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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 建築士事務所におけるBIM実態調査と日事連の取り組み

 

はじめに

海外では、公共調達部門でBIMの利用が義務付けられたり、確認申請時にBIMデータの提出が義務化されるなど、国家戦略としてBIMの導入・活用を推進している国も出てきています。日本においても、2009 年頃から一部の設計事務所やゼネコンを中心にBIMの導入が進み始めましたが、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」などの国の施策を受け、2019年6月には、官民が一体となってBIMの推進と利活用に向けた環境整備に取り組む「建築BIM推進会議」が設置され、BIMの普及と活用に向けた本格的な取り組みが始まっています。
 
 
BIMは単に新しい設計製図手法というだけでなく、建築生産プロセスにおける情報共有のためのツールとして、また設計者が発注者と設計や施工、運用に関わるさまざまなプレイヤーを結び付け、マネジメントを行うための仕組みとしても有効です。そのためBIMは、建築士事務所の経営を安定させ、生き残っていくための強力な武器になるとともに、BIMによって地域社会にある建物の情報を集約・一元化することは、地域社会が抱える課題を解決し、維持・発展させていく上でも大きなカとなります。しかしながら、現状では導入費用や教育、データ連携などの多くの課題があり、建築士事務所全体としてはまだ十分にBIMが普及しているとは言えない状況です。
 
 

日事連「BIMと情報環境ワーキンググループ」

一般社団法人日本建築士事務所協会連合会(日事連)では、これからの事務所経営にはBIMの活用やICT能力の向上が喫緊の課題であると位置付け、2018年9月、「建築BIM推進会議」のスタートに先立って「BI Mと情報環境ワーキンググループ」を設置しました。そして、建築士事務所におけるBIM導入の意義や必要性・利点の整理、BIMの普及における課題を明らかにしながら、教育・学習システムの研究、BIM活用による建築士事務所の将来像や業務発展の方向性を検討するなど、建築士事務所だけでなく建築界に幅広くBIMが普及することを使命として、さまざまな活動を行ってきています。
 
 

アンケート調査の概要

「BIMと情報環境ワーキンググループ」では、これまで建築設計プロセスや建築士事務所の運営にBIMを効果的に導入する上で必要な取り組みなどについて議論を重ねてきました。その中で、まずはBIMの導入状況を調査し、開設者や管理建築士が現状をどのように捉えているのか、また、すでにBIMを活用している建築士事務所が何を利点と捉えて運用し、何が課題であると感じているのかを把握する必要性があると判断しました。そして、今後のBIMの普及・促進に向けた基礎資料とするため、建築士事務所協会の会員事務所を対象に、以下に示す「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」を実施することにしました。
 
・ 調査期間
2019年3月20日(水)〜5月17日(金)
 
・ 調査方法
各都道府県の建築士事務所協会を通じ、会員事務所を対象として電子メールで告知を行い、オンラインアンケートによる回答。
 
・ 調査項目
(1)BIMの導入・活用状況について
   BIMの導入状況や活用状況、活用方法の課題やBIMを導入していない事務所の状況など。
 
(2)BIM導入に向けた取り組みについて
   BIMを導入・活用する上で希望する国などからの支援、BIM納品が義務付けられた場合の取り組み方など。
 
(3)BIM導入事務所での状況
   BIMを導入した経緯や導入・適用したことによる効果、導入・適用する上での経営面での課題など。
 
・ 回答数
有効回答数は955件。
 
・ 回答者のプロフィール
建築士事務所の形態は、「総合設計事務所」が38.7%、「専門設計事務所」が32.9%、「施工会社設計部(工務店含む)」が28.4%で、専門設計事務所の業務範囲は「意匠」が76.4%で最も高くなっています(図-1、図-2)。また、事務所に常駐する総職員数は「5〜9人」が23.8%で最も高くなっており、「1〜4人」までを合計すると49.5%でほぼ半数となっています(図-3)。
 

図-1〜3 回答者のプロフィール




 

アンケート調査の結果

「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」の内容は多岐にわたるため、ここではアンケート調査結果の内、特徴的な項目の内容についてデータとともに紹介します。
 
(1)BIMの導入状況
BIMの導入状況を全体で見ると、「導入済で活用中」は17.1%で、「導入済みだが未活用(検討中・研修中含む)」と合わせると導入率は30%となっていますが、職員数が100 人を超える事務所では導入率が57.7%と高くなっています。しかし、導入済みの事務所の方が積極的に回答している可能性があり、実態としてはもう少しが低くなっているのではないかと考えられます。ただし、2017年9月に日事連が実施した同様のアンケート調査では、「BIMの利用あり」と回答した会員事務所は11.9%だったので、アンケートの設問や母数が異なるものの、2年前と比べて少しずつ普及が進んでいる様子が伺えます(図-4、図-5)。
 

図-4・5 事業所規模別のBIM導入状況



(2)導入しているBIMソフトウエア
(導入事務所のみ)
導入しているBI Mソフトウエア(予定を含む)を見ると、「Archi CAD(Solo含む)」が51.7%で最も高く、次いで「Revit(LT含む)」が43. 0%、GLOOBEが17.5%となっており、この3製品の割合が高くなっています。また、図にはありませんが、職員数別や使用者数別の導入しているBIMソフトウエアでは、ほとんどの人数分布において「ArchiCAD(Solo含む)」の割合が最も高くなっていますが、職員数100人以上および使用者数10人以上の比較的規模の大きい事務所の場合のみ、「Revit(LT含む)」の導入率が90%を超えています(図-6)。
 

図-6 導入しているBIMソフトウエア



(3)BIMの活用範囲、BIMでよく利用する機能(導入事務所のみ)
BIMの活用範囲については、「プレゼン用資料」作成が81.8%で最も高く、次いで「基本設計」が65.4%、「企画設計」が62.9%となっており、この上位3項目が60%を超えています。また、BIMでよく利用する機能については、「CG・レンダリング」が72.4%で最も高く、次いで「形態や色などのデザイン検討」が67.1%、「3Dモデルと連動して出力する各種図面」が57.0%となっており、活用範囲、よく利用する機能とも、ビジュアライゼーションや図面化に関する機能が上位を占めています。それら以外の回答としては、干渉チェックや日影などの法規チェックでの利用が挙げられています(図-7、図-8)。
 

図-7 BIMの活用範囲


 

図-8 よく使用するBIMソフトウエアの機能



(4)活用方法の課題(導入事務所のみ)
BIMの活用方法についての課題に対する自由回答では、「導入・運用にかかる高いコスト」「BIMを扱える人員が足りない」「BIMを使用する時間・習得する時間が足りない」などの回答が多く見られました。また、ソフトウエアの活用に関する回答としては、「2次元図面の精度が低く、加筆が多く手間がかかる」「実施設計以降に活用できていない」など入力に時間がかかること、実施設計での使い勝手に関する回答も見られました。さらに、「CADでの作図スピードの方が早くなかなか切り替えに踏み出せない」「習熟のための時間が確保できないことも相まって2次元CADからBIMへの移行できない」などの現状の業務プロセスを変えることに対する課題も挙げられており、コスト・人材・時間の3つを大きな課題と感じていることが分かります。
 
 
(5)BIMの導入・適用に至らない理由・考え、BIMを導入する状況
(導入していない事務所のみ)
BIMを導入していない669 事務所の状況について見てみると、BIMの導入・適用に至らない理由・考えについては、「BIMソフトウエアの購入にコストがかかる」が50. 7%で最も高くなっており、次いで「BI Mの有用性を判断できないが必要性を感じる」「BIMを操作できる人材の不足」「BIMを操作する職員を採用する余裕がない」がそれぞれ30%を超えています。ここでもBIMの課題をコストと人材と感じている事務所が多くなっています。一方、BIMの導入を検討する状況については、「発注者がBI Mを要求してきたとき」が58.8%で最も高く、次いで「BIMでの新市場が開拓されたとき」の40.1%となっており、BIMの導入を時期尚早と考えている事務所も少なくないことが伺えます(図-9、図-10)。
 

図-9 BIMの導入・適用に至らない理由・考え


 

図-10 BIMの導入を検討する状況



(6)BIMを導入・活用する上で希望する国や自治体からの支援
BIMを導入・活用する上で希望する国や自治体からの支援については、「導入や教育に対する補助金の支給」が64.4%で最も高く、次いで「ガイドラインや規準類の整備」が55.3%となっています。また、図にはありませんが、BIMの導入・活用状況別の希望する支援を見てみると、「導入済みだが未活用」「導入予定」「導入していないが興味がある」「導入予定なし・未定」ではいずれも「導入や教育に対する補助金の支給」が最も高く、特に「導入していないが興味がある」では75.6%と高くなっています。一方、「導入済みで活用中」では、「ガイドラインや規準類の整備」「BIMによる発注・納品の推奨」の順で高くなっており、導入後の活用に対して支援を求めていることが分かります(図-11)。
 

図-11 BIMを導入・活用する上で希望する国や自治体からの支援



(7)BIMを導入・適用したことによる効果(導入している事務所のみ)
BIMを導入・適用したことによる効果については、全体では「効果があった」が56.9%で過半数となっており、「効果は実感しているが具体的には分からない」の31.3%と合わせ、90%近くがBIMを導入・適用したことによる効果を感じているようです。また、自由回答の中では、「効果があった」と回答した事務所では「設計段階でのお施主様の完成イメージ度が格段に上がった」「仕事につながりやすくなった」「プレゼン力が上がった」や「一つ修正すれば建物図全てに連動するので修正し忘れのミスが減少する」「作図の大幅な時間短縮が図ることができる」というように、ビジュアライゼーションや設計品質の向上によって発注者から好感が得られたり、業務効率につながったなどの回答が見られました。他にも、「若手はBIMの経験、ベテランは建築の知識があり、若手とベテランのマッチングで効率的な働き方が可能となった。」という回答もありました(図-12)。
 

図-12 BIMを導入・適用したことによる効果



(8)経営面でのBIMの導入・適用する上での課題(導入している事務所のみ)
経営面でのBIMの導入・適用する上での課題としては、「先行投資的なものと考える」が81.4%で最も高く、次いで「補助金があれば導入する」が17.2%でしたが、その差は60ポイント以上と大きくなっています。自由回答の中では、「先行投資的なものと考える」と回答した事務所では「技術の進歩に遅れないように対応していくべき」「他事務所との競争力強化のため」「今後普及することが見込まれる」「小さな個人事務所でも大きな設計業務を狙える」など、今すぐに効果が得られなくても、将来の事務所経営を見据えた投資と捉えていることが伺えます。一方、「補助金があれば導入する」と回答した事務所では、「購入金や更新料が高い」「ソフトが高い」「会社経費の負担が高すぎる」など、ここでもやはり、コストを課題として挙げる回答が見られました(図-13)。
 

図-13 経営面でのBIMの導入・適用する上での課題




導入や運用コスト、人材育成や習熟に要する時間などの課題も多く、まだ十分に普及しているとは言えない状況ですが、BIMを導入している事務所では効果を感じているという回答が90%近くに達しています。これはBIMを使用した実感でもあると考えられ、こうした体験の積み重ねが今度の普及・促進につながると期待しています。
 
 

アンケート調査の反響

この「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」結果は、2019年9月、日事連のWEBサイトでその一部が要約版として公開されました(http://www.njr.or.jp/list/01277.html)。そして、その内容は業界新聞やWEBマガジンなどで取り上げられ、建築士事務所のBIM導入率が30%であることに着目した記事が多数を占めました。また、設計実務での運用効果や事務所規模が大きいほど導入率が高いことを指摘した記事やBIM普及の阻害要因として導入や教育にかかるコスト、人材不足や活用にかかる時間と公的支援の必要性を取り上げた記事、BIMソフトウエアベンダーの価格政策に言及している記事なども見られました。
 
 

さいごに

「BIMと情報環境ワーキンググループ」では、今後、事務所経営における効率化や業務改善の効果といった側面についても、さらに突っ込んだ調査と議論を行いたいと考えています。建築生産プロセスがBIMデータによってつながるようになれば、建築士事務所の業務も大きく広がり、設計者はプロジェクト全体をコントロールする役割が期待されるようになるでしょう。日事連では、今回のアンケート調査で得られた会員事務所の率直な声に向き合い、国やさまざまな業界団体などとも連携し、BIMの普及と活用のための活動を進めていきます。そして、BIMによって建築士事務所や建築業界をリードし、さらに建築業界を超えたメリットを社会全体にもたらすために貢献していきたいと考えています。
 
 
 

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 BIMと情報環境ワーキンググループ 委員 繁戸 和幸

 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集2「建築BIMの”今”と”将来像”」



 
 
 

 

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