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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 「3.11伝承ロード」活動について 〜東日本大震災を忘れない〜

 

1.はじめに

東北経済連合会と東北地域づくり協会が設置した一般財団法人3.11伝承ロード推進機構(以下,伝承機構)は,東日本大震災の教訓の伝承と被災地の活性化のための組織として2019年8月1日に発足した。
「教訓が,いのちを救う」を基本コンセプトにして東日本大震災の教訓を伝える活動を行っている。
「学び」と「備え」によって必ず自然災害を克服し,命を守ることができる信念がビジョンである。
 
「3.11伝承ロード」とは,被災地にある多くの震災遺構(津波被害の石碑,被災した小学校などの建物,奇跡の一本松など)と数十カ所の伝承施設をネットワーク化し,東日本大震災の教訓を風化させずに伝えていく取り組みである。
被災地にある震災遺構や伝承施設を震災の教訓の「学び」の場とし,防災・減災の「備え」についても理解していただくために,国内外から多くの方に来ていただき,防災力の向上だけでなく,被災地との交流を促し,地域活性化に貢献すると期待されている。
以下に,これまでの伝承機構の活動について紹介する。
 
 

2.教訓を学べる震災伝承施設の情報発信

被災地には「震災伝承ネットワーク協議会」により,登録された震災伝承施設が271(2021年2月現在)を数える。
これらの施設では国内外の多くの方に震災の教訓を学ぶ場として活用していただくための情報発信を行っている。
 
具体的には2019年9月にホームページを開設し,その中で震災伝承施設の紹介と案内を行っている。
2020年4月にはスマートフォンへの対応やFacebookページの開設など,利便性を高めている。
3月以降はコロナ禍による震災伝承施設の臨時休館が続いたことから,開館状況を7月までタイムリーにホームページに掲載した。
 
また,「3.11伝承ロード」マップを登録施設数の増加に対応するため2020年7月に更新した(写真-1)。
10月には多言語化に向けて英語版を作成した。
さらに,被災地への来訪機会の増加と滞在の長期化につなげるため,震災伝承施設のほかに,周辺の祭りや食などの観光資源も入れたイラストマップも県単位で作成した。
 
一方,「3.11伝承ロード」の知名度アップや裾野の広い周知活動に向けてロゴマークを作成した。
全国的な知名度アップに向けて一体感のある情報発信をする観点のもと,震災伝承ネットワーク協議会をはじめとする行政関係者に活用していただいている。
また,このロゴマークをピンバッジや缶バッジに活用し,伝承機構の関係者や研修会の参加者,「3.11伝承ロード」のファンに配布している(写真-2)。
 

  • 「3.11伝承ロード」マップ
    写真-1 「3.11伝承ロード」マップ】

  • ロゴマークをデザインしたピンバッジと缶バッジ
    写真-2 ロゴマークをデザインしたピンバッジと缶バッジ】

  • 3.「3.11伝承ロード」の啓発活動

    「3.11伝承ロード」の啓発活動として,さまざまなイベントに合わせパネル展示を実施している。
    世界防災フォーラム前日祭(2019年11月9日),東北地域づくり協会主催の講演会(同年12月11日),海上保安庁第二管区海上保安本部主催の「3.11伝承コンサート」(2020年2月2日)において実施した。
    7月14日からは東京臨海広域防災公園「そなエリア東京」で,10月には福島県楢葉町の震災伝承施設「みんなの交流館ならはCANvas」で行った。
    また,11月20日から2カ月間,東北地方整備局と岩手県が共催する「東日本大震災3.11伝承ロードパネル展in岩手」においては伝承機構も協力し,県内10カ所でリレーパネル展を行った。
     
    本格的な啓発活動に向けて,2020年度からは「防災・伝承セミナー」を被災4県持ち回りで開催することにした。その第1回を10月24日に福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で開催した(写真-3)。
    コロナ禍の影響を考慮し,セミナー会場には30名程度の小人数で聴講していただき,同時にWebでもリモート中継する手法で開催した。
    リモート聴講者は183名・機関と想定より多く,いくつかの施設では来館者も視聴できるようパブリックビューイングを行ったと聞いている。
     
    概要は,伝承機構の理事で福島大学前副学長の小沢喜仁教授に基調講演として,「3.11伝承ロードとは何か」をテーマにお話をいただいた。
    パネルディスカッションでは「福島県における東日本大震災の伝承と実践」をテーマに,県内で震災伝承に熱心な首長,学識者,伝承館の館長,語り部団体代表により議論をしていただいた。
    また,この状況を広く福島県民に訴求する観点から地元紙に採録した。
     

  • 防災・伝承セミナーでのパネルディスカッション
    写真-3 防災・伝承セミナーでのパネルディスカッション】

  • 4.被災地へ集客を図る伝承ツーリズム

    伝承機構が企画した第1号の「3.11伝承ロード研修会」は,建設業関係者を対象とした1泊2日のコースで,2019年11月に2回開催した。主な震災伝承施設を案内し,語り部なども全て伝承機構が手配し,津波に襲われながらも営業再開を果たした「宝来館」に宿泊する企画で行った。
    関東や北陸方面からの参加者も多く,合計70名の参加でツアーは満席になった(写真-4)。
    参加者へのアンケートでは「命を守るための判断力を養うことが大切だと実感した」「年齢も性別も,実体験も違うさまざまな体験者から生の声,話を聞くことができた。
    報道で見聞きするのとは違うインパクトがあった」といった声が寄せられた。
    また,「案内した全ての施設において強い印象に残った」と回答を得るとともに,次回への参加意向が8割を超える(図-1)など,今後の研修企画の参考になった。
     
    2020年に入るとコロナ禍の影響もあり,その影響が薄らいだ7月以降から徐々に研修への申込みがあり,2020年では6件の研修会を開催することができた。
    今後は,関係団体・企業や行政関係の職員だけでなく,大学・学校における防災教育等へも活用いただけるような研修企画を考える予定でいる。
     
    団体研修以外にも一般の多くの方に震災伝承施設に来ていただけるよう旅行業者と連携し,「3.11伝承ロード」を活用した旅行商品化の検討を行っている。
    その一環として,2020年7月13日に旅行業者を対象にした「3.11伝承ロード研修会モニターツアー」を開催した(写真-5)。
    参加者は旅行・観光関係者など総勢20名で実施した(時節柄,新型コロナウイルス感染症防止対策のガイドラインに基づいて行った)。
    参加者からは「防災教育においては非常に良いコンテンツ」「観光的要素を加えると一般旅行者向けにも活用できる」といった意見が寄せられた。
    参加者には今後,モニターツアーを参考に,実際の旅行客や修学旅行生等を対象として,震災伝承施設を活用した旅行商品の造成を期待している。
     

  • 震災遺構旧大川小学校で語り部の話に熱心に耳を傾ける研修会参加者
    写真-4 震災遺構旧大川小学校で
    語り部の話に熱心に耳を傾ける研修会参加者】
  • モニターツアーで東日本大震災津波伝承館を視察中の旅行業者
    写真-5 モニターツアーで
    東日本大震災津波伝承館を視察中の旅行業者】

  • 次回への参加意向
    図-1 次回への参加意向】

  • 5.東日本大震災10周年記念事業

    伝承機構では,東日本大震災10周年記念事業の企画として,復旧・復興で活躍した建設業界の活動を震災のレガシーとして残すために「映像アーカイブ事業」を実施している。
    震災直後の道路啓開や津波の浸水排水作業などは,警察・消防の人命救助前の緊急作業として行い,孤立した避難所への緊急物資の輸送にも大きな貢献を果たした。
    過去に例を見ないスピードで復旧・復興事業に尽力した建設業界の活動は,自治体等の支援を得ながら,さまざまな知見や技術を駆使して行われたものである。
    これらの活動は各団体や企業が独自に記録として保存してはいるものの,人目に触れることはない。
    10周年という節目を契機に団体や企業,社員個人が所有している資料や写真,映像などを活用して,これらの活動を可視化し,建設業界の遺産とするために,団体や企業ごとに映像に編集し残したいと考えている。
    もちろん,これらは依頼された団体や企業関係者の記録として残るだけでなく,震災伝承施設や伝承ロード研修会への活用を図るとともに,インターネットなどを通じて,広く社会に対する建設業界の貢献やイメージアップ,就職を希望する学生の呼び水になればと考えている。

     
     

    6.3.11伝承ロードを活用した受託事業

    2020年度においては,復興庁と観光庁からの補助事業を受託している。
    いずれの事業も「3.11伝承ロード」をテーマとした被災地への誘客を進めるための事業である。
     
    復興庁の補助事業は,『「新しい東北」交流拡大モデル事業“Kataribeonthe3.11DenshoRoad”』という事業で,三陸沿岸地域の経済発展につなげるため,社会的付加価値の高い語り部活動を地域資源として活用する新たな仕組みづくりを目的として,欧米豪の英語圏のインバウンドを対象とした語り部の観光商品化に向けた取り組みである。
    具体的には,①訪日旅行商品として満足度の高い体験価値への磨き上げとして,語り部の通訳ガイド研修やモニターツアーの実施,②旅行商品の造成とセールスコール,旅行者と語り部のマッチング窓口機能の構築,③ランドオペレーターや語り部,通訳士,震災伝承施設管理事業者に取り組みに対する認知の向上を図り,旅行事業者との関係構築を図るものである。
     
    コロナ禍の影響により,海外向けのセールスコールを在日外国人向けに切り替えて実施したが,インバウンド向けの語り部マッチング機能を有することになり,伝承機構にとって大きな財産になると期待している。
     
    観光庁からは2つの補助事業を受託している。
    1つ目は「台湾における訪日プロモーション事業」である。
    これは台湾の防災意識が高い層をターゲットに,旅行会社やメディアの招請,映像制作,セミナーの開催を通じ,東北の太平洋沿岸地域における固有の歴史・伝統文化,雄大な自然景観と合わせ,震災伝承施設等での防災に対する学びについて発信・訴求し,「3.11伝承ロード」の認知度向上と誘客促進を図るものであるが,コロナ禍の影響を考慮し,旅行会社の招請は見合わせ,現地セミナーも日本側をリモートに変更して実施する予定だ。
     
    2つ目は「伝承ロードバス事業」である。
    これは観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」における実証事業として採択された事業である。
    復興した被災地を見たいと考えている震災ボランティアや復旧・復興事業の関係者,遠隔地に定住した被災者等は多いと思われる。
    また,被災地には震災遺構や伝承施設が数多く整備され,「もの言わぬ語り部」としてその価値や関心は高まりつつあると同時に,語り部等による伝承活動も顕在化している。
    それらを結びつけるために,主要な駅から被災地や震災伝承施設を巡るコースを設定し,伝承ロードバスとして運行する事業である。
    具体的には,仙台駅を起終点として女川町や石巻市,東松島市等の震災伝承施設を周遊するコースになっており,多くの方に被災地に来ていただき,復興状況を見ていただきたいと考えている。

     
     

    7.おわりに

    震災伝承ネットワーク協議会では現在271施設を震災伝承施設として登録している。
    伝承機構はそれらの施設で構成されるネットワークを活用し,「3.11伝承ロード」という大きなストーリーを構築したいと考えている。
    その大きなストーリーには,震災直後から危険や苦労を顧みず,被災地の復旧・復興まで導いた建設業界の活動も含まれている。
    いずれはこのような多くの貢献を明らかにしつつ,「学び」と「備え」の重要性を縦横に紡ぎながら,「防災力の向上」と「地域の活性化」という大きな目標に向けて活動していきたいと考えている。
     
    その成果として,被災地に多くの方に来ていただき,住民・行政・企業それぞれの立場の方々から「学び」と「備え」に理解が得られ,防災意識社会の構築が図られると考えている。
    この大きな成果を得られる仕組みとして伝承機構が存在し,全国各地における防災意識社会の構築に貢献したいと願っている。
     
     


    (一財)3.11伝承ロード推進機構のHP https://www.311densho.or.jp/

     
     

    震災伝承施設

    震災伝承施設とは,東日本大震災から得られた実情と教訓を伝承する施設で,以下のいずれかの項目に該当する施設です。
    ①災害の教訓が理解できるもの
    ②災害時の防災に貢献できるもの
    ③災害の恐怖や自然の畏怖を理解できるもの
    ④災害における歴史的・学術的価値があるもの
    ⑤その他(災害の実情や教訓の伝承と認められるもの)
     

  • 震災伝承施設を表すピクトグラム
    震災伝承施設を表すピクトグラム
  • 震災伝承施設を表すピクトグラム

  • [分類選定の条件]

    第1分類★
    下記の項目のいずれか1つ以上に該当する施設
    ①災害の教訓が理解できるもの
    ②災害時の防災に貢献できるもの
    ③災害の恐怖や自然の畏怖を理解できるもの
    ④災害における歴史的・学術的価値があるもの
    ⑤その他,災害の実情や教訓の伝承と認められるもの
     
    第2分類★★
    震災伝承施設を表すピクトグラム
    第1分類の条件を満たし,かつ公共交通機関等の利便性が高い,近隣に有料または無料の駐車場があるなど,来訪者が訪問しやすい施設
     
    第3分類★★★
    第2分類の条件を満たし,かつ案内員の配置や語り部活動など,来訪者の理解しやすさに配慮している施設
     

  • 登録状況(2021年 2月現在)
    【登録状況(2021年 2月現在)】

  • 震災伝承施設

    現在,第3分類★★★に登録されている施設から一部を紹介します。
    詳細やそのほかの施設については,(一財)3.11伝承ロード推進機構HPをご覧ください。
    https://www.311densho.or.jp


    青森県

  • 八戸市みなと体験学習館
    ■八戸市みなと体験学習館
    青森県八戸市大字湊町字館鼻67番地7


  • 岩手県

  • いのちをつなぐ未来館
    ■いのちをつなぐ未来館
    岩手県釜石市鵜住居町4丁目901番地2


  • 岩手県

  • 東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)
    ■東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)
    岩手県陸前高田市気仙町字土手影180番地


  • 宮城県

  • 気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館
    ■気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館
    宮城県気仙沼市波路上瀬向9番地1


  • 宮城県

  • 震災遺構 仙台市立荒浜小学校
    ■震災遺構 仙台市立荒浜小学校
    宮城県仙台市若林区荒浜字新堀端32番地1


  • 福島県

  • いわき震災伝承みらい館
    ■いわき震災伝承みらい館
    福島県いわき市薄磯3丁目11番地


  • 福島県

  • 福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39番地
    ■東日本大震災・原子力災害伝承館
    福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39番地


  •  
     
     

    一般財団法人3.11伝承ロード推進機構 事務局長
    原田 吉信(はらだ よしのぶ)

     
     
     
    【出典】


    建築施工単価2021春号



     
     
     

     

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