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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 道路メンテナンスを巡る最近の動向 〜道路メンテナンス年報(一巡目)の公表〜

 

はじめに

道路の老朽化対策については,2013年5月の道路法改正を受け,2014年7月より道路管理者は全ての橋梁,トンネル,道路附属物等の道路構造物について,健全性の診断をするために,5年に1回の頻度で近接目視を基本とする点検(以下,「定期点検」という)を実施することが省令・告示により規定されている。また,2014年4月の社会資本整備審議会道路分科会でとりまとめられた,「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」を踏まえて,メンテナンスサイクル(点検・診断・措置・記録)を確定するとともに,メンテナンスサイクルを回す仕組みの構築に取り組んでいる。
 
国土交通省では,国民・道路利用者の皆様に道路インフラの現状および老朽化対策についてご理解いただくため,全道路管理者における定期点検の実施状況や結果等を「道路メンテナンス年報」としてとりまとめ,公表している。この度,2018年度末で道路構造物の定期点検が一巡したため,2014年度以降5年間の定期点検の結果をとりまとめた「道路メンテナンス年報(一巡目)」を2019年8月に公表したところであり,本稿ではその概要等について説明する。
 
 
 

1. 道路インフラの現状について

全国の道路インフラのストックは,2019年3月末時点で橋梁が約72万橋,トンネルが約1.1万箇所(図−1)となっており,この他シェッド・大型カルバート・横断歩道橋・門型標識等(以下,「道路附属物等」という)が約4万施設存在している。橋梁の場合,建設年度が判明している約49万橋のうち高度経済成長期に建設され,建設後50年を経過するものは,2018年度末時点で約27%であるが,10年後には約52%に増加する見込みであり,将来に向けて全国の橋梁の老朽化がより深刻化することが想定されている(図−2)。
 

図−1 道路管理者別の施設数


 

図−2 建設年度別の橋梁数




 

2. 「道路メンテナンス年報(一巡目)」の概要

「道路メンテナンス年報」は,2014年度から毎年全道路管理者が実施した定期点検の結果を集約し,とりまとめ,点検実施の状況,各道路施設における判定区分の割合,修繕の措置状況等について整理し公表しているもので,今回公表した「道路メンテナンス年報(一巡目)」は2014年度以降5年間のものとなる。主なポイントとしては,(1)橋梁,トンネル等の点検実施状況および施設の判定区分割合,(2)次回点検までに措置を講ずべき施設における措置の状況,(3)橋梁の長寿命化修繕計画(個別施設計画)の策定状況等であり,各ポイントの内容は次のとおりである。

(1)橋梁,トンネル等の点検実施状況および施設の判定区分割合

2014〜2018年度までの定期点検の累積点検実施率は,全道路管理者合計で橋梁では99.9%,トンネルは99.5%,道路附属物等は99.7%となっており,全ての道路構造物で点検が概ね完了した(図−3)。
 

図−3 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検実施状況




定期点検を行った際は,構造物の健全性の診断結果を4段階(「Ⅰ:健全」,「Ⅱ:予防保全段階」,「Ⅲ:早期措置段階」,「Ⅳ:緊急措置段階」)に区分することとなっている(図−4)。このうち,早期または緊急に措置が必要となる判定区分Ⅲ・Ⅳの割合は,橋梁では10%,トンネルでは42%,道路附属物等では15%となっており,施設数の多い橋梁では,判定区分Ⅲが10%(約68,400橋),判定区分Ⅳは0.1%(約700橋)存在している。
 

図−4 橋梁・トンネル・道路附属物等の点検結果




判定区分Ⅲ・Ⅳとなった橋梁のうち,国土交通省および高速道路会社管理の橋梁はいずれも約3,000橋前後に対して,地方公共団体管理の橋梁は約63,000橋存在しており,判定区分Ⅲ・Ⅳとなった全橋梁のうち約9割以上を地方公共団体が管理している状況にある(図−5)。
 

図−5 判定区分Ⅲ・Ⅳの橋梁における修繕着手・完了率



(2)次回点検までに措置を講ずべき施設における措置の状況

(1)で述べた定期点検において早期または緊急に措置が必要と診断された判定区分Ⅲ・Ⅳの道路構造物に対する5年間の修繕着手状況については,橋梁を例にとると,国土交通省管理で53%,高速道路会社管理で32%,都道府県・政令市等管理で24%,市区町村管理で18%であり,地方公共団体を合計すると20%にとどまっている状況である。また,修繕が完了している割合は,国土交通省管理で18%,高速道路会社管理で17%,地方公共団体合計では12%となっている(図−5)。
 
判定区分Ⅲ・Ⅳの施設について,次回点検までの5年以内での修繕の実施を考えた場合に想定される修繕着手率と比べて,国土交通省と高速道路会社管理の施設は概ね順調に着手しているが,地方公共団体管理の施設の修繕着手は遅れている状況である。
 
また,予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態の判定区分Ⅱと診断されたものに対する修繕着手状況は,国土交通省管理で26%,高速道路会社管理で2%,都道府県・政令市等管理で2%,市区町村管理で2% であり,判定区分Ⅲ・Ⅳと診断されたものに比べて修繕着手率は全体的に低い傾向にある。比較的損傷が軽微なうちに修繕を行う予防保全型のメンテナンスへの転換は,いまだ進んでいない状況にあると言える。
 
 

(3)橋梁の長寿命化修繕計画(個別施設計画)の策定状況

インフラのアセットマネジメントに必要な橋梁の長寿命化修繕計画(個別施設計画)を策定した地方公共団体は1,444自治体(81%)あり,1,211自治体(68%)では策定した計画を公表している。公表している計画のうち,修繕の時期や内容を橋梁ごとに示した計画となっている地方公共団体は1,030自治体(85%)存在し,そのうち修繕費用も含む計画となっているのは528自治体(44%)に留まっている。また,公表している計画のうち,861 自治体(71%)は公表している計画について,点検結果を反映するなど計画の更新,見直しが行われている状況である(図−6)。
 
今後,老朽化対策を計画的かつ確実に推進するためには,長寿命化修繕計画の策定をはじめ,修繕の時期や内容の記載,点検結果を踏まえた計画の更新などをさらに進める必要があると考えられる。
 

図−6 橋梁(2m以上)の長寿命化修繕計画の策定,記載内容,更新の状況(地方公共団体)




 

3. 二巡目の定期点検にあたって

2014年7月より開始した定期点検が2018年度で一巡することに先立ち,社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会での議論を踏まえて,2019年2月に定期点検要領を改定したところである。
 
今般の定期点検の見直しのポイントは,「①損傷や構造特性に応じた点検の着目箇所の絞り込み」,「②新技術の活用による効率的な点検」の2点が挙げられる。①については,溝橋などの小規模な橋梁やボックスカルバートで点検の着目箇所の絞り込みを行うほか,トンネルでは2巡目以降の点検において打音検査を実施する範囲を特定するなど,合理的な点検を実施することとしている。
 
一方,②については,近接目視による点検を基本としつつ,点検を実施する技術者が近接目視による場合と新技術を活用する場合とで,同等の健全性の診断を行うことができると判断した場合に,新技術の活用が可能である旨を明記している。また,道路管理者が定期点検の中で点検支援技術を円滑に活用できるように「新技術利用のガイドライン(案)」,「点検支援技術性能カタログ(案)」を作成・公表しており,新技術の活用による合理的・効率的な点検が図れるものと期待している。
 
このほか,点検支援技術の異なる効率化を図るため,AIを活用した点検・診断技術の開発や,計測・モニタリング技術の検証を進め,点検支援技術性能カタログ(案)の更新や現場実装などを通じて近接目視によらない点検手法のベストミックスにも取り組む予定である(図−7)。また,一巡目点検結果を踏まえた計画的な修繕の本格実施に向けて,補修工事に活用できる新材料や新工法の技術開発を推進していく必要があると考えている。
 

図−7 近接目視によらない点検方法の確立・導入




 

4. 地方公共団体への支援の取り組み

現在,道路施設の老朽化が進行する一方で,施設の大多数を管理する地方公共団体においては,老朽化対策に必要な安定的な予算の確保や,技術系職員が少ないこと等が課題となっている。国土交通省では,メンテナンスサイクルの着実な実施に向け,地方公共団体に対して財政的・技術的支援を実施している。

(1)財政的支援

財政面では長寿命化を目指し適正な修繕を実施する地方公共団体に対して,防災・安全交付金や大規模修繕・更新補助制度等による支援を行っている。また,2019年度より,大規模修繕・更新補助制度の事業要件を緩和し,支援を加速している。

(2)技術的支援

技術面では,「道路メンテナンス会議」等を活用し,維持管理に関するさまざまな情報共有を図るとともに,市町村の点検・診断業務を都道府県が一括で委託する「地域一括発注」の実施や,特に社会的な影響が大きく構造が複雑な施設等については,国の技術者による「直轄診断・修繕代行」による支援を実施している。直轄診断については,2014〜2018年度までに12箇所で実施しており(写真−1),修繕代行については直轄診断の結果を踏まえ11箇所で着手(うち4箇所で完了)し,残り1箇所については大規模修繕・更新補助制度により更新が完了している。
 
また,地方公共団体の職員を対象にした研修を実施しており,2014〜2018年度までに約4,400名の職員が受講している(写真−2
 

写真−1 橋梁の直轄診断の様子

写真−2 研修の様子


おわりに

今回とりまとめた一巡目の点検結果や措置の状況から,特に地方公共団体の橋梁における修繕着手率が20%にとどまっている状況が分かった。今後計画的に老朽化対策を進めていく上では,施設の対策内容や,時期等を盛り込んだ長寿命化修繕計画の策定が必要だと考えている。加えて,定期点検の計画的な実施や予防保全に向けた適切な修繕の実施にあたっては,地方公共団体に対する支援が不可欠である。
 
今回の一巡目の点検結果や措置状況を踏まえ,特に地方公共団体に対しての技術面や財政面等の支援を積極的に行い,道路の老朽化対策が計画的かつ着実に進むよう,引き続き努めてまいりたい。
 
 

【参考文献】
1)道路局HP(道路の老朽化対策)
2)道路メンテナンス年報HP 道路メンテナンス年報 国土交通省道路局 2019年8月
https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/yobohozen_maint_h30.html

 
 
 

国土交通省 道路局 国道・技術課 維持修繕係長  松本 勝紀(まつもと かつのり)
橋梁係長  佐々部 智文(ささべ ともふみ)

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年4月号


 

 

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