建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 関東地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み〜一貫した3次元データの利活用を図るため〜 大宮国道事務所の活用事例

 
関東地方整備局では、令和5年度までに小規模なものを除く全ての公共事業についてBIM/CIM活用への転換を図り、発注者、受注者の育成およびBIM/CIMを活用した新技術の現場実証を推進するため、令和3年4月に関東地方整備局 関東技術事務所に「関東i-Construction人材育成センター(仮称)」を設置する。
 
「関東i-Construction人材育成センター(仮称)」では、3次元情報を利活用(モデル作成、照査等)できる人材を速やかに育成するための研修を実施していく予定である。
 
さらには、i-Constructionモデル事務所である甲府河川国道事務所と連携するとともに、VR・AR等の活用など体感型の研修や民間の業界団体が実施する講習会との連携についても、本省を含め検討しており、BIM/CIMの導入促進について、取り組んでいく。
 
また、国土交通省が進める3次元データやデジタル技術の活用を加速するインフラ整備および管理におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に向けて、令和2年10月28日に関東地方整備局BIM/CIM・DX推進本部を設置し、建設生産プロセスの各段階において3次元モデルや3次元情報を活用するとともに、関連する新技術の活用により、受発注者双方の業務の効率化・高度化を図り、建設現場の生産性向上、働き方改革の促進、ワークライフバランスの実現を目的として、これらを達成するため、推進本部の下に、河川、道路関係の各種取り組みを検討、実施するワーキンググループを設置し推進していく。
 
今回は、関東地方整備局のi-Const-ructionサポート事務所である大宮国道事務所が所管している一般国道17号新大宮上尾道路におけるBIM/CIM活用について紹介する。
 
 

事業の概要

 
新大宮上尾道路は、埼玉県の中央部を南北に縦断し、東京外かく環状道路と首都圏中央連絡自動車道をネットワークでつなぐ、延長約25.1kmの自動車専用道路である(図-1、2)。
 
本事業は、1日当たり約7万台の交通量がある6車線道路の現道上に高架橋を整備する必要があるため、施工ヤードの確保や車線規制等に大きな制限を受けることとなる。また、国道16号およびJR川越線と交差する宮前ICでは、既設ランプ等の道路構造物が錯綜していることから、交差条件および施工条件が非常に厳しい中で、橋梁設計および施工計画を立案する必要がある。
 

完成形イメージ(宮前IC付近)

図-1 完成形イメージ(宮前IC付近)




新大宮上尾道路位置図

図-2 位置図



 

設計段階でのBIM/CIMモデルの活用

(1)BIM/CIMを導入した設計

本事業では橋梁予備設計および道路詳細設計においてBIM/CIMを導入した。設計段階からBIM/CIMを導入することはフロントローディングと呼ばれており、工事を見据えた作業の前倒しである。BIM/CIMモデルを作成することで設計成果の可視化、シミュレーション化による検証が可能となり、品質の最適化を図ることができる。
 

(2)3次元測量の実施

a)3Dモデルへの活用
 
本事業ではCIM導入の先駆けとして、測量段階において移動計測車両(MMS)による3次元測量を全線で実施している。MMSによる測量では交通規制が必要ないため、現道交通に大きな影響を与えることなく3次元測量が可能である。しかし、MMSによる測量だけでは点群密度が低くなる箇所や、遮蔽物等の影響で点群データの取得が不可能となる箇所が発生する。そのため、本事例では3Dレーザースキャナー測量およびUAV測量により補足測量を実施し、現況地形および現況地物の把握に必要となる点群データの取得を実施した。
 
b)点群データの活用
 
点群データによる現況地物を3Dモデル化し、橋梁予備設計を基に、橋梁CIMモデルを合成した(図-3)。点群データ上にBIM/CIMモデルを重ねることで完成イメージがより具体化し、関係機関協議等において、完成形イメージの共有化を図ることができた。特にJR川越線をまたぐ橋梁計画ではBIM/CIMモデルを提示することで、実際の架橋位置や、基線近傍の擁壁からの離隔を確認することができ、早期の合意形成を図ることができた。
 

点群データの活用

図-3 点群データの活用

 

(3)橋梁予備設計での活用

a)橋脚配置検討での活用
 
本路線は、国道16号と国道17号上尾道路が複雑に交差する宮前ICをまたぐ計画である(図-4)。
 

宮前IC(現況)

図-4 宮前IC(現況)

 
竣工図および測量結果より既設構造物の3次元モデルを作成し、その上に計画橋梁を配置することで、立体的に既設構造物との離隔を確認しながら、支間割検討を行うことができた。
 
b)既設構造物との取り合いの確認
 
実際に計画した上・下部工と既設構造物のコントロールポイント(建築限界)の3次元モデルを作成することで既設橋梁と計画橋脚の取り合いの確認を実施した(図-5)。作成したBIM/CIMモデルから任意の横断図を抽出することで、任意の位置で離隔幅を数値的に確認することができた。
 

既設構造物との取り合いの確認

図-5 既設構造物との取り合いの確認

 
また、横断歩道橋に対しては建築限界2.5m+桁下の維持管理空間0.8m以上のクリアランスが必要となるため、各横断歩道橋の建築限界、維持管理空間を3次元モデル化し、道路中心線に対する断面を抽出することで、必要計画高さを漏れなく確認することができた。このような確認により縦断線形の精査をすることができた。
 
c)施工計画の妥当性の確認
 
宮前IC跨道部は交差条件および施工条件が非常に厳しく、上部工架設時および下部工施工時ともに2次元上での検討だけでは計画の妥当性の判断は困難であった。
 
そのため、橋梁計画と同じモデル上に施工機材を配置することで、各施工ステップの計画の妥当性を確認し、立体的に施工計画の精査を実施した。基礎はケーソン基礎が検討されており、必要となるクレーン等の施工機材を配置することでアームの回転の可否や施工ヤードが確保できているか等、その妥当性を確認することができた(図-6)。
 

下部工施工計画

図-6 下部工施工計画

 
また、上部工架設では一般的なトラッククレーンベント架設は難しいため、隣接する区間からの送り出し架設を検討した。送り出し架設の可否のため、隣接する区間にトラッククレーンおよびベントの設置を3次元上(架設計画モデル)で実施し、施工ヤードの確保が可能であるか等、妥当性を確認することができた(図-7)。
 

架設計画モデル

図-7 架設計画モデル

 
このように構造物が輻輳する箇所でBIM/CIMモデルを活用することにより、施工計画を立体的に立案することができた。
 

(4)道路詳細設計での活用

a)現道移設平面計画
 
現道移設平面計画にあたり、コントロールとなる下部工施工ヤードおよび上部工架設時の俯角影響範囲の確認にBIM/CIMモデルを活用した(図-8)。地形の起伏(現道の縦断線形)と専用部架設時の俯角影響ラインを3次元化することでコントロールポイントを正確に抽出し、手戻りの発生を未然に防ぐことが可能になる。さらに地形、計画道路BIM/CIMモデルと点群を合成することで、電柱やガードレール等の支障物件を漏れなく抽出できた。
 

俯角影響範囲の検討

図-8 俯角影響範囲の検討

 
b)設計精度の向上と照査の充実
 
橋梁施工における各ステップに対し、現道移設の道路詳細設計に基づいたBIM/CIMモデルを構築した。正確なモデルを構築することで、瞬時に任意の箇所における断面図を抽出可能となることから、民地との高低差や法面の切盛境等の確認が可能となり、2次元設計と比較して精度を上げること
ができた。また、建築限界のクリアランス確認や、将来の重要物流道路指定時における路線としての確認も同時に実施し、設計照査だけでなく、条件変更時の要対策箇所の抽出にも活用できた。
 
c)シミュレーションの実施
 
完成形モデルを利用し、交差点の見通し確認や走行シミュレーションを実施した。橋梁下部工施工の現道移設では、中央分離帯に防護柵を設置することとなり、透光パネル等の対応が必要になる場合が考えられるが、実際の走行シミュレーションをBIM/CIMモデル空間上で実施することで、道路利用者へ与える影響をイメージしながら、設計計画を立案することができた。
 
 

今後の活用方法について

(1)BIM/CIMモデルからの数量の算出/h6>

地形情報および構造物を3次元化しておくことで、施工予定区間内の土工数量の算出を自動化することができる。また、構造物の3次元モデルを作成し、構成部材ごとに材料に関する情報を属性情報として付与しておくことで、部材や材料ごとの数量を自動的に算出することができる。詳細設計時での数量算出に際し、BIM/CIMモデルを用いることで自動化させ、省力化を図ることができる。
 

(2)景観検討や設計説明会等での活用

点群データから作成した地形サーフェイス上にモデルを重ねることでより具体的なイメージ画像やシミュレーション動画を作成し、景観検討や設計説明会での資料作成に活用することができる。
 
具体的なイメージ画像やシミュレーション動画を共有することで、地元との迅速な合意形成を図ることが期待される。
 

(3)施工・管理への活用

BIM/CIMを活用し3次元での設計を行うことにより、施工時の出来形管理等を3次元で行うことが可能になる。
 
竣工図と設計図を重ねることで、図面では気付きにくい不整合箇所等を視覚的にも分かりやすく瞬時に確認することができる。また、将来管理を行う際にも、MMSを利用し、台帳を更新することで、日常管理における点検記録の効率化、構造物の劣化やひび割れ、路面の損傷等を迅速に確認することができる。
 
 

まとめ

計画段階から全長8.0kmに渡り3Dレーザースキャナー測量を実施し、取得した点群データをサーフェイス化した橋梁予備設計は、あまり例がないと思われる。
 
このような取り組みが一般化しない原因は、多大な労力、コストを必要とするためであると考えられる。本事例で得られた利点として、コントロールポイントや既設構造物との離隔、3次元的な施工ヤードの確認、完成形モデルを使ったシミュレーションによる確認等、計画の妥当性の検証が挙げられる。今後、地域住民に向けた設計説明会での完成形イメージの活用や、任意の箇所における民地との高低差確認などの個別対応の円滑化、任意の区間での数量算出による発注ロット調整など、事業実施における設計の手戻り防止や省力化が期待できる。
 
さらに、構造物の一連のプロセスにおいて適切なデータ管理がなされれば、設計趣意の伝達や物性値の管理、施工段階での活用、維持管理情報の集約等、BIM/CIMモデルを構築するメリットは大きくなっていくと考えられる。
 
引き続き、BIM/CIMの有効な活用方法を検討し、生産性向上に向け研さんを重ねていきたい。
 

国土交通省 関東地方整備局 企画部 技術管理課

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品