建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 災害時のトイレを変えてゆく

 

はじめに

近年,日本列島では,地震,台風,局地的な豪雨などさまざまな災害が頻発しており,その被害は年々規模が大きく,また被災する地域も限定的ではなくなっている印象を受ける。
日本に住む誰もが被災者となり得てしまう状況と考えられるのではないか。
 
災害時にインフラが被害を受けた場合,普段我々が利用している水洗トイレは使えなくなり,被災者は避難所に設置される仮設トイレなどを使うこととなるが,これまでの災害を振り返ると仮設トイレは「汚い」「臭い」「使いづらい」「数が足りない」などの批判を受けてきた。
 
避難所のトイレを改善するにはどうすればいいのか。
実は建設現場のトイレを改善することが最も重要なのである。
 
 

1.災害トイレ研究会の取組

当研究会についてご紹介させていただく。
一般社団法人日本トイレ協会 災害・仮設トイレ研究会(以下,災害トイレ研)は,2019年11月に発足した。
日本トイレ協会ではかねてより災害時のトイレ環境について調査研究を行ってきたが,災害トイレ研はさらなる災害時のトイレ事情の改善を目指して結成された。
会員企業は仮設トイレメーカー,仮設トイレレンタル企業,携帯・簡易トイレメーカー,携帯・簡易トイレ取扱企業,トイレに関する周辺商品メーカーおよび取扱企業など,計15社(2021年1月現在)と日本トイレ協会の一部運営委員で構成されている。
主な活動内容は図−1の通りとなる。
 

  • 一般社団法人日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会
    図−1 一般社団法人日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会

  • 研究会会員企業の仮設トイレ(一部)
    写真−1
    研究会会員企業の仮設トイレ(一部)
  • 研究会会員企業の仮設トイレ(一部)
  • 研究会会員企業の仮設トイレ(一部)
  • 研究会会員企業の仮設トイレ(一部)
  • 研究会会員企業の仮設トイレ(一部)

  • 2.避難所トイレの実態

    避難所のトイレの実態はどのようなものなのか。
    先述したように,2011年東日本大震災,2016年熊本地震,その後も2018年北海道胆振東部地震,同年7月豪雨,2019年台風15号,2020年7月豪雨など,災害は全国各地で起きたが,当研究会メンバーは都度,現地調査を行ってきた。
    その中で分かったことは,批判を浴びることが多かった避難所の仮設トイレは,「少しずつ良くなってきている」という事実である。
    これは2016年から国土交通省(以下,国交省)が施策を行ってきた「快適トイレ」の普及が一因とも考えられる(図−2)。
     
    また,国が被災地に仮設トイレを手配する場合は,洋式トイレが中心となっているのが最近の傾向だ。
    2020年7月豪雨ではユニバーサルトイレ(主に車椅子ユーザーや障害を持った方,高齢者等が使用することを念頭に置いたトイレ)も設置されている。
     
    しかし,発災後すぐに届くトイレは,和式となることも多い。
    これはなぜなのか。
    実はレンタル企業の余剰在庫の種類に起因するところが大きいのである。
    災害時には,普段建設現場で使われている仮設トイレの余剰在庫が避難所などへ運ばれていく。
    当研究会での調査では,仮設トイレの余剰在庫の内訳は和式トイレ74%,洋式トイレ26%という結果が出た。
    これにより和式トイレが避難所などへ設置される比率は,洋式トイレが設置されるよりもはるかに高いということが分かる(図−3)。
     
    国交省の施策の影響もあり,各仮設トイレメーカーは洋式トイレや「快適トイレ」の製造を進めているが,実際に建設現場へ出荷されるのは和式トイレが多い(図−4,図−5)。
    その理由は,住宅建築現場や地場の建設会社が請け負う現場など,全国のあらゆる建設現場では,洋式トイレ・快適トイレの存在や,それらを設置することによりもたらされる「労働環境改善,担い手不足の解消」につながるという効果が周知しきれていない,洋式トイレが建設現場に普及しない理由には,同じ便座に腰掛けることに対する抵抗感が強く設置をしない,などの要因があると考えられる。
    直近の調査によると「快適トイレ」は,国交省の直轄工事現場において45.6%の設置率であり(図−2),他の自治体や民間の建設会社も導入を進めてはいるが,全国の建設現場に「快適トイレ」が浸透するには,今後も時間と建設業界関係者の意識改革が必要だと考えられる。
     

  • 地域別快適トイレ設置工事件数・設置率(出典:国土交通省)
    図−2 地域別快適トイレ設置工事件数・設置率(出典:国土交通省)

  • 仮設トイレ余剰在庫数(日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
    図−3 仮設トイレ余剰在庫数
       (日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
  • メーカーにおける快適トイレ・洋式・和式の製造比率(日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
    図−4 メーカーにおける快適トイレ・洋式・和式の製造比率
       (日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
  • レンタル機における仮設トイレの出荷比率(和式・洋式別)(日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
    図−5 レンタル機における仮設トイレの出荷比率(和式・洋式別)
       (日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)

  • 3.既設トイレのユニバーサル化の必要性

    また,当研究会に加盟するレンタル企業におけるユニバーサルトイレ保有率を調査すると,全体のおよそ0.1%という結果であった。
    これは,そもそもユニバーサルトイレが建設現場ではなくイベントなどで使用されることが多い製品であるため,その数が圧倒的に少ないことがこの調査で明確ということである。
    従って,今後も災害時の避難所などに仮設のユニバーサルトイレが設置される確率は低く,既設のトイレのユニバーサル化を進める必要があると考えられる。
     
     

    4.仮設トイレの設置・運搬・メンテナンス

    災害時の仮設トイレは,被災地に届くまでに3日〜1週間を要してしまうことが多い。
    これには輸送に必要な車両の確保が難しいことや道路の被害の情報共有の仕組みが整っておらず時間を要してしまうなどの要因がある。
    問題解決には輸送業界の協力が不可欠であるため,当研究会では積極的に業界団体同士の協力体制を整えていく予定である。
     
    また,仮設トイレを設置してからのメンテナンスも非常に重要である。感染症対策も叫ばれる中,避難所で実際に衛生管理を行う者がトイレの清掃やメンテナンスに関する知識を得ておくことが最も必要である。
    これらの課題を検討,解決するための日本トイレ協会主催「全国トイレシンポジウム」が2020年11月12日に東京ビッグサイトで開催され,多くの来場者に聴講いただいた(写真−2)。
     

  • レンタル機における仮設トイレの出荷比率(和式・洋式別)(日本トイレ協会災害・仮設トイレ研究会の調査結果)
    写真−2 全国トイレシンポジウムの様子

  • おわりに

    本稿に掲載したものを含む当研究会の調査結果は今後HPなどで公開していく予定である。
    当研究会は,今後も災害時のトイレ環境改善のため,より活発にさまざまな活動を行っていく所存である。


     
     
     

    一般社団法人日本トイレ協会 災害・仮設トイレ研究会

     
     
    【出典】


    積算資料公表価格版2021年3月号


     
     

     

    同じカテゴリの新着記事

    最新の記事5件

    カテゴリ一覧

    バックナンバー

    話題の新商品