建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 災害発生時の臭気対策について 〜習志野市の取組み〜

 

はじめに

習志野市は千葉県の北西部に位置し,東京からほぼ30km圏内にあります。東は千葉市,西は船橋市,北は八千代市に接し,南は東京湾に面しています(図−1)。
面積は,昭和41年と昭和52年の二度にわたる埋め立て工事に伴い20.97km2となり,人口は約17万人に達しています。
 
本市の公共下水道事業は,昭和40年度に下水道基本計画を策定し,事業に着手しました。
現在は公有水面等を除く市域全域(20.36km2)を全体計画区域としており,印旛処理区,津田沼処理区,高瀬処理区の3つの処理区に分けて事業を実施しています(図−2)。
排除方式は,印旛処理区が分流式,津田沼処理区が分流式一部合流式,高瀬処理区が合流式一部分流式により整備しており,令和元年度末の下水道処理人口普及率は95.2%になっています。
また持続可能な安定経営と経営状況の透明性向上を目的として,平成31年4月より地方公営企業法の全部を適用し,下水道事業はガス・水道事業を展開する習志野市企業局と組織統合しました。
 

  • 習志野市の位置
    図−1 習志野市の位置
  • 習志野市下水道計画概略図
    図−2 習志野市下水道計画概略図

  • 1.東日本大震災による被害状況

    本市では,平成23年3月11日に発生した東日本大震災により,東京湾埋立地である国道14号以南の地区において,液状化現象による被害が発生しました。
    下水道施設については,地震によりマンホール等がずれ,下水道管が破損するとともに,液状化した土砂が下水道管内に流入し,下水道管が閉塞するなどの被害が生じました(写真−1,2,3)。
    特に被害が大きかったのが,津田沼処理区の分流区域である袖ケ浦・香澄地区で,土砂閉塞による下水道管の被害が面積約50ha,延長約14km,被災戸数約1500戸に及びました。
    幹線管渠においては,秋津1号汚水幹線(内径800mm)の下水道管が破断し,土砂により約300m区間が閉塞するとともに,秋津1号汚水幹線と香澄汚水幹線(内径800mm・1200mm)の会合点の特殊マンホールが損傷し,大規模な道路陥没が発生しました。
    この影響により約500haの区域が排水不良となりました(図−3,写真−4)。
     
    秋津1号汚水幹線は,上流側に秋津汚水中継ポンプ場があり,そこから汚水がポンプ圧送され流れる構造になっています。
    しかし下流側の下水道管が閉塞したため,ポンプ圧送された汚水が行き場を失い,マンホールや汚水桝などから道路上に溢水し,集水桝から雨水管を経由し二級河川の菊田川に流出する事態が生じました(写真−5,6)。
     
    そこで緊急的な対応として,菊田川に簡易処理施設を平成23年4月末に設置しました。
    これは菊田川の一部を鋼矢板で仕切って,汚水を一時滞留させ,沈殿処理を行い塩素滅菌したうえで上澄み水を放流するもので,施設は延長約50m,幅約4〜5m,貯留量約570m3の規模で設置しました(写真−7)。
     

  • 香澄地区(マンホールずれ)
    写真−1 香澄地区(マンホールずれ)
  • 香澄地区(マンホール閉塞)
    写真−2 香澄地区(マンホール閉塞)

  • 袖ケ浦地区(下水道管破断)
    写真−3 袖ケ浦地区(下水道管破断)
  • 秋津1号汚水幹線閉塞状況(φ800)
    写真−4 秋津1号汚水幹線閉塞状況(φ800)

  • マンホールより汚水溢水
    写真−5 マンホールより汚水溢水
  • 河川に汚水流出
    写真−6 河川に汚水流出

  • 簡易処理施設設置状況
    写真−7 簡易処理施設設置状況

  • 被害状況図
    図−3 被害状況図

  • 2.臭気対策

    簡易処理施設での応急的な処理により,河川への影響を極力抑える対応を行いましたが,汚水がそのまま河川側に流れ込む状況が続いたため,悪臭の問題が生じることになりました。
    簡易処理施設を設置した周辺は,閑静な住宅街が隣接しているため,汚水による悪臭を不快に感じる住民からの苦情が相次ぎました。
    そこで本市では直ちに臭気調査を行った結果,簡易処理施設においては,汚水が滞留し堆積した汚泥の腐敗が進行したことで,臭気濃度20,000の臭気が確認されたのと共に,危険性ガスである硫化水素についても75ppmと高濃度で発生している状況が確認されました。
    硫化水素は10〜15ppm程度の濃度で,6時間居ると目に炎症を起こすほどの影響があるとされているので,危険性ガスが高濃度で発生している状況でした。
    そのため悪臭への対応と危険性ガスへの安全面での対応が必要と判断し,検討の結果,水環境を考慮した薬剤による臭気対策を実施することとしました。
     
    臭気対策は,秋津汚水中継ポンプ場と簡易処理施設の2ヶ所で行いました。
    秋津汚水中継ポンプ場においては,薬剤添加装置を用いて液体酸化剤系薬剤「ムシュウゲンLY−X」(無臭元工業(株)製)による定量添加を行いました(写真−8,9,10,11)。
    薬剤の添加量は,対象水量13当たり40g(40ppm)を添加し,1日に換算すると180kgの薬剤を投入しました。
    このことにより硫化水素・メチルメルカプタンなどの悪臭臭気の抑制を図りました。
    また簡易処理施設においては,散布機を用いて水面に向けて直接,アルカリ性粒状腐敗抑制剤「無臭元P014−UZ」(同)による薬剤散布を実施しました(写真−12,13)。
    薬剤の添加量は,対象水面12当たり2kgを添加し,1回当たり500kgの薬剤を投入しました。
    このことにより汚水中の不溶解性物質(SS)の沈降堆積汚泥による腐敗の抑制を図りました。
     

  • 薬剤添加装置設置状況①(地上1階 資材搬入口)
    写真−8 薬剤添加装置設置状況①
        (地上1階 資材搬入口)
  • 薬剤添加装置設置状況②(地上1階 資材搬入口)
    写真−9 薬剤添加装置設置状況②
        (地上1階 資材搬入口)

  • 薬剤添加場所 (地下1階 汚水調整槽)
    写真−10 薬剤添加場所 
         (地下1階 汚水調整槽)
  • ムシュウゲンLY−X
    写真−11 ムシュウゲンLY−X

  • 簡易処理施設 薬剤散布状況
    写真−12 簡易処理施設 薬剤散布状況
  • 無臭元P014−UZ
    写真−13 無臭元P014−UZ

  • 3.対策の効果

    臭気対策は,閉塞した秋津1号汚水幹線の仮排水管工事が完了する平成23年7月1日までの約2カ月間実施しました。
    それまでの間,秋津汚水中継ポンプ場では毎日,薬剤(ムシュウゲンLY−X)の定量添加を行い,簡易処理施設においては,2週間に1回の頻度で計4回の薬剤散布(無臭元P014−UZ)を行いました。
     
    これらの対策を実施したことで硫化水素は75ppm発生していたものが検出限界値以下〜4.5ppm,メチルメルカプタンは5ppmあったものが検出限界値以下〜0.2ppmまで抑えられ,臭気濃度も20,000であったものが3,000〜5,500に抑えることができました(表−1)。
    それに伴い近隣住民からの苦情も減少し,危険性ガスである硫化水素の発生も抑えられたことで安全性も確保できたものと考えています。
    また水環境に影響が少ない薬剤を使用したため,河川への影響も最低限に抑えることができました。
     

  • 簡易処理施設付近における臭気測定結果
    表−1 簡易処理施設付近における臭気測定結果

  • おわりに

    地震による被害が発生した際には,さまざまな対応が求められます。
    東日本大震災の時は,すべてが初めての経験であり手探り状態でそれらの対応にあたっていました。
    今回紹介した災害発生時の臭気対策は,その中の一部ではありますが,見落としがちな部分です。
    こういった対応を行った教訓を,今後の地震被害などが発生した際に生かしていきたいと思います。


     
     
     

    習志野市 企業局 工務部 下水道課 課長
    山﨑 昇

     
     
    【出典】


    積算資料公表価格版2021年3月号


     
     

     

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