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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 中規模木造庁舎の試設計(コスト検討のポイント)について

 

はじめに

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行,同法に基づく基本方針1)の策定から9年が経過し,国が積極的に木造化を促進するものとされた低層の公共建築物の木造化率は着実に向上してきました。
 
一方,近年は民間の建築物を中心に中大規模および中高層の建築物の木造化事例が増加しつつあります。また,その中には,CLTパネルを部分的に用いた建築物も見られます。
 
このような状況の中,中規模木造庁舎(4階建て,延べ面積約3,000㎡,耐火建築物)を軸組構法およびCLTパネル工法として設計する際の課題,配慮すべき事項等を把握するため,有識者による検討会2)のご意見を踏まえつつ,試設計を行いました。
 
本掲載では,試設計例の平面計画,構造設計,コスト検討(留意事項および工事費概算)からコスト検討のポイントについて紹介いたします。
 
 

建築計画について

平面計画は,中央の事務室部分にはフレキシブルな事務室空間を確保するために耐震壁等の水平抵抗要素を配置せず,両端のコア部分に小部屋(階段,電気室,エレベーター,トイレ,倉庫等)をまとめて配置し,コア部分に耐震壁をバランス良く配置することにより,建築物全体で地震等の外力(水平力)に抵抗することができるものとしました(図−1)。
 
使用する材料は,コスト縮減を目的に,製材や合板の選定に当たっては,住宅向けの材料(以下「一般流通材」という),はり等の大断面集成材の選定に当たっては規格材料を可能な限り使用しました。また,国土交通大臣認定工法等の特別な工法は用いないこと等に配慮しました。
 

【図−1 平面計画の考え方】


1) 公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針(平成22年10月4日農林水産省,国土交通省告示第3号 変更 平成29年6月16日農林水産省,国土交通省第1号)
2)官庁施設における多様な木造建築物の整備手法等に関する検討会(座長:東京都市大学 大橋 好光教授)を設置


 

本試設計で検討を行った2プランについて

(1)軸組構法の建築計画(Aプラン)

建築計画(Aプラン)は,できる限り一般流通材を活用できる経済スパンであることを念頭に検討し,構造用合板耐力壁(両端コア部分)+ラーメン構造(事務室部分X方向,Y方向ともスパン6.0m)としました(図−2)。
 

平面図

南立面図

【図−2 Aプラン建築計画図】

(2)CLTパネル工法の建築計画(Bプラン)

建築計画(Bプラン)は,CLTパネルを両端コア部の耐力壁と事務室部分の壁柱に使用したCLTパネル工法(X方向は両端のコア部分を4.0m+4.0m,中央の事務室部分はスパン3.6m×7とし,Y方向は基本的にスパン8.0m+3.0m+7.0m)としました(図−3
 

平面図

南立面図

【図−3 Bプラン建築計画図】


 

コスト検討について

(1)コスト検討の概要

本試設計に際しては,中規模木造庁舎の現時点における傾向をつかむことを目的に概算金額の算出(以下単に「概算」という)を実施しました。また,概算の対象となる範囲は,外構等を含まない建築工事となる躯体および内外装一式の直接工事費としました(電気設備工事,機械設備工事については対象外(以下「本体建築工事部分」という))。
 

(2)概算の条件

(a)具体的な建設敷地を想定しないため,仮囲い,揚重機械等にかかる費用については考慮しておらず,直接仮設,地業工事等については,最小限の内容を積み上げています。なお,本試設計は直接基礎を想定しているため,杭は設けていません。
 
(b)木造躯体工事費の専門工事業者の見積(材工共)は,専門工事業者への見積収集に際して具体的な見積条件が定まらず,詳細なヒアリングや内容の検証等が行えなかったため,不確定要素を含んだものとなっています。
 
(c)採用している単価は,平成30年度の刊行物価格と専門工事業者の見積価格を基本としており,Bプランについては,平成29年度の刊行物価格と見積価格を補正した単価も使用しています。
 
(d)工期については,表−1の工程表のとおり想定しました。
 

【表−1 想定工程表】



(3)概算を行う上での留意点

耐震壁(Aプランのみ)および床(A・Bプラン共通)への耐火被覆用石こうボードの取り付け施工に際しては,構造用合板周囲の釘施工範囲の欠損を避ける必要があることから,木ビス,タッカーの施工箇所は,慎重に計画・管理する必要があります。
 
また,このような施工条件を踏まえれば,重量のある耐火被覆用石こうボードの施工費は,専門工事業者に確認を行う等,慎重にコスト検討を行わなければならないと考えられます。
 
本試設計のように,広く普及しているとまでは言えない施工内容の工事費を算出する際には,現場の施工条件を十分に想定し,条件明示した上で見積を収集しなければ,工事費予算に過不足を生じさせる可能性があります。特に,Bプランのように異なる構造・構法を併用し,複数の専門工事業者が施工を分担することが想定される場合には,工事全体の流れとそれぞれの作業範囲等を整理した上で見積を収集する必要があると考えられます。
 

(4)概算結果

本体建築工事部分の直接工事費の金額は,Aプランは26万円/㎡程度,Bプランは27万円/㎡程度となりました(表−2参照)。
 
上記の工事費については,今後更に木材利用が促進され,将来的に木造建築物が広く普及されることで,コストダウンが可能になると考えられます。
 
【表−2 概算額(本体建築工事部分の直接工事費の金額)】

注1) 当該概算額は,本試設計モデルの検討図面をもとに,専門工事業者の見積価格および刊行物価格により,工事費の概略を把握するために設定したものであり,新営予算単価(官庁営繕関係「統一基準」)と同様に扱うものではない。実際の概算額の算定に当たっては,設計内容,工事施工条件を明確にして,実施する必要があることに留意する。
注2) 本概算額は,総合工事業者が工事を請け負った場合の直接工事費(工事目的物を造るために直接必要とする費用)を想定しており,元請総合工事業者が必要とする費用(共通仮設費,現場管理費および一般管理費等)は含んでいない。


 

おわりに

このコスト検討においては,コスト縮減の検討まではできなかったとはいえ,同規模の鉄筋コンクリート造庁舎等と比較して,相当程度,工事費が高い結果となりました。
 
しかし,本試設計では,耐火建築物とする条件により剛性の割り増しを含め,床構面の設計に関する負担が大きくなっています。この部分をRC化する等の設計方針の見直しは,施工合理化とコスト縮減に繋がる可能性があります。
 
そのような適材適所での材料・構法の柔軟な選択は,近年急速に事例が増えつつある大規模木造建築物に見られますが,庁舎のような分野における木造化の促進にも資すると思われるので今後調査を進めていきたいと考えています。
 
本掲載で紹介したポイントは建築計画,コスト検討のみですが,構造計画・設計も含めた本試設計のポイントを国土交通省のホームページで紹介していますので,御覧いただければ幸いです(http://www.mlit.go.jp/gobuild/gutai_torikumi.html)。
 
また,本試設計例が官庁営繕のみならず,各省各庁,地方公共団体,民間企業等においても広く活用され,木材利用の更なる促進の一助になることを期待します。

 
 
 

国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課 木材利用推進室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2020春号



 
 
 

 

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