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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > オープンBIMによる建設デジタルツイン構築への挑戦 buildingSMART北京サミットレポート

 

はじめに

2019年10月末、世界各地のBIM関係者が集い、建設産業におけるデジタル化についての標準化や実用化に向けての情報共有、議論を行うbuilding SMART International(以下bSI)サミット会議が中国・北京で開催された。bSIサミットでは、建設ライフサイクルにおけるBIMワークフロー、BIMのデジタルツインへの展開、インフラへの拡張などの議題を中心に、標準化、最新事例の共有、BIM実務者のネットワーキングが行われている。
 
本稿では、bSI北京サミット2019、およびbSIサミットで発表されたオープンBIMの国際アワードbSI Award2019の概要について報告する。
 
 

building SMART北京サミット2019

bSI北京サミット会場となったのは、2008年の夏季オリンピック大会メインスタジアムであった鳥の巣や競泳会場の水立方など巨大施設に囲まれた国家会議センターであった(図-1)。本サミットには1,500名以上が来場し、全体会議のオンライン配信では4万人の視聴者が参加、日本からの参加者も30名超の規模となった(図-2)。
 

図-1 bSI北京サミット2019会場(左:展示会場、右:北京国家会議センター)


 

図-2 bSI北京サミット2019基調講演の様子 (日本のBIM展開状況と鹿島スマート生産
ビジョンの紹介:鹿島建設 矢嶋和美氏(buildingSMART Japan理事))




bSI北京サミットでは、建設デジタルツインへの方向性をより深化させていくテーマが設定され、建設ライフサイクルに関わるさまざまな業務プロセス、システム、サービスなどがオープンでコネクテッド(つながっていく)していく、というメッセージが強く打ち出された。
 
今回は中国での開催ということで、中国交通建設(China Communications Construction Company)、中国建設科技集団(China Construction Technology Consulting)、中国鉄道BIM連盟(China Railway BIM Alliance)などの企業・組織がサミットのスポンサーとしてもプレゼンスを発揮し、bSI中国支部の司令塔として中国建築標準設計研究院(China Institute of buildingStandard Design&Research)が活動している状況が確認できた。特に、中国支部が鉄道、港湾施設などインフラ分野におけるBIMデータ国際標準IFC(Industry Foundation Classes:ISO 16739)の拡張を積極的に取り組んできている背景に、アジア、欧州、アフリカを結ぶ大経済圏構想「一帯一路」があることが今回のサミット基調講演で述べられていた。
 
4日間の日程のうち、初日は世界各地からの基調講演、2日・3日目はRoomと呼ばれている分科会、BIM資格認証・教育(ProfessionalCertifi cation)およびスマートシティなどのテーマ別会議、4日目の最終日には各Room会議の取りまとめを行う全体会議が行われた。
 
 
・建築分科会(Building Room):
BIMデータ連携の要件定義であるIDM(Information Deliver yManual)、IDMに基づいたIFC使用範囲の定義であるMVD(ModelView Defi nition)など、BIM活用に必要な標準、ドキュメント、技術仕様などの策定を行っている。今回のサミットでは、数量積算(QuantityTake Off , QTO)、エネルギーシミュレーション、GIS座標系とBIMモデル原点の設定などのIDM、MVDについての策定、LOX(Level Of X)、空間ゾーン(Spatial Zone)のユースケース・BIMソフトウェア実装などについて議題が設定された。
 
・インフラ分科会(InfrastructureRoom):
道路、橋梁、鉄道、トンネル、港湾分野へのIFC拡張(IFCバージョン5:以下IFC5)を行っている。2020 年末にIFC5をbSI FinalStandardとするロードマップが確認された。
 
・製品分科会(Product Room):
建材に関連する用語、分類体系コードなどを、国際標準(ISO 12006)に基づく建築デジタル辞書サービスbSDD(building SMART Data Dictionary)により、BIMライブラリや、デジタルサプライチェーンなどへの展開を検討している。最近は、分類体系コードと、製品識別コードの連携へと展開してきている。
 
・建築確認分科会(RegulatoryRoom):
建築申請分野におけるユースケース、自動チェックシステムの検討を行い、IDM、MVDやガイドラインの策定を目指している。今回のサミットでは自動構造審査の試みが紹介された。
 
・技術専門分科会(TechnicalRoom):
IFCの拡張、メンテナンスおよびセマンティックWebへのIFC活用手法、API活用などの検討を行っている。CDEのAP(Iアプリケーション・プログラミング・インターフェース)標準に関しての提案が行われた。
 
・施工技術分科会(ConstructionTech Room):
4D(時間)、5D(コスト)についての考察、BIMデータの次元表現についての議論が行われた。また、物流へのBIMデータ連携、中国(2社)、欧州(1社)の施工BIM事例を共有した。その他、製品コード、デジタルツイン、共通データ環境(Common Data Environment:以下CDE)、IFCモデルサーバをテーマに議論が行われた。
 
・空港分科会(Airport Room):空港
分野の資産管理、運用管理の視点から空港施設ライフサイクルへのBIM活用に必要なIDM 、MVD、ガイドラインなどの策定を行っている。今回は空港のData Dictionary活用、BIMとGISデータの変換手法、空港のデジタルツインについての議論、および空港に関連する新たなIFC要素の提案とロードマップ再設定が行われた。
 
・鉄道分科会(Railway Room):
IFCの鉄道分野スキーマの策定を推進しており、今回サミットにおいて標準案候補が今後のレビュー段階に入った。

 
今回の基調講演には、英国のアラップ社のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略、シンガポールのスマートネーション計画における都市デジタルツイン化戦略、都市デジタルツインを目指したフィンランドのヘルシンキ3Dプラスプロジェクト(図-3)など、BIMと地理情報システム(GIS)、IoT(モノのインターネット:Internet of Things)などのセンシング情報を統合する世界各地の最新の動向が紹介された。1年前のbSI東京サミットにおいて、内閣府が推進しているサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)を融合させたデジタル基盤戦略Society5.0へのBIMが果たす役割についての可能性を世界に向けて発信した。それを受けて、今回のサミットではBIMを軸とした屋内外の空間情報、製造・流通業が持つデジタル情報、IoTによるリアルタイム情報を統合した建設デジタルツインの議論の場が広がってきた。BIMとスマートシティの関連性については、シンガポールやヘルシンキの関係者、シーメンス、オラクル、IBMなどの情報システム大手が参加する会議も行われ、ユースケースやデジタルツイン構築に向けての意見交換が行われた。
 

図-3 ヘルシンキ3D+プロジェクトにおける都市デジタルツイン
(左:属性情報なしのメッシュ形状モデル・右:属性付きのCityGMLモデル)




 

BIMから建設デジタルツインへ

製造業におけるデジタルツインは、実空間に物理的に存在する製品・システムと、その製品・システムのデジタルデータで表現された仮想モデルと共に、製品・システムの状態をIoTに代表されるセンサーデータとして取り込み、製品ライフサイクルを通してデータ解析、シミュレーション、機械学習などを活用して全体最適を図る概念である。
 
建設分野におけるデジタルツインとはどのような定義となるであろうか。第一にBIMが提供する建物のデジタル表現としての3次元空間情報、第二に建物を構成する建材・設備機器などの諸元・製造元情報を含む製品情報、第三に建設中および運用中の建物の現時点の状況を計測するセンサー情報、その蓄積された過去からの履歴情報、シミュレーションなどによる予測情報などのダイナミックな環境情報、という3つの要素から成り立つといえる。
 
建設デジタルツインを構成する製品情報に関しては、建築情報分類体系( 米国のOmniClass、英国のUniclassなどの分類コード)や、製品情報の基本的な属性情報の定義をAPIによりデータ連携するためのbSDDと呼ばれるデジタル辞書サービスの普及が進められている。bSDDを活用し、分類コードと製品レベルの製品識別情報を連携して、建設現場や建物運用時の建材、資材、設備機器などの管理、追跡をデジタル化する実証実験が行われている。建材製品情報とBIMのデータ連携を活性化するため、バーコードやRIFDなどで知られている製品識別コードの標準化、管理を行っている国際組織GS1(本部ベルギー)とbSIは、昨年からBIMと製品情報の連携をテーマとした実証実験やワークショップなどの協調活動を進めている。
 
また、IFCとCityGML(都市3Dモデル)の統合、IoTとの連携による都市デジタルツイン構築の可能性が今回のサミットにおいて議論されたが、今後bSIサミットにおけるスマートシティ関連のテーマ設定をさらに進めていきたいと考えている。
 
 

building SMART Award 2019について

bSIでは、IFC、BCF(BIM Collaboration Format)などbuilding SMART標準を活用したオープンBIMの普及促進を目的に、2014年からbuilding SMART Awardを実施している(図-4)。春に応募を開始して、秋のサミット国際会議において設計、施工、運用・維持運営、学生、プロフェッショナルの5部門の審査発表、表彰式を行う形式である。2019年度は、全世界から100以上の応募があり(日本からは1)、bSIサミットにおいてその最終結果の発表、表彰式が行われた図-5〜7)。今回のAward審査には各building SMART支部から67名の審査員(うち2名が日本支部から)が参加した。今後、bSJにおいてオープンBIMの専門家層を育成し、審査員として世界のオープンBIM実践状況を把握する機会を強化していきたい。
 

図-4 buildingSMART Awardの分野別の参加チーム数の増加(2014から2019年度 2019年度はステージ2のチーム数)


 

図-5 buildingSMART Award 2019設計部門Award (PDC Engineering
Queen’s Wharf, Brisbane) IFC, COBie, CDEなどを活用したBIMデータ連携


 

図-6 buildingSMART Award 2019施工部門Award (ICOS Group, BYLOR
Group & EDVANCE Group, Hinkley Point C EPR):IFCによる鉄筋モデル調
整(左上)、建設現場における鉄筋制作情報タグの様子(右上)、IFCによるデジタル
データフロー(下)


・設計部門(Design Award):PDC Engineering, Queen’s Wharf, Brisbane
・施工部門(Construction Award):ICOS Group, BYLOR Group & EDVANCEGroup, Hinkley Point C EPR
・運用・維持管理部門(Operations & Maintenance Award):Automated QualityControl, Copenhagen Airport
・研究部門(Professional Research Award):ACCA Software, StructuralE-Permit
・学生研究部門(Student Research Award):Technical University Munich, Multi-LOD Requirements Manager
 

図-7 buildingSMART Award 2019 審査員賞・イノベーション賞等




 

おわりに

本稿では、中国・北京で開催されたbSIサミット会議の概要を紹介した。BIMの展開は、設計、施工フェーズを超えて、製造業、サプライチェーン、運用・維持管理、都市経営などの領域に広がってきている。今回のbSIサミットにおいて、製造業とのデジタルサプライチェーンによるデータ連携を推進するための製造業分科会(Manufacture Room)、発電所・送電施設分野の電力分科会(PowerRoom)など、新たな分科会設立準備が進んでいることが判明した。インフラ分野のIFC標準化も2020年に大きな進展を向かえる。
 
2020年には、3月下旬にbSIサミットがノルウェー・オスロおいて、9月最終週にはカナダ・モントリオールで開催される。bSJでは、bSIサミットにおいて発表された基調講演、分科会、アワードなどの資料を各委員会やWG活動で分析し、今後の活動に役立てていく予定である。ご興味のある方は、ぜひこれらの活動の原動力となっているbuildingSMART Japanへ参加し、世界の大きなオープンBIMの潮流へ加わっていただきたい。
 
参考文献:
●building SMART International Standards Summit,Beijing China:
https://www.buildingsmart.org/the-international-standards-summit-beijing-china-28-31-october-2019/
 
●buildingSMART Awards 2019:
https://www.buildingsmart.org/awards/bsi-awards-2019/
 
 
 

一般社団法人 buildingSMART Japan 理事・技術統合委員会委員長 buildingSMART Fellow 足達 嘉信 博士(工学)

 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集2「建築BIMの”今”と”将来像”」



 
 
 

 

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