建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 令和元年東日本台風(台風第19号)災害復旧業務での取り組み

 

はじめに

弊社では、現場での測量調査の作業効率向上を図るため2017年から地上レーザースキャナーを導入しました。これと同時に社内のi-Constructionへの取り組みを加速させるため「i-Conプロジェクト委員会」が中心となり、積極的に地上レーザースキャナーやドローン等を業務に取り入れて、活用方法を模索しています。日頃の取り組みの中から災害復旧での事例を紹介します。
 
 

令和元年台風第19号における災害復旧業務

2019年10月12日、本州に上陸した台風第19号による記録的な豪雨により長野県内の多くの河川で氾濫が発生しました。弊社は、災害復旧を迅速に行うために、長野県上田市の一級河川 神川において地上レーザースキャナーを活用して被災箇所の現地測量を実施しました。
 
 

被災の状況

信濃川水系一級河川 神川は幅15~20m、高さ5~15mの谷状地形を流下しており、高さ5mのブロック張りや石張り護岸で流路を保護しています。台風第19号の大雨による増水により延長800mにわたり約3~4mの河床洗堀が生じたことで、護岸工基礎の露出および崩壊が発生しました(図-1、2)。
 

河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-1 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(1)




河床洗掘による護岸基礎の崩壊

図-2 河床洗掘による護岸基礎の崩壊(2)



 
 

安全かつ少人数での現地立ち入り

現地踏査で被災状況を確認する際は、安全第一を優先し護岸崩壊等による二次災害に注意しながら行う必要がありました。被災箇所の見落としを防止するための工夫として360°カメラによる全周囲撮影を行い、近接できない箇所は10mまで伸縮可能な自撮り棒を使用して撮影することで安全に配慮しました。
 
これにより、被災箇所の特定と測量範囲を迅速に発注者と協議ができました。現地踏査の結果、被災を受けた箇所は洗堀により護岸の裏込材が吸い出され崩壊の危険があること、測量のために近づくことが難しく被災範囲が広いので測量に要する期間と人員が多くか
かることが分かりました。当時、長野県内の複数地域における同時災害対応により、現地に入る社員の数が限られており、この問題を解決するため地上レーザースキャナーの採用により、点群データから設計に必要な図面を作成することに切り替えました。
 
 

地上レーザースキャナーによる計測

点群データから詳細設計に必要な図面を作成するために、従来の測量精度と同等またはそれ以上の精度確保を目標としました。
 
そのため、点群データの品質は、地上レーザースキャナーで用いる標定点の観測に、基準点測量および水準測量を用いて精度管理をしました。
 
 

約200カ所の据え替え

詳細な図面を作成するために、河川構造物の被災状況を把握しながら、隅々まで計測を行う必要があります。現地作業において苦労した点は、死角による計測漏れを防ぐために、スキャナーの設置箇所を考えながら作業を行ったことです。最終的に約200カ所にスキャナを据え替えての観測になりました(図-3)。
 

地上レーザースキャナーによる作業

図-3 地上レーザースキャナーによる作業



 

河床(水中部)の計測

弊社保有の地上レーザースキャナーでは水中部の計測はできないため、河床の計測には従来のトータルステーションを用い、横断方向2m×縦断方向4mの間隔で上流側から河床を計測し、水中部の点群データを補完しました。幸い作業時の水深は50cm程度ではありましたが、水難事故防止のため水中部の作業時にはフローティングベストおよびドライスーツを着用し安全対策を行いました。
 
 

点群データからの平面図作成

点群データから自動で平面図を作成することは、弊社の技術では難しいため、現地踏査で撮影した360°画像と、3D点群処理システムを用い、手作業での平面図作成を行いました。
 
作成方法は、従来の地形測量と同様に、構造物や変化点など観測点を結線していきますが、数十億点という点群データを基に結線していくので、従来の測量では計測できない急斜面の地形や、複雑な形状の地物を忠実に表現することが可能となりました。大容量の点群データはストレスになります。ストレスなく処理するために高性能パソコンにより作業速度を速めました(図-4)。
 
点群データからの平面図作成



 

河川線形および縦横断図の作成

平面図と点群データのコントロールポイントを基に現況の河川線形と復旧延長をパソコン上にて検討を行い決定しました。
 
点群データの利活用における最大のメリットとして、どの箇所でも自由に断面が切れるところです。今回の災害現場においては、河床洗掘により不安定な河川構造物や、護岸が崩壊している箇所など多数の被災箇所があり、多くの断面図が必要になりました。しかし、平面図作成と同様に、点群データを用いて全てパソコン上にて図面の作成が行え、計測漏れによる現場での追加作業は生じませんでした(図-5、6)。
 
架橋位置は横断図の本数が多く、通常の測量では時間と人員を費やしますが、今回は容易に作図できました(図-7)。
 

コントロールポイントの抽出

図-5 コントロールポイントの抽出




河川線形の検討

図-6 河川線形の検討




 
点群データからの横断図作成


 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

作業期間の短縮効果を、作業項目ごとのトータル日数と人工により従来調査との比較を行いました。
 
なお、従来調査は、これまでの経験から本現場状況に当てはめた想定であり、現場状況に応じて作業効率も変わるため、ご注意願います。
 
本事例では従来調査に比べ、地上レーザースキャナー活用による調査が、9日間の短縮25人工の削減の効果があり、迅速な災害復旧対応の実現と、作業従事者の負担軽減が図られる結果が得られました(図-8)。
 

従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較

図-8 従来調査と地上レーザースキャナー活用の比較



おわりに

今回、広範囲での詳細な点群データの計測を実施した結果、当初の想定を上回る生産性の向上が見られました。スキャナーの設置回数が多くなる現場では、スキャナー本体が小型かつ軽量であるほど効率が増すことも分かりました。
 
災害復旧では迅速な対応が必要となるため、現場作業での機動力と対応力が重要となってきます。ドローンや地上レーザースキャナー等の計測技術の向上により現場作業が容易になると言われていますが、災害などの緊急時に保有機材を使いこなせるかは、通常業務での活用による実績が決め手と考えます。
 
現在、私たちは、建設コンサルタントとして本格的なBIM/CIM運用を目指し、新技術の普段使いに取り組んでいます。
 
これからも向上心と好奇心をなくさぬよう努めてまいります。
 

BIM/CIM業務での社内ミーティング

BIM/CIM業務での社内ミーティング



株式会社 フジテック 技術部 小田切 裕弥

 
 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 
 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品