- 2014-07-03
- 特集 雪寒対策資機材 | 積算資料公表価格版
センター長 上石 勲
1.はじめに
平成26年2月中旬に関東甲信地方を中心に東北地方太平洋側、北海道道東地方で豪雪となり、
交通マヒや住家倒壊等の甚大な被害が発生した。
気象および被害状況は内閣府のHPに「平成26年(2014年)豪雪について」として、
第1報から第24報(以下、豪雪速報)まで報告1)されている。
2.気象・降積雪の概況
前線を伴った低気圧が、2月14日(金)から2月16日(日)にかけて発達しながら本州の南岸を北東へ進み、
西日本から北日本の広い範囲で雪が降り、特に関東甲信地方では、14日夜から15日にかけて記録的な大雪となった。
関東甲信、東北北海道の多数の箇所で積雪深の観測史上最高値を更新した(表-1)。
多くの箇所で降雪が24時間以上続き、積雪が24時間で60~100cm増加した(図-1)。
短期間、それも深夜帯に多量の雪がもともとあまり雪の多くない非雪国に降ったことが、
住家やハウス等の倒壊、孤立を含む交通障害などの多くの被害をもたらしたことの要因であると考えられる。
図-2に示すように山梨県内では時間積雪深差で18cmという高強度降雪を記録した。
3.被害状況
3-1 交通障害
高速道路の通行止めは、2月16日時点で34区間であり、通行止めは4日後まで継続した(図-3)。
直轄国道の通行止めは、2月18日に23区間とピークを迎え、2月20日には5区間、2月25日には通行止めは解消した。
また、補助国道の通行止めは、2月16日に89区間であったが、
懸命な除雪や、国土交通省テックフォース2)や新潟県3)をはじめとした近隣県からの除雪支援などにより交通障害は減少し、
2月28日には15区間となり、以降は横ばい状況が続いた。
これは山間部で多発した雪崩による障害が大きく、除雪に時間がかかっていることも要因として考えられる 。
山梨県等では、広域応援のロータリー除雪車が随所で効率的な除雪を展開した(写真-1)。
3-2 人的被害
大雪によって犠牲となった方が最も多かったのは、群馬県の8名、次いで山梨県5名、長野県4名、埼玉県3名である(図-4)。
群馬県では車庫等の倒壊が多いのに対し、山梨県では一酸化炭素中毒、凍死といった要因が多い。
負傷者数が最も多かったのは、埼玉県459名、次いで東京都215名、山梨県107名、群馬県94名となった。
埼玉県、東京都は負傷者数の多くが軽傷者であり、
人口密集地帯における路面の積雪や凍結による転倒等が、軽傷者が多い要因と考えられる。
なお、埼玉県、東京都に隣接する千葉県の人的被害は少なく、
気温や雪雲等の気象状況の違いが大きく影響していると考えられる。
3-3 雪崩による被害
(1)被害の発生状況
今回の南岸低気圧による大雪では、雪崩も多数発生した。
聞き取り調査や新聞による情報では次のような大災害に結びつく恐れのあったものが多い。
①栃木県日光市奥鬼怒温泉
林道で子供3名、大人1名が雪崩により埋まった車に58時間閉じ込められる。
一酸化炭素中毒防止のためのエンジン停止、空気穴など冷静な行動により助かる。
②山梨県甲府市古関
県道で4台が雪崩によって埋まる。すぐに車から脱出。
2人はすぐに助けられるも後の2人は救助に入れず、1晩雪崩危険地隣接箇所で救助を待つ。
埋まった車には15mもの雪崩デブリが堆積し、大破して5日後に発見(写真-2)(後出)。
③福島県田島地区
国道121号福島県田島地区で雪崩によって川に車1台転落。
すぐに脱出したため助かる。
その他、福島県桧枝岐村、山梨県精進町、早川町などで住家に雪崩が襲ったが、すぐに助け出したため無事だった事例など、
多くの雪崩による被害があった。
さらに各地の山間部で除雪が遅延したのは、大雪だけではなく、雪崩による堆積物が除雪効率を悪化させ、
雪崩の危険性のため除雪作業が遅れたことも大きな原因となっていると考えられる。
(2)雪崩の発生原因
この雪崩多発の原因には、南岸低気圧で降った雪が冬型で降ってくる樹枝状ではなく、
広幅六華やつづみ、柱状のような、雪結晶同士の結びつきが弱くグラニュー糖のようにさらさらとして、
崩れやすい結晶だったことが大きな原因だと推察される(写真-3)。
この種の降雪の物理特性は未だ不明な点が多いが、
簡易安息角測定装置での測定では安息角が30~35°程度と通常の降雪よりも小さい結果も得られた。
このような崩れやすい性質のため、樹林帯から雪崩が発生している例も多く、山間部では表層雪崩が多発し、
長野県西部・東部、群馬県北部、山梨県、栃木県北西部、神奈川県西部、東京奥多摩地区、埼玉県秩父地区、福島県会津地方、
宮城県西部、岩手県北東部など広範囲で雪崩の発生が確認され、道路の通行止め、除雪作業の妨げとなった(写真-4)。
これらの雪崩の運動特性についても未明な点が多い。
長さ300m程度の大規模な雪崩も発生しているが、
見通し角は30度と大きく、崩れやすいが停止しやすい性質があるものと推定される(写真-5)。
参考文献
1)内閣府「2月14日から16日の大雪等の被害状況等について」(2014年)
http://www.bousai.go.jp/updates/h26_02ooyuki/index.html(2014年3月6日現在)
2)テックフォース除雪支援情報
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/tec-force/
3)新潟県除雪支援情報
http://www.bousai.pref.niigata.jp/contents/kinkyu_sizen/003279.html
平成26年2月の東日本豪雪の被害の傾向と対策《前編》
平成26年2月の東日本豪雪の被害の傾向と対策《後編》
【出典】
月刊 積算資料SUPPORT2014年07月号
特集「雪寒対策資機材」
最終更新日:2023-08-02
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