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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 成田国際空港における建物の浸水対策について

 

はじめに

2018年9月に発生した台風21号による高潮の影響で関西国際空港の滑走路や旅客ターミナルが広範囲にわたり冠水した事案を受け,空港における浸水対策の必要性が叫ばれている。
 
成田国際空港は内陸空港であり,地形上冠水の危険性は低い状況であるものの,昨今の異常気象の頻発を受け,未曽有の大雨への対策を講じることとなった。
 
本稿では,2019年度に実施した各ターミナルビルへの止水板の設置および地下階設備室への防水シート設置の取組みについて紹介する。
 
 
 

1. 背景

1-1. 異常気象の頻発

近年,世界および日本国内で,猛暑やゲリラ豪雨といった異常気象(平年から大きくかけ離れた天候)が頻発しており,社会問題となっている。
 
気象庁の観測データによると,全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数は増加しており,最近10年間(2009〜2018年)の平均年間発生回数(約311回)は,統計期間の最初の10年間(1976〜1985年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.4倍に増加している。2019年1月から8月までの1300地点あたりの1時間降水量50mm以上の発生回数も198回となっている(図−1)。
 

図−1 全国[アメダス]1時間降水量50mm以上の年間発生回数(気象庁)



1-2. 関西国際空港の冠水

2018年9月4日,近畿地方に上陸した台風21号は過去25年中,最も強い勢力の台風であり,高潮の影響で関西国際空港の滑走路や旅客ターミナルが広範囲にわたり冠水した(写真−1)。冠水の影響による停電,さらに関西国際空港連絡橋にタンカーが衝突したことで交通アクセスも遮断され,空港は全面閉鎖,孤立状態となった。西日本の拠点となる国際空港の機能停止による影響は甚大であり,通常は関西国際空港に就航している貨物便が成田国際空港に臨時便として就航した時期もあった。
 
2018年は前述の「平成30年台風第21号」の他にも,「平成30年7月豪雨」,「平成30年北海道胆振東部地震」など自然災害が相次いだことも有り,内閣府より主要空港の災害対策状況調査(重要インフラ緊急点検)が行われ,成田国際空港は電源設備等の浸水対策,耐震対策の実施を求められた。本稿で紹介する内容がこの浸水対策に当たる。
 

写真−1 関西国際空港の冠水(2018年9月4日 毎日新聞)




 

2. 成田国際空港をとりまく環境

成田国際空港は内陸空港であり,地形上地下への浸水の可能性は非常に低いものの,地上階での冠水が実際に発生した事例がある。
 
2015年8月,第1旅客ターミナルビル南ウイング増築部・第5サテライト間の手荷物荷捌場が冠水した(写真−2)。成田市気象データによると,当時の降雨量は10分あたり19.5mmであった。
 
冠水発生後に原因調査を行った結果,第5サテライト側の側溝における側溝自体と側溝の排水容量の容量不足,そして構内道路下の埋設配管における短時間の集中豪雨に耐えうる勾配および容量の不足が原因と判明した。これらの原因解消のため雨水側溝の改修,雨水側溝下の埋設配管の交換,そして屋根の雨樋に設置したオーバーフロー管からの排水後の水跳ね防止を目的とした地表面レベルまでの竪樋延長といった対策工事を部分的に行った経緯がある(写真−3)。
 
 
写真−2 手荷物荷捌場の冠水
 

写真−3 冠水対策工事前後




 

3. 止水板・防水シートの導入

3-1. 設置場所

図−2 止水板導入箇所


本節では止水板および防水シートの設置場所について紹介する。万が一浸水被害が発生した場合,空港運用に大きく影響を及ぼすターミナル内の主要箇所へ設置した。
 
止水板については,図−2に示す通り,第1・2旅宅ターミナルビル地下サービス車路入口・出口(4箇所),NAA本社ビル地下駐車場入口・出口(2箇所),情報通信センタービル駐車場出入口(1箇所)の計7箇所に,各所の出入口寸法に合わせたものを導入するため,サイズ調整可能な脱着式止水板を選定した。NAA本社ビルエントランス(2箇所)と情報通信センタービルのエントランス(1箇所)の自動ドアには,事前工事不要な製品を購入した(写真−4)。
 
電気室については箇所数も多く,コスト面と設置の容易さを考慮して防水シートを購入した(写真−5)。防水シートはサイズをカットして使用可能であるため,各電気室の扉形状を計測し,必要数量を算出した上で購入した。


写真−4 止水板の導入



i)防水シート

ii)設置風景

写真−5 防水シート導入

3-2. 止水板・防水シートの仕様

本節では,実際に当空港に導入した止水板と防水シートの仕様について説明する。基本的には駐車場出入口に脱着式止水板,自動ドア出入口には自動ドア専用の脱着式止水板(既製品),そして各所電気室に防水シートを導入した。それぞれの仕様は表−1に示すとおりである。
 

表−1 止水板・防水シートの仕様(文化シヤッター株式会社,株式会社くればあ)



3-3. 運用方法

本節では,実際に豪雨が想定され,止水板および防水シートを設置することになった際の運用フローについて紹介する。
 
基本的なフローは図−3に示す通りである。まず,①成田航空地方気象台より飛行場大雨警報もしくは飛行場台風警報が発表され,関係者で協議し準備が必要とされた際,そして②警備員から「地下に水が断続的に流れ込んでくるような状況の際」といった通報があった際,上記2パターンの連絡・通報を受けることとなっているNOC(NAA 空港運用部門オペレーションセンター)が各所に業務連絡・情報共有を行ったうえで,止水板および防水シートが設置される。
 
具体的な周知内容としては,空港内の従業員に対するターミナル内の地下サービス車路の通行止め情報,警備消防センターに対する止水板設置の業務連絡(各所の警備員が設置作業を行う),そしてNAAグループ会社の設備系メンテナンス会社であるNATECH(株式会社成田エアポートテクノ)とNAFCO(株式会社NAAファシリティーズ)に情報共有がなされ,グループ会社社員が各電気室に防水シートを設置することとなっている。また,情報共有として施設保全部および広報部にもNOCから情報共有が行われる体制となっている。
 

図−3 運用時の連絡フロー




 

4. 2019度の被害について

前章で紹介した止水板および防水シートは2019年の8月に導入したものだが,その直後,成田空港の位置する千葉県は度重なる台風と豪雨の被害を受けた。本章では,3件の台風・豪雨における成田空港の被災状況と現状について紹介する。

4-1. 台風,豪雨の発生

2019年9月9日,台風15号の影響で成田国際空港も甚大な被害を受けた。高速バスや鉄道による都心などへのアクセスが断たれ,旅客ターミナルは大混雑が続いた。時間と共に海外などからの到着客らに加え,遅延や欠航で出発できない旅客も増えた。
 
前月の被害復旧もままならない中,2019年10月12日には大型で強い勢力の台風19号が静岡県に上陸し,関東地方から東北・北陸地方の広範囲にわたって大雨特別警報が発表された。千葉県では,特別警報が発表するほどの記録的な大雨ではなかったが,前月の台風被害を受けての被災であったため,県内各地では雨量の数値以上に大きな被害が発生した。空港内の施設においては,前月の被害を踏まえ,養生などの事前対策を講じていたこともあり,大きな施設の被害は少なかったが,前回の台風時にターミナル内に旅客が多く取り残されてしまった状況を受け,航空会社が多くの便の運休および遅延を決定し,旅客には多大なる影響を与えた。
 
台風19号から2週間後の2019年10月25日には,気圧と暖かく湿った空気の影響で,千葉県や福島県を中心に記録的な大雨が降り,半日で平年の1か月分を超える降雨量を記録した。台風15号の際は強風による影響が大きかったのに対し,今回の大雨は降雨による被害が深刻であり,2節で紹介した,冠水対策工事を実施済みの箇所につ
 
いても再度冠水が発生してしまう事態となった。
 

4-2. 台風による施設被害

本節では,台風による主な施設被害について報告する。旅客ターミナルビルや貨物ターミナルビルだけでなく,給油施設など多くの場所で建築設備の損傷や漏水が発生したが,今回は台風15号による深刻な被害の事例を2つ紹介する。
 
まず,第2旅客ターミナルビルの本館とサテライトをつなぐ連絡通路の屋上の屋根防水が強風でめくれあがってしまう事案が発生し,館内で漏水も発生する事態となってしまった(写真−6)。
 
また,南部貨物第6ビルのトラックドック側の庇が強風により巻き上げられる被害が発生した。一部の庇は完全に外れ,強風で吹き飛ばされた結果シャッターに衝突し,シャッターが破損する二次被害まで発生した(写真−7)。
 
いずれの場合においても,止水板を設置するまでの事態とはならなかったが,浸水被害に備える体制づくりはできていた。
 
今後は浸水だけでなく,強風などありとあらゆる自然災害に備える必要があることを痛感する機会となった。
 

i)屋根防水めくれ状況

ii)防水めくれによる漏水対応

写真−6 台風による第2旅客ターミナルビル屋根防水のめくれ

i)庇巻き上げ状況

ii)巻き上げられた庇

iii)庇の衝突により破損したシャッター

写真−7 貨物地区上屋の庇の巻き上げ


 

おわりに

成田国際空港のような国際空港が機能停止すると,日本国内ひいては世界全体に甚大な影響をもたらす。
 
未曽有の災害が頻発している昨今,空港としての機能を維持し続けるためには,これまでの想定外の事態に備えた対策を事前に講じる必要がある。
 
昨年の台風15号の反省も踏まえ,今後もレジリエンスな空港を目指し,各種対策を講じていく必要があると考えているため,国内外各所の空港の取組みを参考にしていきたいと考えている。
 

浸水防止用設備には様々なタイプがあり,想定される浸水深や設置箇所・収納場所の状況に合わせて適切に選択することが重要です。
 
図−1は,浸水防止用設備の様々なタイプおよび設置可能な場所や特徴を示しており,一般的な浸水防止用設備について比較が可能です。図−2は,出入口の状況と漏れ防止用設備の特徴を踏まえ,浸水防止用設備を選択する際の流れを示しています。
 

図−1 浸水防止用設備の種類と特徴




図−2 出入口の条件による選択フロー


図−1,図−2 出典元:「地下街等における浸水防止用設備整備のガイドライン」平成28年8月

国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室



 
 
 

成田国際空港株式会社 空港運用部門 施設保全部 建築グループ  渋谷 友希

 
【出典】


積算資料公表価格版2020年5月号


 

 

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