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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > i-Constructionによる建設現場の生産性革命

 

はじめに

我が国は現在,人口減少社会を迎えていますが,潜在的な成長力を高めるとともに,新たな需要を掘り起こしていくため,働き手の減少を上回る生産性の向上等が求められています。また,産業の中長期的な担い手の確保・育成等に向けて,働き方改革を進めることも重要であり,この点からも生産性の向上が求められています。
 
こうした観点から, 国土交通省では平成28年より,建設現場においてICT(情報通信技術)の活用や施工時期の平準化等を進める「i-Construction」を推進しています(図−1)。
 
更に令和元年6月に,公共工事の品質確保の促進に関する法律が改正され,情報通信技術の活用等による生産性向上への取組や働き方改革の推進が位置付けられました(図−2)。i-Constructionの取組の一層の加速が求められています。
 
本稿では,これまでの取組状況と課題を整理するとともに,今後の推進方策について紹介します。
 

図−1 i-Construction〜建設現場の生産性向上〜【生産性向上イメージ】




図−2 品確法と建設業法・入契法(新・担い手3法)




 

1. これまでの取組と今後の方向性について

これまでに国土交通省が取り組んできたi-Constructionの取組について,「ICTの全面的な活用」,「全体最適の導入」,「施工時期の平準化」,「3次元データの利活用」の4項目に分類し,これまでの成果並びに今後の方向性について紹介します。また,推進体制である「i-Construction推進コンソーシアム」についても紹介します。

1-1 ICTの全面的な活用

調査・測量,設計,施工,検査等のあらゆる建設生産プロセスにおいてICTを全面的に活用する取組であり,必要な積算や技術基準等の整備を進めてきました。
 
令和元年度における取組状況は,令和元年12月末時点において,直轄工事におけるICT活用工事の公告件数2,043件のうち1,105件で実施しています。
 
また,都道府県・政令市における平成30年度のICT土工は,公告件数2,428件,実施件数523件といずれも前年度より増加していますが,実施率を高めるためにも,中小規模工事や維持修繕系工事への拡大を図る必要があります。
 
なお,ICT施工を行った結果,起工測量から電子納品までの一連の施工プロセス全体での延べ作業時間について,土工工事では約3割の縮減効果が出ています。

1-2 全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)

設計,発注,調達,加工,組立等の一連の生産工程や,維持管理を含めたプロセス全体の最適化が図られるよう,流動性を高めたコンクリートやプレキャスト製品の活用,プレハブ鉄筋などの工場製作化を進めるため,必要なガイドライン等の策定に取り組んできました。
 
これまでの取組の結果,プレキャスト製品は現場打ちに比べ,2〜5倍の効率性があることが判明しています。しかし,セメント量のうちプレキャストに使われたセメント量は平成30年度で全販売量の約14%にとどまり,これまでとほぼ横ばいの傾向となっています。
 
生産性向上につなげるため,今後はプレキャスト(ハーフ,サイト,大型化)の進化を図っていきます。

1-3 施工時期の平準化

公共工事は,第1四半期(4〜6月)に工事が量少なく工事稼働時期の偏りが激しかったため,人材・資機材の効率的な配置や,休暇の確保,収入の安定などが図られてきませんでした。この点を踏まえ,国庫債務負担行為の積極的な活用や地域単位での発注見通しの統合・公表の拡大,地方公共団体への取組要請を行ってきた結果,施工時期の平準化の取組は浸透しつつあります。
 
他方,平成30年度の平準化率(年度の平均と4〜6月期の工事の平均の稼働状況の比率)は,国が0.85であることに対し,市町村は0.55にとどまっています。
 
こうした状況を踏まえ,地域発注者協議会を通じて平準化率の目標を設定し地方公共団体に働きかけるなど,地方公共団体の平準化率向上を目指し取組を進めることとしています。

1-4 3次元データ等の利活用

3次元設計(BIM/CIM)を導入することで,建設生産・管理システム全体を見通した施工計画,管理などのコンカレントエンジニアリング,フロントローディングの考え方を実施していくことが可能となります。
 
平成24年度から橋梁やダム等を対象に導入し,令和元年度は大規模構造物の詳細設計におけるBIM/CIMの原則適用等,適用拡大を図った結果,目標とする400件を達成する見込みです。
 
令和2年度は,大規模構造物予備設計へBIM/CIMを原則適用するなど,引き続きBIM/CIM等の活用拡大を図っていきます。

1-5 i-Construction推進に向けた取組

i-Constructionの推進に向け,非建設分野の関連企業を含む様々な分野の産学官が連携して,IoTやAI等の革新的技術の現場導入や3次元データの活用などを進めるため,「i-Construction推進コンソーシアム」を平成29年1月30日に設置しました。
 
現在は1,000者を超える会員に参加していただいており,新技術の開発・導入に向けた現場ニーズと技術シーズのマッチングイベントの実施や,3次元データ利活用に向けた意見交換等を行っています(図−3)。
 

図−3 i-Construction推進コンソーシアム




 

2. 今後の推進に向けて

建設現場の生産性向上に向け,今後は中小企業や地方公共団体等への更なる普及や,新技術の活用促進,加えてデータ連携を促進するための基盤整備を進めていく必要があります。

2-1 中小企業や地方公共団体への普及展開

i-Constructionの更なる普及展開に向けては,中小企業等が取り組みやすい環境を整えるとともに,先進事例を横展開し,中小企業や地方公共団体等にその効果を体感してもらうことが重要です。
 
このため,令和2年度からは,起工測量から成果品の電子納品までの全ての施工プロセスでICT活用を必須としていた従来に加え,部分的な活用であっても経費の計上や工事成績での加点を行う「簡易型ICT活用工事」を全国で実施するとともに,ICT施工の専門家を育成するための支援等を行っていきます。
 
更に,先進的な取組を行っている地方公共団体や民間企業等を表彰するi-Construction大賞を開催し,好事例の横展開を図っているところです(図−4
 
こうした普及促進の取組を通じ,i-Constructionの裾野拡大に取り組んでいきます。
 

図−4 令和元年度i-Construction大賞



2-2 新技術の活用促進

公共工事において,生産性を向上させる新技術の現場実装が促進されるよう,「i-Construction推進コンソーシアム」を活用し,新技術の発掘や企業間連携を促進するとともに,新技術の導入を促進する発注等に取り組んでいます。
更 
に,建設現場からデジタルデータをリアルタイムに取得し,これを活用したIoT・AIをはじめとする新技術を試行することで,建設現場の生産性を向上するプロジェクトの公募を平成30年度より行っています。例えば,ステレオカメラ撮影画像を活用した配筋測定の開発により,現行の手作業による複数人での測定を省力化・省人化するなどの取組が行われています(図−5)。
 

図−5 ステレオカメラ等の画像を用いた配筋測定技術の例



加えて,5GやAI等の革新技術の活用にも取り組んでいます。例えば,災害復旧工事等の防災の現場において,人が近づけない箇所でも安全に施工するために,日本独自の技術として,無人化施工技術の開発に平成6年から継続して取り組んできたところですが,現状のWi-Fiを使った無人化施工では,通信容量の不足,通信の遅延,同時接続機器数の制限等により,視認性・操作性等に課題があります。そこで,今後,大容量・低遅延・多数同時接続の特性をもつ5Gを活用すべく,令和2年度より無人化施工の現場試行に取り組むこととしています(図−6)。
 

図−6 5G等を活用した無人化施工の現場実証イメージ




こうした取組を通じて,新技術の現場実装を阻害する規制等が存在する場合は,その見直しも含め新技術の積極活用に取り組んでいきます。

2-3 データ連携による生産性の更なる向上

現在,国土交通省では,地盤や構造物等の国土に関するデータに,経済活動や気象等の自然現象に関するデータを連携させた統合的なプラットフォーム(国土交通データプラットフォーム)構築に取り組んでいます。
 
具体的には,BIM/CIMやICT施工により作成される3次元データをはじめとしたi-Constructionの取組により得られるデータや,地盤情報,民間建築物等の国土に関する情報をサイバー空間上に再現するインフラ・データプラットフォームの構築を進めています。また将来的には,官民が保有する公共交通や物流・商流等の経済活動に関するデータや気象等の自然現象に関するデータを連携させ,国土交通データプラットフォームの構築を目指します(図−7)。
 

図−7 国土交通データプラットフォームで実現をめざすデータ連携社会




これらのデータを用いてサイバー空間上でシミュレーションを実施することで,例えば災害時の避難シミュレーションや,都市における最適なヒートアイランド対策の実現が可能になるなど,様々な課題解決に活用することが期待できますが,プラットフォームの利活用を促進し施策の高度化やイノベーションの創出につなげていくためには,構築の段階から産学官の連携が重要です。
 
このため,令和元年10月末に「国土交通データ協議会」を設置し,プラットフォームの利活用やデータ提供等の活動をしていただける方々の公募を開始しました。加えて,国土交通データプラットフォームのプロトタイプ版を構築し,国土交通データ協議会の会員の方々に公開することで,プラットフォームの改善提案についても意見を求めているところです。
 
このほか,データ連携に関する課題解決に資する研究成果を実装するため,研究機関とも連携を図ります(図−8
 

図−8 研究機関等との連携を加速




こうした取組を踏まえ,令和2年4月に国土交通データプラットフォーム1.0を公開したところです(図−9)。今後も,国土交通データ協議会会員との意見交換や,研究機関等との連携を図ることで,課題の解決を図り,国土交通データプラットフォームの構築に取り組みます。
 

図−9 国土交通データプラットフォーム1.0の一般公開




 

おわりに

近年,全国各地で災害が発生しています。i-Constructionは,建設現場の生産性向上を目指して取組を進めてきましたが,昨年の台風災害でも,ドローンを活用して被災状況を効率的に把握する取組や,急傾斜地での無人化施工を行い作業員の安全確保に寄与する等,i-Constructionは防災・減災面でも効果があることが確認されています。安全・安心という観点からも,i-Constructionを推進していく必要があります。
 
また,i-Constructionの活用により,建設現場に必要な技術の習得に要する時間の短縮が期待されています。そして,生産性向上により安定した休暇の取得が可能になることで,建設現場において若者や女性などの多様な方々の活躍が期待されています。
 
加えて,i-Constructionは大規模な建設現場でのみ適用される技術ではないことも強調しておきます。例えば,技術の内製化を促すための発注の工夫等,少しの工夫で生産性向上を図った地方公共団体等も現れてきています。そうした先進事例を全国に波及させることにも取り組みます。
 
こうした取組により魅力ある建設現場を作り出すことで,「きつい,危険,給料が安い,休暇が取れない」と表現されることもある現状を改善し,新たな「給与が良い,休暇がとれる,希望がもてる」建設現場の実現を目指していきます。

 
 
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐  中西 健一郎

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年6月号


 

 

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