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1 はじめに

近年,UAV(Unmanned aerial vehicle)の普及により,自由なアングルで空中写真が手軽に撮影できるようになった。以前はヘリコプターによる空撮もあったが,地上から全景写真を撮影するため,より良い撮影場所を探して定点撮影を行うことも多かった。
 
国土交通省が推進する「ICT法面工」では主に3次元モデル(点群データ)を活用した測量,設計・施工計画,施工管理,出来形管理,検査の効率化が掲げられ,基準類の整備が進められている。
 
法面工事現場において,特に地上から全景を把握することが困難な長大な法面ではUAVを用いた撮影により効率よく状況を把握できる。また,所定のラップ率を満たした連続写真を用いたSfM─MVS技術※により3次元モデル(点群データ,鳥瞰画像等)を取得して,法面工事の安全な施工管理,出来形確認へ活用することが可能である。
 
本稿では,UAV等を利用した法面の安全確保や施工への活用事例を紹介する。
 
 

2 安全設備における活用

法面工事における墜落・転落災害は近年では減少傾向にはあるものの,施工業者において墜落・転落災害ゼロを目指した取り組みが行われており,弊社では法面工事の安全確保のため,「法面安全基準」を社内規定として1995年に策定した。これは現在も法面工事における安全設備,安全管理方法,法面工事の安全な作業環境及び,法面工事従事者に対する教育方法を全社統一するための基準として運用されている。
 
労働安全衛生法改正により,2019年2月1日からフルハーネス型安全帯の着用が義務化されている。現在は移行期間として現行の胴ベルト型(バックサイドベルトと胴ベルト型安全帯の併用)の使用が可能であるが,2022年1月2日以降は,フルハーネス型安全帯(バックサイドベルトとフルハーネス型安全帯の併用)の着用が義務付けられる。
 
また,各自運用には安全衛生特別教育に基づく特別教育の受講が必要となるが,法面作業においてフルハーネス型安全帯を使用する場合,「ロープ高所作業特別教育」の受講者は,今回設けられた「フルハーネス型墜落制止用器具を使用して行う作業に係る業務」の特別教育を受講しなくてもよい。
 
しかし,法面以外の作業においてフルハーネス型安全帯を使用する場合は受講が必要なため,各自がどれに該当するか注意が必要である。
 
法面工事の着工時に安全設備の仮設は必須で,多くの現場では親綱を法長に合わせて切断し,法面の側方から法肩付近に登り,立木または鉄筋アンカーに必ず2箇所結んでいる。
 
高さ約80mの長大法面を対象にUAVで撮影した150枚の連続写真の一部を写真−1に示す。また,それらの写真から作成した3次元モデルを図−1に示す。3次元モデルを構成する点群データはそれぞれ位置情報を持つ細かい点の集合体であり,コンピュータ上で表示される。本データは約830万個の点で作成され,連続写真撮影にはDJI社のMavic Proを使用した。
 
3次元点群モデルの安全仮設への活用については,いくつか考えられるが,例えば3次元モデルを用いて親綱や擦れ止め単管柵の配置をイメージでき(図−2),同時に必要な親綱の長さや単管パイプの数量算出にも活用できる。
 
 
 
 
【写真−1 UAVによる連続写真(抜粋)】

【図−1 作成された3次元モデル】


 

【図−2 3次元モデルを用いた仮設イメージ】




 

3 施工管理における活用,安全監視

法面工事において施工範囲の面積を着工前に把握することは重要であり,通常は数人でロープを設置した上で,巻尺による測量を実施し,求積展開図を作成することが多い。
 
一方,UAVによる写真測量により,得られた3次元モデルから,図−3に示すような法枠の外周の折れ点をプロットした任意の面を選択し,3次元CADにて求積展開図の自動作成が可能である。図−4にDXFデータ出力により作成した図面を示す。同時にCSV出力されるヘロン式による面積数量表により容易で安全に法枠求積展開図が作成できる。
 
また,法枠工では梁の組立完了時の下部からの目視では端部や調整梁の交点の状況が不明瞭なことが多い。そのような場合では空撮写真,3次元モデルとの照合により法枠展開図を作成し,法枠交点のロックボルト配置数量の確定に活用することもできる。図−5に法枠の梁の外周との交差箇所や調整梁を把握するために拡大した鳥瞰画像を示す。
 
現場によっては,施工中に予期せぬ地すべりや降雨による表層崩壊などの変状が発生することがあるが,UAVによる定点写真を日常的に撮影することにより,踏査による点検を行う前に開口亀裂のようなすべりの兆候を発見することも可能である。
 

【図−3 3次元CADにおける求積範囲選択】

       
 

【図−4 法枠求積展開図(自動作成)】


 

【図−5 法枠組立拡大画像(鳥瞰画像)




 

4 施工完了時の出来形測定

法面工事での出来形測定は,現状ではロープワークを伴うことが多い。吹付面や法枠の上を横方向に移動するには,ロリップのロープの付け替えが必要になり手間が掛かる。また,過去には測量中の転倒,転落事故があり,少なからず危険が伴う。例えば法枠工の測定項目の一つである法枠の中心間隔は梁延長100m毎に1箇所測定する必要があり,大規模法面では数日掛かることもある。
 
法面工事における写真測量の精度を確保するには事前に現場の条件(立木の有無,日当たり等)を調査し,適切な場所に対空標識を設置し,標定点補正を行わなければならない。
 
しかし,一度精度の良い3次元点群データを作成すれば,出来形計測はパソコンさえあれば場所を選ばず行うことができるのは大きな利点である。図−6に法枠中心間隔を測定した3次元モデルを示す。計測箇所を保存することにより,さまざまな方向から見て,部分的に拡大表示することができる(図−7)。今後,UAVが従来から出来形計測に用いられている巻尺,レベル等による測定方法に替わる計測器具として現場で使用される時代も近いかもしれない。
 

【図−6 3次元モデル上での法枠中心間隔計測】


 

図−7 3次元モデル上での法枠中心間隔計測(拡大)】




 

5 係留型ロボット飛行船による安全な法面点検

現在,係留型ロボット飛行船を用いた法面点検システムの開発が進められている。本システムはヘリウムガスの浮力により高度を,スラスターの推進力により斜面や法面,壁面との距離をそれぞれ保ち,2基のウインチで係留ロープを制御することにより,法面の撮影を行うものである。ロボット飛行船の構成図を図−8に示す。本システムは,東京都立産業技術研究センターが中小企業によるロボットサービスの実用化をサポートする公募型共同研究開発事業において,(有)アストロン,日本無人機開発(同),日特建設(株)が共同で開発を進めているものである。係留型ロボット飛行船を法面に対して等距離を保つように走査させ,可視域または赤外域等のカメラで取得した近接撮像画像を解析することにより,ロープワークでの高所作業を伴う人による目視点検(吹付面のひび割れ,亀裂や剥離,破損の有無を確認)の代替が可能となる。
 
また,地すべりなどの兆候が認められる現場では,変状の監視に使用することもできる。
 
ロボットシステムの構成は以下となる。
 
ロボット飛行船本体 φ5.5m
スラスター(推進システム)
ジンバルカメラ
ウインチ 2台
操縦用リモコン
有線電源供給システム
 
実証試験の様子を写真−2に,コンピュータ上の取得画像の例を図−9に示す。
 
本システムはUAVのように墜落の危険性が無く,バッテリー交換の手間が不要である。また,作業完了まで安全・安定的に長時間滞空することが可能であり,UAVで対応できない長時間の点検,監視に適している。
 

【図−8 ロボット飛行船の構成図】


 

【写真−2 実証試験】


 

【図−9 法面の取得画像(例)】




 

6 おわりに

法面工事におけるICT及び3次元モデルの活用は,これから多くの現場での普及・拡大が想定される。
 
出来形管理においては要求される精度の確保が必要だが,施工計画,安全設備計画においては現場で積極的な活用を進めることにより安全,品質の確保に役立つと考えられる。
 
例えば,施工検討時に重要なリスクの抽出についても,3次元モデルを俯瞰することにより,現場のどこに危険が潜んでいるかを総合的に判断することが可能である。
 
今後もさまざまな技術を取り入れながら法面の安全な施工につながる環境作りに努めたい。
 


※SfM─MVS技術とは,動画や静止画からカメラの撮影位置を推定し,3次元形状を復元する技術。


参考文献
1) 藤田・宇次原ほか,のり面工事における空撮画像及び3次元モデルの施工管理への活用,土木学会全国大会講演集(DVD),2018
 
 
 

日特建設株式会社 藤田 哲

 
 
【出典】


土木施工単価2020冬号



 

 

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