建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 国道325号 阿蘇大橋の復旧 〜 復旧に向けた取り組みについて〜

 

1.はじめに

2016年4月に発生した熊本県熊本地方を震源とする地震により,橋梁をはじめとするインフラに甚大な被害が発生した。
特に阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し,国道57号やJR豊肥本線が寸断,国道325号では「阿蘇大橋」が落橋するなど,熊本市街地から阿蘇地域に通じる主要なルートが全て通行止めとなった(図−1)。
 
落橋した国道325号阿蘇大橋は,熊本県と大分県を結ぶ国道57号から宮崎県高千穂町につながる国道325号が分岐した地点にあり,南阿蘇への玄関口として物流や観光など重要な役割を担っていたため,早急な復旧が求められた。
 
阿蘇大橋の復旧に当たっては,活断層対策など高度な技術が必要であるため,道路法の規定に基づき,国が直轄権限代行事業として災害復旧事業を進めてきた。
本稿では,国道325号阿蘇大橋の復旧計画の決定から開通までの状況について紹介する。

  • 熊本市街地と南阿蘇村を結ぶ道路ネットワーク
    図−1 熊本市街地と南阿蘇村を結ぶ道路ネットワーク】


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    2.阿蘇大橋の復旧計画

    熊本地震による発災直後から,学識経験者等の専門家や,関係自治体が参画した「国道325号ルート・構造に関する技術検討会」(全4回開催)を設置し,将来の地震に対する安全性や早期復旧等の観点からの審議を踏まえ,阿蘇大橋のルートおよび構造について決定した。
     
    架け替え位置は,復旧時期が不明確な斜面崩壊箇所等の周辺斜面の影響を回避し,主交通方向に対して迂回感がなく,南阿蘇村内のコミュニティ確保の観点から,元の位置より約600m下流側に設定した(写真−1)。
     
    構造形式については,推定活断層が横ずれを支配的とする断層であることを踏まえ,こうした挙動に対しても容易には落橋しないように配慮した。
     
    推定活断層をまたぐ区間を単純桁とすることで,橋全体への被害を最小限にとどめ,復旧の迅速化を図るとともに,渡河部は,仮に推定活断層の挙動によって端支点部(PR1)が移動や沈下をしても自立可能な構造として片持ち架設工法によるPCラーメン橋とした(図−2)。

  • 旧阿蘇大橋から600m下流に施工された国道325 号阿蘇大橋ルート
    写真−1 旧阿蘇大橋から600m下流に施工された国道325 号阿蘇大橋ルート】
  • 新阿蘇大橋全体計画図
    図−2 新阿蘇大橋全体計画図】

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    3.阿蘇大橋の早期復旧の取り組み

    架橋地点は,年間を通じて強風となることが多く,斜面上に設けた桟橋上に配置した揚重用のクレーンを介する方法では,資機材の供給や深礎工で発生する大量の土砂搬出を安定して行えない懸念があった。
    そこで,これを解消する手段として,最大60tの積載能力を有する,国内最大級の大型インクラインを右左岸に各1基導入し,全工期にわたり安定した資機材運搬を可能とした(写真−2)。
     
    高橋脚であるPR1〜PR3の橋脚の施工では,足場や型枠の組立作業を総足場による標準的な工法で行うと長時間を要することが想定されたため,作業用足場と型枠を一体化し,施工完了後の躯体から反力を取り,油圧ジャッキによりレールに沿ってクライミングするACSセルフクライミングシステム工法を採用した(写真−3)。
     
    本工法の採用により,標準施工でリフトごとに実施する躯体外周および内空部の足場増設やクレーンによる型枠材の吊上げ・吊下ろし作業を削減し,施工日数を短縮した。
     
    上部構造の施工では,一般型(容量200tf・m)に対して約3倍の容量を有する超大型移動作業車(容量600tf・m)(写真−4)を導入した。
    これに合わせてコンクリートの設計基準強度を当初設計より大きくする(50N/mm²)ことで,張出ブロッ数をPR2側で合計17ブロックから12ブロックに,PR3側で合計21ブロックから15ブロックにそれぞれ削減し,施工日数を短縮した(図−3)。

  • インクライン使用状況
    写真−2 インクライン使用状況】
  • ACSセルフクライミングシステム工法
    写真−3 ACSセルフクライミングシステム工法】

  • 超大型移動作業車を用いた片持架設工法
    写真−4 超大型移動作業車を用いた片持架設工法】

  • 主桁ブロック割り(PR3 側)
    図−3 主桁ブロック割り(PR3 側)】


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    4.おわりに

    将来の地震に対する安全性や地震後の橋の機能の回復性を高めるため,既往の震災に加えて熊本地震での被災の教訓をルートや構造計画,設計の各段階で反映させてきた。
     
    また,大型インクライン,ACSセルフクライミング工法や超大型移動作業車などの高度な施工技術の導入と24時間態勢の施工により,標準工期に比べ約1年4カ月の工期短縮を行い,地震発生から約5年となる2021年3月7日に開通した。
     
    阿蘇観光の玄関口である「新阿蘇大橋」の開通により,南阿蘇地域へのアクセスルートが回復し,さらなる観光活性化につながることを期待する。
     
    国道325号阿蘇大橋ルートの復旧事業に当たり,参画いただいた「国道325号ルート・構造に関する技術検討会」の委員の皆さまや,熊本復興事務所内に設置されている国土技術政策総合研究所熊本地震復旧対策研究室からさまざまな助言をいただいた。
     
    また,事業に協力いただいた地域の皆さま,昼夜いとわずに復旧に当たった設計会社や施工業者等の関係者に感謝申し上げる。

  • 超大型移動作業車を用いた片持架設工法
    図−3 超大型移動作業車を用いた片持架設工法】

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    国土交通省 熊本復興事務所 工務課長 藤川 真一(ふじかわ しんいち)

     
     
    【出典】


    積算資料2021年7月号


     

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