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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 建築データ連携で技術継承

 

はじめに

生産性向上を目的としたBIM実装は、国土交通省の建築BIM推進会議での成果創設に見られるように大きな加速を見せている。日本の人口構成や生産人口の減少により、これまでの手法では品質を維持して施工を進めていくことが不可能であるといわれている。われわれ建設業が扱うものは、一品一様同じ条件がない。それを一定の期限と品質を確保して取り組まなくてはならない。BIM環境でいかに業務に価値をつくっていくか、BIMでどのようなメリットをつくり出していくか…が問われている。
 
私は新人の頃、空調設備配管を施工管理する現場で配管の生き字引のような先輩と時間を共有することができた。
 

配管技術 施工に必要な情報


 

見様見真似だが、配管図を描くことを教わり、施工に必要なポイントを検討して、一緒に仕事をする仲間と検討結果を共有することを教わった。図面を描く場面と同時進行で、設計段階で表現されるシステムの「在りよう」を現す設計図作成手法から、実際に配管工事をお願いする技術者が現場という制限のある空間と時間で配管を吊りこむまでに必要な情報「やりよう」の違いを現地現物の配管を目の前に体感し、その情報の質と粒度の違いを体で理解した。
 
配管図面に記載する寸法一つをとってもルートの確定を表現するに留まる記載だけでは、実際の配管加工は実現できない。継手・配管のジョイントを例にする。
 

接続部 部材の位置関係が決められている


 
凹凸の重ね合わせが配管加工に必要な長さを決定する。私の先輩が描く確かな施工情報が詰まった図面は、表記こそ控えめながら配管加工に必要な情報が内包されていた。その証拠に、実際に加工する職人さん達が図面を渡された後「段取りが良くて仕事がはかどる図面だ」と言っていたことを思い起こす。あの図面が大きな信頼と安心で効率の良い作業化を実現していたのである。
 
建築データ連携を語る上で、規約や業務フローを整備する際に、施工計画や品質管理に携わる職能が発信する施工情報に、確実な情報を込めることができる社会を確立することが技術継承も含めた次世代へのBIM連携ではないかと思っている。
 
世界中で建築配管技術者が扱っているRevit MEPのジェネリックファミリで構成されたモデルをAUTODESK FABRICATION ESTMEPで作った部材データと連携することで、より加工手間がかからない確実な施工情報を提供できると思い、手法と効果を以下に記載する。
 
 

世界中の配管施工に必要なものは共有できる

CADからBIMへ環境が変わった際、MEPの技術者がどの部分を活用すれば働く仲間の効率化を実現できるか、何に着目するか、最先端のRevit MEPを実際に活用しながらワークフローを示す。
 

設備工事 配管工事データフロー


 
配管は流体をA点からB点へ搬送することを目的としたシステムである。設計者は、何を目的にした流体を運ぶか、空調システムか加湿のシステムか、またどのような種類の流体を使うか、水、冷媒ガス、蒸気なのか、搬送にかかる環境に耐えうるか、内部圧力に耐えうる材料か、耐候性は確保できるか…という設計の情報である「在りよう」を設定する。
 
施工の技術者は施工の実現性という「やりよう」を表現するために、技術検討を施し、施工情報にデータの質を高める。
 
経路の特定や固定箇所の特定支持の方法は同じものは存在しない。建築情報の中で整合性を確保しながら、建築空間で施工が実現可能なレベルまで情報を高めるための作業に労力の多くを費やす。現在のできうる役割はここまでであるといわれたBIM情報を、ちょっとした操作を加えることで効率化が得られる情報となると考え、配管加工に欠かせない情報として切断長さを算出できないかと考えた。
 
かつてベテラン技術者が脳内で構築した接続情報を用いて、当時図面情報に込められた「思いやりのひと手間情報」を「役に立つ」「欲しくなる」「誰もが扱える」根拠としてBIMによる配管加工情報に込めることができないか。業務プロセスで実現するために「どうやって」「誰が何を準備して」を具体的にした事例を紹介する
 
 

業務フロー役割、データフロー

配管の管路確定までのフロー整合性確保までは現行と同様である。BIMの見える化成果で調整意思決定の効率化が図られていることは周知のことである。
 
現在、現場でできることは、人依存。Revitを使う環境において、現時点で大きなメリットが得られるものは、建築・構造・設備が同じ環境下でデータコラボレーションを実現できることである。
 
コンカレントな施工情報付与作業ができる、建築プランの修正に伴う配管ルートやサイズ選定の再検討を、同じプラットフォーム共有環境下で操作できることは労力の削減が図れるからだ。図面を完成させる作業の7割は修正作業であり、実際のものを決定する時間にはごくわずかな時間しか充てられていない。修正に必要な判断基準材料として建築・構造・設備のRevitを同じ環境に据え置くことができるメリットは大きい。同じ環境に置くことができるが故に、新しいアイデアが現実性をもって意見交換され、モデルに価値が生まれていくのである。
 
われわれは、設計の意図を踏襲した施工情報となったRevitデータをすでに獲得している。
 
がしかし、この共有できるという環境、すなわち人が理解し脳内で再生し自分の理解で他者に伝えるコミュニケーションに頼っていることが多く、現時点でできていることは各自の創意工夫、積極的な承認依頼を頻繁に行うことによる成果、勤勉で能動的な行動の成果であろう。この成果を確実にするために、今一つデータにひと工夫を図ったのがITMの活用による配管加工情報の構築である。
 
具体的な作業を紹介する。
①FABRICATIONESTMEPにより配管部材ごとのITMと呼ばれるデータベースを作成する(下図)
 

配管加工に必要なFABRICATION ITMを
作るためCADMEP ESTMEPを起動する

  • デファクトで一般的なITMが収納されている

  • 溶接 継手部分 仕様・管材・サイズによる


②ITMをRevitプロジェクトへ導入する

REVIT プロジェクトを立ち上げ

プロジェクト内 配管加工に必要な情報を付与
対象の部位を特定、レベル特定する

FABRICATION ITMを配置する



③配管加工を必要な部位を特定し、配管の仕様にサイズ・継手との相関関係をカタログ化した情報を持ったITMという部材データベースを付与する
 

VICTAULIC REVITへアドオン 図面化

カテゴリー表記のために集計表の準備

シートに自動レイアウトされる集計表単品モデル


 

いったん作ったデータを共有することでブラッシュアップを図り、仲間を増やしていける。部材を共有する企業がITMの提供を開始している。
 

WEB配信される製造者ITM


 
データベースが確定すれば、何につなげるか誰に見てもらえるか、どう評価してもらえるかの作業に移る。パイプの加工はまず切断から開始される。
 

ITMデータが付与された配管モデル
加工情報


 
ITMで構築された部材の組み合わせから、外形寸法で表記された「管⇔芯」の記載寸法のみならず、BIMモデルの情報が継手の位置関係を仕様通り、施工要領通りに再現し、そこから切り出されるカッティングレングス切断長さが確かな施工情報として表記され、配管工事の仲間である加工する技術者へ届けられる。
 

プロジェクトにて仕様の確認・修正、置き換え可


 
カッティングレングスが確かであれば、開先加工、螺子切加工、フランジ接合におけるフランジ面からのセットバック寸法値を加味した数字が届けられる。
 

部位・部材 個々の詳細仕様が表記される


 
従前は、わずかではあるが異なる接続点情報を人の勘や記憶に頼ることで、配管加工の最初の作業である寸法マーキングいわゆるケガキにおいて、不確かな情報で加工を始めてしまうことがあったであろう。
 

パイプカッター 刃の当たりの位置を決める


 
今回紹介するITM情報を連携させることで、配管切断というたった一つの工程ではあるが、BIMとリアルを確実に結びつけ、FABRICATIONに必ず伴う切断作業を効率化できるのである。
 
プラント配管ではスプール図面という表記を用いて加工に必要な部材仕様・接続情報・切断・溶接ギャップを一枚の図面に表現していた。経験を積んだ技術者の成果である。
 
しかしながら図面という絵を、加工に必要な姿に高める過程に、技術力といわれる「情報を組み合わせるテクニック」を確かな成果に発展させる技術者が少なくなってきている。たかが配管カッティングレングスではあるが、特記仕様に沿った、部材と部材の組み合わせから生じる情報をRevitから簡単に得られるメリットは大きいのではないか。実際の現場450φの配管ジェネリックモデルで作業して空間調整まで終了した段階でFABRICATIONにした際見出された改善が必要な部位を以下に示す。
 

ジェネリックモデル FABRICATIONに
詳細な形状にすることで事前に課題解決


 
金額は明示しないが、この不整合を現場で発見した場合いかほどの労力がかかることだろうか。運搬・仮設足場・試験等一カ所の溶接手直しという範囲では解決ができないかもしれない。
 
 

ムーブメント

●ITMを増やしていく仲間
建設プロジェクトにおいて同様なものは2つと存在しない。しかしながら配管の組み合わせには必ず同形状の接続点が存在する。言い換えれば、いったん整備したデータベースはいくらでも使い回しが適用できる。
 
規格・基準が異なる配管が発生すれば、ひと手間データを整備する時間を設ければよい。このITM構築作業ができるようにオースティンより専門講師を招いてノウハウの共有を行った。
 

ITM作成講習会 修正くらいはインハウスで


 
接続情報を伴う部材情報はバルブ等の製造者でもビジネスチャンスになるとの動きがある。一部の製造者はカタログ値を無償で配信している。
 

WEB配信されるカタログデータ 多くの仕様


 
ユーザーグループでは、AUTODESK社との協業でJISのITMを整備して、順次Revitに同梱する計画がある。
 
 
●ダクト製作
ダクト工事に関わる板取り情報にも同様な動きが見られる。外形のみのダクトモデルをCADMEPのFABRICATION ITMをつなげることで、ダクト切断プラズマカッターとダイレクト連携を図り、現状は一部材ずつ手入力で行っているダクト切断情報の入力手間の削減を計画している。シェアの大きい製造機メーカーである株式会社フカガワとのコラボレーションを実現したいと考えている。
 

ダクトの展開図を作成するための入力要素


 
 
●配管自動切断機・配管フランジ溶接機
前述のカッティングレングスをマーキングする作業は、人間がスケールを携え、マーキングして切断箇所に配管をセットしている。オーストラリアの事例では配管カットマシンにデータが連携しており、人の入力を介さないで配管の加工を行うことを実現している。製造工作機のソフト面を更新することで、自動切断・開先加工・フランジ位置決めもできるのではないかと期待している。
 
 

働く仲間に情報連携

オーストラリアの配管溶接工と呼ばれる職業の平均年収は2千万円程と聞いたことがある。オーストラリアの設備工事における必要な情報を発展させる取り組み、言い換えるならば「BIM活用」は先進的で学ぶべきことが多いとMEP AUSという設備技術者の会議に参加した友人から聞いた。
 
FABRICATIONという分野で設備工事に必要なデータをうまく連携させているカッティングレングスを、計画業務を実施する職能がしっかり提供する。その情報を受け継いだ配管加工を行う職能が確かな情報として配管を切断する作業に安心して流用する。配管図という絵を見て、再度自分で電卓を叩くことは少ない。不確実な作業で非効率時間を少なくした結果、その職能の技術力・技能が十分に発揮できる時間に多くを費やせる。探したり、待ったり、勝手な判断をしたりする非効率的な時間を少なくする。故にオーストラリアの設備工事は労働生産性が高く、魅力ある生活が送れているのではないか。
 
統計的には日本の技術者の能力は高いといわれている。がしかし、一緒に働く仲間として現場で時間を共有する配管加工専門業者へ、いかようにも解釈できる不確かな情報を渡してしまうことで、建築工事プロセスに部分的なほころびが生じてしまい、予想外の取り繕いに時間を使うことがあるのではないか。働く仲間に宛てた情報連携に、ほんの少しのITM情報を付与することで、仲間が増える魅力ある環境の創設ができると思っている。28年前、私の師匠が夜10時に黙々と配管加工に必要な準備を自ら示してくれた配管の切断寸法の算出方法、その時は電卓を叩いて手作業で行っていたが、現在RevitのITMというデータベースをそろえることで、技術伝承とまでいかずとも役に立つ情報を次世代に残していくことができればうれしく思うし、師匠も喜んでくれると信じている。
 
建築BIM推進会議においてデータ連携のガイドラインを整備している。誰がどのタイミングで、現在用いることができるBIM環境で、いかようなデータを整備して、次のプロセスに関わる職能に渡していくか…を示してくれる。
 
BIM環境が整備されることで、一人当たりGDPが少なくとも10位以内に返り咲けることを信じている。
 
 
 

新菱冷熱工業株式会社 技術統括本部 BIMセンター 専任課長 谷内 秀敬

 
 
【出典】


建設ITガイド 2020
特集2「建築BIMの”今”と”将来像”」



 
 
 

 

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