建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 知る見るインフラストラクチャー > 「セメント系材料を用いる3Dプリンターで大型構造物を製造する新技術」ってどんなもの?

技術・製品・工法の内容をサクッと掘り下げてみる「知る・見る インフラストラクチャー」。今回は清瀬市にある大林組技術研究所にて、3Dプリンターで大型構造物を製造している様子を見学してきました。
 



2017年にロボットアームに取り付けたノズルから、3Dプリンター用特殊モルタルを吐出して積層造形する3Dプリンターを開発した大林組。現在も実用化をめざした研究開発を行っており、2019年8月末には、3Dプリンター用特殊モルタル[※1]と超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート[※2]」との複合構造を開発。セメント系材料を用いた3Dプリンターで国内最大規模となる構造物の製造になります。
 
[※1] 3Dプリンター用特殊モルタル
デンカ株式会社が開発した特殊なセメント系材料を用いたモルタル。建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持つとともに、吐出直後でも形状が崩れ ることなく維持されるチキソトロピー性と呼ばれる性質があることから、型枠を使わずに部材を製造することができる。
[※2]スリムクリート
大林組の保有技術である常温硬化型のモルタル材料で、圧縮強度180N/mm2、引張強度8.8N/mm2、曲げ強度32.6N/mm2 を達成できる。さらに、引張強度や曲げ強度が高いだけでなく、高い引張靭性を有するため、単独でも構造体としての使用が可能な材料である。スランプフローは600mm程度あり、自己充填性を有する。
 

完成イメージ
(透過部分が今後設置される予定のピース)
 
構造物はシェル型ベンチで、幅7,000mm、奥行き5,000mm、高さ2,500mm。デザインには、「型枠を使用せずに、複雑な形状の部材を製造できる」という3Dプリンターの特長を活かし、曲面や中空を取り入れました。
シェル型ベンチは12ピースの部材に分割して製造され、全ての部材完成後に設置場所に据え付けられる予定です。今回見学したのはそのうちの3ピースを繋げたものになります。
 

3ピースの構造物を繋げたシェル型ベンチ
 
一般的にセメント系材料は、十分な強度に達するまでに一定の時間を要し、形状・寸法を保持するには型枠が必要とされています。大林組では2017年、3Dプリンターを使って中空の曲面形状のモルタルブロックを製造する実験を行い、複製したものを組み合わせてアーチ状のブリッジを製作することに成功しています。使われたのはデンカ株式会社が開発した特殊なセメント系材料で、建築物や土木構造物に必要な強度と耐久性を持つとともに、吐出直後でも形状が崩れることなく維持される性質があることから、型枠を使わずに部材を製造することができました。
 

2017年に造られたアーチ状ブリッジ
 
従来は3Dプリンター用特殊モルタルの吐出を途中で停止できず、一筆書きの積層で構造物を製造していましたが、今回、ロボットアームとポンプを連動し、それを制御することで停止が可能となり、自由な積層造形を実現できるようになりました。積層経路は、三次元の設計データから自動的に生成。また大型ロボットアーム(アーム長約3m)を導入したことで、大型の部材製造が可能となりました。
 

一筆書きでなくとも積層造形が可能
 
3Dプリンター用特殊モルタルで外形を製造し、その内部に引張力を負担できるスリムクリートを流し込みます。セメント系材料は主に構造物に生じる圧縮力を負担するため、構造物に用いる際には引張力を負担する鉄筋などの鋼材と組み合わせた複合構造とする必要があります。
セメント系材料を用いた3Dプリンターの実用化においても、この引張力の負担方法の開発が重要な課題でした。
それをクリアする材料が、超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」です。
 

3Dプリンターで施工した外形にスリムクリートを充填
 
スリムクリートは引張強度が高く、単独でも構造物として使用できるセメント系材料で、常温で硬化するのが特長。自己充填性を有する材料であるため、3Dプリンター用特殊モルタルで製造した外形の内部に流し込む作業も容易です。耐久性があるため護岸や桟橋の補修などで実績があります。

また、軽量で丈夫な内部構造形態を導出できるトポロジー最適化[※3]と呼ばれる技術を用い、構造的な合理性も追求しています。この技術により、内部構造の中空部分を決定した結果、内部構造を密実とした場合と比較して、構造性能を損なうことなく、約50%重量の軽量化を実現しました。
 
[※3]トポロジー最適化
荷重条件に対して、構造物として必要となる部分に材料が分布するような形態を求めることができる。生物の形態を模倣するバイオミメティクスと呼ばれる分野でも用いられ、構造設計では、骨のように丈夫で軽量な形態を導出する際に用いられる。
 

 
今回見学したシェル型ベンチは、2019年10月末の完成を目指しており、完成後には暴露試験をして耐久性などを評価する予定になっています。
製造した構造物は先ずは自社施設での設置を考えているとか。
 
今後の展望としては、土木構造物や地下構造物を視野に、中空や曲面など、3Dプリンターでなければならないもの、現場にあつらえた複雑な造形によってコストメリットが生じるところなどに使っていきたいとのこと。
鉄筋を使わない流線型の土木構造物が、そう遠くない将来、我々の目を楽しませてくれるかもしれません。
 
 
 

取材=(株)フィールドリサーチセンター

 
 
 

 

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