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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > 木材利用促進法に基づく木材利用状況 〜令和元年度 国の公共建築物の木造化率〜

 

1.はじめに

農林水産大臣および国土交通大臣は,「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(以下「法」という)に基づき,毎年1回,「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」(以下「基本方針」という)に基づく措置の実施状況を公表することとなっています。
 
本稿では,令和元年度中に工事が完成した国の公共建築物における木材の利用状況(木造化・内装等の木質化),木材利用の促進に向けた取り組みの結果等,令和3年3月26日に公表した取りまとめの概要を紹介いたします。
 
 

2.令和元年度における措置の実施状況

(1)国が整備する公共建築物における木材の利用状況
1)木造化

基本方針で積極的に木造化を促進するとされている低層(3階建て以下)の建築物※注1は,国が整備する公共建築物全体で80棟が新築・増築されました。
このうち,木造化を行った建築物は,72棟,合計延べ面積1万3,698m²となり,この結果,木造化率は棟数ベースで90.0%となり,2年連続で9割を達成しました(表-1)。

  • 公共建築工事積算基準類の体系(青枠の基準類を今回改定)
    表-1 公共建築工事積算基準類の体系(青枠の基準類を今回改定)

  • 2)内装等の木質化

    木造化を行ったものを除き,新築,改修,模様替え等の機会において内装等の木質化を行った建築物は,132棟となりました。
     
     

    3)木材の使用量

    木造化および内装等の木質化を合わせた木材の使用量は,5,372m³となりました。
     
     

    (2)各省各庁における木材利用の取り組み
    1)事業企画,計画段階での木材利用促進に係る取り組み

    ●国土交通省では,営繕計画書に関する意見書制度を通じ,積極的に木造化を促進する範囲にある各省各庁の施設計画について,木造化されていることの確認を実施しました。
     
    ●財務省では,「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」を定め,公共建築物の木造化および内装等の木質化を推進するとともに,CLTや木質耐火部材等の新たな木質部材の活用促進にも取り組むこととしています。
     また,国土交通省から毎年8月に,各省各庁営繕計画書に関する意見書が送付された際,財務本省から各組織に対して,意見内容(木造利用促進の観点から構造種別について要検討)の周知・指導を実施しています。
     
    ●林野庁では,農林水産省本省および関係機関(地方農政局,森林管理局,漁業調整事務所等)に対して,省内での各会議や通知等により,木材利用についての働きかけや情報提供を実施しました。
     
    ●環境省では,平成23年4月に「公共建築物における木材の利用の促進のための計画」を制定し,国立公園,国民公園,世界自然遺産などにおける施設の設置に当たっては,木造化および内装の木質化を原則として図ることとしています。
     
     

    2)技術基準類の整備

    ●国土交通省では,建築基準法施行令を改正し,木目を生かした内装を実現できるよう建築物の内装制限に係る基準の見直し等を実施しました(令和元年12月11日公布・令和2年4月1日施行)。
     
    ●国土交通省では,中規模木造庁舎(4階建て,3,000m³,耐火建築物)を軸組構法およびCLTパネル工法として設計する際の課題,配慮すべき事項等を把握するため,試設計を行い,設計を行う過程におけるポイントを取りまとめ,公表しました。
     
     

    3)木造公共建築物の整備等に対する補助事業

    ●文部科学省では,木造校舎の整備や内装の木質化に対して国庫補助を実施しました。
     特に,地域材を活用して木造施設を整備する場合や,環境を考慮した学校施設(エコスクール)として認定を受けて内装木質化を行う場合,国庫補助単価の加算措置を実施しました。
     
    ●林野庁では,地域材を利用し,設計上の工夫
    や木材調達を通じた,低コストで合理的な木造公共建築物の工事費等に対する支援,整備資金の借入れに係る利子助成を実施しました。
     また,中高層建築物等におけるCLTや木質耐火部材等の利用拡大に向けた技術開発等を支援するとともに,木造化・木質化に必要な知見を有する建築士等を育成するための,セミナーや情報発信等の取り組みの支援を行いました。
     
    ●国土交通省では,構造・防火面における先導的な設計・施工技術を導入する木造建築物等の整備に対する補助制度により,庁舎,病院等の木造建築物等の整備を支援しました。
     
    ●環境省では,地方公共団体が行う国定公園等の整備を交付金で支援しており,自然公園内の歩道・階段整備などに地元産の木材が積極的に活用されています。
     交付金により,令和元年度に完成した建築物(博物展示施設,公衆トイレ等)は32棟,その木材使用量は183mm³,建築物以外の工作物(柵,木道,段差工等)の木材使用量は933mm³となりました。
     
     

    4)木材の適切な供給の確保に関する取り組み

    林野庁では,林業の生産性の向上に向けて,施業を集約化し,計画的に搬出間伐を行う者に対する支援を行ったほか,林道等の路網整備等を実施しました。
     
    また,地域材を利用した木材製品の安定的・効率的な供給体制の構築や,木材産業の競争力強化に資する木材加工流通施設の整備への支援,合法伐採木材等の流通および利用の促進に関する法律の普及および同法に基づく木材関連事業者の登録促進のためのセミナー等の実施を支援しました。
     
     

    5)地方公共団体に対する働きかけ等

    林野庁では,都道府県を通じて間接的に,法の趣旨の浸透や市町村方針の策定への働きかけを行いました。その結果,全市町村における市町村方針の策定割合は,令和元年度末に92%まで増加しました。
     
    また,全都道府県に対して,法律に基づく公共建築物への木材利用の取組状況に関するアンケート調査を実施し,その結果や先進的な取り組み等を取りまとめ,都道府県・市町村に提供しました。
     
    加えて,国土交通省の建築着工統計をもとに都道府県別の公共建築物の木造率を試算して公表するとともに,都道府県に対し,公共建築物への木材利用の一層の促進について働きかけを行いました。
     
     

    6)木材利用促進に関する講習会,研修等の実施

    ●文部科学省では,木材利用の取り組みの一助となるよう,都道府県,市町村担当者,学校 関係者,設計者等を対象にした講習会を開催しました。
     さらに,学校施設における木材利用が一層促進されるよう,CLTを活用した学校施設等の事例集「木の学校づくり 学校施設等のCLT活用事例」を作成し,都道府県教育委員会等に配布するとともに,ホームページにて公表しました。
     
    ●林野庁では,公共建築物等の木材利用促進を図るため,中大規模木造建築物の設計に当たっての制度,木材や木質建材の特性等についての知識および技術を習得し,中大規模木造建築物の構造設計の概念を理解する技術者等を育成する「公共建築物等木材利用促進研修」(森林技術総合研修所)を実施しました(令和元年7月29日〜8月2日)。
     
    ●国土交通省では,公共建築分野において木材の利用の促進と木造化の推進を担う人材の育成を目的とした「木材利用推進研修」(国土交通大学校)を実施しました(令和元年10月29日〜11月1日)。

  • (木造化)【海保大国際交流センター国際講義棟】〈広島県〉
    (木造化)
    【海保大国際交流センター国際講義棟】
    〈広島県〉
  • (木造化)【帯広第2地方合同庁舎 自転車置場】〈北海道〉
    (木造化)
    【帯広第2地方合同庁舎 自転車置場】
    〈北海道〉

  • (木造化)【国立民族共生公園工房】〈北海道〉
    (木造化)
    【国立民族共生公園工房】
    〈北海道〉
  • (内装の木質化)【迎賓館赤坂離宮前休憩所】〈東京都〉
    (内装の木質化)
    【迎賓館赤坂離宮前休憩所】
    〈東京都〉

  • (内装の木質化)【福岡第2法務総合庁舎】〈福岡県〉
    (内装の木質化)
    【福岡第2法務総合庁舎】
    〈福岡県〉
  • (内装の木質化)【屋内トレーニングセンター・イースト】〈東京都〉
    (内装の木質化)
    【屋内トレーニングセンター・イースト】
    〈東京都〉

  • 3.実施状況を踏まえて講ずべき措置

    (1)国が講ずべき措置

    令和元年度の実施状況を踏まえ,公共建築物における木材の利用のより効果的な促進に資するよう講ずべき主な措置は,以下のとおりです。
     
    ①各省各庁は,各省計画に従って国が整備する公共建築物における木材の利用を確実に推進するとともに,建築物における木材の需要の拡大のため,CLT等の新たな木質部材の活用に努めます。
     さらに,独立行政法人等,関係機関に対して木材の利用に関して積極的な働きかけを行います。
     
    ②農林水産省および国土交通省は,公共建築物の木造化等の取り組みが確実に実施されるよう,「公共建築物木材利用促進関係省庁等連絡会議」を適宜開催し,施設整備主体への働きかけや新たな取組事例の情報提供などを行います。
     また,国土交通省は,予算要求段階において各省各庁の営繕計画書に関する意見書制度を活用するなど,より一層の木造化,内装等の木質化の実施について働きかけを行います。
     
     

    (2)国が地方公共団体等に対して講ずべき措置

    地方公共団体等における取組状況を踏まえ,国が地方公共団体や関係業界団体等に対して講ずべき主な措置は,以下のとおりです。
     
    ①市町村方針については,林業関係の専門性を有した職員が少ない場合も多いことから,木材利用に関する疑問点等についてアドバイスを行い,より多くの市町村が方針を策定するよう積極的に働きかけを行います。
     特に,都市部の市町村に対しては,木材利用の意義とともに,方針策定の働きかけを積極的に行います。
     
    ②地方公共団体のニーズ等を把握し,公共建築物の木造化に向けた取り組みが効率的に進められるよう,技術支援等の必要な情報の提供を行います。
     
    ③国または地方公共団体以外の者が整備する公共建築物の整備主体に対し,木材の利用について積極的な働きかけを行います。
     
    ④公共施設の整備を行っている関係業界団体等の掘り起こしを行い,各種説明会や会議等の場を通じて法に関する取り組みの周知徹底を行います。
     
    ⑤間伐材等の木材を使用した備品および消耗品などの調達について,地方公共団体等に対し,積極的な調達に努めるよう働きかけを行います。
     
     

    4.おわりに

    法の施行から10年が経過しました。この間,官庁営繕部では,自ら整備する官庁施設における木材利用に取り組むとともに,木造計画・設計基準等の技術基準等を策定し,それらの基準を普及すべく情報提供に努めるなど,木材を利用しやすい環境づくりにも取り組んできました。
     
    今後も,引き続き関係省庁と連携しながら,木材利用に関する情報提供等を行い,より一層の木材利用の促進に努めてまいります。
     
    なお,公表資料の全体や官庁営繕における木材利用推進に関する情報は,国土交通省のホームページ※注2に掲載していますので,読者の皆さまの木材利用の参考になれば幸いです。
     
     


    注1)耐火建築物等とすることが求められる建築物,災害応急対策活動に必要な施設等,そのほか木造化を図ることが困難な施設(特別な重量物を載せるような施設等)は,対象から除いています。
    注2)国土交通省HP:https://www.mlit.go.jp/gobuild/mokuzai_index.html

     



     
     
     

    国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課 木材利用推進室

     
     
    【出典】


    建築施工単価2021夏号



     
     
     

    最終更新日:2021-11-15

     

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