:目黒川緑地帯
目黒区内の目黒川両岸には,ソメイヨシノを中心に約800本の桜があります。目黒川の桜並木は,昭和の初めに行われた目黒川の改修工事の際に地域の有志によって植えられたことが始まりで,長く地域の皆さまから大切にされているとともに,最近では外国からの観光客も多く訪れる観光名所となっています。現在の桜は3代目といわれており,昭和60年代から平成の初めにかけて植栽されたものです。平成27年(2015年)度に実施した樹木診断の結果,約9割が健全と判定されたものの,枯れ枝なども多く発生している状況です。
 
地域の皆さまと検討を行うため,住民検討会を3回開催して計画を作成しました。住民検討会のうち1回を現地見学会として開催し,現地を歩きながら樹木医からの説明を受け,現状の問題点などを実際に見て確認しました(図−5)。
 

図−5 現地見学会



目黒川の桜の将来像としては,地域のシンボルとなっているソメイヨシノによる桜並木の風景を将来にわたって引き継ぐこととし,現在の桜をできるだけ健全に保全していくこととしました。目黒川は毎年多くの皆さまが花見に訪れ,植栽帯に人が入り込み,桜の根を痛めてしまうことがあります。現在の桜を保全していくための方策のひとつとして,桜の根を保護するため,裸地化している桜の根元周りに低木や地被植物などを植えていくこととしました(図−6)。
 

図−6 根元の保護



また,枯れてしまったり,倒木の危険が生じたりした場合には,ソメイヨシノを中心として植え替えを進めていきますが,現在は樹木同士の間隔が約6mと狭く被圧が見られることから,植え替えの際には間隔が8mから10m程度になるよう植え替えをしていくこととしました。
 
 

②事例:碑文谷五丁目緑地
平成3年(1991年)に12本のオオヤマザクラが植えられた道路緑地の桜ですが,枯死などにより伐採され,計画を作成した平成28年(2016年)度時点でオオヤマザクラは5本となり,3本は既にアマノガワで植え替えられた状態でした。狭い道路で植栽帯の幅が60cm程度しかないことに加え,歩道下には暗きょがあることなどから,根が伸びる範囲が狭く,生育不良となっていると考えられました。このような環境では大型の桜であるオオヤマザクラは適していないと考えられたため,伐採した箇所については小型の品種で植え替えていくことを住民検討会で提案しました。検討の結果,小さな通りでも桜を楽しめるようにするため,小型であまり横に枝が広がらないものの,花の色が濃く,印象的なオカメザクラで植え替えていくこととなりました(図−7)。
 

図−7 オカメザクラで植え替えた将来像



③事例:呑川本流緑道
呑川本流緑道は,昭和40年代後半に暗きょ化された呑川の上部に整備された緑道で,ソメイヨシノを中心に約240本の桜が植えられています。約2.5kmにわたり桜並木が続き,良好な風景を創出していますが,一部には生育状態が悪く,樹勢が衰えているエリアもあります。調査の結果,土壌が50〜70cm程度と薄いことや樹木同士の間隔が狭いところがあることなどが分かりました。
 
人工地盤上の限られた空間であることから,ソメイヨシノよりも小型の桜で植え替えることを住民検討会で提案しました。また,延長の長い緑道であることから,これまでのようにひとつの品種を植栽するのではなく,さまざまな品種を植栽して多様な風景を創出することなどを提案しました。緑道沿いには商店街などもあり,桜の開花に合わせてさまざまなイベントを開催していることなどから,開花時期は統一したいという意見が多く,開花時期は全体的に同時期となるようにし,エリアごとに将来像を設定しました。植栽基盤が特に小さいため小型のコヒガンで植え替えるエリア,ソメイヨシノの風情を残すためソメイヨシノに似た雰囲気のコシノヒガンで植え替えるエリア,多様な品種で植え替えるエリアなどを設定し,変化する風景を楽しむことができるようにしました(図−8)。現在植栽されている健全な桜はできる限り保全していき,伐採した箇所について植え替えを進めていきます。
 

図−8 多品種で植え替えた将来像



2-3 保護・植え替え

作成したサクラ再生実行計画に基づき,桜の将来像の実現に向けて保護や植え替えの取組みを行います。安全確保のため,倒木の危険がある桜の伐採を優先して実施していますが,平成30年(2018年)度から植え替えも進めています(図−9)。
 
また,樹木を保護していく取組みとして,駒場野公園のエドヒガンヤエザクラに対し,樹勢回復作業を試験的に行いました。今回実施したのは,根元の腐朽空洞部や根元周りの固結した土壌に高圧の空気で細い縦穴を空け,赤玉土を流し込み,新たな細根の発生を促進させるものです。根が大きく生長することにより,樹木の支持力と根元における幹強度が回復することが期待されます(図−10)。今後は経過観察をしながら,他の桜についても,樹勢回復や施肥などの保護対策を実施していきたいと考えています。
 

図−9 植え替え

図−10 土壌改良による支持力の回復




 

3. 普及啓発の取組み

3-1 サクラ保全事業報告会

区民やサクラ基金への寄附者を対象に,毎年「サクラ保全事業報告会」を開催し,サクラ保全事業やサクラ基金のPRを行っています。報告会では,保全事業の取組みを報告するとともに,樹木医による講演などを行っています。
 
平成31年(2019年)3月に開催したサクラ保全事業報告会では樹木医の講師を招き,参加者の方に桜の花数調査を体験していただきました(図−11)。このような体験をきっかけに地域の桜に目を向けてもらい,地域の方と協働で桜の保全を進めていきたいと考えます。
 

図−11 花数調査



3-2 パンフレットの作成

サクラ基金やサクラ保全事業について普及啓発を図るため,パンフレットを作成しています(図−12)。サクラ基金のパンフレットは区の窓口などで配布しているほか,地域の方のご協力により,地域の桜まつりなどでも配布を行っています。また,これまでのサクラ保全事業の取組みをまとめたサクラ保全事業だよりをサクラ基金の寄附者へ配布し,いただいた寄附金の使い道について報告をしています。
 

図−12 パンフレット



3-3 さんまペーパーナイフの作成

桜への愛着があり,「老齢化した木であってもただ伐採するのは忍びない。」とのご意見や目黒のサクラ基金のPRのため,桜の伐採材を活用してペーパーナイフを作成しました(図−13)。ペーパーナイフは落語「目黒のさんま」にちなみ,さんまの形をしたもので,友好都市である気仙沼市の木材加工業者の協力を得て作成しました。ペーパーナイフは,サクラ基金に1万円以上寄附していただいた区民の方などに配布をしています。
 

図−13 さんまペーパーナイフ




 

4. 今後の課題

老齢化が進む多くの桜を保全し後世に伝えていくためには,行政の力だけでは限界があり,地域の方との協働が必要となっています。地域の方が日常的に桜を見守ることで,桜の変化や異常を素早く発見できることに加え,地域のコミュニティ形成などの効果も期待できます(図−14)。今後は,桜の観察や清掃などの作業を行うボランティアの桜守活動を推進し,住民参加により桜を保全することで,地域の財産として,地域に愛される桜の風景を形成していきたいと考えます。
 

図−14 サクラ保全事業の取組みイメージ




 

おわりに

目黒区内では,各所で町会や商店街などにより桜まつりが行われるなど,桜の存在が地域のコミュニティ形成やまちへの愛着につながっています。また,桜の開花により春の訪れを感じたり,お花見を楽しんだりするなど,桜は私たちの生活に安らぎや潤いを与えてくれます。緑道や街路樹などの桜並木は,点在するみどりをつなぐいきものの移動経路にもなっています。私たちの暮らしとさまざまなつながりを持ち,多くの役割を担う桜を保全していくことはとても大きな意味があります。地域の方とともに桜の保全に取り組み,長く愛される桜の風景を将来に伝えていきます。
 

図−15 イメージキャラクター「サクラちゃん」




 
 

目黒区 都市整備部 みどり土木政策課

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年8月号



 
 

 

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