• お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

建築資材、土木資材をはじめとした建設資材、機材、設備、工法等の
データを収録し、スピーディな検索を実現した建設総合ポータルサイト

建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 阪神高速6号大和川線の全線開通

 

1 はじめに

令和2年3月29日(日),阪神高速6号大和川線のうち大阪府堺市堺区鉄砲町から松原市三宅西付近までの7.7kmが開通した。これにより,大阪都心部における新たな環状道路「大阪都市再生環状道路」の一翼を担う大和川線の全線が開通したこととなる。
 
本稿では,大和川線の概要や整備効果,技術的特徴などについて紹介する。
 
 
 

2 大和川線の概要

大阪の高速道路網は,阪神高速1号環状線を中心として形成されており,都心部に交通が集中し慢性的な渋滞が発生している。また,堺・松原両市域は東西方向の道路が十分に整備されていないため既存道路の渋滞が著しく,沿道環境への影響が懸念されていた。そのような背景のもと,交通の流れを抜本的に変革し,都心部の慢性的な渋滞の緩和と新たな都市拠点の形成を促すために,平成13年に「大阪都市再生環状道路」が都市再生プロジェクトとして位置付けされた(図−1)。大和川線は,この大阪都市再生環状道路の一部を形成し,4号湾岸線と14号松原線を接続する延長約9.7kmの自動車専用道路である。平成25年3月に松原市域の一部区間(0.6km),平成29年1月に堺市域の三宝JCT〜鉄砲(1.4km)が開通。今般,全線開通の運びとなった。大和川線の構造上の特性としては,延長9.7kmのうち6.8km(約70%)がトンネル構造であり,うち3.9kmがシールド工法,2.9kmが開削工法による施工である(図−2)。
 

【図−1 6号大和川線の位置図】


 

【図−2 大和川線の概要図】




 

3 整備効果

(1)ネットワークの強化

大和川線の開通により環状線をう回するルートが形成され,渋滞区間を避けたルート選択が可能となり都心部の高速道路の渋滞緩和が期待される。また,事故および災害時等のう回機能も確保された(図−3
 

【図−3 都心部をう回するルートの形成】



(2)アクセスの向上

大和川線の開通で高速道路ネットワーク機能が強化されたことにより,拠点間のアクセス性と利便性が向上し時間短縮につながる。例えば,堺浜から松原ジャンクション間の一般道経由での所要時間45分に対して,大和川線利用により16分と最大64%の短縮が可能となる(図−4)。
 

【図−4 アクセスの向上】



(3)一般道路の渋滞・混雑の緩和

大阪府の堺市と松原市を結ぶ東西の道路交通は大堀堺線などの幹線道路に集中しており,慢性的な渋滞が発生している。大和川線の開通により,幹線道路の渋滞緩和や事故の減少につながり,アクセス性の向上に寄与することが期待される(図−5)。
 

【図−5 交通の転換】



(4)物流効率化の支援

大和川線の開通により,奈良県内の製造業が集中する西名阪沿線地域と阪神港との間のアクセスが向上し,所要時間が短縮するなど物流効率化への支援が期待される(図−6)。
 

【図−6 物流効率化の支援】



(5)沿道環境の改善

大和川線の開通により周辺の一般道路の交通混雑が緩和され,車両の流れがスムーズになることで速度変化の少ない走行が可能となる。この効果により,二酸化炭素等の排出量が減少し,地球環境の保全・道路環境の改善に寄与することが期待される(図−7)。
 

【図−7 沿道環境の改善】




 

4 特徴的な技術的取り組み

(1)シールドトンネル工事

大和川線シールドトンネルは,路線の中央部に位置し,大和川に沿って延びているため,概ね全線を縦横断曲線掘進で施工した。本トンネルは,大断面(セグメント外径D=12.23m)で先行トンネル掘進後,マシンを180度転回させ,往復4kmの距離を超近接(最小離隔1m未満=0.08D)で掘進した(図−8)。
 
本トンネルの施工では,長距離・超近接・曲線掘進に加えて,上町活断層への対応など,さまざまな施工条件を克服するため新技術の開発・適用などに取り組んだ。
 

【図−8 超近接施工イメージ図(併設離隔距離1m未満)】




①超近接施工
先行トンネルへの併設影響は,シールド掘進過程の地山応力を考慮した2次元FEM逐次解析による新たな手法により評価した。
 
また,施工時はトンネル断面を360度測定できる回転式レーザー距離計を開発・適用し先行トンネル変状の自動測定を行い,シールドマシン接近から通過,安定までの変状をリアルタイムに監視し,高品質・高精度なトンネル構築を実現した(写真−1)。
 

【写真−1 回転式レーザー距離計による測定イメージ】



②耐震性の向上
上町断層を震源とするレベル2地震動を超える最大級シナリオ地震動に対する耐震性能を確保するため,トンネル軸方向のセグメント構造変化点に変位吸収が可能な損傷制御型鋼製セグメントを開発・適用した。通常使用される可撓セグメントと比較し,使用性・耐久性・維持管理性・経済性(従来の1/10)に優れたセグメントとなった(図−9)。
 

【図−9 損傷制御型鋼製セグメント】




③環境負荷の低減
シールド掘削による発生土の一部は,路面下の不要空間の埋め戻し材(流動化処理土)として再利用した。流動化処理土は工事ヤードで製造し,圧送ポンプにてシールドトンネル坑内へ圧送して埋め戻す工法を採用し,高品質な流動化処理土の製造,長距離圧送(最大3.4km)を実現した。
 
残る発生土についても,道路事業と土地造成事業(貯木場の埋め立て)の個別事業に個別指定制度を活用し,資源の有効利用,建設汚泥の適正処理,最終処分場の延命化に寄与および各事業のコスト縮減を図る環境負荷の低減を実現した(写真−2)。
 

【写真−2 再資源化(中間処理)の状況】



(2)住宅密集地における工事

常磐出入口付近は住宅密集区間になるため,開削トンネル本線から分岐する出口部の施工は,周辺生活環境に配慮して,非開削工法であるシールド工法(大断面矩形シールドで出口単独部を施工)および地中切り開き工法(本線・出口一体区間の躯体を地中で増設)による2段階施工を採用した(図−10)。
 

【図−10 地中切り開きおよびシールド区間平面図】



①矩形シールド
本線から分岐する出口部の施工は,沿道生活道路の長期間通行止めを回避するため,非開削工法(シールド工法)とし,用地条件等の制約から矩形シールド(六面鋼殻合成セグメント)を採用した。大断面矩形シールドトンネルの掘進には,アポロカッター工法(泥土圧式シールド)を採用しており,矩形シールド単体で道路トンネルを掘進するのは,国内初の取り組みであった(写真−3
 

【写真−3 矩形シールドマシン】



②地中切り開き工
本線分岐部(本線・出口一体区間)は,地中切り開き工法により躯体拡幅を行った。
 
施工は,図−11に示すように1次土留めの外側に薬液注入工,高圧噴射撹拌工,凍結工を用いて導坑を構築し,次に,導坑より2次土留めを打設後,地中拡幅区間の1次土留めを大断面に切り開き,分岐部の掘削,躯体増設を行った。
 

【図−11 地中切り開き区間断面図】



(3)トンネル防災

大和川線におけるトンネル防災の基本計画は,学識経験者・行政・事業者による「大和川線トンネル防災安全委員会」を設立し,火災等の事故発生シナリオを踏まえた交通制御・情報提供,換気,非常用施設等の検討を通じて,審議・決定した。
 
大和川線では,基本計画に基づき,3本のトンネルの防災等級をAA等級,トンネル間の掘割区間もAA等級相当として,避難施設の配置・運用等を定め,シールドトンネル区間における西日本初のすべり台を経由した避難方式の採用,交通状況に応じた排煙計画の策定,炎の鮮明化やハレーションの防止に関する新技術を導入した防災カメラの採用等を行った。
 
また,各種防災施設の整備に加えて,交通安全対策(予防対策)を実施し,一連の防災対策をより確実・充実したものとするべく,管理体制を強化するとともに,訓練・広報等にも注力している(図−12)。
 

【図−12 シールドトンネル断面図】



(4)交通安全対策

大和川線は,地下構造や掘割構造が連続する都市トンネル路線で縦横断曲線の変化に富み,トンネル内で出入口分合流を伴う幾何構造を有するため,交通安全対策についても入念に検討し各種対策を実施した。
 
①速度超過抑制・低下抑制
速度超過を抑制する区間(下り勾配3%区間および曲率半径R500m以下)では,速度抑制導流標示による対策(図−13)を,速度低下を抑制する区間(縦断勾配の変化が5%を超えるサグ部)ではドライブシミュレータによる検証を行い壁面デザインによる対策(図−14)を実施した。
 

【図−13 速度抑制導流標示】

【図−14 速度低下抑制壁面デザイン】



②合流部支援
トンネル内における本線と入口の合流部には,本線走行車が入口からの合流車を早期に認知し,余裕を持って対応・回避することを可能とするため,入口側の車両の存在を本線側の車両に知らせる合流支援システムを設置した(図−15
 

【図−15 合流部支援システム】




 

5 おわりに

阪神高速6号大和川線は,平成19年に着工し,平成25年,平成29年の2度の開通を経て,令和2年3月29日に全線開通に至った(図−16)が,当事業の実施に当たっては,沿線地域にお住まいの皆さま,行政等関係機関の皆さまのご理解・ご協力をいただき開通することができた。この誌面をお借りして感謝を申し上げます。
 
阪神高速は,今後も,より安全・安心・快適に道路サービスをご利用いただけるよう努めていきたい。
 

【図−16 大和川線開通のお知らせ】




 
 
 

阪神高速道路株式会社 建設事業本部

 
 
 
【出典】


積算資料2020年5月号



 
 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品