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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 雪寒対策資機材 > 北陸地域における雪害対策の変遷と最新の取り組み《前編》

 

国土交通省北陸地方整備局 北陸雪害対策技術センター 雪害対策官 遠藤 正樹
同 施工調査・技術活用課長 浦澤 克己

 

1.はじめに

わが国における道路の雪害対策に関する本格的な取り組みのスタートは、
雪寒法(「積雪寒冷特別地域における道路交通確保に関する特別措置法」)が昭和31年度に制定されてからで、
以降、国土交通省では、除雪延長の拡大、防雪施設整備(シェッド、柵、消融雪等)、
除雪機械の改良やスパイクタイヤ使用禁止(平成2年)に伴う凍結路面対策等の雪害対策を推進してきたところである。
 
一方、車社会、高齢化の進行、生活スタイルの変化に伴って冬期道路交通確保に対する国民のニーズは高まり、
かつ多様化しており、集中降雪による走行環境の悪化、渋滞や通行止め等が日常生活・社会経済活動へ与える影響は、
より拡大している。
 
このような背景を踏まえ、国土交通省では、平成25年7月1日に「北陸雪害対策技術センター」を設置し、
ハード・ソフトの両面から雪害の防災・減災対策を総合的・一体的に取り組むこととした。
 
今回は、北陸地域における「雪害対策の変遷」と最新の取り組みとして
「ロータリ除雪車の情報化施工の導入」の検討について紹介する。
 
 

2.雪害対策の変遷

2-1 昭和30年代の「道路除雪」

道路除雪の本格的な機械化は昭和31年度の雪寒法制定からで、当時は土工用の機械による除雪を行っていた(写真-1~2)
 

  • 写真-1 ブルドーザ除雪

    写真-1 ブルドーザ除雪
    (町田建設(株)提供)

  • 写真-2 排雪板装着ダンプトラック

    写真-2 排雪板装着ダンプトラック

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2-2 「38豪雪」が本格的な道路除雪の始まり

昭和38年(昭和37年度)の冬は北陸地方を中心に東北地方~九州地方の広範囲にわたって大雪となった。
 
雪に関連する全国の死者・行方不明者231名、住家全壊753棟、半壊982棟を数える記録的な豪雪となり、
気象庁が「昭和38年1月豪雪」と命名したのが、いわゆる「38豪雪」である。
 
北陸地方では、昭和38年1月中旬から下旬にかけて典型的な里雪型の豪雪に見舞われ、
特に北陸地方を南北に貫く、主要幹線道路の国道8号や国鉄(当時)の信越本線および北陸本線の沿線では、
平年の約3倍(当時)の積雪となり、長岡市では318cmの積雪を記録した他、
高岡市(225cm)、金沢市(181cm)、福井市(213cm)の積雪は観測史上最大(当時)を記録した。
 
この豪雪では、約2週間にわたる道路交通の途絶や鉄道の運休・遅延による交通機能のマヒ等の影響が広範囲に及び、
社会的な混乱を来たした(写真-3~6)
 

写真-3 進めない自動車

写真-3 進めない自動車


 
写真-4 雪の山を歩く

写真-4 雪の山を歩く


 
写真-5 屋根に達する雪壁

写真-5 屋根に達する雪壁


 
写真-6 住民総出の除雪

写真-6 住民総出の除雪
(社)北陸地域づくり協会提供)


 
この「38豪雪」を経験した北陸地方の人々は冬期間の道路交通確保の重要性を再認識するとともに、
道路管理者においては、これまでの除雪体制、除雪機械、防雪施設の未熟さを痛感することとなった。
 
また、これが契機となり、雪害対策技術の調査・研究、除雪専用機械の開発、
除雪体制の強化などの雪害対策について本格的な取り組みが開始されたことから、
昭和38年は「除雪元年」とも称されている。
 

2-3 消雪パイプは新潟県長岡市が発祥の地

現在、北陸地方では当たり前の光景となった消雪パイプによる融雪であるが、
昭和36年に新潟県長岡市が市道に全国で初めて消雪パイプ(写真-7)を設置したのが始まりである。
 

写真-7 現在の消雪パイプ第1号の路線

写真-7 現在の消雪パイプ第1号の路線


 
この消雪パイプは車道、歩道のみならず、駐車場や一般家庭の敷地内へも多数設置され、
雪国の生活には欠かせない施設のひとつとなっている。
 

2-4 除雪専用機械の登場

昭和30年代後半から昭和40年代にかけて、
現在の主力機械であるロータリ除雪車、除雪グレーダなどの除雪専用機械が開発、実用化された(写真-8~9)
 

  • 写真-8 初期のロータリ除雪車

    写真-8 初期のロータリ除雪車
    ((株)上越商会提供)

  • 写真-9 初期の除雪グレーダ

    写真-9 初期の除雪グレーダ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
しかしながら、現在と比べると除雪機械の性能・機能は劣り、かつ台数も少なかったことから、
除雪された道路においても運転に苦労を強いられることがしばしば見受けられた(写真-10~11)
 

  • 写真-10 凹凸の圧雪路

    写真-10 凹凸の圧雪路

  • 写真-11 雪で道幅が狭く、すれ違いが困難

    写真-11 雪で道幅が狭く、すれ違いが困難

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2-5 車社会の進展に伴う対応

わが国の経済成長と同様に自動車の保有台数は右肩上がりで増加し、人や物の移動手段は鉄道から自動車に大きくシフトし、
例えば、北陸管内(新潟・富山・石川県)における自動車の保有台数は昭和41年度と平成24年度を比較すると、
31万台から357万台へと約12倍に増加している。
 
このようなことから、冬期においても円滑な道路交通を確保し、
地域の社会経済活動を支え、国民生活の安全・安心を確保すべく、除雪体制の強化、除雪機械の高度化を進めてきた。
 
①道路の多車線化や交通量の増加、高速化への対応
北陸地方整備局が保有する除雪機械の台数は、昭和38年度と平成24年度を比較すると、
約30台から約500台へと約17倍に増強されている。
 
また、除雪機械の高度化(機械の高出力・高速化、操作性の向上、除雪ブレードの広幅化等)と除雪機械の増強により、
幹線道路の多車線区間では梯団除雪(写真-12)により迅速な除雪作業を実施し、円滑な交通を確保している。
 

写真-12 梯団除雪

写真-12 梯団除雪


 
②歩行者の安全確保
車社会の進展に伴い、歩行者の交通事故が急増し、大きな社会問題となり、
昭和40年代から幹線道路においては歩道の整備が急ピッチで進められてきた。
 
しかしながら、冬期間は車道除雪による排雪が歩道上に山積みされて、
歩行者は車道脇に形成された雪山の上を通行することを余儀なくされていた(写真-13)
 
写真-13 歩道が除雪されていないため雪山を歩く人

写真-13 歩道が除雪されていないため雪山を歩く人


 
北陸地方整備局では、昭和52年度に歩道の試験除雪を開始し、
通学路や歩行者の多い区間を主体に歩道用小型除雪機械による除雪や歩道用消雪パイプを設置し、
歩行者の安全を確保している(写真-14)
 
写真-14 除雪された歩道を通学する生徒

写真-14 除雪された歩道を通学する生徒


 
③除雪を考慮した道路幅員
本格的な積雪期になると道路除雪による排雪の堆雪スペースが不足し、除雪作業に支障を来たしていた。
 
このため昭和45年の道路構造令改正では、積雪地域の道路幅員に除雪を勘案することが明記され、
以降の道路整備では堆雪幅を考慮した幅の広い道路幅員を確保している。
 
これにより、迅速な除雪作業が可能となることに加え、
除雪後においても所要の車道幅員が保たれることにより、冬期の円滑な交通確保につながっている。
また、堆雪幅は歩道除雪の堆雪スペースとしても有効に活用している(図-1)
 
図-1 堆雪幅を考慮した道路幅員

図-1 堆雪幅を考慮した道路幅員


 

2-6 脱スパイクタイヤ時代への対応

平成2年には、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が施行され、
平成3年4月からスパイクタイヤの使用が禁止となった。
これにより、スリップ事故の増加、登坂不能車の発生、交差点での始動の遅れや速度低下などの問題を招いたことで、
凍結路面への対応強化が求められた。
 
これに関する対応として、凍結防止剤散布の強化、消融雪施設やチェーン着脱場の整備といったハード面の対策の他に、
道路情報板や気温表示板の設置、道の駅等での道路状況の画像情報提供(写真-15)
ホームページやラジオ等を活用したリアルタイムな情報(気象状況、路面状況等)を道路利用者へ提供し、
注意喚起を啓発するといった対策も併せて講じてきた。
 

写真-16 画像の提供(R17湯沢道路情報ターミナル)

写真-16 画像の提供(R17湯沢道路情報ターミナル)


 
 
 
 
北陸地域における雪害対策の変遷と最新の取り組み《前編》
北陸地域における雪害対策の変遷と最新の取り組み《後編》
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料SUPPORT2014年07月号
特集「雪寒対策資機材」
積算資料SUPPORT2014年07月号
 
 

最終更新日:2023-07-11

 

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