• お問い合わせ
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ

建築資材、土木資材をはじめとした建設資材、機材、設備、工法等の
データを収録し、スピーディな検索を実現した建設総合ポータルサイト

建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 長門市庁舎における木造空間の創出

 

1. はじめに

旧長門市本庁舎は昭和38年に建設され,50年以上にわたり行政機能の中心的役割を担ってきました。しかしながら,災害時には防災拠点となるべき施設でありながら耐震性能がないことに加え,窓口や執務スペースの狭あい化,躯体や設備の老朽化などさまざまな問題を抱えていました。
 
こうしたことから,平成27年4月に「長門市庁舎建設基本構想」を策定し,合併特例債の適用期限であった平成31年度までに新庁舎を建設することとなりました。
 

【階建ての新庁舎本体(手前右)と平屋のエントランス棟(手前左)からなる庁舎】


 

【周辺配置計画図】

【長門市産のスギ・ヒノキを主体とした木構造のエントランスロビー】



 

2. 木造化の取り組み

本市は,平成24年度に策定した「長門市公共建築物等における木材の利用促進に関する基本方針」に基づき,学校,道の駅,クラブハウスなどの公共施設の木造・木質化を推進してきました。延べ面積7,000㎡超の5階建て庁舎の木造化は,そのプロジェクトの集大成として位置付け,地域産木材をふんだんに活用して全国に先駆けて建設することとなりました。
 
 
 

3. 構造計画

構造計画の検討に当たっては,まず純木造の耐震構造を検討しましたが,積載荷重や地震力などの応力負担が大きく,柱や梁の部材の断面が大きくなり耐火木構造部材の認定条件を超えるため不採用としました。次に純木造の免震構造を検討しました。免震構造により地震力は低減されますが,庁舎の執務空間に必要とされる10〜12mのスパン長を考慮すると梁断面が認定条件を超えてしまうため,これも不採用としました。これらを踏まえて採用したのが,木造と鉄筋コンクリート造に免震構造を組み合わせた構造です。地震時の水平力を鉄筋コンクリートコアに負担させることにより,梁断面の縮小化,約12mのスパン長の確保が可能となりました。
 
また,木造部分のスラブは「穴あきPC版+トップコンクリート」とし,スラブを支える木造の梁と一体化させた合成梁を採用することにより,梁幅・梁せいをスギ集成材のみの梁に比べ約70%程度に抑えることが可能となり,合理的な架構を実現することができました。
 

【エコボイドと呼ばれる木架構あらわしの室内空間】




 

4. 木材の調達,加工,納材までの流れ

本事業に必要な木材は,原木ベースで約2,500㎥が想定され,原木の調達から加工,納材までの期間を考慮すると工事の発注前の着手が必要であったことから,材料の調達と建築工事を分けて行う材工分離方式により発注しました。工事発注6カ月前の平成29年6月に市有林木材の調達・加工の実績を有する地元の森林組合と製材所8社が加盟するウッドネット西部やまぐち協同組合と,耐火木構造部材の製作に精通した(一社)日本木造耐火建築協会によって結成された共同企業体に業務委託しました。
 
耐火木構造部材については,山口県内に大断面集成材工場がないことから,市有林から調達した木材を地元製材所8社でラミナという挽き板に製材した上で岡山県の集成材工場に運搬し,そこで大断面集成材の製作,プレカットまでを行いました。さらに,山陽小野田市の工場において,耐火加工や接合金物を取り付けたものを施工業者に納材しました。
 
木材は,全てを長門市産のスギ・ヒノキから調達し,木質系材料に使用する接合金物も市内の鉄工所で製作できたことから,林業振興に加え,地域経済の活性化につなげることができました。
 

【東西断面イメージ】


 

【基準階構造モデル】




 

5. 伝統文化・技術とのコラボレーション

新庁舎は,構造部材に加えて,床,天井ルーバー,サイン,ベンチ,カウンターなど市民の利用するスペースを木質化することにより木の温もりを体感できる空間を創造しています。
 
特に市民利用の多いエントランスと西側の市民広場では,ワークショップを実施,その成果として「庁舎の顔づくり計画」を策定しました。本市の伝統文化,技術を発信しています。
 
市民広場には,本市生誕の童謡詩人金子みすゞさんの詩が刻み込まれたガラスアートの設置や,地元左官職人の指導により小・中学生が製作した版築ブロックをインターロッキングに散りばめて配置しました。また,各階の交流スペースには,萩焼深川窯の若手作家5名が本市の自然をイメージして製作した萩焼陶壁の設置など市民の憩いのスペースとなっています。
 

【版築ブロックづくりのワークショップの様子】




 

6. おわりに

本事業では,単に木材を多く使用するだけではなく,ハイブリッド構造の採用による合理性,約12mのスパン長の確保による可変性,免震構造による安全性などを実現することによって,他の構造に比較しても遜色のない庁舎を建設することができました。
 
この庁舎が行政機能の中心として,永く市民に愛される施設になることを願っています。
 

【建築概要】




 
 

山口県長門市 総務課庁舎建設室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2020夏号



 
 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品