- 2021-09-13
- 建設ITガイド
はじめに
国土交通省では、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進本部を設置し、2023年度までに小規模なものを除く全ての公共工事において、BIM/CIM活用への転換を実現することとしました。
BIM/CIM活用による生産性向上を目指すためには、契約~監督~検査のプロセス全体の3Dモデルによる工事契約手続きが必要になると考えています。本稿では、3Dモデルによる工事契約も見据えた中部地方整備局におけるBIM/CIM活用への転換に向けた取り組みを紹介します。
中部地方整備局における現場での取り組み
中部地方整備局では、2023年度(令和5年度)までに直轄工事の約9割を受注している「一般土木Cクラス」の受注者が、3Dモデルによる施工プロセス(契約~施工管理~完成図書納品)の対応ができることを目指し、インフラ分野のDX推進のロードマップ(図-1、2)を作成し、以下の取り組みを実施します。
(1)BIM/CIM活用への転換に向けた具体的な課題の解決を検討
具体的な課題検討を進めるため、分任官の道路新設工事を試行工事(モデル工事)に位置付けて、3Dモデルによる業務執行上の課題抽出、解決案を検討します。
課題抽出、解決案検討については、今年度発足した「中部i-Construction研究会」の構成員であるICTアドバイザー(BIM/CIMやICT施工経験のある建設コンサルタント、施工者、ソフトメーカー担当者等)の協力も得ながら、より現実的・実践的な検討を実施していきます。検討された解決案で対応可能なものは随時適用しながら、その結果も踏まえ、次年度以降、他工事へ横展開することで、短期間に多くの工事のBIM/CIM対応能力の底上げを目指します。
今年度の試行(モデル)工事として、i-Conサポート事務所でもある紀勢国道事務所の熊野道路における道路建設工事、下部工事を選定しました(図-3)。
今後、試行(モデル)工事による検証を先行させながら、順次、適用事業を拡大していく予定です。
(2)i-Constructionモデル事業「新丸 山ダム建設事業」
単一大規模構造物としてBIM/CIM活用効果の高いと考えられる新丸山ダム建設事業(新丸山ダム工事事務所)においてBIM/CIM適用拡大に向けた取り組みを推進します。
2020年度には本体工事を発注し、設計段階から施工段階へ移行します。3D統合モデルによって発注者、施工者、設計者との情報共有を推進し、無駄、手戻りのない施工を目指します。
本体工事は2D図面を契約図書として工事契約しますが、参考資料として工事受注者に3Dモデル(図-4)を提供し、受注者の協力も得ながら現場での施工効率化、高度化のさまざまな実証を検討していきます。施工情報を付与した3Dモデルは完成図書の一部として納品され、維持管理資料として活用していく予定です。
今後、ユースケースを想定した3Dモデルを作成し、事業全体の情報共有システムを構築して情報の一元化・共有を強化し生産性向上を目指します。
DX推進のための人材育成の取り組み
国土交通省、国土技術政策総合研究所等と連携して、2021年度からBIM/CIM活用できる人材育成するための拠点施設として、中部技術事務所に人材育成センターを整備していきます。1階はインフラ分野のDXを進めるさまざまな技術(BIM/CIM、VR、AR、遠隔臨場等)を体験でき、2階は高性能PCを使用できる数十人規模の講義、研修、セミナースペースとする予定です。
施設完成後は、さまざまな対象者(国、自治体の発注者、建設コンサルタント、工事施工者、学生等)に対してコンテンツを用意し、インフラ分野のDXによる効果を体感しながら具体的な技術を学ぶ場として活用していく予定です。
また、中部地方整備局には、DXルームを整備し、整備局来客者へBIM/CIM活用の紹介、現場フィールド(新丸山ダム)から配信されるリアルデータを用いたバーチャル体感により、DXによる効果を実感していただく予定です。
さらに中部地方整備局管内事務所へ複数台の高性能PCを導入し、職員自らが実際の業務・工事で活用できるよう環境整備を進めています。
おわりに
中部地方整備局では、BIM/CIM活用への転換を目指して、全国に先駆けて3Dモデルを主体とした業務執行にあたっての課題解決を進めていきます。
2021年度からは、中部地方整備局内で試行工事(モデル工事)を拡大していくとともに、そこで得られた課題や解決案を他の地方整備局とも共有していく予定です。
それにより実務的な課題に対応できるようになると考えており、2023年度には、3Dモデルの契約図書化を含め、3Dモデルを主体とした工事の実施を目標にしています。
最後に、中部技術事務所に整備する人材育成センターを活用して、中部地方のインフラ分野のDXをリードする人材の育成をしていくことで、建設業界の生産性向上と働き方改革、新たな生活様式への対応に寄与していきたいと考えています。
【出典】
建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”

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