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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 地質・地盤リスクマネジメントに関する動向と研究

 

1. はじめに

平成27年の杭データの偽装や平成28年の福岡市地下鉄工事にかかる陥没事故等(写真−1),土木・建設工事における地質・地盤に起因する事故やトラブルが近年頻発している。たとえば,陥没事故は直轄国道だけでも平成27年度に153件発生している(国土交通省調べ)。
 
地盤は人工物に比べ不均質性が大きく,また地下は直接見えない。このため,土木・建設工事ではその不均質性が「不確実性」となり,「リスク」となる。頻発する事故は,個人の技術に依存した安全管理の限界をあらわしているとも考えられる。
 
これをふまえ,国土交通省では,社会資本整備審議会・交通政策審議会より答申「地下空間の利活用に関する安全技術の確立について」(平成29年9月)を受けた。この中でも重要な項目が,「計画・設計・施工・維持管理の各段階における地盤リスクアセスメントの実施」である。このためには,「国は,関係する学界等の協力を得て,地下工事における地盤リスクアセスメントの技術的手法を確立させる必要がある。」とされている。
 
そこで,国立研究開発法人土木研究所(以下,「土研」という)は,国土交通省や産学とともにこれに取り組むこととしているので,ここでは土研の活動を中心に紹介する。
 

写真−1 博多駅前の陥没事故の状況1




 

2. 福岡地下鉄七隈線の陥没事故の経緯

まず平成28年に発生した福岡地下鉄の陥没事故について,事故調査委員会報告書1)及び著者の地質観察等2)をもとに経緯を振り返る。
 
陥没事故は, 古第三紀の堆積岩においてNATM工法で大断面部を掘削している途上,トンネル天端の強風化部が崩れ,その直上部の第四紀の未固結な土砂が地下水とともにトンネル内に流入したことで発生した。
 
設計当初はトンネル天端の岩盤の厚さ・強度・止水性が十分あると見込んでいたが,実際には厚さ2 m程度,岩盤は亀裂質・強風化で強度・止水性が不十分であった。また設計・施工においても,天端の岩盤に補助工法(AGF工法)を施工していたにもかかわらず,天端直上部の未固結層にあった水頭12 m程度の地下水圧等が地圧とともにトンネル天端の岩盤にかかり崩壊に至ったものであり,止水を含めた補助工法の選定・設計・施工を見誤ったものと結論づけられた(図−1)。
 
設計時の地質調査量は,通常の都市NATM工事と比較して極端に少ないとまではいえないことから,事故前に地質を正確に把握することは困難であったとしたが,地質の成り立ち,すなわち,①古第三紀の亀裂性岩盤(断層等の不均質性が想定される),②岩盤と未固結層との境界の形状(不整合であり凹凸が想定される),③強風化部の存在(風化の不均質が想定される)等から考えると,地質の不均質性・不確実性を前提とした安全側の調査,設計,施工が望まれた。
 

図−1トンネル天端付近の岩盤状態の模式図文献1)に追記。岩被りは2m程度




 

3. 教訓と改善点

トンネル工事における地質・地盤リスクの発現原因については,以前から図−2のような指摘がある。事故の多くは,自然リスクと人為リスクが相まって発生し,人為リスクについては個人の技術とともに組織・構造的な要素も大きい。また,地質の不確実性だけでなく,設計や施工法の持つ不確実性(たとえば地盤注入の不均質性等)もリスクとなる。博多の陥没事故も,このような要因が複合的に関与していたと想定される。
 
このようなリスクに適切に対応するため,国土交通省では,下記のようないくつかの先進的な取り組みを行っている。
 
事業の早期の段階でリスクを把握するための「地質リスク調査検討業務」を全国で試行(併せて,近畿地方整備局ではリスク調査マニュアルを作成)
事業者,設計者,施工者の三者協議への地質技術者の参加の試行
ボーリングデータの収集・公開・活用(ボーリングDBであるKuniJibanの共同運営,ならびに一般財団法人国土地盤情報センターへの協力等)
 
加えて土研では,平成30年度から,図−3のようなスキームで地質・地盤リスクマネジメントに関する一連の研究を開始した。
 
研究は始まったばかりであるが, 次項では,事故の教訓とその改善点について述べる。

 

図−2 トンネル工事におけるリスクの発現原因のイメージ例3)




図−3 土木研究所における地質・地盤リスクの研究体系4)



(1)早期からのリスクマネジメントの必要性

1つ目の教訓は,事業の早期から施工までの一連のリスクマネジメントの必要性である。地質を正確に把握することは困難だとしても,地質の成り立ちから一定の不均質性が想定可能である。事業の早期から,地質が想定と異なる可能性に着目して何が起こりえるかを予測し,必要な調査と対策を段階的に検討していく地質・地盤リスクマネジメントの必要があった。とくに,地質技術者だけでなく事業者,設計者,施工者の意識共有が必要であり,この意識共有を確実に行うマネジメント体制を作ることは大きな教訓である。
 
リスクマネジメントの体系化は,下記のようにそれぞれの立場から重層的に整備していく必要があると思われる。
 
①国等が発出するリスクマネジメントの基本指針
②事業者・事業ごとの手順マニュアル
③構造物ごとの調査・設計・施工基準類
④地質調査者,設計者,施工者等実務者の手引き
 
このため,国土交通省と土研では,まずリスク発現事例の収集や分析を行った上で,学会や業界とも連携して「土木事業における地質・地盤リスクマネジメントに関する基本的な考え方(基本指針)」(仮称)を構築することを検討している。
 
基本指針の内容については,2019年3月から「土木事業における地質・地盤リスクマネジメント技術検討委員会」を組織して検討中であるが,ポイントとなると思われる項目の例をあげると表−1のようなものが考えられる。
 

表−1 リスクマネジメントのポイントの例5)に追記



(2)リスクを「知る」技術の必要性

2つ目の教訓は,リスクを知る技術の必要性である。
 
とくに事業者や設計・施工者は,少なくともどのようなリスクがあるかを知る必要がある。福岡市の地下鉄工事の事案では,小規模であるがそれまでに数件の陥没事故が発生していた。このため,過去の事例からリスクを詳しく知って,より注意深く対応していれば異なる結果となった可能性もある。
 
図−4は過去の山岳トンネルにおける地質リスクの発現と地質の関係である。トンネルを計画している地域や地質によって,どのようなリスクが想定されるか事業者等があらかじめ知ることが重要である。
 
このためには,たとえば事業種ごとの「地質・地盤リスクカタログ」等の作成と,それを用いた事業者等への「地質・地盤リスク講習」等が効果的と考えられる。
 

図−4 地質リスク事象と地質(岩種)の関係(425トンネルにおける567事例)6)



(3)リスクに「気づく」技術の必要性

博多の陥没事故は,地質技術者なら気づく初歩的なミスのように思われるが,リスクを楽観視するいくつかのポイントがあった。たとえば,施工箇所周辺は未固結層内と岩盤中で地下水位が異なる,いわゆる二重地下水であったことから,不整合面直下の強風化層は十分な難透水層と判断された。これはマクロな地下水水文学的には妥当な判断かもしれない。しかし,ミクロな地下水水理工学の視点,すなわち水みちの存在とその透水性(風化層中の亀裂や弱層の透水性),施工時の透水性とその変化(止水改良の不確実性や掘削緩みによる透水性の変化)を考慮するとリスクがあり,その判断には技術と経験を要する。また,気づく技術の確保は,地質調査者だけでなく,設計・施工者にも必要である。なぜなら,設計・施工時には地質技術者の手から離れていることが多いためである。
 
気づく技術の習得は経験が必要で難しい。そこで,見逃しを減らすため,多様な地質リスクをDB化した「地質・地盤リスク気づき支援システム」や(図−5),リスク事例を用いた「地質・地盤リスク気づき講習」等が必要である。
 

図−5 地質・地盤リスクの気づき支援システムの体系構築イメージ5)



(4)リスクを「調べる」技術の必要性

気づく技術とも関係するが,3つ目の教訓としては,地質・地盤リスクを「調べる」技術の必要性である。この作業は地質調査(リスク調査)とリスク評価の2つに分けられる。一般にリスクアセスメントでは,リスクの評価に視点が置かれがちである。しかし地質調査(リスク調査)という行為の中には,不確実性の低減によるリスク回避・低減作業を含んでいるため,ある精度の地質調査を確保することが極めて重要となる。
 
たとえば,図−6は地盤情報の精度が液状化判定に与える影響を例示したものである7)。ボーリング本数によって推定地質構造が変化するが,どの程度のボーリングを行えば良いかは,その目的や事業段階にあわせて設定する必要がある。特に土木構造物に対しては,構造物から基礎に求められる「要求性能」を意識した「土木地質学的リスク調査・アセスメント技術」が必要である。たとえば,被りの大きな山岳トンネルでは多少の地質的不確実性があっても(すなわち調査の品質が低くても),支保パターンの変更や補助工法の追加でリスク回避できる。しかし岩被りが極めて小さい場合は,地質の小さな不均質性であっても鋭敏に影響する。しかも天端の局所的な崩落がすぐに大規模な陥没に結びつくような設計では,施工時のリスク対応(計測,支保パターンの変更,補助工法の追加)のみでリスク回避することは困難である。つまり,地質の不確実性に対する構造物の鋭敏性を踏まえ,地山にどの要求性能(強度,変形性等)がどの精度・安全率で満たされる必要があるか吟味し,要求性能やリスクに応じた品質の地質調査を行う必要がある。この点で,土木構造物・地質調査・リスク評価にまたがる知識を持つ人材の育成は大きな課題であり,たとえば地質リスク学会で育成している地質リスクエンジニア(GRE)等の活用も重要である。また,そのような万能な人材はまれであるため,専門が異なる複数の技術者の議論によってリスクを調査・評価する方法(仮にマルチオピニオン法と呼ぶ)も重要である。
 
また,各構造物のリスクの項目ごとに,段階的な地質調査フローを定めておくことも重要である。たとえば図−7は,トンネルの地山押し出しリスクに対する調査の対応フローの例である。
 

図−6 液状化しやすい地盤におけるボーリング本数による推定地質断面図の相違例7)




図−7 トンネルの地山押し出しリスクに対する調査フローの提案例6)



(5)リスクを「表現し伝える」技術の必要性

地質技術者が最も改善すべき点のひとつがリスクの表現と伝達である。表現し伝達すべき情報には,リスク評価の結果だけでなく,リスクの発生原因となる地質の不確実性を含む。たとえば地質図は,それが描かれて手渡されたら最後,設計者や施工者はそれが正しいと思って対応する。しかし,地質技術者は自らが作った図面が100%正しいと考えている人はいない。ここに意識のずれがあり,そのずれ自体がリスクになる。ずれを修正できるのは地質技術者による地質リスクの表現と伝達だが,肝心のその方法が確立されていない。JIS A 0206「地質図−工学地質図に用いる記号,色,模様,用語及び地層・岩体区分の表示とコード群」では,断層,地層境界などの表示について,存在確実度と位置正確度を組み合わせて細分する場合を規定しているが,JIS案の審議中に問題となった事項として,工学地質図では「位置正確」,「位置推定」,「位置伏在」のみを用い,「位置ほぼ正確」という区分を用いないことにした経緯が述べられている。「ほぼ」の中にはリスクが存在しているため避けたものであろうが,たとえこの区分を用いないとしても,「位置推定」の地質図の持つリスクの表現と伝達方法の確立は,リスクマネジメントの必須条件である。このようなリスクは物性試験結果の解釈等でも発生する。地質調査業務において生じる不確実性をいかに表現し,リスクとして伝えるかが重要である。形ばかり整えた「リスクランク表」によるリスクアセスメントから,根拠の明確なリスクアセスメントへの進化が必要である。このためには,全国地質調査業協会連合会等の業界が主体となって,「地質・地盤リスクに対応した地質調査業務報告書作成要領」を整備することが必要である。
 

(6)リスクに「対応する」技術の必要性

地質の不均質性や不確実性に対して,調査だけでなく設計・施工技術で対応する方法も重要である。そのためには,最初の地質調査で設計を決め打ちせず,各事業段階で取得できるさまざまな情報から最適な設計・施工方法を段階的に選定していくことが基本であるが,そのほかにたとえば楽観的・悲観的なさまざまな地質想定のもとで複数のパラメータ・設計条件を設定して設計を進める方法,また,地質の不均質性に対してレジリエントな設計方法や施工方法というものも考えられる。
 
土研ではトンネルの補助工法に対して,その時々の情報をもとに,最適な工法,設計,施工方法の選定が可能となるエキスパートシステムの開発等を検討している(図−8)。とくに,施工の不確実性によって発現する地質・地盤リスク(たとえば注入工法における注入の不均質性等)に対して,施工時の計測管理によりリスク対応していく手法などが考えられる。
 

図−8 地質・地盤リスクに応じたトンネルの補助工法の選定に関する研究の概要8)



(7)地質・地盤リスク啓発技術の必要性

地質・地盤リスクは目に見えにくいリスクであり,わかりにくい。このため,事業者を含めた関係者がリスクを学び適切に対応するための教育・啓発プログラムが必要である。教育プログラムは地質技術者,地盤技術者とそれ以外(一般・土木技術者)に分けたものが必要である。とくに後者には国・自治体等の事業者や施設管理者,設計者,施工者等があるが,役割も技術レベルも教育に割ける時間もまちまちであり,一律な教育プログラムでは難しく,状況に応じたプログラムが必要である。たとえば下記に述べるように,初級から専門家までの段階的な講習を行うことも考える必要がある。
 
①地質・地盤リスクを「知る」講習(事業者,土木技術者,初級地質技術者)
②地質・地盤リスクに「気づく」講習(初級地質技術者,土木技術者)
③地質・地盤リスクを「調べる」講習(地質技術者)
④地質・地盤リスクを「表現し伝える」講習(地質技術者)
⑤地質・地盤リスクに「対応する」講習(関係者全般)
 
このような教育プログラムの開発と実施には複数組織の連携が重要である。たとえば土木学会・地盤工学会・日本応用地質学会等の関係学会,また全国地質調査業協会連合会・建設コンサルタンツ協会・日本建設業連合会等の業界団体で連携し,「地質・地盤リスク対策協議会」等を組織し,プログラムの開発,教育・啓発事業を実施することなどが考えられる。
 
このとき,①リスク発現事例や回避事例,②リスク評価事例,③リスクの定量化事例,④リスクカタログ等は重要な教材となるだけでなく,リスクの気づき支援システム等のためのデータベースともなる。このためリスク事例等については,協議会メンバーで連携して収集・蓄積・分析・活用するスキームとすることが望ましい。
 
 
 

4. インハウス地質・地盤技術者の 重要性

最後に地質・地盤リスクマネジメントにおけるインハウス地質・地盤技術者等の重要性について,米国と比較しつつ述べたい。なお,以下では地質技術者と地盤技術者を分けて説明する部分があるので,まず地質技術者と地盤技術者の役割分担について説明しておく。まず地質技術者は地形学・地質学・岩石学・鉱物学等を学び,地質図・地質工学図の作成や評価が可能であるため,地質調査の品質確保やこの作業過程で判明する「地質リスク」の抽出は主に地質技術者の役割である。いっぽう地盤技術者は地盤工学を学んでおり,得られた地質図・地質工学図を活用した地盤物性の評価・地盤解析・設計等が可能であるため,この作業過程で判明する「地盤リスク」への対応については地盤技術者の役割となる。このため,リスクマネジメントにおいて,地質技術者と地盤技術者は代替不可能であることを強調しておきたい。
 
さて米国では,各州の道路局や水資源局等の部局にそれぞれ数十人規模の地質・地盤技術者が所属しており,州ごとの基準作成や,工事・災害時等の現場対応を民間コンサルと役割分担しつつ行っている。米国では,地質・地盤に関するリスクマネジメントが進んでおり,たとえばダムではPotential Failure Mode (PFM)分析を用いた地質・地盤リスクマネジメントが行われているようであるし,道路では地盤構造物のアセットマネジメント(Geotechnical Asset Management, 通称GAM)が発達し,これにより,たとえば「道路の地盤災害があったときに〇時間以内に地盤技術者が現場確認する」,といったことまで規定されている州もある。これらのマニュアル類を整備するのも彼らであり,非常に体系的なマニュアル類や教育システムが整備されている。
 
いっぽう日本では,国土交通省では,大学で地盤工学を学んだ技術者は比較的多くいると推察されるが,地質学を学んだ技術者は極めて少ない。とくに,いわゆる地質職の専門技術者はほぼ皆無である。このため,土研に数人いるインハウス地質技術者によって,地質関連の基準作成や現場技術指導が行われているが,人的制約からダムや道路のり面等,一部施設のみの対応が主となっている。比較的地質が重要と考えられる道路トンネルでも専門のインハウス地質技術者はおらず,全ての土木構造物に対応することは不可能な状況である。いっぽう農林水産省では,地質技術者(地盤技術者を除く)は数十人規模で,各地方農政局では1〜2名配属されているが,いずれにしても米国に比べ極めて貧弱である。
 
筆者は地質技術者であり地盤技術者の状況に疎いが,地質が複雑な日本において,地質が比較的単純な米国よりも地質・地盤リスクマネジメント・アセットマネジメントが遅れているのは,国のインハウス地質・地盤技術者の不足に負うところが大きいのではないかと考えられる。
 
地方の現場ではインハウス地質・地盤技術者はもとより,経験を積んだ民間の地質・地盤技術者も限られている。国全体で,また各地方で,コアとなるインハウス地質・地盤技術者,民間地質・地盤技術者を充実させることがリスクマネジメント上重要である。
 
しかし地方自治体など,組織上,人的強化が困難な場合もある。そこで,組織を超えた連携強化も重要となる。たとえば,国土交通省や自治体の現場のインハウス技術者の中には,大学等で地質や地盤を専攻していた方が一定数存在すると考えられ,また事業において地質・地盤に長く関わっている方もいる。そのような方々を「地質・地盤技術分野エキスパート」として組織し,地質・地盤技術に関する情報交換や教育・啓発を行うことにより,自らの事業のリスク管理や,時には近隣の地域の事業に対するアドバイスを行えるようにすることが考えられる。
 
国土交通省では,たとえば「トンネル担当者会議」,「橋梁担当者会議」といった組織を作り,技術的課題に対応している。かつては,建設省主催の「地質担当者会議」があり,現場の課題や基準類の審議等を行っていた。ボーリング柱状図の標準様式など,現在一般に使用されているものはその会議で審議され標準化された。この会議は合理化により消滅した経緯がある。しかし地質・地盤リスクが顕在化している現在,新しい形で「地質・地盤担当者会議」を組織し,行政・研究機関・現場等のインハウス技術者の情報共有・教育・啓発・課題の審議等を行うことが考えられる。
 
なお,土研では独自に,水資源機構等の協力を得てインハウス地質技術者による「地質技術者会議」を組織して情報共有や啓発・教育等を図っているが,そのような連携を地盤技術者や現場のインハウス技術者,また民間技術者等にも拡大し,横の連携を密にしてリスクに対応していくことが望ましい。
 
 
 

5. まとめ

土木事業における地質・地盤リスクの発現を回避するための対策として,①事業へのリスクマネジメントの導入,②リスク発見・評価技術の開発,③事業関係者のリスク教育・啓発事業,④地質・地盤技術者の体制強化や連携が必要である。これらは有機的に関連しつつ進める必要があり,またこの実現には,さまざまな専門分野が連携して協力する必要がある。関係機関・関係者のご協力をお願いする。

 
 
【参考文献】
1) 福岡地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する委員会(国立研究開発法人土木研究所)(2017):福岡地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する委員会報告書
 
2) 佐々木靖人(2017):トンネル陥没事例からみた地質リスク回避手法に関する考察,日本応用地質学会平成29年度研究発表会講演論文集,pp.17-18
 
3) 土木学会(2007.5):よりよい山岳トンネルの事前調査・事前設計に向けて
 
4) 土木研究所(2018):地質・地盤リスクマネジメントの基本体系の構築に関する研究(所内資料)
 
5) 佐々木靖人(2018):地質の不均質性とリスク−過去の経験,今の動向−,全地連技術フォーラム2018
 
6) 土木研究所地質チーム(2012):トンネル工事等における地質リスクマネジメント手法に関する研究(研究成果報告),土木研究所HP
 
7) 阿南修司(2013):地盤情報の精度が液状化判定に与える影響について,日本応用地質学会,平成25年度研究発表会講演論文集,pp.169-170
 
8) 土木研究所トンネルチーム(2018):地質・地盤リスクに応じたトンネルの補助工法の選定に関する研究(所内資料)
 
※本資料は当会発刊の「建設マネジメント技術」2019年2月号からの転載(一部時点修正)です。
 
 
 

国立研究開発法人 土木研究所  佐々木 靖人

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2019年10月号



 
 

 

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