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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > JS−TECH〜基礎・固有・技術開発の扉〜 基礎・固有調査研究の実施状況について

 

はじめに

地方共同法人日本下水道事業団(以下,「JS」とする)では,平成29年3月に策定した「第5次中期経営計画」において,「下水道ソリューションパートナー」として,地方公共団体が抱えるさまざまな課題を共に考え,解決策を提案することにより,下水道事業の持続に向けて役割を果たすとともに,「下水道ナショナルセンター」として,個々の地方公共団体に代わり,技術開発や人材育成などを行うことにより,下水道界全体の発展に貢献することを掲げている。
 
JSでは,これらの役割を着実に果たしていくため,JS自らの財源を確保した上で,安定的かつ継続的に調査研究を実施し,地方公共団体に成果を還元できるよう,必要な施設整備と具体的な調査研究事項を定めた「基礎・固有調査研究の中期計画」(以下,「中期計画」とする。)を平成30年1月に策定している。なお,中期計画の計画期間は,第5次中期経営計画などにあわせ,平成29年度から令和3年度までの5ヶ年としている。
 
本稿では,この中期計画にのっとり,平成30年度に実施した基礎・固有調査研究のおよび,本年度予定している施設整備の概要を紹介する。
 
 

1. 平成30年度の実施概要

基礎・固有調査研究は,図−1および表−1に示すとおり,以下の3つの技術を対象に実施している。
 

図−1 JSの役割と基礎・固有調査研究の関係


 

表−1 調査研究事項の概要



1-1.コア技術(固有調査研究)

すでに多くの地方公共団体で採用されるなど,汎用性が高く,かつ,人口減少や更なる省エネ・低炭素化など,社会情勢の変化に対応して進化させていく必要がある技術を「コア技術」と位置づけ,その調査研究の成果を受託建設事業において活用することにより,広く地方公共団体に技術還元することを目的としている。
 
平成30年度は,「改築・更新等を契機とした水処理の整備手法」,「中小都市向け汚泥炭化・肥料化技術」,「汚泥処理の広域化・地域バイオマスの活用」,「人口減少等に対応した小規模水処理技術」,「有機酸・炭酸等に対する防食技術」の5テーマ(各テーマの名称は略称。詳細は表−1参照。以下,同じ。)を実施した。
 
これらのうち,「汚泥処理の広域化・地域バイオマスの活用」では,地域バイオマスの最適な受け入れ方法や処理方法の検討のうえで必要となる基礎情報の収集を目的として,さまざまな下水汚泥や地域バイオマスの性状分析,ならびに回分式メタン発酵試験によるメタン発酵特性の把握を行った(図−2参照)。その結果,下水汚泥や地域バイオマスの種類によっては,メタン発酵に適さないものがあることや,地域バイオマスの種類によって,窒素やリンの含有率が異なり,放流水質への影響に留意が必要な場合があることなどが明らかとなった。今後も引き続き,さらに多くの下水汚泥や地域バイオマスについて,これらの基本情報の蓄積し,下水処理場を核としたバイオマス活用の推進に向けた検討手法の確立をはかっていく予定である。
 
このほか,地域バイオマス受け入れ時の水処理・汚泥処理への影響予測手法の検討や,膜分離活性汚泥法(MBR)の消費電力量とコストなどに関する知見の整理・解析,小規模下水処理場の流入特性などに関する実態調査結果の統計解析,防食被覆層の有機酸腐食の現地調査などを行った。
 

図−2 メタン発酵試験結果の一例



1-2.標準化技術(固有調査研究)

JSが共同研究などで開発・実用化した技術は,事後評価などのフォローアップを行い,その調査研究の成果に基づき,仕様化・標準化を実施することにより,広く地方公共団体に技術還元することを目的としている。
 
平成30年度は,「脱水汚泥の低含水率化」,「消毒に係る消費エネルギー削減」,「既存施設の活用による改築更新円滑化」,「硫酸腐食対策の充実」の4テーマを実施した。
 
これらのうち,「硫酸腐食対策の充実」では,3箇所の下水処理施設において,防食被覆層の劣化状況などの現地調査を行った。その結果,供用後10年以上経過した防食被覆層の事例において,防食被覆層への硫黄侵入深さは約20〜100μmであり,防食被覆層の基本的な要求性能の一つである環境遮断性はおおむね維持されていると推定される一方,コンクリートとの接着強度が初期性能よりも著しく低下しており,接着安定性の維持に課題のある可能性が示唆された(図−3参照)。今後も引き続き,複数の下水処理施設での現地調査を行うことにより,実際の腐食環境条件と防食被覆層の劣化状況との関係などの知見を蓄積し,現行のコンクリート防食技術に関する技術基準類の妥当性の検証などを進める予定である。
 
このほか,圧入式スクリュープレス脱水機(Ⅲ型)に関する性能調査や,紫外線消毒施設の運転状況および消毒性能に関する現地調査,OD法における二点DO制御システムの維持管理状況に関する実態調査などを行った。
 

図−3 防食被覆層の劣化状況などの現地調査結果の一例



1-3.先導技術(基礎調査研究)

下水道分野の技術革新に向けて,他分野で開発が進む先端技術の下水道事業への適用など,JSが先行・先導して調査研究を行い,その調査研究の成果に基づき,将来的に民間企業などとの共同研究などへと発展させ,実用化をはかることにより,下水道界全体に技術還元することを目的としている。
 
平成30年度は,「次世代水処理技術」,「希少金属回収技術」,「AIを活用した管理の効率化」,「エネルギー自立」の4テーマを実施した。
 
これらのうち,「次世代水処理技術」では,微生物燃料電池技術および常温アナモックス技術について,また,「AIを活用した管理の効率化」では,水中ドローンなどのロボット技術,三次元計測などの画像処理技術および機械学習などの人工知能(AI)技術について,文献調査やヒアリング調査などを行い,他分野を含む現状の技術開発段階や技術水準,下水道分野への適用性などの整理・検討を行った。今年度以降,これらの整理・検討結果を踏まえ,有用性および実用化の可能性が高い技術について,民間企業や大学などとも連携し,プラント実験などの調査研究を進めていく予定である。
 
このほか,下水汚泥からの希少金属など(金,ハフニウム,リン他)の回収可能性に関する調査や,下水処理場全体の消費エネルギーなどの最適化検討ツールの開発のための基礎的検討などを行った。
 
 
 

2. 令和元年度の施設整備予定

中期計画では,基礎・固有調査研究の実施に必要な施設は,技術開発実験センター(栃木県真岡市)において整備することとしている。
 
今年度は,中期計画における施設整備の中核となる「実験棟」の建設を行い(図−4参照),次年度以降,基礎・固有調査研究の実施に必要な各種の実験プラントなどを実験棟内に設置し,実下水を用いた実験などを行う予定である。
 

図−4 実験棟の完成予想図および概要




 

おわりに

本稿では,紙面の都合により,詳細には紹介できなかったが,平成30年度の基礎・固有調査研究の成果については,JSホームページの「JSTECH〜基礎・固有・技術開発への扉〜」に掲載している(https://www.jswa.go.jp/g/gi.html)。
 
また,今年度は,計画期間の中間年度に当たるため,これまでの調査研究の進捗状況などを踏まえ,より一層,効率的,かつ効果的に調査研究を進め,技術還元を着実に図れるよう,中期計画の中間見直しを行う予定としている。
 
今後のJSの基礎・固有調査研究の成果に是非ご期待いただきたい。
 
 
 

地方共同法人 日本下水道事業団 技術戦略部次長 橋本 敏一

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年2月号



 
 

 

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