建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 直轄土木工事における働き方改革の取組

 

1. はじめに

建設業における生産性の向上や担い手の確保は喫緊の課題である。国土交通省では,2016年度から建設現場の生産性向上を図るi-Constructionに取り組んでおり,2025年度までに生産性を2割向上させることを目標としている。
 
一方で,2018年6月には,1日8時間,1週間で40時間の労働が原則とされる時間外労働規制が盛り込まれた改正労働基準法が成立した。
違反した場合は,雇用主が6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されることになり,建設業は5年間の猶予が設けられ,2024年4月より適用されることになった。
また,2019年6月には,新・担い手3法が改正され,休日,準備期間,天候等を考慮した適正な工期設定等が発注者の責務として明確に位置付けられた。
 
このように,建設業における技術者・技能労働者の働き方改革や処遇改善が喫緊の課題となっていることを踏まえ,本稿では国土交通省が発注する直轄土木工事(港湾等を除く)における適正工期の確保,週休2日の確保の取組について紹介する。
 
 

2. 適正な工期の設定

国土交通省では,直轄土木工事において適正な工期を設定するため,昨年3月に直轄土木工事における適正な工期設定指針(以下,「指針」という)を策定した。
工期,コスト,品質はトレードオフの関係にある中で,指針における適正な工期とは,設計図書に規定する品質の工事目的物と標準的な施工方法(コスト)によって施工する際に必要となる工期を指している。
 
指針では,直轄土木工事において①余裕期間,②準備期間,③施工に必要な実日数,④不稼働日,⑤後片付け期間を適切に考慮した工期を設定することとしている。
このうち,個別工事の工期を設定する際に,国土交通省が一般に公開している工期設定支援システムを活用することにしている。
このシステムを活用することで,先述の各々の期間を考慮して工程表を作成することができる。
 
また,工期設定に係る条件を設計図書に明示することも指針に位置付けている。
特に,週休2日対象工事(発注者指定方式)においては,条件明示の一環として,概略工程表等の入札公告時の参考資料として公表することとしているほか,そのほかの工事においても公表に努めることとしている。
 
施工段階においては,工事工程のクリティカルパスを受発注者間で共有することとしている。
これにより,発注当初に想定していた条件と異なる事象が生じた場合に工期や工事費の変更を円滑に行うことが可能となる。
 
また,工事完成後には実績工事工程を収集し,その後の工事の工期設定をより適正なものにするための材料として活用することとしている。
 
 

3. 週休2日の確保

直轄土木工事では,現場閉所を伴って週休2日を確保する場合,必要経費として労務費,機械経費(賃料),共通仮設費,現場管理費を補正する措置を行ってきた。
これらの措置により,週休2日の実施件数では2016年度は165件であったのに対して,2019年度は4,835件と全工事件数の約50%まで取組が拡大しており,2021年度においても措置を継続した(表−1)。
 
また,土木工事の中には通年の維持工事など,土日祝日も含めた作業が必要で現場閉所が困難な工事も存在している。
こうした現場閉所が困難な工事においても休日の確保は重要な課題であることから,2019年度より技術者・技能労働者が交替しながら週休2日を確保する週休2日交替制モデル工事を試行している。
 
週休2日交替制モデル工事では,2019年度は156件を公告し72件で実施,2020年度(9月時点)は342件を公告し175件で実施している。
これは,維持工事等の工事件数と比べると取組の拡大が十分ではない。
そのため,これまでの運用により得られた課題を整理し,2021年度からは,労務費に加え,新たに現場管理費の補正措置を導入することとした(表−2)。
 
このほか,2024年4月には全ての直轄土木工事で週休2日を実現するため,直轄土木工事における週休2日の取組方針を整理した(図−1)。
現在,現場閉所が可能な工事では,発注者指定方式及び受注者希望方式を併用して週休2日対象工事を公告している。
 
これに対して,本年度から,本官工事では原則として発注者指定方式により公告し,分任官工事でも段階的に発注者指定方式による公告を拡大していくこととしている。
 
また,現場閉所が困難な維持工事等においても,昨年度は受注者希望方式で公告しているが,本年度から発注者指定方式による公告を順次拡大させることとしている。
これにより,最終的には全ての工事において,週休2日を確保することを目指している。
 

  • 週休2日の補正係数
    表−1 週休2日交替制モデル工事の補正係数

  • 応援企画の統一ロゴマーク
    表−2 応援企画の統一ロゴマーク

  • 週休2日工事及び週休2日交替制モデル工事の取組方針
    図−1 週休2日工事及び週休2日交替制モデル工事の取組方針

  • 4. 建設現場における遠隔臨場の試行

    土木工事では,発注者・受注者ともに,施工現場へ出向いて工事の進捗確認等を実施してきた。
    しかし,事務所等から施工現場までの往復に多くの時間を要する場合があるほか,発注者・受注者双方の日程調整が難航する場合もあった。
     
    このような課題に対して,IoT技術を活用して解決を目指す取組の一つが遠隔臨場である。
    遠隔臨場とは,ウェアラブルカメラ等による映像と音声の双方向通信を活用し,「段階確認」,「材料確認」及び「立会」を行うものである(図−2)。
    遠隔臨場では,施工現場に必要最小限の人員を配置すれば,他の発注者・受注者の担当者はオンラインで参加することができるため,日程調整の簡素化,移動時間の削減などにより業務効率化が期待できる(図−3)。
     
    直轄土木工事では,過年度からの取組を踏まえ,2020年3月に「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)」,「建設現場における遠隔臨場に関する監督・検査試行要領(案)」を策定し,2020年度に約560件の工事で試行を実施した。
     
    試行結果を踏まえ,同年度末に試行要領を改定した。
    引き続き,社会実装に向けて試行を継続していく予定である。
     

  • 遠隔臨場(概要)
    図−2 遠隔臨場(概要)

  • 遠隔臨場の効果
    図−3 遠隔臨場の効果

  • 5. おわりに

    建設業における働き方改革の推進については,こうした発注者の取組に加え,受注者による技術者・技能労働者への適切な支払いが重要である。
    国土交通省では建設業界と連携し,受発注者双方がそれぞれの役割を果たしながら取組を進めていきたい。
     
     


     
     
     

    (前)国土交通省 大臣官房 技術調査課 事業評価・保全企画官
    大場 慎治(おおば しんじ)

     
     
    【出典】


    積算資料2021年6月号


     

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