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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > まちづくり分野におけるクラウドファンディングの位置付け

 

1. はじめに

人口減少や少子高齢化の進行により,地方公共団体の財政状況はこれまで以上に厳しくなることが予想され,地方公共団体はより効率的で最適な方法での政策実現が求められています。近年,このような課題を解決するため,民間主体によるまちづくりが活発化しているところです。
 
また,古民家や歴史的建造物など,地域にとって重要な資産を改修・活用してまちの魅力向上や景観形成に取り組もうとしても,採算性や経済性が低いといった現状があります。このような状況では,公的な支援に限界があり,地域にとって重要な資産を適切に維持することができない場合があります。
 
地域を活性化し持続的なまちづくりを進めるためには,地方公共団体のみならず,地元企業や住民,さらには地域外の人々を含めた多様な主体の参画をより一層促進していくことが重要です。
 
そこで,資金と活動の両面から多様な主体を巻き込んでまちづくり事業を進めるための新たな手法として,クラウドファンディングの活用が期待されています。
 
 
 

2. クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは,Crowd(人々,一般大衆)とFunding(資金調達)を合わせた造語であり,個人や企業などが,インターネットを介してアイデアやプロジェクトを紹介し,それに共感し賛同する一般の人から広く資金を集める仕組みのことをいいます(注1)。
 
具体的な手順としては,まず,事業を実施する者(事業実施者)が,事業内容,募集金額,リターン等を提示します。それに共感した人が資金提供者(支援者)となり,資金を提供します。
 
事業実施者は,目標金額の調達が達成された後,リターンを配布します。リターンについては,クラウドファンディングの類型により分類されます。「寄付型」は支援者に対してリターンなし,「購入型」は支援者に対して金銭以外の物品や権利のリターンあり,「投資型(貸付型,ファンド型,株式型)」は支援者に対して金銭的なリターンありという分類になっています。
 
また,事業実施者と支援者の間に,クラウドファンディング仲介事業者が入るかたちが一般的となっています。
 
クラウドファンディングを活用するメリットはたくさんありますが,多くの主体が関わること,まちのファンが増えること,広く社会に対して事業をアピールできることなどが挙げられます。主体によって異なるメリットもあり,例えば地方公共団体にとっては,地域課題の解決,財政負担の軽減,事業実施者にとっては,新たなマーケティング手段の確立が挙げられます。さらに支援者すなわち住民等にとっても,地域への愛着や貢献の気持ちが高まり,地域とのつながりを実感できるなどのメリットがあります。このとおり,多様な主体にとってそれぞれメリットがあるまちづくりを進めようとしたものが,(一財)民間都市開発推進機構(以下「民都機構」という)による「まちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)」です。
 
民都機構とは,民間事業者による都市開発事業(注2) を推進し,良好な市街地形成と都市機能の維持及び増進を図り,地域社会の健全な発展に寄与することを目的とし,「民間都市開発の推進に関する特別措置法」第3条第1項の規定に基づく国土交通大臣の指定を受けた一般財団法人です。民都機構は,まちづくりに対する金融支援を実施する法人としていくつかの金融支援メニューを行っていますが,まちづくりファンド支援事業はその中の一つとなっています。
 
 
 

3. まちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)の概要について

まちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)は,クラウドファンディングを活用したまちづくり事業を支援するまちづくりファンドが資金を拠出することで,民間によるまちづくり事業(民間まちづくり事業)を支援する制度です。地方公共団体と民都機構が資金を拠出し,まちづくりファンドを組成します。まちづくり事業者(住民等)はクラウドファンディングにより個人等から資金提供を受け,事業者のうち,クラウドファンディングとまちづくりファンドにより調達する額の半分以上調達できた場合,原則としてその残額を助成することができるという制度です(図-1)。
 

【図-1 クラウドファンディングによる助成】】



支援の対象となる事業は,まちの魅力向上,景観形成,伝統文化の継承,歴史的施設の保全,観光振興,空き家等の利活用,安全安心なまちづくり等の民間まちづくり事業であって,ハード事業であることが原則として必要です。ただし,ハード事業と一体不可分のソフト事業(クラウドファンディング仲介事業者への委託費用,広報費用,什器の購入費用等)にも支援することが可能です。また,クラウドファンディング仲介事業者の活用は必須ではなく,先述したとおりのクラウドファンディング,すなわち「インターネットを介してアイデアやプロジェクトを紹介し,それに共感し,賛同する一般の人から広く資金を集める仕組み」であればよく,地域のまちづくり会社等が地縁を活用し資金を調達することも想定されます。
 
したがって,地元企業が地域のまちづくりを主体的に実施するとともに,地域内の資金循環を促進することができる制度となっています。
 
同制度は上記のほかにも要件があります。例えば,まちづくりファンドの設置先としては,地方公共団体が設置する基金,公益信託等であることや,民都機構の拠出限度額は次の①〜②のうち最も少ない額であること等です。
 
①まちづくりファンドの規模,助成等の対象を考慮し,最大1億円
②まちづくりファンド総資産額(民都機構拠出分を含む)の半分
 
詳しくは民都機構のホームページをご覧いただくか,お問い合わせいただければと思いますが,ポイントは,「地方公共団体」と「民都機構」が協力して,「クラウドファンディング」を活用する民間まちづくり事業を推進する制度となっている点です(図-2)。
 

【図-2 クラウドファンディング活用型まちづくりファンドから助成・出資対象となる事業の例】




 

4. まちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)の支援実績について

平成27年度に制度が創設されて以降,令和元年度までに,まちづくりファンドは9件(民都機構の支援総額8,800万円)の実績があります。そのうち,既にまちづくりファンドから民間まちづくり事業への支援が実施されているものとしては,「京町家まちづくりクラウドファンディング支援基金」「なごや歴史まちづくり基金」「未来ファンドおうみ」「上天草市まちづくり事業推進基金」「志摩市まちづくりクラウドファンディング活用支援基金」「市民財団まちづくりファンド(小松市)」があります。
 
例えば「なごや歴史まちづくり基金」では,まちづくりファンドから4つの民間まちづくり事業を支援しています。そのうち2つについて紹介します(図-3)。
 

【図-3 まちづくりファンドによる民間まちづくり事業を支援】



当該基金から支援した第1号案件は,東海道沿いの歴史的まちなみが残る名古屋市有松地区において,大正時代に建てられた隠居屋「旧竹田家はなれ」をライブラリーカフェとして再生する改修工事です。クラウドファンディングにより,北海道から九州にわたる多くの方々からの支援が集まり,大きなPR効果も得られました。購入型のクラウドファンディングを活用したことで,リターンとして,「有松絞りの小物」や「カフェ利用チケット」が支援者に渡っています。カフェでは訪れた方々がゆったりと江戸時代の風情をじっくり味わうことができ,また,地域の方々がゆったりとお茶を飲める憩いの場として,にぎわい・観光・交流の拠点となっています。今回の改修により,文化と歴史を満喫できるまち歩きに「食」の要素が加わることにより,より遠方から足を運ぶ人が増えることが期待されています。
 
第2号案件は,東海道唯一の海路があった熱田地区で,大正時代の歴史的な洋館を改修して,地域の観光・交流拠点として活用するものです。この建物は,数年空き家の状態になっていたものを地域の歴史・文化を伝える活動を行うNPO法人が活動拠点として借りたものですが,外装の傷みがひどく,観光客を招き入れる状況にありませんでした。今回の改修により,地域の交流拠点としての魅力が強まり,渡し船体験学習事業をはじめとする熱田の魅力を伝えるイベント等の観光情報案内所・活動拠点としての機能が広がっています。購入型のクラウドファンディングを活用したことで,リターンとして「東海道七里の渡し船旅学習会」の参加券や「熱田銘菓セット」などが支援者に渡っています。
 
 
 

5. おわりに

まちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)は今年度より制度改善が行われています。昨年度まではクラウドファンディングの類型を寄付型・購入型に限定していましたが,クラウドファンディング市場の大きなシェアを占める投資型(貸付型,ファンド型)を追加しました。また,地方公共団体が民間企業等の寄付金を活用してまちづくりファンドを組成することを可能としました。それにより地方公共団体の資金拠出の割合が減るとともに,新たな主体が参画する可能性が明示されています。さらに,まちづくりファンドの設置先がNPO法人の場合,ファンドを立ち上げるための初期費用等について,まちづくりファンドから支援できることとしています。
 
これらの改善点を踏まえ,今後もまちづくりファンド支援事業(クラウドファンディング活用型)の更なる普及に努め,地域の魅力向上等を図ってまいります。
 
 


(注1) 公益財団法人都市計画協会「クラウドファンディングを活用したまちづくり入門」(平成27年11月)
(注2) 民間事業者によって行われる土地の合理的かつ健全な利用及び都市機能の増進に寄与する建築物及びその敷地の整備に関する事業のうち公共施設の整備を伴うもの

 
 
 

国土交通省 都市局 まちづくり推進課 都市開発金融支援室

 
 
 
【出典】


積算資料2020年9月号



 
 
 

 

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