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1. はじめに(テレワークとは)

国土交通省では,内閣官房,内閣府,総務省,厚生労働省,経済産業省と連携し,テレワークの普及による都市部への人口・機能の一極集中の是正及び地域活性化に取り組んでいる。
 
テレワーク(「tele=離れたところで」と「work=働く」をあわせた造語)とは,ICT(情報通信技術)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方であり,自宅で行う「在宅型」や勤務先以外での共同利用型オフィス等で行う「サテライト型」,顧客先やカフェ,移動中等で行う「モバイル型」等がある。家庭生活との両立による就労確保,高齢者・障害者・育児や介護を担う者の就業促進,地域における就業機会の増加等による地域活性化,余暇の増大による個人生活の充実,通勤混雑の緩和,災害時や緊急時の社会経済活動の継続等,様々な効果が期待されている。
 
テレワークは,1970年代にエネルギー危機とマイカー通勤による交通混雑や大気汚染の緩和を目的として,ロサンゼルス近郊で始められたといわれている。日本では,1980年代から大学を中心にインターネットの研究が盛んになり,1992年に我が国初のインターネットサービスプロバイダーが設立し,1993年には商用ベースとしてのインターネット接続サービスが開始されたが,ほぼ同時期の1991年1月,様々な分野の研究者により日本サテライトオフィス協会(現 一般社団法人日本テレワーク協会)が設立され,「時間や場所にとらわれない働き方の選択肢」としてテレワークの研究が進められてきた。それから約30年,ICT技術の進歩やパソコンやスマホなど情報端末機器の普及により,テレワークが十分可能な社会環境になってきている。
 
また,昨今,働き方改革の一貫としてワーク・ライフ・バランスの改善を目的とした長時間労働の是正や,柔軟な働き方がしやすい環境整備,生産性向上等の議論が盛んに行われており,ワーク・ライフ・バランス改善の一つのツールとして注目されている。さらに,東京2020オリンピック・パラリンピック開催時の交通混雑を回避するためのTDM(交通需要マネジメント)の一つとしても注目されている。
 
 
 

2. テレワーク人口実態調査について

我が国のテレワークの実態を把握し,今後のテレワーク促進に役立てることを目的に,2002年からテレワーク人口実態調査を実施している(2008年までは3年おきに,以降は毎年調査を行っている)。
 
働き方改革 特集 働き方改革 令和元年度の調査手法等を表−1に示す。
 

表−1 調査手法等




 

3. 令和元年度調査結果について

(1)令和元年度調査の概要

下表参照。
 


(2)用語の定義

テレワーカー:これまで,ICT等を活用し,普段仕事を行う事業所・仕事場とは違う場所で仕事をしたことがある人のこと。
 
共同利用型オフィス等:複数の企業や個人が設備を共有しながら仕事を行う場所(テレワークセンター,シェアオフィスやコワーキングスペース等も含む)のこと。自社の他事業所(支店,自社専用のサテライトオフィス等)は含まない。
 
雇用型就業者:民間会社,官公庁,団体職員及び派遣社員,契約社員,パート,アルバイトなどを本業としている人のこと。うち,テレワーカーを「雇用型テレワーカー」という。
 
自営型就業者:自営業・自由業,及び家庭での内職を本業としている人のこと。うち,テレワーカーを「自営型テレワーカー」という。
 
 

① テレワークの普及度合いと実施状況
1) テレワークの認知状況とテレワーカーの割合,政府KPI ※
 
就業者における「テレワーク」という働き方を「知っていた」と回答した人の割合(図−1)は32.7%(前年度29.9%)となり,年々上昇傾向にある。一方で,テレワーカーの割合(図−2)は雇用型就業者が14.8%(前年比16.6%),自営型就業者が20.5%(前年度24.0%)となり減少した。次に,政府のKPI として掲げるテレワーク制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合(図−3)を見てみると,9.8%(前年度10.8%)となり,やや後退した結果となった。
 
※ KPI:Key Performance Indicator の略語で,組織目標における達成指標で,「2020年には,テレワーク制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合を2016年度比(7.7%)で倍増させる(15.4%)」としている。
 

図−1  テ レワークの認知状況【H28-R 元】
(就業者全体)

図−2  雇用型就業者・自営型就業者に
おけるテレワーカーの割合【H28-R 元】

図−3  制度等に基づく雇用型テレワーカーの割合
(雇用型全体)【H28-R 元】



地域別(図−4)で見てみると,雇用型就業者・自営型就業者ともに,相対的に首都圏で実施割合が高く,地方都市圏では低い結果となった。企業規模ごとによるテレワーク導入率の調査結果より,従業員数が増えるほど導入率が高い結果となっていることからも,首都圏でのテレワーカーの割合が高くなったと考えられる。
 

図−4  雇用型就業者・自営型就業者における
テレワーカーの割合(地域別)【R元】




業種別で見ると,雇用型テレワーカー(図−5),自営型テレワーカー(図−6)ともに「情報通信業」が最も高く,次いで「学術研究,専門・技術サービス業」となった。他業種の割合は約10〜20% となっており,「宿泊・飲食業」18.5や「医療・福祉」が低い結果となった。対面で仕事をする業種では低くなる傾向にあるが,部門(総務や経理)によってはテレワーク導入の余地があるのではないだろうか。
 

  • 図−5 業種別 雇用型テレワーカーの割合

  • 図−6 業種別 自営型テレワーカーの割合



 

2) 勤務先のテレワーク制度等の導入割合
雇用型就業者における「勤務先にテレワーク制度等が導入されている」と回答した人の割合は19.6%(前年度19.8%)となっており,そのうち実際にテレワークを実施したと回答した人の割合は49.9%となっている。一方,「制度等が導入されていない」と回答した人のうち,実際にテレワークを利用したと回答した人の割合は6.3% となり,制度等が導入されている人の方が,テレワーカーの割合が圧倒的に高い(約8倍)傾向にある。
 
制度等が導入されていないと,テレワークへの理解を得にくいことや,環境整備に係るコスト面等が障壁となることから,テレワーク利用割合が低下するものと考えられる。
 
 

3) テレワークの実施効果・実施意向
テレワーク実施効果の有無(図−7)について,「全体的にプラス効果があった」と回答した人は54.7% と,過半数以上がプラス効果を実感している結果となった。効果の内容としては,「通勤時間・移動時間が減った」,「自由に使える時間が増えた」,「仕事の効率が上がった」等であり,ワーク・ライフ・バランスや生産性の向上がうかがえる。
 

図−7 テレワーク実施効果の有無




次に,非テレワーカーの今後のテレワーク実施意向(図−8)について,テレワークを「してみたいと思う」と回答した人の割合は43.3%(前年度44.7%)となった。実施したい理由として特に多かった回答は,「通勤時間・移動時間が削減できそうだから」が71.9%,次いで「自由に使える時間が増えそうだから」が68.0%となり,働く側がワーク・ライフ・バランスを重視する傾向が見られた。また,「自身の病気や怪我により通勤が困難であるから」の3.4%や「災害や事故発生時でも仕事ができるから」の12.3% との回答があり,昨今の人材不足の解消やBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の観点からも有効な手段であり,事業者側にとってもメリットがあるのではないだろうか。
 

図−8 非テレワーカーのテレワーク実施意向【R元】




 

4) テレワークの実施場所別テレワーカーの割合
実施場所別では,サテライト型が在宅型・モバイル型よりも高く,50% 以上で推移している(図−9)。また,それぞれの平均仕事時間(図−10)を見ると,サテライト4.0時間/日>在宅3.5時間/日>モバイル2.2時間/日となっており,テレワークが在宅勤務だけではないことや,必要なタイミングで必要な時間だけ仕事をするというテレワークの効率性が表れていると考えられる。
 

  • 図−9  テレワークの実施場所別のテレワーカーの
    割合【H28-R元】(雇用型・自営型を含むテ
    レワーカー全体)

  • 図−10  テレワークの実施場所別のテレワーカー
    割合と平均仕事時間【R元】(n= 6,172)



 

② 令和元年9月の台風15号通過後の通勤行動
令和元年9月8日(日)の午後,非常に強力な台風15号の関東への接近に備え,首都圏の各鉄道会社は,台風通過後の翌朝8時頃まで計画運休を実施すると発表した。台風15号は9日(月)5時頃に千葉市に上陸し,8時頃には茨城県沖の太平洋へと通過したものの,かつてない記録的な強風により首都圏の鉄道は倒木や飛来物による運行障害が生じ,終日再開できなかった路線もあるなど大きな混乱が生じた。そのような中,都心方面への通勤客が朝一斉に駅に押し寄せ,各地の駅では大変な混雑が発生し,混乱は半日以上に及んだ。
 
この9月9日(月)の朝,都心方面へ普段は鉄道で通勤する人のうち,出勤した人(図−11)は70.7%で,普段と違う事務所,シェアオフィス等に出勤した人は全体のわずか1.7%であった。また,台風通過日の出勤について,40.9%の人は出勤を控えるよう,あるいはある程度落ち着いてからの出勤でよいと勤務先からあらかじめ指示を受けており,4.1%は出勤するよう指示が出されていたとの結果であった(テレワークやシェアオフィス等の利用を指示したのは2.0%)。また,15.7%の人は各自の判断に任せるとの連絡があり,35.4%の人は何の指示もなかったと回答している(図−12)。
 
なお,当日出勤した人は,通勤に通常よりも平均で45分長く時間を要している。
 

図−11 台風通過日の出勤有無


 

図−12 勤務先からの指示の有無




 

③ 新型コロナウイルス対策としてのテレワーク
令和元年12月に中華人民共和国湖北省武漢市での発生に始まり,その後,年明け1月末には日本国内でも感染者が確認されると,2月には中国渡航歴がなく,感染経路が不明な感染者が相次いで報告されたことから,国内での新型コロナウイルス感染症の市中感染の懸念が強まった。
 
民間企業を中心に大規模なテレワーク導入が急速に広がりを見せ始めていた頃,2月18日(火)の政府の対策会議において「感染症対策として人と人との接触を減らす観点からテレワークの活用が有効な手段である」との発言もあり,「テレワーク」についての認知度は,調査サンプル全体のうち90.0%と非常に高いものとなった。
 
感染症対策としてテレワーク(在宅勤務)を実施した人は,勤務先の制度の有無により大きく差が開いた。勤務先に制度等のある雇用型テレワーカーでは52.0%となったが,勤務先にテレワーク制度等のない雇用型テレワーカーでは14.8%,雇用型非テレワーカーでは7.9%にとどまっている。また,元々実施したことがなく,調査対象期間中に感染症対策の一環としてテレワーク(在宅勤務)をはじめて実施した人は5.2%だった。
 
勤務先から感染症対策の一環としてテレワーク(在宅勤務)をするよう指示・推奨があった人の割合も,勤務先の制度の有無により大きな差があった。制度があるテレワーカーでは67.0%となり,制度等がないテレワーカーの19.8%や,雇用型非テレワーカーの13.7%と比べて高い結果となった。
 
また,今回「はじめて実施」した人や,「元々実施したことはあったが,あらためて実施」した人の約8 割は,何らかの問題があったと回答している。一方で,「元々実施してきており,通常どおり実施」した人で,問題があったのは4割程度であった(図−13)。問題の内容としては,「会社でないと閲覧・参照できない資料やデータなどがあった」や,「営業・取引先等,同僚・上司等との連絡や意思疎通」を挙げた人が多い結果となった。
 

図−13 テレワーク(在宅勤務に限る)を実施後の問題(支障等)




従前よりテレワークを実施し,社内システムへのアクセス方法やセキュリティ対策,社内外との意思疎通方法の確立等,環境整備を行っている勤務先では,感染症対策としてのテレワークへの対応がスムーズであったといえる。
 
なお,令和2年6月21日に発表された,内閣府政策統括官(経済社会システム担当)が実施した調査(調査期間:令和2年5月25日〜6月5日)によると,テレワーク実施率は全国で34.6%となり,首都圏においては48.9%とほぼ半数がテレワークを実施した結果となった。
 
 
 

4. おわりに

令和2年4月7日に政府は感染者の増加が著しい7都府県に対して緊急事態宣言※を発令し,「人と人との接触機会を最低7 割,極力8 割減らす」という目標を掲げ,その達成のために様々な業種に営業自粛要請を行うとともに,企業に対しては従業員のテレワークの推進を強力に呼びかけ,テレワークという言葉が毎日のようにメディアで流れることとなった。
 
※ その後,全国に拡大するとともに,感染者の多い13都道府県を特定警戒都道府県とした。
 
5月25日に約2か月間にわたる緊急事態宣言は解除されたものの,第2波,第3波の感染拡大にも警戒しつつ,今後はテレワークの有効性を改めてPRするとともに,今般,感染症拡大防止対策として導入が一気に進んだテレワークが,一過性のものとならず広く平時からの社会システムとして根付くよう,引き続き関係省庁と連携を図りながら,さらなる普及促進に努めたい。
 
 
 
 

国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室  奥田 敏史(おくだ としふみ)

 
 
 
【出典】


積算資料2020年8月号



 
 
 

 

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