建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 雪氷作業への滑り摩擦測定器の導入 〜雪氷作業オペレーションの高度化に向けて〜

 

はじめに

冬季の高速道路において,お客さまの安全な交通を確保するため,路面凍結・積雪の防止・抑制,除雪等の作業(以下,「雪氷作業」)が重要な役割を担っている。雪氷作業は気象・路面状況等を注視しながら,NEXCO中日本グループ社員の総力を結集し,各種連携を取りながら迅速,かつ適切な作業の実施と対応が求められる。雪氷作業に至る判断フローを図−1に示す。
 

図−1 雪氷作業の判断フロー




2018年2月に北陸地方を襲った北陸豪雪では,図−2に示す通り道路交通に多大な影響を与えた。
 

図−2 北陸豪雪時の滞留状況




同事象は今後の雪氷作業についてハード・ソフト面の強化を求められる結果となった。ハード面の強化として,散水融雪・薬液散布,本線監視カメラ設備および雪氷車両の増強を進めている。また,ソフト面では地域連携,交通運用方法等,種々の訓練により体制強化に取り組んでいる。
 
 
 

1. 今日の雪氷作業における新たな課題

現在表面化している雪氷作業での新たな課題を下記に示す。

●経験の浅い雪氷車両オペレータの増加

雪氷車両のオペレータは,社会的な労働力不足や熟練者の高齢化・退職を背景に減少している。雪氷車両の操作は個人の経験・技量に依存する部分が大きく,経験が少ないオペレータが活躍できるようになるまでには多くの時間が必要となる。

●個人差による雪氷作業判断のバラツキ

気象・路面状況に基づく雪氷作業の実施判断には明確な管理基準が無く,当番班長に依存した定性的なものとなっている。そのため個人の経験差によるバラツキが生じやすく,同じ気象条件であっても作業内容が変わる可能性がある。
 
上述より,雪氷作業は品質・精度が変動しやすく,経験の浅い者にとって難解なものとなっている。雪氷作業の品質を維持するためには,より容易に運用判断が可能な仕組みの構築が必要である。
 
 
 

2. 路面センサの導入

本件は,車載式の路面センサ(以下,「路面センサ」)を導入し,雪氷作業全般を支援する枠組みを構築することで課題解決を目指したものである。路面センサは,現地の気象観測設備で検知される気象情報,雪氷巡回員等から報告される路面状態等の断片的な雪氷情報を補い,連続データを得ることが可能である。これにより,現地の実態に即したデータ収集が行えると共に,種々のシステム構築にも活用可能なデータとなる。

2-1 すべり摩擦係数

路面センサの重要な機能として,すべり摩擦係数(以下,「摩擦係数」)が測定できる点がある。摩擦係数は路面が滑りやすくなるほど値が低くなる。国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所(以下,「寒地土木研究所」)が示す目視路面と摩擦係数の関係1)を図−3に示す。
 

図−3 目視路面と摩擦係数の関係




路面の定量的な管理基準として,路面の残留塩分濃度を採用している地方も存在する。しかし,北陸では塩化化合物に加えてロードヒーティング(以下,「RH」)や酢酸等を併用した雪氷作業を行っているため,残留塩分濃度による路面管理は困難である。以上から残留塩分濃度ではなく,摩擦係数を用いることが路面の管理基準を定量化するために望ましいと判断した。

2-2 路面センサの概要

路面センサは路面に赤外線を照射し測定する原理で,摩擦係数に加え,外気温測定等も可能なオールインワン機能となっている。巡回車両への路面センサの取付位置を図−4に,センサの仕様を表−1にそれぞれ示す。
 

図−4 道路巡回車の路面センサ構成

表−1 路面センサ仕様



路面センサが測定した諸データは,車載端末で閲覧できる他,Webを介してサーバに蓄積され,雪氷対策本部のPCからリアルタイムに閲覧が可能である。雪氷本部で閲覧する各地点の測定データ例を図−5に示す。
 

図−5 雪氷対策本部での測定結果閲覧例




測定データは地図上に軌跡がプロットされ,数値に応じて着色される。その数値はグラフでも閲覧できる他,同箇所の走行映像も同時に確認できる。このように地点毎のデータが視覚化されるため,重点的な雪氷作業が実施でき,効率化につながる。また,摩擦係数による定量的な管理基準を設定することできるため,きめ細やかな雪氷作業を実現できる。
 
 
 

3. 路面センサの精度検証

今回導入した路面センサは,既に欧米で運用されており,路面の摩擦係数を含め各種データを定量的に測定することができる。寒地土木研究所では,同センサと,車両に取付けた試験輪に発生する横反力を測定することで摩擦抵抗値を算出する装置とを比較し,精度の検証を行っている2)。同論文では,検証結果として,2種類の測定結果には良い相関関係があり,路面状態を確認するには十分な精度であると述べている。
 
しかし,欧州や寒地土木研究所のある北海道と北陸では緯度が異なる。緯度が高ければ気温・湿度も低下し,雪も湿気を含まない粉雪となる。一方,北陸は湿度が高く気温低下も少ないため,雪は水気を含んだ重い雪となる。今回導入した路面センサが北陸地方特有の重い雪においても対応可能かどうかを確認するために現地検証を行った。

3-1 気象観測データとの関係

高速道路に設置された気象観測局の気温,路温データと,路面センサが測定したデータの相関を求めた。データ間の相関を表したグラフを図−6,7にそれぞれ示す。
 
一般に,二つの要因間の相関係数が0.7〜1.0のとき,かなり強い正の相関があると判断できる。現地検証の結果,路側の気象観測局の気温,路温と路面センサの値は,いずれも相関係数が0.9を超えており,極めて高い相関が得られた。
 

図−6 気温データとの相関

図−7 路温データとの相関


3-2 路面摩擦係数との関係

積雪路面等の摩擦係数を図−8に示すポータブルスキッドテスタ(British Pendulum Number,以下,「BPN」)と路面センサが測定したデータの相関を求めた。検証の結果,相関係数0.8と高い相関が得られた。データ間の相関を表したグラフを図−9に示す。
 
現地にて,気象観測データ,BPNと路面センサとの相関関係を検証した結果,いずれも強い正の相関関係があることが確認できた。検証結果から,北陸地方においても,路面センサは十分活用可能と考える。
 

図−8 BPN

図−9 BPNとの相関



 

4. 雪氷作業ナビゲーションシステム

路面センサの実用性が確認できたことから,雪氷作業全般を支援するためのシステム開発を進めている。雪氷作業ナビゲーションシステムの全体イメージを図−10に示す。
 

図−10 雪氷作業ナビゲーションシステム



4-1 リアルタイム気象情報収集

各車両に搭載した路面センサで取得した測定データは,車載端末を通して雪氷本部に一元化される。これにより,道路管理に必要な気象・路面関連データベースが高度化される。
 
路面管理を行う際に特別な技能や知識を必要とせず,車両を走行させるだけで必要なデータの収集が可能となる。同データを活用し,種々の作業と情報が共有され,効率よく作業が行うことができる。

4-2 乗務員ガイダンス

路面センサの測定データ等に基づき判断された作業内容を車載端末を介して,リアルタイムにオペレータへ伝達する。オペレータに委ねていた作業をより具体的に指示・案内できるようになり,作業の品質と精度が向上する。
 
また,併せてオペレータの経験・技量への依存も軽減される。乗務員ガイダンスのイメージを図−11に示す。
 

図−11 乗務員ガイダンスのイメージ



4-3 作業装置操作・監視(自動制御含)

雪氷対策車両の作業装置は,一般的な建設機械と異なり,特にオペレータの経験・技量が必要な作業となる。また,製造メーカーや型式等の違いから,さまざまな仕様の機器が統合されることなく設置されている。従来の雪氷対策車両の車内状況例を図−12に示す。
 

図−12 従来の雪氷対策車両の車内状況例




車載端末と連動した操作部に作業装置のインターフェイスを簡略化して取込み,オペレータの経験・技量に左右されない簡単な操作端末を開発し,また,更に汎用性を向上させた自動制御の導入を計画している。
 
端末上の基本的な操作はボタン等を押下するだけで完結する構造とし,除雪用のプラウやグレーダー等,走行中に複数の操作が必要な作業についてはジョイスティックを用いたインターフェイスを想定している。押下作業装置のインターフェイスの統一イメージを図−13に示す。
 

図−13 作業装置のインターフェイス統一イメージ



4-4 AIシステムの構築

前項までに述べた各種機能の開発状況を踏まえ,気象予測,現地測定データ等の定量化されたデータ群から,最適な作業計画を立案する「AIシステム」の構築を進めている。AIシステムの導入により,個人の経験・技能差による判断のバラツキを解消し,より安全で効率的な雪氷作業が実現される。
 
現在,AIシステム構築に必要となるデータを蓄積する環境を整え,雪氷作業を通じてデータ蓄積を行い,実用化を目指す。AIシステムの構築イメージを図−14に示す。
 

図−14 AIシステムの構築イメージ




また,雪氷車両の操作環境の改善に加え,オペレータに課せられる定型業務の効率化・自動化(Robotic Process Automation,以下「RPA」)の導入を目指す。RPAの導入により,雪氷作業に付随して発生していた書類作成等の業務が低減され,働きやすい就労環境が整い,人材確保の一助となる。
 
 
 

まとめと今後の展望

本件では,経験の浅い雪氷車両オペレータの増加,個人差による雪氷作業判断のバラツキという雪氷作業における課題を解決するため,摩擦係数の測定が可能な路面センサを導入し,路面管理を行う手法を見いだした。現地検証の結果,路面センサは,人の経験・知識,感覚に依存することなく,定量的に路面状態を測定することが可能であると確認できた。
 
今後,雪氷作業ナビゲーションシステムの構築に向け,路面センサの搭載台数を増やし,データ蓄積を進める。また,路面センサを雪氷車両へ展開し,作業のシステム化に向けた実証実験を行う。これにより雪氷作業の管理目標に応じた設定値を確立させていきたい。
 
雪氷作業は,高速道路事業だけでなく,寒冷地域を支えるインフラ事業に共通した管理技術テーマである。今後もこれら技術の開発と高度化を図り,日本の物流の根幹を支えるインフラの安心・安全・信頼性向上に寄与していきたい。
 

問い合わせ先について

本取組みに関する問い合わせについては,下記の部署へご連絡いただきますよう,お願いいたします。
 
中日本高速道路株式会社
 金沢支社 環境技術管理部
 
 
参考文献
1) 独立行政法人土木研究所 寒地土木研究所「路面のすべり摩擦係数測定機器の紹介」,<www2.ceri.go.jp/jpn/news/koutsu/panf/masatusokutei.pdf>,(2020年3月27日閲覧)
2) N.Takahashi,M.Kiriishi,R. Tokunaga,“ComparativeStudy of Friction Measurement Devices”, Proceedings ofSIRWEC17th International Road Weather Conference

 
 
 

中日本高速道路株式会社 金沢支社 敦賀保全・サービスセンター 施設担当課 係長  岡田 大輝

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年8月号


 

 

 

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