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はじめに

インフラマネジメントテクノロジーコンテスト(名称がやや長いので,以下「インフラテクコン」と記述します)という言葉をご存じでしょうか?
答えは,令和2年9月に第1回のインフラ版コンテストとして始まったイベントのことです。
「そもそもあまりパッとしないこのインフラメンテナンス産業を,もっともっと皆さまに知ってもらおう! 素晴らしいことをしている! カッコイイ!」なんてことを思ってもらいたく,少しだけやましい気持ちもあり始めてみました。
たまたま新型コロナにも巻き込まれ,華々しいスタートとはいきませんでしたが,地味に地道に広げていきたいと考えております。

 
 

インフラテクコン誕生の経緯

インフラテクコンとは,高等専門学校生(高専生)を対象に公共インフラの課題を解決するアイデアを,コンテスト形式で競い合うイベントです。
 
発端は,(公社)日本ファシリティマネジメント協会 インフラマネジメント研究部会(JFMA部会)の部会設立に遡ります。
当初からインフラマネジメント,メンテナンスの必要性について,インフラマネージャー育成や制度構築を目指し,私たちは全国にあるインフラ技術者のための教育システムやメンテナンスにおける市民協働等の事例を調査,議論を進めてきました。
その中でも令和元年9月に当協会が発行した『インフラ点検のすゝめ 現場の目線 ─実践編─』(写真−1)は,インフラメンテナンスに携わる技術者が実践技術のノウハウを執筆することで,これから始めようとする若手職員,技術者向けにメンテナンスの奥深さ,面白さを伝えることを目的としたものであり,この若手向け技術者の教本の思想が,後々にインフラテクコンの企画につながっていきました。
 
私の頭の中に浮かんだコンテストといえば,鳥人間コンテストやロボットコンテスト。
テレビをとおしてビンビン伝わる人々の熱量は,悔しさやうれしさの涙と相まって非常に好感があり感情移入してしまいます。
「参加する側も応援する側もともに感動ができるコンテストを開催したい!」と,そんな単純な動機から企画を進めました。
高専生を対象としたコンテストには,デザコン(デザインコンペティション),プロコン(プログラミングコンテスト),既に32年目を迎え,長澤まさみ初主演で映画化されたロボコン(ロボットコンテスト)等があります。
それらに肩を並べるようにインフラテクコンを進化させたい。
そう思っています。

  • 『インフラ点検のすゝめ 現場の目線 ─実践編─』
    写真−1 『インフラ点検のすゝめ 現場の目線 ─実践編─』】


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    インフラについて考える

    「そもそもインフラって何?」と聞かれて皆さんはどう答えますか?
     
    インフラストラクチャーを直訳すると“下部組織”や“基盤(社会基盤)”。
    これって社会でつながる,社会生活,社会経済,社会活動…全ての支えとなるモノ? コト? ですが,これだけではパッとイメージできませんよね。
    以前に行った「小学校出前授業」(小学5年生の社会科の一貫)でどんな言葉で話せば小学生に伝わるか思案した結果,「インフラとは“みんなのモノ”。
    自分の自転車でも,筆箱でも,お弁当でもなく,みんなで使う学校や,道路,川,公園なんだよ」と,話しました(写真−2)。
     
    インフラテクコンは,「まずインフラとは何?」から考えることが重要です。
    自分のものは大切に使うはずなのに,なぜ与えられたみんなのものは大切に使えないのか,使わないのか。
    そこから考えることが,インフラの課題を考えるきっかけになるのではと思っております。

  • 出前授業の様子
    写真−2 出前授業の様子】

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    顕在化するインフラの課題

    平成24年12月, 忘れもしない「笹子トンネル天井板落下事故」が発生。
    老朽化の原因により天井板が落下し9名の方が亡くなりました。
    同時並行して議論されていた国土交通省 社会資本整備審議会 道路分科会による平成26年4月「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」で示された最後の警鐘は「今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」と,「舵を切らなければ近い将来,橋梁の崩落などの人命や社会システムに関わる致命的な事態を招くであろう」。
    これらにより公共インフラの老朽化対策として,定期点検が法制化されたことは承知のとおりです。
     
    もちろん老朽化だけが問題ではありません。
    人口減少によりインフラを支える1人当たりの負担率の増加,台風の大型化による被害の拡大,道路網拡大から発生し得る道路陥没事故,都市部一極集中による地方の過疎化等々,日本国内に限らず世界でも同様な課題が顕在化し始めています。
     
    インフラテクコンでは,さまざまな方向から観察し,大いに視野を広げ,アンテナを立てて考えてほしい。
    そしてその考えが具現化し多くの課題を解決する一助になってほしいと思います。

     
     

    インフラテクコン2020

    第1回のインフラテクコン2020は,令和2年9月1日にどうにか1次審査受付を開始し,令和3年1月27日に最終審査の結果を公表することができました(写真−3)。
    「10チームの応募があれば良し,20社ほどからの協賛をいただければさらに良し」と企画,計画を行っておりましたが,最終的には計画を超える30チーム(17校)からの応募,11団体からの後援協力,そして55社からの協賛があり予想以上の盛り上がりを見せました。
     
    さらにコンテストに伴走して5回の座談会をリアルな場,オンラインの場で行い,多くの方々にご視聴をいただいたこと,加えて長岡,福井,和歌山の各高専では地域への実装の一歩として計3つの事業も動き出しました。
    インフラテクコンをとおして,さまざまな活動が展開され,期待以上の成果がもたらされたのです。
     
    古民家の再生,合併浄化槽の付加価値,橋梁をとおしたきずな,災害時に街灯の色を利用した避難警告,除雪のビジネスモデル,冠水情報システム,ゲームアプリをとおしたインフラメンテナンスの普及,土木リテラシー等々,さまざまな作品を見てゲームチェンジ的な発想に圧倒されました。
    第2回のインフラテクコン2021(応募締切:10月4日)では,もっと突飛で,我々の想像を突き抜けたアイデアが集まることを期待しております。
     

  • インフラテクコン2020の応募作品例
    写真−3 インフラテクコン2020の応募作品例】

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    インフラテクコンを通して

    インフラテクコンは,次のとおり目指す姿を設定しています。
     
     ● インフラマネジメント/メンテナンスが社会に周知され産業として確立する
     ● インフラマネジメント/メンテナンスをコアに地域共生社会が構築される
     ● インフラマネジメント/メンテナンスが高専のカリキュラムとして扱われる
     
    このインフラマネジメント/メンテナンスが広く認知され,社会になくてはならない存在になることで,社会を担う若手が希望をもって活躍できる産業となります。
    そして年代や職能の裾野が広がる仕組みを構築し,技術連鎖で日本から世界へ発信できる基幹産業となる必要があります。

     
     

    おわりに

    私は25年前ほどに,「インフラのお医者さんになりませんか」というフレーズに釣られてしまい,現在はインフラ構造物の点検診断会社を地味に営んでおります。
     
    メンテナンスは地味と言われることが多いが,はて本当に地味なのか?
     
    まだ使用できるインフラを壊し新しいものをつくる。
    税金の無駄使いとして,子供たちの将来に足かせを残すのではなく,さまざまな知見を必要とするメンテナンスを確実に行うことで,古き良きものを後世に残す。
     
    将来を背負う子供たちが安定した基盤で支えられた社会において,インフラマネジメント/メンテナンスの重要性からさらに魅力ある産業に育つことを期待しています。

     
     
     

    インフラマネジメントテクノロジーコンテスト実行委員会 副委員長
    アイセイ株式会社 代表取締役
    岩佐 宏一(いわさ こういち)

     

     
     
    【出典】


    積算資料2021年10月号


     

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