建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 「熊本地震」支援活動 ─よか隊ネット熊本 ─

 

1.はじめに

2016年4月14 日,16日と最大震度7を観測した熊本地震。
熊本県益城町を中心に家屋の倒壊等甚大な被害をもたらしました(写真−1)。
「よか隊ネット熊本」は,県外からの支援を受け熊本の困窮者支援団体を中心として,地震直後の4月19日に団体を結成し,災害支援活動を開始しました。
 
活動理念として「最も小さくされた人々に偏った支援を行う」「できないことは,あやまる」「震災前から実施されていた参加団体の活動を基本としつつ活動する」を掲げ,支援の手がなかなか行き届かない被災者に対して「被災者の心に寄り添った」支援活動を行ってきました。

  • 被災した熊本城の様子
    写真−1 被災した熊本城の様子】


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    2.車中泊アンケート調査から始まった被災者支援

    被災者はどこに避難したのか? 熊本地震においては多くの方が指定避難所に避難した一方で,「車中泊避難」を選択された方が多くいました。
    度重なる余震におびえ,建物の中にいるよりも車の中がより安全であるという心理的な働きがあったからだと思います。
    複合施設や公園等の駐車場に多くの車が集まり,余震が収まるまで長期間にわたって車中泊避難を続ける方が多くいました(写真−2)。
     
    ここで大きな問題になったのが「支援との接点」です。
    指定避難所には行政,民間からの支援が比較的届きやすかったのですが,車中泊避難者に対しては支援の手がなかなか行き届かない状況が続きました。
     
    そこで私たちは,車中泊者の現状を把握するとともに,今後の支援につなげるため,「車中泊アンケート調査」から支援活動をスタートしました。
     
    駐車場に止まっている車の一台一台に対して声を掛け,各地から届いた支援物資を渡し,避難の状況,今の生活状態を細かく聞いてまわりました。
    心配していたとおり,支援の手はほとんど届いておらず,自力で避難生活を送られている方が多くいました。
     
    そんな声を受け,連絡がつながった被災者に対して継続的に物資を届けるなど,専門機関に対しての支援の「つなぎ」を行いました。

  • 益城町グランメッセ
    写真−2 益城町グランメッセ】


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    3.災害支援活動から見えた課題

    緊急期を過ぎ,被災者は「建設型仮設住宅」「みなし仮設住宅」(民間賃貸住宅の借上げ,以下,みなし仮設)へと避難生活の場を移していきます。
    それに伴い被災した家屋の片付け等の作業系ボランティアとは別に,被災者への交流支援活動が求め始められてきました。余儀なく住む場所を移すことになった被災者同士の接点づくりや,被災者への心のケアを目的とした活動です。
     
    同時期に被災者の生活再建に向けた見守り訪問活動を行う「地域支え合いセンター」も立ち上がり,被災者への個別支援が,建設型仮設住宅に併設された「みんなの家」では,多くの被災者交流支援活動がそれぞれ動き出しました。
     
    よか隊ネット熊本では,益城町の「みなし仮設訪問事業」を受託し,訪問支援活動も開始しました。
    訪問活動を行う中で見えた課題,それはみなし仮設に対しては民間支援団体からの支援の手がほとんど届いていないということです。
    「支援を全く受けていない」「移り住んだ地域では近所に知り合いがいないため,全く誰とも話していない」「とにかく寂しい」─そんな声が多く上がってきました。
     
    建設型仮設は,「そこに行けば被災者がいる」。
    しかし,みなし仮設の場合はそうはいきません。
    日常を少しずつ取り戻している地域の中にポツンポツンと被災者がいる,そのような状況において被災者の住んでいる情報は個人情報として守られ,いくら民間団体が支援の手を差し伸べようとしても,そもそも被災者との接点さえつくれない。
    そういった状況であることが分かりました。

     
     

    4.「みなし仮設」被災者の孤立を防ぐ

    仮住まいの状況による支援の差をなくすためには何ができるのか?私たちは受託していた「地域支え合いセンター」と並行し,訪問事業を補う活動として民間支援団体と協力し,みなし仮設避難者を対象とした交流イベント「つながる広場」を開始しました(写真−3)。
     
    さまざまな支援団体に呼び掛け,つながる広場を企画,運営し,被災者の方へは「地域支え合いセンター」をとおしてイベントの案内を行いました。
    お互いの強みを掛け合わせた企画です。
     
    第1回目となるつながる広場は,発災から約8カ月後の2016年12月に開催し,約150名のボランティアの協力のもと,約400名のみなし仮設の方が参加し,交流の時間を楽しんでいただきました。
     
    その後も定期的に実施し,合計5回のつながる広場を開催。
    毎回,たくさんの笑顔があふれる交流の時間となりました。
    被災者の方からは「もともと住んでいた町である益城町に戻って来ることができるよいきっかけとなった」という声も聞くことができました。
    被災者は,災害により住む場所の変化を余儀なくされた中で,やはり「もともと住んでいた地域」のことがとても気になっていることを痛感しました。
     
    「つながる広場」の活動を継続し,被災者の方と接点を持っていく中で新たな課題も見えてきました。
    それは「日常の生活の中でもっと気軽にもっと身近に話ができる場所がほしい」という声です。
    そのような声を受けて,これまでの支援活動の中でつながった支援者の方々に呼び掛け,地
    域交流サロン「つながるCafé」を各地で開催しました(写真−4)。
     
    ただ,こういった活動は被災者への周知が大変難しく,なかなかたくさんの方にお届けすることはできなかったのですが,足を運んでいただいた方には,「被災のこと,これからの生活のこと,日常の何気ない話」など,いろんな話をして楽しんでいただきました。

  • 「つながる広場」の様子
    写真−3 「つながる広場」の様子】
  • 益城町グランメッセ
    写真−4 「つながるCafé」活動の呼び掛け】


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    5.おわりに

    よか隊ネット熊本では,発災から車中泊被災者支援,個別支援,みなし仮設被災者向けの交流支援等,多くの協力を得て活動をすることができました。
    そしてその活動の中から見えてきたのは,「地域コミュニティの大切さ」です。
     
    災害により被災し,発災直後の緊急避難から長期避難にわたり,一番大事になってくるのは「人のつながり」であることを支援活動を通じて痛感しました。
    災害によってたくさんのものが失われてしまいますが,その一方で支援活動をとおして「人と人とのつながり」が数多く生まれます。
     
    こういった一つ一つのつながりが生まれていくことが,被災者にとって明日に向けての「生きる力」になっているということを感じました。
    自然災害が多発する昨今,災害をなくすことはできませんが,日常の生活の中で「地域のつながり」を意識しながら生活していくことこそが,「災害への備え」の一つになります。
    熊本では,2020年7月には豪雨災害もありました。熊本地震での支援活動の経験を生かし,豪雨災害の支援活動まで幅を広げ,被災者に寄り添った支援を強く意識し,多くの支援を受けながら支援活動を継続しています。
    災害支援から得た人のつながり,日常生活の中で心掛けること,そして地域コミュニティを育むための地域活動を団体としても個人としても強く意識し,「災害に強い地域づくり」を目指して頑張っていきます(写真−5)。

  • よか隊ネット熊本・民間支援団体と住民の皆さまとの集合写真
    写真−5 よか隊ネット熊本・民間支援団体と住民の皆さまとの集合写真】


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    一般社団法人よか隊ネット熊本 代表理事 土黒 功司(ひじくろ こうじ)

     
     
    【出典】


    積算資料2021年7月号



     
     

     

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