建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 土木設計における生産性改革−パラメトリックモデルによる設計の取り組みについて−

 

パラメトリック設計の概要

(1)はじめに

本稿は、土木設計分野における新たなBIMCIMソリューションによる生産性改革の取り組みについて報告するものである。土木構造物の設計は、自動車などの製造業とは異なり、ある設計に対して条件はさまざまであり、単品生産のオーダーメード設計を強いられるものである。このことは、生産性に対して非常に不利であり、われわれコンサルの特徴であり足かせであった。特に、橋梁などの構造物設計にとって、設計計算、作図や数量計算は膨大な量であり、自動化は最重要課題である。また、初期段階における条件確定の持つ意味は大きい。条件変更による損失は工程が遅いほど甚大である。工程的に検討する内部的なフロントローディングを早急にできれば、このリスクを減らし生産性と設計の妥当性向上に寄与すると考えている。そこで、パラメトリックCADによる自動化が解決の糸口と考え導入を進め始めている。

(2)パラメトリックモデルの特徴

入力条件をパラメトリック(変数)とし、3Dモデルを出力できるCADをパラメトリックCADとするならば、3Dモデルの自動化もパラメトリックモデルの一種として考えてよいだろう(図-1)。

InfraWorksの橋梁計画の例

図-1 InfraWorksの橋梁計画の例




■オートデスク株式会社のCivil3D、Revit、InfraWorks
■川田テクノシステム株式会社のV-nasClair
■株式会社三英技研のSTRAXcube
 
これらは、線形条件・下部工設計条件・躯体寸法条件などの変数を自在に変更して、3Dモデルを自動に出力する自動設計タイプのパラメトリックCADである。しかし、そのロジックは各ベンダーの用意した変数に限られたものであり、詳細設計の場合や特殊事情全てに対応しているわけではない。汎用であるため、適用外の場合は手動で修正や作り直しになる場合がある。設計精度が低い計画段階や比較設計レベルでは問題とされないが、詳細レベルでは、従来のように3DCADによる積み上げ作業が主な手段となることが多い。
 
■ダッソー・システムズ株式会社 3D EXPERIENCE(CATIA)
 
このCADシステムは、パラメトリックCADの中では、汎用性を追求したもので、作図機能・コマンドそのものをプログラミングしていくこともできる。例えば、高さ20cmで直径が5cm肉厚1cmのコップを作る場合に5cmの円を高さ20cmに押し出して、肉厚が1cmを残して削るというロジック(論理構造)と入力変数を記憶できるのである。また、複雑な計算プログラム(VBA、C+、C#など)が組み込め、返り値を変数として用いることができる。よって、橋台の天端勾配を途中で切り替えたいなど、汎用ソフトではできなかったものでも、自由度が極めて広く応用が利くものである。さらには、応力度計算を組み込めば許容応力度を満足する部材厚さを返り値とした作図が可能であり、構造のシミュレーションに大きく貢献するものである。CATIAは、万能な究極のエンジニアツールであるが、使用には、多くの知識(幾何構造・プログラミング・エンジニアの資質)が必要であり習熟に多くの時間と投資が必要になる。しかしながらその恩恵は大きく、膨大な収束作業が必要な業務を省力化できるものである。また、類似業務に再利用が可能で生産性向上への効果が非常に大きい。
 

(3)BIM/CIM技術および自動化の取り組みの目的

これらの自動設計を含むパラメトリックCADのメリットは以下である。
 
①計画・設計プロセスを改善⇒膨大な積み上げ式の設計プロセスの改善。
 
②シミュレーション・フロントローディングが容易である。⇒3次元モデルの作成・変更が素早くでき、分かりやすく表現できるため合意形成が円滑に行える。環境・景観、使用性、施工方法、警察・河川協議の合意が迅速に行える。
 
③ミスを防止できる。⇒フロントローディングの効果により早くミスに気が付く⇒ミスしても早く修正できる。43次元モデルから2Dを切り出すことから縦横断・平面図と数量の不整合が生じない。
 
当社では、オートデスク社のAECC、ダッソー・システムズ社のCATIA、川田テクノシステム社のV-nasClair、三英技研社のSTRAXcubeなどのCADソフトを導入し、これらのソフトの互換性の検証と合わせ、さまざまな技術活用場面、顧客ニーズに応じた使い分けを実践している。また、3次元化と併行してCAD、設計計算と連携した自動化にも取り組んでいるところである。取り組みにおける一義の目的は、作業の効率化と働き方改革、生産性改革である。過去の経験的かつ段階的な設計ステップを全て見直し、新たな設計ステップを作り上げるとともに、生産性の向上を図ることを目指している。また、効率化にとどまらず、技術力の向上、コストパフォーマンスの向上の三位一体を目指している。
 
 

パラメトリック3Dシステムの導入

ダッソー・システムズ社とMOU(覚書)を締結し、パラメトリックによる設計、テンプレートの作成などを実施している。また、令和元年10月には「3DEXPERIENCE FORUM Japan2019」にて、砂防堰堤および橋梁の高度なシミュレーション能力や高い信頼性と生産性能力などの成果を公表した。

(1)砂防分野における活用

砂防分野では、計画および予備設計段階での砂防堰堤配置計画のパラメトリックによるテンプレートを作成し活用している。地形を作成し、砂防堰堤を任意の位置に設置し砂防堰堤のコンクリート体積、堆積土砂量を自動計算できる。
 
また、砂防堰堤の高さを任意に変化させることで堆積土砂量を再計算でき、さらに、堆積土砂量を設定し、自動的に土砂量に応じた任意の位置での砂防堰堤高を計算できる(図-2 ~7)。
 

砂防ダムの高さ変更計算の例

図-2 砂防ダムの高さ変更計算の例




砂防ダムの根入れ自動計算例

図-3 砂防ダムの根入れ自動計算例




堆積土砂量から堤体規模を逆算の例

図-4 堆積土砂量から堤体規模を逆算の例




収束自動計算例

図-5 収束自動計算例




副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例

図-6 副堰堤・水叩・側壁護岸の自動計算例




工事用道路の入力例

図-7 工事用道路の入力例



従来、この検討は河川線形に対して20mピッチの横断図を作成して、平均断面法にて算出するが堤体の位置や高さが変数となるため、その解は収束計算となり手間が非常に多く1カ月かかる検討である。この方法であれば数日程度でまとめることが可能であり、計画および予備設計段階での効率化に寄与している。
 

(2)橋梁分野における活用

橋梁分野では、詳細度500レベル(例えば、上部工では構造詳細、下部工では配筋レベルまで)のパラメトリックによる上部工(鋼およびコンクリート)、下部工(橋台、橋脚、杭)のテンプレートを作成している。形状の変更に伴い、上部工では、線形要素、桁本数、桁間隔、配筋、防護柵、下部工では、形状に追随して配筋などを自動で再配置することが可能となっている。数量などの属性情報は、CATIAが標準として実装している機能で自動計算される(図-8~12)。

 

曲線鋼歩道橋の例

図-8 曲線鋼歩道橋の例(その1)




曲線鋼歩道橋の例

図-9 曲線鋼歩道橋の例(その2)




基礎フーチングの例

図-10 基礎フーチングの例(その1)




基礎フーチングの例

図-11 基礎フーチングの例(その2)




LOD400の橋梁詳細モデル

図-12 LOD400の橋梁詳細モデル



(3)実施体制

社員および関係会社の人材育成を図るとともに、海外の協力会社の技術者、ダッソー・システムズ社の協力のもと、CATIA活用を推進している。
 
 

3Dによる設計の自動化

当社では、自社開発した橋梁一次選定プログラムと連動する川田テクノシステ ム 社V-nasClair、STRKit、下部工詳細設計計算ソフトを利用した自動設計に取り組んでいる。V-nasClairは、昨今、国土交通省の地方整備局でも導入され始めており、当社においても導入し活用を推進している(図-13、14)。
 

V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要

図-13 V-nasClair、STR_Kitと連動した自動設計の概要




STR_Kitによる橋梁下部工モデル

図-14 STR_Kitによる橋梁下部工モデル

 
 

技術分野における活用と実施体制

V-nasClairとSTR Kitの組み合わせにより、橋梁分野では、先行して自動設計の仕組みを構築し、設計段階での活用を開始している。また、河川分野では、V-nasClairとRiver Kitの組み合わせによる3次元図面作成の試行を開始している。なお、他分野では、顧客のニーズに合わせてV-nasClairを利用している。設計計算に関わる事項は、全社の橋梁系技術者、河川系技術者で利用しており、また、3次元図面作成は、オペレーターを中心に取り組んでいる。
 
 

i-Construction、BIM/CIM推進の課題

働き方改革や生産性改革の推進などを基本として、社内におけるBIM/CIMに精通したさらなる人材の育成が急務である。また、国内では、設計段階からBIM/CIM対応することが可能な協力会社が不足している。複数のBIM/CIM対応ソフトの導入、BIM/CIM対応ハードウエアへの更新などを考慮すると、初期段階では多くの投資が必要となる。
 
 

おわりに

パラメトリックデザインによる3次元設計を本格導入することで精度が高く、高度なシミュレーション・フロントローディングが可能である。その根幹となる変数とロジックからなる「数的論理構造」が重要なカギとなる。これらの蓄積はAI技術への応用が可能であり、将来の革新技術として期待されている。また、「数的論理構造」の蓄積を新人教育に導入することでエンジニアとしての資質向上に非常に有益であると同時に、若いエンジニアの自信や誇りにつながると感じており、技術の空洞化問題に対する一つの解決策でもあると考えている。
 
同様に、社外も視野に入れた早急な人材育成を推進するとともに、今後は、設計段階での活用にとどまらず、計画段階からのBIM/CIM技術の応用やデジタルツインによる維持・管理、運用への応用を目指している。
 
近年のIT技術は日進月歩であり、i-Constructionはさらに加速するだろう。このスピードと高度化に対応するためには、新しい技術に真摯に向き合い、より広い視野を持つことが必要と考える。業界の個別要素技術はもとより、通信技術や情報処理技術分野などの広い知見・技術がさらに必要になってきている。
 
 

パシフィックコンサルタンツ株式会社 品質技術開発部 i-Con推進センター 伊東 靖

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 

 

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