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はじめに

国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの取り組みにおいて、3次元データを基軸とする建設生産・管理システムを実現するためBIM/CIM(Building/Construction Information Modeling,Management)という概念において産官学一体となってBIM/CIMの取り組みを推進しています。なお、全体的な方針として令和5年度までに小規模構造物を除く全ての公共工事でBIM/CIMを活用することが示されており、北陸地方整備局においても令和2年度の実施方針として、大規模構造物予備設計からBIM/CIMを原則適用、そして前工程で作成した3次元データの成果品がある業務・工事についてもBIM/CIMを原則適用することとしています。
 
また、i-Constructionをより一層促進し、3次元データなどを活用した取り組みをリードする国土交通省直轄事業を実施する「i-Constructionモデル事務所」(全国10事務所)を平成31年3月に決定しており、北陸地方整備局では信濃川河川事務所が指定され、「大河津分水路改修事業」が『3次元情報活用モデル事業』となっています。
 
本稿では「大河津分水路改修事業」でのBIM/CIMの取り組みを紹介します。

 
 

大河津分水路改修事業の概要

大河津分水路は信濃川の洪水から越後平野を守るため、大正11年(1922年)に通水した延長約10kmの放水路です(図-1)。しかし、河口部は洪水を安全に流下させるための断面が不足しており、直近では、令和元年10月の台風19号による出水にて観測史上最高水位を記録し、約10時間にわたり計画高水位を超過するなど、大変危険な状態となっています。また、分水路は建設後90年以上が経過し、施設の老朽化などが進んでいます。
 

大河津分水路改修事業 位置図

図-1 大河津分水路改修事業 位置図




そのため、信濃川水系全体の洪水処理能力を向上させるため、大河津分水路の改修に着手することになりました。大河津分水路の改修に当たっては、課題となっている流下能力向上や河床の安定、老朽化施設の対策として、河口山地部掘削、低水路拡幅、第二床固の改築を実施する計画とし、事業期間は2015年から2032年までの18年間にわたり、全体事業費は1200億円となります(図-2)。
 
統合CIMモデル

統合CIMモデル(完成予想図)



信濃川河川事務所におけるBIM/CIMの取り組み

信濃川河川事務所ではi-Constructionモデル事務所としてさまざまな検討を進めていますが、ここでは大河津分水路改修で取り組んでいる「監督・検査でのBIM/CIMの活用検討」について紹介します。
 

(1)3次元データとVR技術を活用した出来形検査

信濃川河川事務所では対象構造物を3次元レーザースキャナで計測し、統合CIMモデルに取り込み、そのモデル空間にVR技術を活用し、出来形検査の試行を行いました(写真-1、図-3)。
 




バーチャル空間に表示される検査対象の3次元モデル

図-3 バーチャル空間に表示される検査対象の3次元モデル




検査官は事務所内にてVRゴーグルを装着し、ゴーグル内に表示される検査対象構造物の3次元モデルに計測ツールのカーソルを合わせ、出来形を計測することができます。
 
一方で、使用するハードやソフトにも依存する部分ですが、VR機材におけるコントローラーの操作感覚が職員で異なるなど、使用に際し困難な点もあることが確認できました。また、本来であれば一人で対応可能な検査でもパソコンを操作する職員が補助として必要になります。
 
一般化していくには、誰が操作しても同様の品質で成果が出せる必要があり、職員の習熟度の向上に合わせ、ハード・ソフトの機能改善が必要であることが確認できました。
 

(2)ウェアラブルカメラとウェブ会議による遠隔臨場検査

 
現在実施中(R2.10末時点)の工事において、ウェアラブルカメラとWeb会議の併用による法面保護工の遠隔臨場検査を実施しました。
 
現場では、ウェアラブルカメラを装着した受注者が施工個所に赴き、大河津出張所において検査官と受注者が立会のもと、Web会議により検査官指示のもと施工個所の立会検査を行いました(写真-2)。
 

検査官による立会検査の状況

写真-2 検査官による立会検査の状況




これにより検査官は現地で立会うことなく検査を実施できるため、現場への移動時間を削減することができます。
 
一方、受注者は検査に際し、現場を止めることなく検査を受けることができ、さらに立会う人員の抑制や検査時間の抑制が可能となりました。受注者からは、人工、工数でおおむね50%程度の削減効果があったとの報告を受けており、遠隔臨場検査による効果が確認できました。
 

(3)ウェアラブルカメラとMR(複合現実)技術を活用した段階確認

現在実施中(R2.10末時点)の工事において、ウェアラブルカメラとMR技術の一つであるMicrosoft社のHololensを活用して、ICT法面出来形確認を対象とし、遠隔での書類検査と臨場立会の試行を実施しました(写真-3)。
 

新しい協議形態の試行状況

写真-3 新しい協議形態の試行状況(MR技術の活用)




MR技術を活用することで、Holo-lensを装着した複数の担当者が、クラウド上で共有された書類や現地の情報をHololens越しに目の前で閲覧、確認できるため、あたかも臨場しているかのような環境で各種情報を確認することができるようになります。
 
 

おわりに

北陸地方整備局においては、本稿で紹介したi-Constructionモデル事務所の大河津分水路改修事業によるさまざまな取り組みの経験を基に、さらなるBIM/CIMの拡大を図るべく管内各事務所においてもBIM/CIMを活用し、生産性向上の推進を行っていきたいと考えています。
 

北陸地方整備局 企画部 技術管理課

 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 

 

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