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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 密集市街地整備におけるUR都市機構の取り組み

 

1 はじめに

独立行政法人都市再生機構(以下,UR都市機構)は,民間事業者や地方公共団体との適切な連携・役割分担の下,国際競争力の強化,地域の活性化,防災性の向上等に資する都市再生を推進しています。
 
密集市街地は都市の基盤が未整備のまま市街地化した地域であり,地震時等において防災上多くの課題を抱えています。
本来,市街地は住民の自主的な更新(自律更新)により建物更新がされていきますが,密集市街地においては都市の基盤が未整備であること,および細分化,接道不良,権利関係の輻輳(ふくそう)といった敷地条件に課題があることから自律更新がなかなか進んでいません。
このことが若年層の流入の妨げとなり,まちの新陳代謝が図れないことから,防災上の課題が解消されないまま,まちの魅力も低下していくという,負のスパイラルに陥っています。
 
そのため,この地域の整備改善が都市再生の喫緊の課題となっており,国は,令和3年3月の「住生活基本計画」(全国計画)において,依然として解消に至っていない「地震時等に著しく危険な密集市街地」(約2,220ha)を令和12年度までにおおむね解消することを目標としており,各種政策を検討しているところです。
 
 

2 UR都市機構の密集市街地整備

密集市街地整備における「防災性の向上」とは,「道路などの空間が確保」されて,「建替え更新による不燃化が進む」ことを指します。
つまり,「自律的なまちのサイクルを取り戻し,まちの魅力を高める」ことが密集市街地整備における目標です。
まちづくりの主体は地方公共団体であり,UR都市機構は,まちづくりのプロセスに応じて,地方公共団体との適切な連携・役割分担の下,総合的な支援を行っています。

(1)ボトムアップとバリューアップ

UR都市機構では,密集市街地の整備を「ボトムアップ」と「バリューアップ」という2つの方向性を据えて取り組んでいます(図-1)。
まず,「ボトムアップ」は,市街地の基本性能を改善する取り組みであり,公共施設の整備がその代表となります。
一方で,「バリューアップ」は,密集市街地の地域価値を高め,住環境を向上する取り組みです。

  • ボトムアップとバリューアップのイメージ
    図-1 ボトムアップとバリューアップのイメージ】

  • (2)UR都市機構独自の取り組み「木密エリア不燃化促進事業」

    「木密エリア不燃化促進事業」は,地方公共団体が取り組む道路・公園整備や,木造住宅の「不燃化建替え」等の促進を目的としてUR都市機構が独自に行っている事業です。
    UR都市機構が機動的に土地を取得し,その土地を公共事業により移転を余儀なくされた方への代替地としての活用をはじめ,道路・公園等の公共整備用地や,交換分合等による敷地整序・未接道宅地の解消等に活用し,不燃化建替えを促進する取り組みです(図-2,3)。
     
    平成25年度より事業を開始し,現在東京都14地区,大阪府1地区,および兵庫県1地区の合計16地区で事業を実施しています。

  • 公共事業関係費(政府全体)の推移
    図-2 東京都における不燃化特区と,UR木密エリア不燃化促進事業の事業地区】

  • 公共事業関係費(政府全体)の推移
    図-3 木密エリア不燃化促進事業の効果イメージ】


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    3 事例①:弥生町三丁目周辺地区(東京都中野区)

    中野区の南部に位置する弥生町三丁目周辺地区(約21.3ha)においては,平成21年度から都・区・UR都市機構の三者で,地区中央に位置する都営アパートの跡地(約0.55ha)を利用して密集市街地の改善を図るために,勉強会を開始しました(図-4)。
    検討の結果,土地区画整理事業(以下,区画整理)による防災性の向上を目指すこととし,平成26年に区とUR都市機構は,都営アパートの跡地の活用に係る協定を締結しました。
     
    この協定に基づき,UR都市機構は,区が取得した公園および道路用地以外の敷地を,木密エリア不燃化促進事業により取得し,周辺の敷地を含めて区画整理を実施することとなりました。
    区画整理事業では未接道宅地の解消を図るとともに,事業協力者向けの代替地および従前居住者用賃貸住宅の敷地の整備を行いました(図-5)。
     
    また,区は地区の南側にある広域避難場所へ避難するために必要な道路を「避難道路」と位置付け,積極的な用地買収により狭隘(きょうあい)道路を幅員6mへの拡幅を目指しました。
    その中で,UR都市機構は,避難道路1号線の用地買収に伴う地権者対応等の業務を受託しました。
    併せて,用地買収に伴う事業協力者に対して,区画整理事業によるUR都市機構の保留地を代替地として分譲したほか,従前居住者用賃貸住宅を活用することで,借家権者への対応も行いました。
    その結果,延長約140mの沿道地権者34名に対して,5年強で用地買収の契約が全て完了しました。
     
    一方,区画整理と併せて区が整備した避難道路5・6号の延長約380mについては3年8カ月で完了しました。
    これらにより,短期間で不燃領域率の向上や消防活動困難区域の一部解消の実現に至りました(写真-1)。
     
    現在は,区画整理で整備した換地と,木密エリア不燃化促進事業により取得した土地の活用により,住環境の向上を踏まえながら密集市街地改善の支援を行っています。

  • 弥生町三丁目周辺地区
    図-4 弥生町三丁目周辺地区】

  • 弥生町三丁目区画整理事業
    図-5 弥生町三丁目区画整理事業】


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  • 弥生町三丁目区画整理事業
    写真-1 避難道路6号の整備(左:整備前,右:整備後)】
  • 弥生町三丁目区画整理事業


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    4 事例②:西小山駅前地区(東京都目黒区)

    (1)西小山駅前地区の概要

    東急目黒線西小山駅の西側には密集市街地が広がっており,都の不燃化特区(目黒本町五・六丁目,原町一丁目,洗足一丁目地区,約57.2ha)に指定され,地区内の南北を貫く都市計画道路(補助第46号線)は東京都により事業中です。
     
    西小山駅前では,平成27年に目黒区が西小山駅前地区計画を策定し,同地区内において令和元年に防災街区整備事業(原町一丁目7番・8番地区防災街区整備事業,以下,当街区)が都市計画決定されました。

    (2)当街区におけるUR都市機構の取り組み

    平成21年3月にUR都市機構は,目黒区から駅前の土地取得とコーディネートの要請を受け,当該土地を取得し,駐車場による暫定活用を行いながら,目黒区が事務局を務める「共同化に向けた地元の検討会」に地権者として参加し事業推進に取り組んできました。
    平成30年3月に当街区の防災街区整備事業準備組合が設立され,令和元年10月に防災街区整備事業に関する都市計画決定がされた後,令和2年6月に「原町一丁目7番・8番地区防災街区整備事業組合」の設立が認可されています。

    (3)暫定活用による施設の開業

    UR都市機構は取得地の一部について,防災施設建築物の工事期間中において工事に影響を与えない範囲において暫定活用を行い,地域の賑わい創出・商店街の活性化に資する活用(地域まちづくり支援事業)を図っています。
    平成30年12月,地域まちづくり支援事業を推進するための事業パートナーとして,公募により事業者を選定。
    活動の拠点となる施設を整備し,令和2年11月「ヒロバ型創造施設 CraftVillageNISHIKOYAMA」(以下,当施設)がオープンしました(写真-2)。
     
    当施設には,こだわりをもった個性的なテナントがそろうほか,地元商店街等が活用できるブースもあり,地元と連携したイベント・ワークショップ等が開催されています。
     
    また,新しい生活様式が求められている「withコロナ」「postコロナ」の時代を踏まえ,当施設は,オープンエアのテラス席と中庭により,人々が安心して集える開放的な空間を提供しています。
    当地区は,密集市街地における防災性の向上に加え,地域価値の向上にチャレンジした事例です。

  • ヒロバ型創造施設 Craft Village NISHIKOYAMA
    写真-2 ヒロバ型創造施設 Craft Village NISHIKOYAMA】


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    5 おわりに

    UR都市機構の密集市街地整備は,国の防災政策と呼応して昭和56年より取り組んでいます。
    当初は小規模で設備水準が低く住環境が劣っている木造賃貸住宅の密集地域における,住環境の改善を目的として行っていました。
     
    その後,平成7年に発生した阪神・淡路大震災において,密集市街地における防災上の課題が浮き彫りとなりました。
    これを契機として「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(通称:密集法)が制定され,UR都市機構はさまざまな手法を用いて密集市街地解消に向けた支援を行ってきました。
     
    引き続き,密集市街地整備においては,防災性の向上(ボトムアップ)に加えて,住環境の向上(バリューアップ)の観点も加えた両輪での取り組みを行うことで,「自律的なまちのサイクルを取り戻す」べく密集市街地の整備改善を推進していきます。

     

     
     
     

    独立行政法人 都市再生機構 都市再生部 事業管理第1課

     

     
     
    【出典】


    積算資料2021年11月号


     

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