建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 災害に強い官公庁施設づくり ガイドラインの策定について

 

1. ガイドライン策定の趣旨,背景

近年は,平成27年9月関東・東北豪雨や平成28年熊本地震,平成29年7月九州北部豪雨,平成30年の霧島山噴火,7月豪雨,台風第21号,北海道胆振東部地震,大阪府北部地震,令和元年山形県沖地震,8月の前線に伴う豪雨,房総半島台風,東日本台風など毎年のように自然災害が発生し,官公庁施設が被災した事例も見受けられます。本ガイドライン策定の直後にも,令和2年7月豪雨により大きな被害が生じたことは記憶に新しいところです。
 
今後も気候変動の影響により,水災害の更なる頻発化・激甚化が懸念される中,日常生活に密接に関係する行政機能の場であり,災害時において災害応急対策活動の拠点となるなど,国民や地域住民にとって重要な役割を担っている官公庁施設は,災害に強いものとしていくことが必要です。
 
官庁営繕部では,国,地方公共団体の営繕部局,施設管理部局の担当者等が官公庁施設の防災機能の確保を検討する際の参考となるよう,官庁営繕の防災に係る技術基準やソフト対策,事例などをパッケージ化したガイドラインを策定しました。
 
 
 

2. ガイドラインの構成

はじめに
ガイドラインの概要やこれまでの取組の経緯等を掲載しています。
 
施設の位置の選定
災害の発生頻度や災害による被害の程度は,施設の立地により大きく異なります。ここでは,新築・建替等を計画する際の位置の選定にあたっての留意事項や関連基準,事例を掲載しています。
 
施設整備上の対策
施設の整備にあたっては,施設の有する機能や立地する地域的条件を考慮し,災害に対する安全性の目標を適切に定める必要があります。
ここでは,地震,浸水及び津波に対して,官庁施設が確保すべき安全性の目標設定の考え方と防災対策,事例について掲載しています。
 
施設運用管理上の対策
施設整備において講じた防災対策が有効に機能するためには,災害発生時のオペレーションを適切に行うことが重要となります。
ここでは,施設運用管理上の対策に関する取組について掲載しています。
 
災害発生時の営繕部局の役割
災害発生時に,施設が必要な機能を発揮するとともに二次災害を防止するために,施設を整備した立場から営繕部局が施設管理部局に対して技術支援等を行うことが重要です。
ここでは,災害発生時に営繕部局が行う技術支援等の取組を掲載しています。
 
附録
主な整備事例や参考資料として公共建築相談窓口,資料のURL一覧を掲載しています。
 
 
 

3. ガイドラインの主な内容

3-1 施設の位置の選定

新築・建替等を計画する際の位置の選定にあたっての留意事項には,次のようなものがあります。
 

①災害時における人命の安全確保その他の必要な機能確保
新築・建替等の計画にあたっては,地震,津波,暴風雨等による土砂崩れ,浸水等の災害が生じる可能性ができる限り低い立地を選定することが必要です。
 
ただし,施設を使用する官署の業務の特性等により,やむを得ず災害のおそれのある地域に立地せざるを得ない場合は,人命の安全確保に加え,災害応急対策活動その他の必要な機能の確保に支障が生じることのないよう,被害を抑えるための対策(施設整備上の対策及び施設運用管理上の対策)を併せて検討し,必要な機能を確保することが必要です。
 
災害発生の可能性に留意すべき立地場所の具体的な例として,次のようなものが考えられます。
崩壊の危険性のあるがけ地,傾斜地
存在が判明している活断層の周辺
ハザードマップ等において浸水,津波,土砂災害が想定されているエリア
 
 

②災害応急対策活動に必要なライフライン等の確保
災害応急対策を行うために必要な電気,水,ガス,通信等のライフラインについては,供給施設及び処理施設の位置,官庁施設までのルートの状況等について確認することが必要です。同時に,ライフラインが途絶した場合でも,官庁施設の建築設備の機能を維持できるよう,所要の措置を講ずることも必要となります。
 
また,緊急車両等の通行のための前面道路のほか,周辺の幹線道路等について,沿道の状況等を確認することが必要です。
 
なお,液状化が想定されている地域では,道路,供給施設,処理施設等が液状化により影響を受けるおそれがあることに留意することが必要です。
 
 

③地方公共団体の施設等との連携
災害応急対策を行うために必要な官庁施設の位置については,地域防災計画に基づくほか,地方公共団体の施設との連携の必要性について考慮することが必要です。
 

3-2 施設整備上の対策

①耐震対策
耐震安全性の目標は,官庁施設の有する機能や被害を受けた場合の社会的影響等を考慮した施設の重要度に応じて,構造体,建築非構造部材及び建築設備について総合的に定め,総合的な耐震安全性を確保します。
 

図−1 建築設備の防災対策イメージ




 

②浸水対策・津波対策
官庁施設の位置の選定により浸水や津波被害が避けられない場合のために,官庁施設内の人員の安全及び施設を使用する機関の業務に関する目標を技術基準に定めています。
 
その目標を達成するためには,災害時にも機能継続が必要な室,設備機器等が浸水しないよう,想定される水位より高い位置にある階に配置されていることが必要です。やむを得ずこれより低い位置にある階に配置されている場合にも,当該室等への浸水を防止する措置等が講じられていることが必要です。
 
一般の室は,浸水した場合も早期に業務再開できるよう,建物外周部の浸水防止措置や必要な室等の上階への配置等の措置が可能な範囲で講じられていることが必要です。
 
また,これらの対策は経済合理性と平常時の利便性に総合的に優れたものとなるよう,施設運用管理上の対策と施設整備上の対策のいずれかまたは組み合わせにより,適切に講ずることが必要となります。
 

図−2 官庁施設における津波対策(イメージ図)




 

③災害発生時の運用を考慮した施設整備
災害発生時の運用を考慮した施設整備の一例として,災害時に対策本部等となる室の近傍に本部要員の控室等にも利用可能な会議室を配置し,災害応急対策活動をより効率的に実施できるよう配慮した事例を紹介しています。
 
 

④地域防災との連携
大規模災害の発生に備えるには,地方公共団体をはじめとする様々な関係者と連携の下,施設整備や施設運用管理に取り組む必要があり,一例として写真−1に示す事例を紹介しています。
 

  • 地域防災倉庫との合築
    地方公共団体の防災倉庫を合築する
    ことにより,地域防災へ貢献できる
    ほか,ストックの有効活用を図るこ
    とが可能となります。

  • 屋上ヘリポート
    被災状況の調査や広域支援に貢献し,
    的確な業務継続が可能となります。

  • 非常用コンセント
    自家発電設備や太陽光発電設備に接続
    した非常用コンセントの設置により,
    商用電源途絶時に地域住民等の携帯電
    話の充電等の支援が可能となる場合が
    あります。(写真は太陽光発電設備に
    接続したコンセント)

  • マンホールトイレ
    官公庁施設内のトイレの使用が困難
    な場合には,代替手段の1つとして
    マンホールトイレの設置が考えられ,
    地域住民等の利用が可能となる場合
    があります。


  • 防災かまどベンチ
    災害時にはかまどになるベンチの設
    置により,電気やガスが途絶しても
    温かい食事を用意することが可能と
    なり,近隣住民等の支援に繋がる場
    合があります。

  • オープンスペースの確保
    オープンスペースの確保により,災害
    時には避難スペースや緊急車両の駐車
    スペース等に活用可能な場合がありま
    す。



写真−1 地域防災との連携
 
 

3-3 施設運用管理上の対策

耐震対策や浸水対策,津波対策等の施設整備上の対策(ハード対策)の実施には,多くの時間を要する可能性もあります。
 
また,官公庁施設は,本来,浸水などの災害が生じる可能性が低い場所に立地すべきですが,例えば,河川流域や沿岸地域を中心に市街地が広がっている場合や,沿岸地域に所在する必要性が高い機関が使用する施設などで浸水のおそれのある地域に立地するなど,やむを得ず災害のおそれのある地域に立地せざるを得ない場合もあります。
 
こうしたことから,大規模災害時に官公庁施設として必要な機能が発揮されるためには,施設整備上のハード面での対策と,施設を使用する機関が策定する「業務継続計画」に定められる施設の管理や業務の運営におけるソフト面の対応との連携を図ることが必要です。
 
さらに,施設管理者は,施設に要求される機能を的確に把握し,業務継続計画の策定及び見直しに主体的に参画すること並びに発災時に必要とされる施設機能を確保するための計画を作成することが必要となります。
 
このほか,近隣の他施設への移転(代替拠点の確保),機能確保のための地域防災との連携等により,効率的・効果的に対策を講ずることが可能となる場合もあります。
 
こうした施設運用管理上の対策の一例として表−1に示す取組を紹介しています。
 

表−1 施設運用管理上の対策に関する取組



3-4 災害発生時の営繕部局の役割

①官庁施設の被災情報伝達要領
官庁施設は災害時においても,災害応急対策活動を支える拠点施設となるため,災害時には施設管理者と営繕部局が連携して,官庁施設の機能確保及び二次災害の防止に向けて対応することが必要です。
 
そのためには,人員や通信手段が限られる状況においても官庁施設に関する被災情報等を適切に共有することが重要であり,「官庁施設の被災情報伝達要領」及び「被災情報伝達様式」を作成し,中央官庁営繕担当課長連絡調整会議の申し合わせとしています。
 
 

②各省各庁の業務継続支援
営繕部局は施設管理者に対して,被災した官庁施設の継続使用の可否や応急措置の要否等の判断に係る技術的支援や留意事項の周知などを実施することが必要な場合があり,一例として,被災した施設の設備機器に関する注意事項や東日本大震災時の国土交通省官庁営繕部から各省各庁営繕担当部局等への留意事項の周知事例を紹介しています。
 
 
 

4. おわりに

本ガイドラインは,国,地方公共団体の営繕部局,施設管理部局の皆様はもちろん,官公庁施設の営繕に係る設計業務や工事,維持管理業務等を受注する企業の皆様にもご参照いただき,官公庁施設の防災機能確保の検討の一助となることを期待しています。
 
また,今後は来年度上半期を目処に所要の加筆等を行い,中央省庁,都道府県・政令市に共通するガイドラインとする予定です。
 
 
 

国土交通省 大臣官房官庁営繕部 計画課 営繕技術企画官  橋本 一洋

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2020年11月号



 

 

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