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はじめに

下水道は公衆衛生の向上,都市の健全な発達及び公共用水域の水質保全に貢献し,さらに宅地や道路などに降った雨水を速やかに排除し浸水被害を軽減するなど,国民の快適で安全安心な生活に不可欠な社会資本の一つである。2018年度末における汚水処理人口普及率は91.4%であるが,このうち下水道による普及率が79.3%とその大部分を占めており,全国的に下水道整備の進展により水質改善等の効果が現れている。その一方,全国の下水道施設は,管路総延長約47万km,ポンプ場約3,600箇所,下水処理場約2,200箇所と,管理する施設数が増加しており,大量のストックを適正に維持管理していくことが求められている。
 
下水道事業におけるコンクリート構造物の耐用年数は概ね50年とされており,これまでに整備された下水道施設は,全国的に間もなく大規模な改築(「更新」もしくは「長寿命化」)の時期を迎える。早期に下水道事業に着手した大都市では既に改築事業に取り組んでいるが,多くの都市では昭和40年代から平成10年代に集中的に下水道施設を整備しており,現時点で50年を経過した管路施設は現時点では全体の4%程度であるが,10年後には13%,20年後には32%へと急増する見込みである(図−1参照)。これら膨大なストックを計画的に維持管理し,状態に応じた修繕や長寿命化に取り組みつつ,改築更新と一体的に捉えたストックマネジメントを行っていくことが重要である。
 

図−1 管路施設の年度別管理延長の推移(出展:国土交通省ホームページ)



1. 維持管理のマネジメント

下水道の普及拡大,整備促進する時代から管理運営する時代を迎えている状況を踏まえ,本協会では下水道施設の維持管理の実務書である『下水道維持管理指針2014年版(以下,維持管理指針)』において,計画的維持管理の重要性を示している。この維持管理指針においては,施設のマネジメントとは「施設の計画,設計,建設から維持管理期間を経て改築に至るまでの施設の一生涯(ライフサイクルという)において,施設を最も効率的に利用するための一連のマネジメント」であり,「建設のマネジメント」と「維持管理のマネジメント」に大別した。また,計画的維持管理は,維持管理で想定されるリスクを評価し,明確な管理目標を定め,施設の運転状況や劣化状態を客観的に把握,評価するとともに,中長期的な予測をしながら計画的かつ効率的に施設を管理する取り組みとし,PDCAサイクルをベースに実践する「維持管理のマネジメント」と位置付けている。さらに,計画的維持管理を通して蓄積された種々のノウハウや情報などを施設計画・設計にフィードバックするなど,「建設のマネジメント」と「維持管理のマネジメント」を連携(図−2参照)させることが重要であり,これがストックマネジメントの基本となる取り組みである。なお,ストックマネジメントについては,国土交通省が初めて計画策定に取り組む公共団体等に向け実施方針を示している。
 

図−2 計画的維持管理の位置付け




 

2. 計画的維持管理の施設別留意点

1)管路施設の維持管理

①管路施設の維持管理の特徴
管路施設に求められる機能は,流下機能の維持であり,供用開始当初の維持管理は,管の閉塞への対応,堆積土砂の清掃等が中心となるなど,事後対応的な維持管理が主となってきた。しかし管路施設は地下に埋設され,かつ膨大なストックを有しており,老朽化に伴い,悪臭や溢水の発生,さらに管路の破損等による道路陥没事故などは重大な社会的影響を生じさせる恐れがあることから,老朽施設の不具合による事故などの発生を未然に防止するとともに,ライフサイクルコストの最小化を図るため,予防保全型の維持管理への転換が求められている。
 
特に平成24年の中央自動車道笹子トンネルの天井版落下事故等を契機として,平成27年度に下水道法が改正され,排水施設(管路施設)の点検が義務化された。とりわけ「腐食するおそれが大きいものとして国土交通省令で定める排水施設の点検は,5年に1回以上の適切な頻度で行うものとすること」とする維持管理の基準が定められ,各下水道管理者に対応が求められている。
 
 

②管路施設の計画的維持管理
管路施設の計画的維持管理では,予防保全型の維持管理を前提に,維持管理の「目標の設定」と優先順位を検討するための「リスクの評価」に基づき,「巡視・点検及び清掃計画,調査計画,修繕及び改築計画を盛り込んだ計画の策定と実行」,実績と目標値や計画値とを比較し,両者のギャップを埋めるための改善など「評価・見直し」を行うこととなる。膨大な管路施設を効率的に巡視・点検,調査していくためには,対象施設を効果的に選定して段階的に調査を行い,施設の機能維持に繋げるためのリスク評価に基づく机上のスクリーニングや簡易調査によるスクリーニングを併せて活用することにより,調査の優先度が高い施設を効率的かつ効果的に絞り込むことが有効である。
 

2)処理場・ポンプ場の維持管理

①ポンプ場・処理場の維持管理の特徴
ポンプ場施設は,管路施設で集められた下水を処理場施設に送水し,また雨水を公共用水域に放流する機能を持つ重要な施設である。処理場施設は,下水を処理し,法令等の基準に適合する水質を確保し,河川・海域等の公共用水域に放流する機能を持つ重要な施設である。
 
下水処理の基本は生物処理であり,微生物濃度の管理,微生物の呼吸に必要な風量調整など細やかな運転管理が求められる。このため供用開始当初の維持管理としては,事業計画区域の拡大や予期せぬ異常事態など,流入水量・水質とも絶えず変化することから,管路施設の維持管理よりも,処理施設にウェイトが置かれる傾向にあった。
 
ポンプ場・処理場施設を機能低下・停止させることなく持続的に維持するため,施設機能の点検・調査・修繕及び改築(長寿命化対策)を踏まえた「計画的保全管理」と,運転操作による水質管理,エネルギー管理及び廃棄物管理を踏まえた「計画的運転管理」を密接に連携させた計画的維持管理を実行する必要がある。
 
 

②ポンプ場・処理場の計画的保全管理
ポンプ場・処理場の計画的保全管理では,中長期的な視点を踏まえ,「目標設定」,「リスク評価」,「保守点検計画」,「調査計画」,「修繕及び改築計画」を盛り込んだ計画を策定・実行し,評価・見直しを行うこととなる。計画的保全管理では,「保守点検」,「調査」,「修繕及び改築」が密接に連携することにより効果を発揮する。特に「保守点検」と「調査」は,特に密接に関係し,かつ類似の作業内容でもある,設備の特性や維持管理体制に応じた実施が必要である。
 
一方,処理場設備の修繕及び改築にあたっては,複数ある処理系列を順番に停止して実施していくことが基本となるが,停止期間中には他の処理系列だけで処理を実施する必要がある。予備や代替施設が無い場合には,高負荷な状況下で運転を行う必要があるなど,運転管理とも密接に関わる。
 
 

③ポンプ場・処理場施設の計画的運転管理
ポンプ場・処理場の計画的運転管理では,「目標設定」,「水質管理計画」,「エネルギー管理計画」,「廃棄物処理計画」を盛り込んだ計画を策定・実行し,評価・見直しを行う必要がある。
 
特に下水道は我が国の年間消費電力量の約0.7%を占めると言われており,そのほとんどが処理場施設で使用され,消費電力量の約40%が生物処理におけるエアレーションでの使用である,エアレーションの消費電力量の削減は,電力消費に伴うCO2の排出など環境への配慮や,維持管理費の削減につながるなど,エネルギー管理が重要となる。一方,電力消費は水質への影響も大きく,「水質管理」と「エネルギー管理」は相互に調整しながら最適な運転操作方法等を定める必要がある。
 
 

3)施設情報管理

下水道施設を適切に管理するためには,これまで整備してきた施設諸元情報といった基本情報に加え,維持管理の履歴,施設の健全性や劣化状態等,PDCA(計画・設計・建設・維持管理・改築・廃棄)の過程で発生するさまざまな情報を収集・蓄積(データベース化)することが,計画的維持管理,ストックマネジメントの基本となるため,適切な情報更新や保管管理,正しい情報を次のサイクルに引継ぐことが重要である。
 
 
 

3. 維持管理の課題とその解決に向けて

1)維持管理の課題

①執行体制確保・技術継承
団塊世代の大量退職による技術継承の問題に加え,整備促進による管理すべきストックの増加,それに反して整備完了に伴う職員の配置転換や行政改革による下水道執行体制の縮小など,適正な維持管理や改築需要に対応できる執行体制を確保することが課題となっている。
 
 

②財源の確保
今後,人口減少に伴う使用料収入の減少が懸念される中,膨大なストックを点検・調査,修繕し,さらに年々増加する老朽施設を適切に改築するための財源を確保することが大きな課題となっている。
 

③膨大な資産の現状把握とその情報の活用
下水道施設や事業経営の情報など,下水道事業に関する全国的な統計を集約し,地方公共団体が各種分析データにより事業の自己診断に活用するほか,災害対応時の情報連絡支援ツールや民間・大学等の研究機関における技術開発への寄与に期待して,2017年より国と本会が共同して下水道全国データベースの運用を開始している。データベースでは本会が調査提供する下水道統計のほか,国が調査するヒト(執行体制)・モノ(施設管理)・カネ(経営管理)に関するデータが蓄積されている。一方,地方公共団体には施設の運転日報等の運転管理データや設備の故障・補修履歴などストックに関する膨大な情報が蓄積されている。これらデータが公共団体内に留まらず,将来的には詳細の維持管理情報として蓄積され,分析・評価することで施設の特性に応じた最適な維持管理へと発展させることが今後の課題である。
 
 

2)下水道施設の維持管理の課題解決に向けて

①官民連携
効率的な維持管理に向け,地方公共団体の特性に合わせた官民連携を選択することが一つの解決策として有効であり,民間の持つ経営資源(人的・技術的・経済的資源)を幅広く取り入れ,効率的・効果的な公共サービスの提供が期待できる。下水道事業においても,仕様発注による業務委託による維持管理から包括的民間委託,さらに建設(改築)まで含めたPFI 事業(コンセッション)など,様々な手法がある。それぞれの下水道事業の実施状況や,地域の実情などを踏まえ,官民の役割分担やリスク分担等に留意しつつ,効果的・効率的な維持管理の体制を構築するとともに,官民双方でメリットが共有できるような連携手法を導入する必要がある。
 
 

②維持管理を起点としたマネジメントサイクルの導入
今般改定を実施した『下水道施設計画・設計指針と解説2019年版(以下,計画・設計指針)』においては,本格的な管理運営時代への移行を踏まえ,現状の事業や施設の評価,特に計画的維持管理を通して蓄積された種々の維持管理の情報に基づき抽出された課題の解決に向けて,事業や施設の見直しを図る考え方,つまり維持管理を起点としたマネジメントサイクルとして,PDCAサイクルにおける現状の評価(Check)からスタートする「CAPDサイクル」の考え方を示している。
施設の維持管理においては,流入水量・水質,汚水・汚泥処理・利活用などの実績データが蓄積され,雨水管理においても降雨量,雨水流出量,浸水被害実績など多くのデータが蓄積されている。これらの維持管理から得られた実績データを十分に分析するとともに,人口減少などの社会環境,下水道経営環境(執行体制,財源)といった要因も踏まえ,効率的な施設計画(改築計画)さらには処理の共同化・広域化,適正規模へのダウンサイジングといった事業の見直しに活かし,さらなる維持管理の効率化へとつなげていくことが期待される(図−3参照)。
 

図−3 管理運営時代の下水道事業マネジメント(維持管理を起点としたマネジメントサイクル)




 

おわりに

長期的な視点で下水道施設全体の今後の老朽化の進展状況を考慮し,優先順位付けを行ったうえで,施設の点検・調査,修繕・改善を実施し,施設全体を対象とした施設管理を最適化するストックマネジメントの活動の中で,本稿では基本を成す計画的維持管理の概要について述べ,さらに,維持管理を起点とした新たなマネジメントサイクルとしてCAPDの考え方にも触れ,維持管理で抽出された課題を施設計画で反映する方法を紹介した。いずれも本会が発行する維持管理指針や計画・設計指針に詳細を記しているので参考にされたい。
 
また,維持管理で得られる多くのデータの蓄積を課題として述べたが,この解決のためには,AIやビッグデータの活用など革新的技術の開発・普及が期待されており,将来これらのデータ活用により最適な施設のマネジメントだけでなく,官民連携における適切なリスク分担や官民双方の技術継承問題の解決に役立つものと大いに期待している。
 
 
 

公益社団法人日本下水道協会 技術研究部長 井上 雅夫

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年2月号



 
 

 

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