• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 流域治水関連法について ─あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の推進に向けて─

 

1. 背 景

近年,令和元年東日本台風や令和2年7月豪雨等,全国各地で水災害が激甚化・頻発化しており,また,気候変動の影響により,21世紀末には,全国平均で降雨量が1.1倍,洪水発生頻度が2倍になるとの試算もある。
 
こうした状況を踏まえ,降雨量の増大等に対応したハード整備の加速化・充実や治水計画の見直しに加え,上流・下流や本川・支川の流域全体を俯瞰し,国,流域自治体,企業・住民等,あらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」の実効性を高める法的枠組みである「流域治水関連法」を整備する必要がある。
 
具体的には,特定都市河川浸水被害対策法(平成15年法律第77号)をはじめ,水防法(昭和24年法律第193号),下水道法(昭和33年法律第79号),河川法(昭和39年法律第167号),都市計画法(昭和43年法律第100号),防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律(昭和47年法律第132号)等,関連9法を改正し,流域治水の実効性を高めることとする。
 
なお,法改正の詳細は,以下の2~5において,対策別に説明する。
 

  • 流域治水のイメージ
    【流域治水のイメージ】

  • 2. 流域治水の計画・体制の強化

    流域治水の実効性を高めるための対策として,まず,特定都市河川浸水被害対策法に位置付けられている,流域水害対策計画を活用する河川(特定都市河川)を拡大する。
    具体的には,市街化の進展により河川整備で被害防止が困難な河川に加え,自然的条件により河川整備で被害防止が困難な河川を特定都市河川として指定することができることとする。
     
    また,国,都道府県,市町村等の関係者が一堂に会し,官民による雨水貯留浸透対策の強化,浸水エリアの土地利用等,流域水害対策について協議するための協議会を創設するとともに,当該協議結果を流域水害対策計画に位置付け,確実に実施していくこととする。
     
     

    3. 氾濫をできるだけ防ぐための対策

    次に,河川における対策強化の一環として,河川管理者,電力会社等の利水者等が参画する,利水ダムの事前放流の拡大を図るための協議会を創設する。
     
    また,下水道における対策強化の一環として,下水道で浸水被害を防ぐべき目標降雨を計画に位置付け,整備を加速するとともに,下水道の樋門等の操作ルールの策定を義務付け,河川等から市街地への逆流等を確実に防止する。
     
    さらに,流域における雨水貯留対策強化の一環として,貯留機能保全区域を創設することにより沿川の保水・遊水機能を有する土地を確保するとともに,都市部の緑地を保全し,貯留浸透機能を有するグリーンインフラとして活用するほか,認定制度,補助,税制特例により,自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備を支援する。
     

  • 【雨水貯留浸透施設整備のイメージ】
    【雨水貯留浸透施設整備のイメージ】

  • 4. 被害対象を減少させるための対策

    次に,水防災に対応したまちづくりとの連携や住まい方の工夫を推進する観点から,浸水被害防止区域を創設し,浸水被害の危険が著しく高いエリアにおける住宅や要配慮者利用施設等の洪水等に対する安全性を事前に確認する開発・建築許可制度を設けるとともに,防災集団移転促進事業のエリア要件の拡充等により,洪水等による危険エリアからの住居の移転を促進するほか,災害時の避難先となる拠点の整備や地区単位の浸水対策により,市街地の安全性を強化する。

     

  • 【浸水被害の危険が著しく高いエリアのイメージ】
    【浸水被害の危険が著しく高いエリアのイメージ】

  • 5. 被害の軽減,早期復旧・復興のための対策

    最後に,被害の軽減を図る観点から,洪水等に対応したハザードマップの作成を中小河川等まで拡大し,リスク情報の空白域を解消するとともに,洪水時等における要配慮者利用施設に係る避難計画・避難訓練に対する市町村の助言・勧告制度を創設することにより,避難の実効性を確保する。
     
    また,災害からの早期復旧・復興を図る観点から,河川法において国土交通大臣の権限を拡大し,国が河川工事等の権限代行を行うことができる範囲を二級河川等から準用河川にまで拡大するほか,災害時に河川に堆積した土砂等の撤去を国が都道府県等に代わって行うことができることとする。
     
     

    6. おわりに

    上記2~5で説明した内容を主な改正事項とする「流域治水関連法」は,本年4月に第204回国会で成立し,「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第31号)として,本年5月10日(月)に公布されたところである。
     
    今後,本法律は改正事項の別に応じて,それぞれ公布の日から3カ月,6カ月を超えない範囲内において,別途政令で定める日から施行されることとなるが,流域治水の実効性を高めるためには,改正後の各法律の適切な運用を図るととも
     

  • 【特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(令和3年法律第31号)】
    【特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(令和3年法律第31号)】

  •  
     
     

    国土交通省 水管理・国土保全局 水政課 法規第一係長
    降籏 涼介(ふりはた りょうすけ)

     
     
    【出典】


    積算資料2021年6月号


    最終更新日:2021-11-08

     

    同じカテゴリの新着記事

    ピックアップ電子カタログ

    最新の記事5件

    カテゴリ一覧

    話題の新商品