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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 設計BIMの今 −BIM活用で受注拡大

 

IT製造ベンチャー企業在職中に3DCADを使用したデザインに興味を持ち多数のモデリングソフトのスキルを身につける。その後、父親の経営する株式会社横松建築設計事務所に入社。従来の2D設計に3Dでの設計(BIM)を黎明期(2008年)より取り入れ、新しい設計スタイルを確立する。
現在は東京、栃木を拠点とし国内外で設計活動を行う。本業以外では日経アーキテクチャ、建設ITガイドその他の雑誌での執筆や各地での講演活動や教育活動を展開している。
 



 

分かりやすいこと

僕は最初は他業種の人間だったので、図面を描いたり、読み解くことが得意ではありませんでした。他業種出身の人間だからこそ分かる2Dの図面に対する理解の難しさ、煩雑な調整作業をシンプルにしたい、さまざまな不透明さをを解決するためにBIMを取り入れました。
 
今でこそ、BIMをクライアントの支払う対価を理想通りの建築に変換するためのツールと言っていますが、自分が分かりやすく建築をデザインしたい、これが一番の理由だったのかもしれません。
 
2Dの設計もままならない状態で、四苦八苦しながら建築の仕事を覚え、BIMのワークフローを構築しました。今は実績やスタッフが増え、仕事のエリアも広がりましたが、最初は父親と2人でMacBookにBIMモデルを入れてクライアントを増やすために営業回りをしていました。
 
BIMによる分かりやすさはクライアントの満足度を高め、その結果は僕たちは多くの仕事を獲得することができました。テクノロジーはどんどん進化してできることもどんどん増えています。かつて不得意であったものも得意になり、僕たちを取り巻く環境も変わり続けています。約12年手探りしながら走ってきたことを少し振り返ってみようと思います。
 
 

BIM導入

建築設計の仕事に就いたばかりの2004年頃に思っていたこと。
 
食べ物は試食、服は試着、クルマは試乗とそれぞれ試すことができる。建築は上記の3つと比べて一番高価であるが、試しに作って住んでみることなどできないので一発勝負となる。
 
2Dの図面を見て理解しどのような建物ができるか想像することは非常に難しく、クライアントは完成する建物のイメージがあやふやなまま大量の資金を投じることになる。これはクライアントだけでなく、設計事務所、施工会社、誰にとってもリスキーなことだと思っていました。
 
IT製造ベンチャー企業で経験した、見て分かりやすい3DCADのフローを建築に落とし込み100%は無理だとしてもイメージ共有を10%から70〜80%まで向上させることができれば顧客満足度、変更によるコストの削減、トラブル回避等さまざまな懸念事項が劇的に変わると思い、当時はBIMという名称すらなかった中、ARCHICADを導入、手探りでBIMによる設計手法を模索しました。
 

平面、立面、断面、3Dのどこからでも
編集が可能




ARCHICADでは、全ての図面が正確に整合性を持った設計図書としてシームレスに連動します。図面の変更がリアルタイムで全図面、一覧表に反映され、設計スピード、効率性、正確性を飛躍的に高めます。設計図書の正確性、効率性を維持し、3Dモデルデータから構造図、断面図、立面図、詳細図、建具表、各種リスト、レンダリング、アニメーション、バーチャルリアリティーシーンなど、あらゆる情報を抽出することができます。
 

ARCHICADは、30年以上の間、BIMとして
の機能性、使いやすさ、導入のしやすさを考
えて開発されているソフトウェア




 
2Dと3Dを行き来しながらスピーディにデザインの検討を行う

 
 

設計の初期段階から分かりやすいイメージを
用い積極的にクライアントとのイメージを共有する


 

BIM導入初期の苦闘

導入した2008年当時は市販のマニュアルもなくARCHICADを使用している会社もあまりなかったため、全て手探りの状態でした。当時は今ほど仕事が多くなかったこともあり、ほとんどの時間をARCHICADに費やし、一つ一つコマンドを試しながら3Dモデルから設計図書を切り出す方法やパースの出力、各種解析などを従来の設計フローに落とし込む作業に没頭して、自分なりのBIMの設計手法を確立しました。
 
 

BIM導入による効果

一枚一枚図面やパースを描く従来の2Dワークフローと違い、最初にモデリングをするというワークフローは製造ベンチャー時代の作業に近く、自分の脳内にある建物を具現化して確認できるので猛スピードでデザイン検討を進めていくことが可能になりました。作成したモデルから2Dの図書を切り出していくのでプレゼンの準備も素早くできます、モデルデータからプレゼン用ムービーの作成も容易にできます。
 
その結果、建築のプロでないクライアントに視覚的に3Dモデルを見てもらうことで、2D図面だけでは得られないイメージの共有が可能となりました。
 
また、BIMxを活用することによってiphoneやipadなどの端末で3Dモデルを見ることが可能になり空間データのやりとりが容易にできるようになりました。
 
クライアントは僕たちが提案した3Dモデルの内部をくまなく歩き回りコメントをすることができます。僕たちはいただいたコメントを3Dモデルにフィードバックします。これを繰り返すことにより設計をクライアントの理想に近付けることができます。
 
3Dを活用し設計の段階で検討事項を共有し、BIMモデルに忠実にクライアントの要望を再現することで高い顧客満足度を実現させ、競合他社との差別化をし受注を増やすことに成功しました。現状での受注は、リピーターとWEBからの問い合わせが8割を超えています。
 

 

BIMxによる空間データを携帯端末
で共有し設計内容を共有する。操作
は簡単で誰でも設計内容に入り込む
ことができる




 

採用、教育

WEB上や講演会等でBIMの活用を発信していると、学生や若い転職希望者がBIMで設計をすることに非常に興味を持っていると感じます。
 
明確に『BIMをやりたい』という気持ちを持って入社してくるスタッフも増えています。従来のワークフローに比べてBIMのワークフローはクリエイティブで楽しそうに思えるからだと思います。また、BIMを導入したことにより社内での教育や仕事の割り振りについても影響が出ました。
 
新人スタッフには、図面が現実にどのようなものになるか理解することは難しいのですが、BIMで設計することによって『目的が可視化』され、社内の設計の流れに乗りやすくなり、従来の2Dベースの作業スタイルより成長のスピードが速くなっていると感じます。ソフトの習得についても、社内の8 割がARCHICADユーザーなので、分からないことも各自教え合ってスキルアップしています。モデリングだけであれば3カ月もすれば立派な戦力になります。
 
BIMの操作が得意でないベテランのスタッフには指示、チェック側に回ってもらい、モデリングの得意な若手スタッフとコンビを組んで設計を進めていきます。ARCHICADによって2Dが3Dに置き換わるだけでなく、新人、ベテランによるチームワークが活性化されました。
 



 

社内チームワーク

(2拠点によるチームワーク)
スタッフは現在14人で東京、栃木の2拠点で設計活動を行っています。2拠点間は常時テレビ電話でつないでいてお互いの顔が見え、声が聞こえる状態です。
 
業務範囲も事務所のある関東以外にも中京、東北と拡大していて、去年から海外案件も手がけています。移動が多くなる中でもスタッフと綿密なコミュニケーションをとる必要がありますがここでもBIMが大活躍します。
 
チャットワークやBIM cloudを用いモデルやパースのやりとりをします。形状ベースで会話ができるので離れていてもスタッフとイメージを共有した上で、細かい指示を出すことが可能になります。
 
移動先でもスタッフがモデリングしたデータを使用してクライアントとの打ち合わせをしています。BIMとクラウドはすこぶる相性が良くて、僕が打ち合わせ中に編集したモデルをスタッフに送って調整してもらうこともよくあります。
 

iPad上でBIMxモデルにアクセスし打
ち合わせやチェックを行い、キャプ
チャ画像に書き込み即座に共有が可能




また、新人のスタッフもARCHICADのチームワーク機能で先輩スタッフのモデリングに参加させることによって初期から設計のメインストリームに触れて理解を深めていけるような環境を作っています。
 


サーバー上のモデルを複数の人数で
編集することが可能なので遠隔地の
人間同士でも同時に作業することが
可能


 
 

 


 

社外チームワークからさらなる広がりについて

(他エリアの会社とのコラボレーションネットワーク)
業務量やエリアにさらなる広がりを得るためにBIMのスペシャリストによるユニット『syncs』を結成しました。メンバーは東京、栃木、大阪、広島、福岡、熊本、鹿児島と離れたエリアの設計事務所ですが、BIM cloudを活用し協業、それぞれの近隣エリアで監理をするというスタイルです。これによってメンバーが自社スタッフの人数やエリアによって縛られることなく仕事を受注していける仕組みづくりをしています。協業するための技術の共有やテンプレート作成などを進めています。
 
また、それ以外にもARCHICADの操作ができるリモートワーカーに業務をアウトソーシングしています、育児その他の理由で会社に通えない方や副業の方と協業するにもBIM cloudはとても相性が良く、スタートアップのための教育も検討しています。
 
BIMはクライアントへのサービスや、自分たちの働き方だけでなく、リモートワークやユニットなど新しいスタイルの雇用や協業の形等、さまざまな変化を僕たちに与えてくれます。
 
これからもBIMの進化とともにデザインを楽しんでいきたいと思っています。
 

BIM cloudを活用した建築家集団『syncs』BIMのネットワークにより
エリアを問わず活動している




 

そして今後の展開

約12年間BIMを使ってきて、活用法にはある程度の自信はありましたが、世の中に広がっていくBIMをより効率的に活用していくために、GRAPHISOFT社のBIMマネージャー用のトレーニング「BIMCLASSES」を受講し英国での先進的なBIMを用いたEIR(発注者情報用件)やBEP(BIM実行計画書)その他、属性や分類を利用したさまざまな効率的な方法を学びました。
 
これまでの自分たち独自のやり方でガラパゴス化していくよりは海外などでの仕事の広がりを見据え、現在はその内容を自社に落とし込む作業を進めています。
 



また、建築士会連合会BIMタスクフォースを通じて国土交通省『BIM環境整備部会』等の活動に参加したり、BIMをまだ始めていない方向けの動画「ARCHICAD on Air」への出演など、本業である建築設計以外にもさまざまな活動をしています。
 

 




 
 

株式会社 横松建築設計事務所 専務取締役 横松 邦明

 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集2「建築BIMの”今”と”将来像”」



 
 
 

 

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