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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > CLT建築物についての新たな取り組み

 

1.はじめに

特徴的な建物や著名な建築家に活用されるなど,新しい素材として話題になることのあるCLT(直交集成板)。
その活用が本格化したのは,平成25年のJAS(日本農林規格)による製造等の規格制定と,平成28年の建築基準法関連告示の公布・施行を経た,ここ数年のことである。
CLTを活用した建築物の竣工件数は着実に増加しており,令和2年度末には累計550件まで増える見込みとなった(図-1)。
また,地方創生との関係でCLTの活用を熱心に取り組む自治体も多く,現在では全都道府県においてCLT建築物が存在する。
 
一般社団法人日本CLT協会(以下,当協会)では,これまでCLTに関する技術開発や合理化に向けた取り組みを中心に行ってきたが,近年は普及活動等のソフト面も精力的に行っているので,本稿ではCLTの昨今の情勢とともにそれらを紹介する。

  • CLTを活用した建築物の竣工件数の推移
    図-1 CLTを活用した建築物の竣工件数の推移(※注1)】


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    2.昨今のCLTに関する情勢

    累計500件超の実績となったことで,実にさまざまなCLT建築物が誕生した。
    一部の住宅メーカーではCLTを活用した商品を展開しているが,CLTの使い方の固定化や最適解が決まったわけではなく,今なお事業者や設計者の工夫により新たなCLT建築物が誕生している。
    そのような中ではあるが,工法と規模の2点において,現在までのCLT建築物の情勢を記す。
     
    まず工法については,CLTパネル工法とそれ以外に大別される。
    前者はCLTに関する一般設計法を定めた告示611号による建物を指す。
    告示611号はさらにルート1〜3まで規定されている。
    ルート1は手計算で構造計算が可能だが低層建築物となり,ルート3は高さ60mまで可能だが専用の構造計算ソフトが必要となるので,CLTパネル工法の中でも実際に採用されているのはルート1が大半である。
    ルート2以降の上位構造計算ルートについては,設計者の熟練やCLT需要の拡大に応じて今後,普及が進むと見込まれる。
     
    後者については,木造に限らず他工法の中でCLTを材料として部分的に使うことを指す。
    実はCLT建築物全体の中でも,CLTパネル工法で建てられている割合は少なく,その他工法による建物の方が多い。
    特に在来工法は技術者も多く既存のインフラを活用できるため,壁にCLTが採用される場合が多い。
    また,中高層の鉄骨造において,環境配慮や建物の軽量化の観点から,床や耐震壁にCLTが採用される例も増えている。
     
    次に規模については,階数,延べ床面積,CLT材積の3点から既存のCLT建築物を分類する(図-2)。
    データに用いた既存のCLT建築物は,当協会Webサイト(※注2)に掲載している実例集(建築)からバス停等を除いた153件分であり,竣工済みの全CLT建築物を反映した数値ではないことをご留意いただきたい。
     
    第1の階数については,3階までの低層で全体の9割以上を占める。
    この理由は,CLTに限らず木造全般の大半が住宅のような低層建築物として建てられてきた歴史によるところが大きいと考えられる。
    しかし,近年の木造の中高層化はCLTがけん引しており,CLTを活用した10階建て以上の建物は,竣工済み物件から計画が発表されているものを含めると少なくとも10件に上るほど年々増加している。
     
    第2の延べ床面積については,500m2未満で全体の6割程度を占める。
    この理由は,4号建築物に適合させることで建築確認の審査を省略させるねらいがあると考えられる。
    また,防火地域等の規定を考慮した延べ床面積の設定となっていることもうかがえる。
     
    第3のCLT材積については,50m3未満が全体の4割以上を占める。
    材積は,工法によって差があるので一概に判断するのは困難であるが,50m3未満が多いのは,構造躯体全体ではなく意匠上,効果的な場所に集中してCLTを活用している場合が考えられる。
    また,200m3未満の材積であれば,CLT調達費として1m3当たり14万円の助成金を受けられる林野庁のJAS構造材利用拡大事業を上限額まで活用できる可能性があるので,利用割合が増えている可能性が考えられる。

  • CLT建築物の規模(階数,延べ床面積,CLT材積)
    図-2 CLT建築物の規模(階数,延べ床面積,CLT材積)】


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    3.今年度の当協会の取り組み

    当協会で実施している普及事業のうち,現在参加できる事業を誌面の都合上,3つ紹介する。
    なお,募集期間中であっても定員に達した際は申込受付を終了することがあるので,あらかじめご容赦いただきたい。
    申込みは,いずれも当協会Webサイトにて可能である(2021年8月現在)。

    (1)令和3年度CLT設計者向け実務講習会

    本講習会は,主に意匠設計者の受講を想定しており,これからCLTに取り組む方に向けた入門編の位置付けとなっている。
    講習内容は,「CLTの概要・最新情報」「CLTを用いた工法」「CLTの構造計算」「CLTの各種性能・施工」の4つのテーマに分かれており,CLTに関するひととおりの内容を分かりやすく網羅している。
    2020年度は,集合型の会場講習ではなくコロナ禍に対応したWeb講習会を中心に実施したことで,時間・場所を問わず受講者の好きなペースで受講できると大変好評をいただいた。
     
    本年度は,Web形式を継続しながら昨年度のテキストを改良し,講義内容を増やすことで,昨年度の受講者が再度受講しても満足いただける内容となっている。
    また,学生や建築確認検査機関等にも受講を呼び掛け,CLT技術者の裾野の拡大に努める予定である。
    なお,募集期間は令和3年12月23日まで,受講期間は令和4年1月7日までとなっているが,昨年度は募集期間内に定員に達したため,早期の申込みをお願いしたい。

    (2)CLT企画・設計支援

    本事業は,実際にCLT計画を進めたいがどう取り組めばよいか分からない施主や,設計者等のための無料相談窓口となっている。
    CLTに関する基本的な質疑であれば当協会事務局で対応するが,設計実務等のより専門的な質疑に関しては実務経験豊富な専門家等が対応する。
    ただし,あくまでも支援業務であり,設計業務等の無料請負ではないが,それぞれの計画に応じて対応期限を設けず柔軟に対応している。
     
    2020年度の相談件数は77件で,一昨年度比で5件増加し過去最高件数となった。
    そのうち実際に専門家を派遣したのは28件であり,一昨年度比で19件増加しこちらも過去最高件数となった。
    専門家派遣が大幅に増加した理由は,対応できる専門家を増員し,地理的な空白を埋めることで全国的に手厚い対応体制を構築したためである。
    本年度も充実した専門家による支援体制を継続することに加えて,建築確認検査機関にCLTを理解してもらう取り組みを実施することで,CLT建築物の確認申請がよりスムーズになることを目指している。

    (3)CLTアイディアコンテスト2021設計部門

    本事業は,平成27年より開催しているコンテストであり,設計部門は平成29年より毎年開催している。
    本コンテストの大きな特長は,表彰として3つの大臣賞(農林水産大臣,国土交通大臣,環境大臣)がある点にある。
    CLTの普及は国も推進しているところであり,本コンテストは例年大臣表彰のほか後援を受けている。
     
    2020年度は,103点の応募があり過去最高点数となった。
    応募者は設計事務所やゼネコン等の設計実務者が中心であるが,学生賞の表彰もあるため建築系の大学生の応募も例年多数集まっている。
    本年度の募集テーマは「riverside CLT」である。
    これまで規模や用途を募集テーマにしていたが,本年度は趣向を変えた試みとなっている。
    ぜひWeb講習会でCLTを学びつつ,本コンテストにも応募いただきたい。

     
     

    4.おわりに

    今回紹介できなかった技術開発にかかる活動については,当協会に入会いただくと随時情報提供がされるので,この機に入会をご検討いただければ幸いである。
    また,本稿では当協会の取り組みについて記したが,国が掲げるCLTの普及に向けたロードマップ(図-3)には今後の幅広い取り組みが記載されているので,併せて確認されたい。

  • CLTの普及に向けたロードマップ
    図-3 CLTの普及に向けたロードマップ(※注1)】


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    (※注1)
    内閣官房HP:CLT活用促進のための政府一元窓口
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/
     
    (※注2)
    一般社団法人CLT協会HP
    https://clta.jp/
     



     
     
     

    一般社団法人 日本CLT協会 業務推進部
    森田 聖(もりた さとし)

     
     
     
    【出典】


    建築施工単価2021秋号



     
     
     

     

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