建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 福島イノベーション・コースト構想 福島ロボットテストフィールドの紹介 〜ロボット社会実装のためのナショナルセンターを目指して〜

 

1 はじめに

福島県沿岸部(浜通り地域)は,東日本大震災とそれによって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所事故により,甚大な被害を受けた。2014 年6 月,この地域の産業回復のために,新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」が策定された。本プロジェクトでは,廃炉,ロボット・ドローン,エネルギー・環境・リサイクル,農林水産業,医療関連,航空宇宙の各分野において,産業集積,教育・人材育成,交流人口の拡大,情報発信に取り組んでいる。
 
本構想に基づき整備された「福島ロボットテストフィールド」(以下,福島RTF)は,物流,インフラ点検,大規模災害などに活用が期待される,災害対応ロボット,水中探査ロボット,無人航空機といった陸・海・空のフィールドロボットを主な対象に,実際に使用する環境を再現しながら研究開発,実証試験,性能評価,操縦訓練ができる,世界に類を見ない一大研究開発拠点である。
 
 
 

2 福島RTFの概要

福島RTFは,多様な災害環境やフィールドロボットの使用環境を拠点内に再現し,多様なロボットの試験や操縦訓練の場を提供することを目的としており,福島県南相馬市・復興工業団地内に建設された。東西約1,000m,南北約500mの約50haの敷地に,「無人航空機エリア」「インフラ点検・災害対応エリア」「水中・水上ロボットエリア」「開発基盤エリア」を設けるとともに,浪江町・棚塩産業団地内にも滑走路を整備し,南相馬滑走路との間で長距離飛行試験が可能となる。2018年7月に通信塔が開所した後,完成した施設を順次一般に供用を開始,2020 年3月に21の全施設が完成した。写真−1に全体の航空写真を示す。

 

【写真−1 福島ロボットテストフィールド全景】



2.1 無人航空機エリア

無人航空機は,「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」において「空の産業革命に向けたロードマップ」が策定され,2022年度以後に有人地帯での目視外飛行(レベル4の飛行)の実現を目指している。2020年のロードマップにおいて,福島RTFは試験設備・実証環境の整備が求められている。無人航空機エリアでは,日進月歩の技術や制度に対応した自由度の高い試験が行えるよう,緩衝ネット付飛行場,滑走路,ヘリポート,連続稼働耐久試験棟,風洞棟が用意されている。
 
緩衝ネット付飛行場(写真−2)は,間口80m×奥行150m×高さ15mの空間の周囲と上面をネットで囲み,無人航空機が外に飛び出さないようにすることで,飛行場内は航空法上の規制対象外でありながら屋外環境を再現できる。また,照明を使った夜間飛行訓練,緩衝マットを敷いた物件投下飛行訓練など,リスクの高い飛行方法についても航空法上の申請を行うことなく実施できる。
 

【写真−2 緩衝ネット付飛行場】




滑走路(写真−3)は,無人航空機専用の長さ500mの舗装滑走路であり,南に13km離れた浪江町に設置された長さ400mの滑走路との間で,長距離試験飛行が実施できる。どちらの滑走路も付属する格納庫があり,周辺を見渡せる計測室やアンテナ設置台が備えられている。
 

【写真−3 滑走路(南相馬市)】




無人航空機の長距離飛行に当たっては,常に通信を保てる電波,低高度での広域気象情報が必須となることから,この両滑走路間の13kmのエリアでは,広域対応アンテナと広域気象観測装置を備えた鉄塔を2基設置している。これにより,従来から無人航空機の状態把握に使用されている920MHz帯,2.4GHz帯での通信の確保, 高度100m程度での細かいメッシュでのリアルタイムの風向風速観測が可能である。
 
ヘリポート(写真−4)には,離着陸帯25m×20m(コンクリート舗装)と駐機場25m×23m(芝地)が整備されている。シングルロータ・VTOL型の飛行試験や操縦訓練ができるほか,試験機追跡,通信試験,災害救助訓練などに利用できる。
 

【写真−4 ヘリポート】




連続稼働耐久試験場では,コンクリート壁で周囲と上面を囲った部屋の中で,万一,部品などが飛散しても安全に長時間飛行耐久試験をすることができる。
 
風洞棟には,風速20m/secまで発生できる風洞施設(写真−5)が設置されている。無人航空機の空力特性,飛行性能,積載性能のほか,突風・脈動風に対する機体の安定性を試験できる。
 

【写真−5 風洞施設】




 

2.2 インフラ点検・災害対応エリア

インフラ点検・災害対応エリアは,点検対象物や災害現場を模擬した構造物を設置し,ロボットの性能評価や操縦訓練に対応できる施設であり,試験用橋梁,試験用トンネル,試験用プラント,市街地フィールド,瓦礫(がれき)・土砂崩落フィールドがある。
 
試験用橋梁(写真−6)は,鋼橋部(長さ35m)とコンクリート橋部(長さ15m)から構成され,老朽化や障害物を再現し,状況確認や点検に関する試験や操縦訓練を行うことができる施設である。点検対象となるコンクリートのひび割れ・剥離・浮き,鋼材のボルト緩み・亀裂・支承部の機能障害などを再現しており,一部の変状はテストピースとして入れ替え可能である。
 

【写真−6 試験用橋梁】




試験用トンネル(写真−7)は,トンネル内での交通事故,崩落,老朽化を再現し,状況確認・捜索・瓦礫除去・老朽化点検に関する試験や操縦訓練を行うことができる施設である。高速道路や一般道の照明(LED灯,ナトリウム灯),ジェットファンなどを設置し,壁面には点検対象となるひび割れや浮きを再現している。試験用橋梁と同様に一部の変状はテストピースとして入れ替えができる。両側の入り口をシャッターでふさぎ,内部に瓦礫や事故車両を置いて煙を発生させれば事故現場を再現できる。
 

【写真−7 試験用トンネル】




試験用プラント(写真−8)は,6階層で高さ30mを持つ化学工場や発電所のプラントを模擬した試験施設で,点検,情報収集,機器操作,災害対応に関するロボットの試験や操縦訓練を行うことができる。さまざまな形状の配管,バルブ,ダクト,階段,らせん階段,キャットウォーク,垂直はしご,タンク,煙突などを設置している。
 

【写真−8 試験用プラント】




市街地フィールド(写真−9)は,ビルや住宅などが信号付き交差点の周囲に立地する環境を再現した試験施設である。ここでは,ビルや住宅の内外を使った災害対応訓練,ビル外壁の点検,市街地や公道を移動するロボットの試験などが実施できる。交差点や街並みを再現した試験施設は珍しく,自動走行の試験など多様な用途で使用可能である。
 

【写真−9 市街地フィールド】




瓦礫・土砂崩落フィールド(写真−10)は,ぬかるみ地,土砂傾斜地(15度・30度),陥没・亀裂,土砂・倒木がある道路を設置しており,災害時の道路遮断現場,土砂崩落現場を再現している。状況確認,捜索・救助,復旧作業を行うロボットや無人化施工重機の試験や操縦訓練,消防訓練などが可能である。
 

【写真−10 瓦礫・土砂崩壊フィールド】



2.3 水中・水上ロボットエリア

水中・水上ロボットエリアは,ロボットによるインフラ点検と災害対応の実証試験のために整備された。ダム,河川,港湾,水没市街地等の水中・水上で発生するインフラの状況や災害現場を再現できる。水没市街地フィールド,水流付大深度水槽,濁度調整水槽が用意されている。
 
水没市街地フィールド(写真−11)では,19m×50mの深さ0.7mのプールに,1階部分が一部冠水した住宅と,1階部分が全て冠水した住宅を模擬した状態を再現した施設である。情報収集・調査,捜索・救助等を行う水中・水上ロボットや無人航空機の試験や操縦訓練,救助訓練が行うことができる。点検対象や障害物を水中に沈めてのロボットの試験のほか,有人ヘリやボートによる救助訓練にも対応できる。
 

【写真−11 水没市街地フィールド】




水流付大深度水槽(写真−12) では, 長さ30m,幅12m,深さ7mの屋内プールに,1〜3m/sec程度の水流を発生させることができ,水中ロボットの運動性能の試験ができる。可動式の観測架台も備わっている。また,点検対象構造物(ダム,河川,港湾等の水中構造物)を沈めたり,ひび割れなどの老朽化変状を模擬したテストピースを配置したりすることで,水中ロボットの点検性能試験ができる。
 

【写真−12 水流付大深度水槽】




濁度調整水槽は,深さ1.7m で5m×3mの広さを持つ屋内水槽であり,水の濁り具合を定量的に再現できる。これにより,水中ロボットがダム,河川,海中の透明度が低い水中で点検する際の濁りの影響を試験できる。こちらの水槽にも水流発生装置,可動式観測架台が備わっている。
 

2.4 開発基盤エリア

開発基盤エリアには,研究棟のほかに,滑走路を見渡しながら運行管理が可能な総合管制室,大空間(間口32m,奥行30m,高さ11m)を持つ屋内試験場等がある。
 
研究棟は,福島RTFの本館機能として管理事務室が配置されている。その他,各試験の準備,加工・計測に用いられるスペースに加えて,ロボットの性能評価のための風,雨,防水,防塵,水圧,温湿度,振動,電波に対する試験を行うことができる設備がある。また,長期にわたる活動拠点として利用できる貸出研究室や会議室,展示場としても利用できるカンファレンスホールなどがある。さらに棟内に併設する福島県ハイテクプラザ南相馬技術支援センターにより,設備の利用支援や技術相談,開発支援等を行っている。
 
 
 

3 おわりに

福島RTFは2020年3月に全施設が完成し,利用可能となった。施設は基本的に団体,個人を問わず利用可能である。見学は,企業・自治体・学校・関係団体等を対象に受け入れている。一般見学は研究棟内に限定されるが,施設の利用を検討・予定している場合は,個別の施設も見学できる。利用・見学ともに詳細は福島ロボットテストフィールドのホームページ(https://www.fipo.or.jp/robot/)を参照されたい。国内外の産学官の利用を受け入れ,フィールドロボットの技術進歩,制度整備の両面で貢献できる拠点となることを目指したい。
 
 
 

公益財団法人 福島イノベーション・コースト構想推進機構

 
 
 
【出典】


土木施工単価2020秋号



 

 

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