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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 東北地区の価格動向

 

1.はじめに

甚大な被害をもたらした東日本大震災から10年が経過し,震災復旧・復興関連工事も終盤を迎えている。
震災発生直後は,地震と津波によるプラント損壊,浸水,水没などの深刻な打撃を受けた。
鉄道の運休や高速道路の通行止めなどから物流が滞り,また,石油製品や原材料の生産プラントも地震被害や点検のため稼動を休止した影響などから,セメントやスト・アス,骨材,および輸送用燃料(軽油)の調達が困難な状況となった。
ここでは,東日本大震災で被災3県の沿岸地区での主要地場資材について,震災発生前から現在までの価格動向を考察する。
 

2.震災後の価格推移

仙台地区の主要資材3品目(生コンクリート,コンクリート用砕石,アスファルト混合物)の震災発生前と直近の価格変動については,図-1のとおりである。
 
震災発生以降,震災復旧・復興関連工事による需要の増加に伴い,震災発生後2~4年の間に価格は,段階的に大きく上伸した。
 
生コンクリートおよびコンクリート用砕石(骨材)等の上伸の経緯をたどると,2011年秋頃より震災復旧関連工事による需要が増加したことから,燃料高騰,運搬車両不足,人員不足等の要因が顕在化しはじめた。
これに伴い骨材価格が上伸するとともに,骨材需給のひっ迫が顕著となってきた。
骨材を安定的に確保するため,海上輸送など,地区外からの購入をせざるを得ない状況となったことによるコストアップも,生コンクリートの価格上伸の大きな要因となった。
震災発生直前との比較で変動額が最も大きかったのは宮古地区であり,生コンクリートがm3当たり9,800円,コンクリート用砂利でm3当たり1,700円の上伸を示した。
 
2015年の中頃まで震災復旧・復興関連工事の需要とともに,各地区における主要建設資材の価格は段階的に上伸。
その後,高止まり状態で値動きは落ち着いた状況がしばらく続いたものの,久慈地区においては,需要増加に伴う骨材の値上がりなどの影響により,生コンクリートが2018年5月,2019年9月に上伸した。
 
アスファルト混合物は,震災発生前から高騰していた主原料のスト・アスが,震災直後は生産拠点の被災もあり,遠方からの供給を余儀なくされる事態が生じた。
スト・アスの高騰はその後も続き,輸送燃料の高騰,運搬車不足により,2011年7月に各地区のアスファルト混合物価格は上伸した。その後,骨材価格の値上がりもあり,2014年の中頃まで各地区の価格は段階的に上伸した。
 
しかしながら,震災復興関連工事が終盤を迎えると,上伸を続けてきた価格も,需要減少による影響から,地区によっては下落に転じた主要地場資材も出てきた。
生コンクリートでは,仙台地区においては,2017年3月にm3当たり300円下落した後,段階的に下落しピーク時に比べ2,200円値下がりした。
また,宮古地区においては,復旧・復興工事のために稼働していた1工場が2020年4月に撤退。
2020年8月に1,900円の下落となった。
アスファルト混合物では,スト・アスの値下がりにより,2016年1月および9月に仙台,石巻,気仙沼,亘理で下落した後,さらに2016年5月には,各地区で下落となった。
 

3.おわりに

東日本大震災は,震災発生後の供給施設の被害,物流の混乱など資材調達が困難となり,急激な需要の増加とともに主要地場資材の価格に大きな影響を与えた。
 
需要の増加とともに各地区とも一斉に右肩上がりだった価格も震災復旧・復興関連工事の減少により,価格動向も地区ごとに独自の動きとなってきている。
 
注:文中の○○○○年○月は,本誌の調査月。
 

  • 生コンクリート(仙台)
  • コンクリート砕石(仙台)
  • アスファルト混合物


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    一般財団法人 経済調査会 東北支部 次長
    佐藤 憲夫(さとうのりお)

     

    一般財団法人 経済調査会 経済調査研究所 研究成果普及部 普及推進室

     
     
    【出典】


    積算資料2021年4月号


    最終更新日:2021-10-18

     

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