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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > UR都市機構の東日本大震災における復旧・復興支援の取り組み

 

1.はじめに

平成23年3月11日に発生し,太平洋沿岸部の広範囲に甚大な被害をもたらした東日本大震災の発災から,10年が経過しました。
 
独立行政法人都市再生機構(以下,UR都市機構)は,発災直後からUR賃貸住宅や応急仮設住宅建設用地の提供・技術職員の派遣等を行い,被災地の復旧・復興を支援するとともに,平成24年1月より,被災自治体からの要請に基づいて復興市街地整備や災害公営住宅の建設に着手しました。
これまでに26の被災自治体と協定等を締結し,最大時には460人体制で,その後も事業の進捗に応じて体制を確保し,復興まちづくりを着実に進めてきました(図-1表-1)。
 
本稿では,UR都市機構が実施する東日本大震災からの復旧・復興支援の取り組みを紹介します。
 
なお,記載内容は令和3年2月1日現在のものです。
 

  • UR都市機構の支援体制
    図-1 UR都市機構の支援体制】

  • 支援地区一覧(令和3年2月1日現在)
    表-1 支援地区一覧(令和3年2月1日現在)】

  • 2.復興まちづくりを実現する事業手法と役割

    (1)津波被災地域における復興市街地整備事業

    津波被災地域の復興においては,住宅地の高台移転や既成市街地のかさ上げによるまちづくりが基本となりますが,その実現に当たっては,土地区画整理事業,防災集団移転促進事業,津波復興拠点整備事業,漁業集落防災機能強化事業等のさまざまな事業手法を,被災規模や立地条件(市街地か漁村集落か),再建方法(高台移転か現位置再建か)等に応じて,各事業の特徴やメリットが引き出せるように組み合わせ,宅地の早期引渡しを実現しました。
     
    UR都市機構は津波被災地域において12の被災自治体からパッケージ(計画・換地・補償・工事・調整など)で一括委託を受け,平成24年度から22地区,約1,314haの復興市街地整備事業を実施してきました。
    土地区画整理事業については,被災市街地土地区画整理事業65地区のうち25地区をUR都市機構が支援(計画受託を含む)し,比較的大規模な地区を中心に,地権者数300名以上の地区は12地区中9地区を,地区面積100ha以上の地区は3地区全てを支援しました(写真-1)。
     
    東日本大震災からの復興においては,被災規模が極めて大きく被災地も広範囲にわたる一方で,1日も早い住宅再建,まちびらきが求められたことから,民間のノウハウを活用し,工期の短縮や資機材の早期調達,施工方法の工夫を図るため,官民が明確な役割分担のもと事業を強力に推進するCM(コンストラクション・マネジメント)方式を19地区で導入し,事業の推進に大きく寄与しました(図-2)。
     
    UR都市機構は基盤整備だけでなく,整備完了後の土地利活用促進に向けた取り組みについても自治体を支援してきました。
    代表例としては気仙沼市の鹿折地区と南気仙沼地区で実施した「復興まちづくり事業者等エントリー制度」があります。
    同取り組みにより沿道商業施設等の立地が進み,被災者の生活の利便性向上に大きく寄与しました。
     

  • 女川駅周辺の街並み(宮城県女川町)
    写真-1 女川駅周辺の街並み】(宮城県女川町)

  • CM方式概要
    図-2 CM方式概要】

  • (2)災害公営住宅整備事業

    災害公営住宅整備事業は,震災により住宅を失い自力で住宅を確保することが難しい方に,低廉な家賃で賃貸する公営住宅を整備する事業です。
     
    UR都市機構は,日本住宅公団時代から続くノウハウを生かして,被災自治体からの要請に基づいて災害公営住宅を建設し,譲渡しています。被災自治体が戸数・構造などの条件を示し,その後の設計,工事発注手続きから建設までを一体的にUR都市機構が担うことで,自治体にかかる事務処理や工事管理などの負担が軽減されました。
     
    これまでに,17の被災自治体で建設を支援しており,5,833戸について平成29年度までに完成しました(写真-2)。また,同年度に要請を受けた99戸(岩手県盛岡市・南青山地区)についても,令和3年1月に引渡しを終え,要請を受けた全ての地区で整備を完了しました。
     
    災害公営住宅に入居の方は,高齢や単身の方々も多く,大きな環境変化を経て,新たなコミュニティ形成がスムーズに進むかが,課題の一つとなっていました。
    UR都市機構は,整備する住宅において,設計上の配慮に加え,入居前後の交流活動等のソフト支援についても積極的に自治体に協力を行ってきました(写真-3)。
     

  • 女川駅周辺の街並み(宮城県女川町)
    写真-2 市営気仙沼駅前住宅】
    (平成28年10月・平成29年5月竣工 194戸)
  • 女川駅周辺の街並み(宮城県女川町)
    写真-3 入居予定者・周辺 住民向け表札づくりワークショップ 】
    (岩手県盛岡市・南青山地区)

  • (3)福島県の原子力災害被災地域における復興支援

    福島県の原子力災害による被災地域では,除染の進捗およびインフラの復旧に伴い避難指示が徐々に解除され,住民の帰還の動きが出ていますが,福島県では今なお約3万7,000人(令和2年9月現在)の住民が避難生活を余儀なくされています。
     
    一方で,避難指示が解除された地域でも,避難が長期化した地域ほど帰還者は少ないという傾向にあり,特に長期の避難生活や放射線量への不安により,帰還を断念せざるを得なかった住民も多数います。
    生活サービスの再開や住民コミュニティの回復への不安から帰還を迷っている方も多く,住民の帰還促進,地域の再生が大きな課題となっています。
     
    こうした地域課題の解決に向け,UR都市機構は,全町避難からの復興を目指す大熊町,双葉町,浪江町において,①復興拠点整備,②公的施設の発注者支援,③地域再生支援の大きく3つの柱で支援を進めています(図-3写真-4)。
     
    ①復興拠点整備
    帰還される住民の生活再開や地域経済の再建の場となる復興拠点を整備するため,基本構想や基本設計等の構想・計画段階から事業実施までを支援しています。
     
    ②公的施設の発注者支援
    自治体職員のマンパワー不足に対処するため,自治体が発注する公的施設の建築工事等について,基本構想・基本計画検討の段階から設計および工事の発注手続き等の支援,さらに設計および工事の品質・工程・コストの管理,各種申請手続き等を支援しています。
     
    ③地域再生支援
    住民の帰還促進のため,施設立上げに向けた運営体制の構築,地域コミュニティの場づくり,さまざまな分野の課題解決に資する関係人口の案内・誘導等,地域の再生に向けた課題の解決を支援しています。
     
    令和2年度末の「復興・創生期間」終了を見据え,令和元年12月に「復興・創生期間後の基本方針」が閣議決定され,原子力災害被災地域については当面10年間,本格的な復興・再生に向けた取り組みを行うこととされました。それを受けて,UR都市機構も引き続き福島の復興・再生に取り組んでいきます。
     

  • UR都市機構の支援地区(福島原子力災害被災地域)
    図-3 UR都市機構の支援地区】
    (福島原子力災害被災地域)
  • 大川原地区事業区域(福島県大熊町)
    写真-4 大川原地区事業区域】
    (福島県大熊町)

  • 3.おわりに

    昨今,台風や集中豪雨等の災害が頻発しており,また南海トラフ巨大地震や首都直下地震も発生するおそれがある中,UR都市機構では大規模災害発生時における災害支援体制を強化するため,平成30年4月に災害対応支援室を本社に設置,さらに令和2年度においては中部支社・西日本支社・九州支社へも組織を拡大し,社内外の窓口を担うとともに,支援ノウハウの蓄積,復旧・復興支援に対応できる職員の育成,事前防災や復旧・復興支援に係る地方公共団体等への研修・啓発活動を推進しています。
    加えて,UR都市機構は,令和元年7月に内閣総理大臣から災害対策基本法に基づく指定公共機関に指定され,これを機に自治体の支援体制や関係機関との連携のさらなる強化を図っています。
     
    また,東日本大震災の復興支援に関するさまざまな取り組みを記録として残し,今後の大規模災害等における活用を図るため,東日本大震災の復興支援に関する事業記録の取りまとめを進めています。
     
    東日本大震災からの復興については,発災から10年を迎えました。UR都市機構としても,復興の総仕上げを行う一方,令和3年度以降の「第2期復興・創生期間」に向け必要な支援を行うことで,被災された方々が1日も早く安心した生活を送れるよう,引き続き,復興まちづくりに全力で取り組んでまいります。



     
     
     

    独立行政法人都市再生機構 震災復興支援室

     
     
     
    【出典】


    建築施工単価2021春号



     
     
     

    最終更新日:2021-11-01

     

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