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ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 東日本大震災から10年 復興道路の全線開通を目指す

 
三陸国道事務所(以下,当事務所)では,東日本大震災からの復興のリーディングプロジェクトである復興道路(三陸沿岸道路)の全線開通を目指し,地域とともに職員一丸となって全力で取り組んでいる。
 
復興道路(三陸沿岸道路)について,当事務所では岩手県の山田町から洋野町間の139km区間を担当しており,令和2年度までに78%に当たる108kmが開通済みである。
 
また,復興支援道路(宮古盛岡横断道路)については,当事務所では,宮古箱石道路(宮古市藤原~箱石間)の33km,4区間を直轄権限代行事業として担当しており,令和2年度までに全線開通済みである。
 
本稿は東日本大震災から10年の節目の年に全線開通を目指している復興道路の各事業区間および主な取り組み等について紹介する。

  • 【三陸国道事務所で整備を進める復興道路・復興支援道路の整備状況】
    【三陸国道事務所で整備を進める復興道路・復興支援道路の整備状況】


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    1 復興道路「三陸沿岸道路」の施工状況

    三陸沿岸道路の残り2区間31kmの事業箇所は,田野畑道路(田野畑南~尾肝要)6km,野田久慈道路(普代~久慈)25kmであり,いずれも令和3年内の開通を予定している。

    1-1 田野畑道路(田野畑南~尾肝要)

    当該工区の主要構造物では,新思惟大橋(仮称)の上部工工事(橋長394m,PC4径間連続ラーメン箱桁橋)を実施している。
     
    本橋梁ではP3橋脚の高さが93m,最大支間長が150mといずれも国内最大級であり,高所作業時において強風や降雪等の気象条件に大きく左右される中,特殊な大型作業車(ワーゲン,最大ブロック長5m)を用いてP2およびP3橋脚からの張出架設を行った。
    令和3年4月に中央閉合している。
     
    また,橋梁以外の区間では舗装工事を実施している。

  • 新思惟大橋(仮称)
    【新思惟大橋(仮称)】
  • 土工区間(追越車線区間)
    【土工区間(追越車線区間)】

  • 1-2 野田久慈道路(普代~久慈)

    当該工区は延長25kmのうちトンネルが8カ所(約8,587m),橋梁が14橋(約1,853m)で計画されており,構造物比率が4割を占める区間である。
     
    その中で,三陸沿岸道路に計画しているトンネルで最後の掘削となった堀内トンネル(仮称)(延長1,587m)は令和3年1月に貫通し,現在はトンネル内の覆工を行っている。
     
    橋梁で最後となる新堀内大橋(仮称)(延長175m,PC3径間連続ラーメン箱桁橋)の上部工が令和3年3月に中央閉合している。
     
    また,終点部の久慈IC付近は,昨年11月に国道45号の交通を切り替え,久慈市街地を通過する久慈大橋の拡幅や補強,土工区間の舗装工事を実施している。

  • 新堀内大橋(仮称)
    【新堀内大橋(仮称)】
  • 久慈大橋
    【久慈大橋】


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    2 事業促進PPP(※)の導入

    (※)PPP:Public Private Partnership(官民連携,公民協働の意)
     

    復興道路,復興支援道路の事業の川上段階で調査・設計を早く進めるために事業促進PPPを全国的にも初めて導入した。
    事業促進PPPの導入によりこれまで官が実施してきた着工前の事業監理,地元説明,関係機関協議等を,さらに工事の進捗に合わせて施工監理などにも対象を広げて,官民の技術力・経験を生かした効率的な事業を進めた。
     
    当事務所では,平成24年6月から6工区55名の体制で事業促進PPPが始動し,事業促進PPPを導入している区間は事業化から6~10年で開通予定となり,かつてない速さで復興道路・復興支援道路が進んでいる。

  • 三陸国道事務所PPP担当工区
    【三陸国道事務所PPP担当工区】

  • 三陸国道事務所PPP担当工区
    【事業促進PPPの役割分担】

  • 3 三陸沿岸道路専用「公共プラント」の設置

    三陸沿岸道路工事等により被災地域の生コンクリートの需要が逼迫(ひっぱく)するおそれが大きいことから,平成25年3月の第1回復興加速化会議において,国土交通大臣の指示により,三陸沿岸道路専用の生コンクリートプラント(公共プラント)が2カ所設置されることになった。
     
    このうち当事務所管内では,岩手県宮古市に生産能力500m³/日の公共プラントを1カ所設置し,平成26年8月に稼働を開始した。
    これにより,三陸沿岸道路の事業工程に対する遅延リスクを軽減するとともに,地域の復興事業のコンクリート需給バランスを阻害することなく,地域全体の復興事業を支援した。

  • 公共生コンプラント(宮古市)
    【公共生コンプラント(宮古市)】


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    4 コンクリート構造物の品質確保

    復興道路,復興支援道路は津波浸水域を極力回避しつつ山あい地域を通過する道路計画となっており,トンネルや橋梁などのコンクリート構造物が同時期に数多く整備される。
    また,並行する国道45号や国道106号のコンクリート構造物では,東北地方特有の凍害や凍結抑制剤散布に伴う塩害などの複合劣化が顕在化している。
    このため,橋梁において部材厚が薄いRC床版に使用するコンクリートの水結合材比を45%程度に低減し,塩分環境下のASRに対しても抑制効果のある混合セメント(高炉セメントB種)を使用し耐久性向上を図る取り組みを行っている。

  • RC床版の施工状況(新箱石大橋)
    【RC床版の施工状況(新箱石大橋)】


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    5 ストック効果の発現(地域の期待)

    復興道路,復興支援道路の開通に伴い,釜石港のコンテナ取扱量増加,周遊観光や広域観光圏の拡大,海産物等の地場産品の販路拡大,企業立地などのストック効果が目に見える形で現れ始めている。
     
    平成28年3月以前は,三陸沿岸地域は内陸に比べて関東方面へのアクセス性が悪く,大手輸送企業にとって輸送拠点の空白地帯であったが,三陸沿岸道路等の開通に伴い三陸沿岸地域へ立地・操業を順次開始しており,取扱量も増加している。
    さらに,三陸沿岸道路を利用して関東方面への直接輸送も想定されている。

  • ストック効果の発現(地域の期待)


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    国土交通省 東北地方整備局 三陸国道事務所

     
     
     
    【出典】


    土木施工単価2021夏号



     
     

    最終更新日:2021-11-29

     

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