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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方

 

1.検討の経緯等

「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」については,2020年10月26日,第203回臨時国会において,菅・前総理より「2050年カーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言されたことなどを踏まえ,国土交通省・経済産業省・環境省の3省合同で,有識者等で構成する検討会として設置された。
2021年4月19日に第1回が開催されて以降,8月10日まで6回にわたり議論され,8月23日に取りまとめが公表されたところである(注1)

 
 

2.取りまとめのポイント

取りまとめは,大きくはカーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の姿などを“あり方”として示した「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組の基本的な考え方」と,省エネルギーの徹底,再生可能エネルギーの導入拡大および木材の利用拡大による吸収源対策に係る具体的な対策等の“進め方”として示した「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取組の進め方」からなる。

(1)2050年および2030年に目指すべき住宅・建築物の姿≪あり方≫について

目指すべき住宅・建築物の姿については,2050年カーボンニュートラルの実現(注2)という高い目標の実現に向け,また,中期的な2030年度の温室効果ガスの排出削減目標(注3)が,従来の26%から46%へと高く設定されており(表-1),新築・省エネ改修に係る対策強化により省エネ量を2割増しとすることが求められていること,さらには電源構成における再生可能エネルギーの割合を36〜38%に引き上げる(注4)こととされていることを踏まえ,次のように示されている。

 

≪2050年に目指すべき住宅の姿≫

ストック平均でZEHレベルの省エネ性能(注5)が確保されるとともに,その導入が合理的な住宅における太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となること

 
 

≪2030年に目指すべき住宅の姿≫

・新築される住宅についてはZEHレベルの省エネ性能が確保されていること
・新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていること

 

地球温暖化対策計画(案)における新たな削減目標
【表-1 地球温暖化対策計画(案)における新たな削減目標】
出典:地球温暖化対策推進本部(第 47 回)資料 1-1 「地球温暖化対策計画(案)」の概要

 
 

(2)2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの進め方について
Ⅰ.家庭・業務部門における省エネルギー対策の強化について

目標の実現に向けては,新築住宅・建築物における省エネ性能の引き上げが不可欠となることから,以下の取り組みを組み合わせていくこととして,主な取り組みとその進め方(主なスケジュール等)が示されている。
 
①ボトムアップ:省エネ基準適合義務化により省エネ性能を底上げ
・住宅を含む建築物について現行の省エネ基準への適合義務化〈2025年度〉
・断熱施工に関する実地訓練を含む未習熟な事業者の技術力向上の支援
・新築に対する支援措置について省エネ基準適合の要件化
さらに,②の取り組みを経て,
・義務化が先行している大規模建築物から省エネ基準を段階的に引き上げ
・遅くとも2030年までに,誘導基準への適合率が8割を超えた時点で,義務化された省エネ基準をZEH・ZEBレベルの省エネ性能(注6)に引き上げ

 

②レベルアップ:誘導基準や住宅トップランナー基準の引き上げとその実現に対する誘導で省エネ性能を段階的に引き上げ
・建築物省エネ法に基づく誘導基準や長期優良住宅,低炭素建築物等の認定基準をZEH・ZEBレベルの省エネ性能に引き上げ,整合させる
・国・地方自治体等の新築建築物・住宅について誘導基準の原則化
・ZEH・ZEB等に対する支援を継続・充実
・住宅トップランナー制度の充実・強化(分譲マンションの追加,トップランナー基準をZEHレベルの省エネ性能に引き上げ)

 

③トップアップ:誘導基準を上回るより高い省エネ性能を実現する取り組みを促すことで市場全体の省エネ性能のさらなる向上を牽引
・ZEH+やLCCM住宅などの取り組みの促進
・住宅性能表示制度の上位等級として多段階の断熱性能を設定

 

これらの取り組みと合わせ,住宅・建築物の省エネ性能の表示に関する取り組みや既存ストックの省エネ性能向上に向けた省エネ改修の取り組み等についても強化することとされている。

 
 

Ⅱ.エネルギー転換部門の再生可能エネルギーの導入拡大について

太陽光発電や太陽熱・地中熱の利用,バイオマスの活用など,地域の実情に応じた再生可能エネルギーや未利用エネルギーの利用拡大が重要であるとして,将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つとしてあらゆる手段を検討し,その設置促進のための取り組みを進めることとされ,当面の具体的な取り組みが示されている。
 
・国や地方自治体の率先した取り組み(新築における標準化等)
・関係省庁・関係業界が連携した適切な情報発信・周知,再生可能エネルギー利用設備の設置に関する建築主への情報伝達の仕組みの構築
・ZEH・ZEB等への補助の継続・充実,特にZEH等への融資・税制の支援
・低炭素建築物の認定基準の見直し(再生可能エネルギー導入,ZEH・ZEBの要件化)
・消費者や事業主が安心できるPPAモデルの定着
・脱炭素先行地域づくり等への支援によるモデル地域の実現。
 そうした取組状況も踏まえ,地域・立地条件の差異等を勘案しつつ,制度的な対応のあり方も含め必要な対応を検討
・技術開発と蓄電池も含めた一層の低コスト化

 
 

3.おわりに

今後,検討会における取りまとめで示された対策とそのスケジュールの具体化を図るため,10月4日から社会資本整備審議会における議論が開始されたところである。
取りまとめの結びでも指摘されているように,関係事業者等においても,取りまとめを前提として,さらに一層の高みを目指した積極的な取り組みが展開されることを期待したい。

 
 


(注)
1.検討会の資料・議事録等については国土交通省ホームページ等に掲載されているので詳細の経緯についてはこちらを参照されたい。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000188.html
また,本テーマについては,内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースにおいても取り上げられ,4度にわたり議論が行われたので併せて紹介させていただく。
以下のホームページに資料・議事録等が紹介されているので参照されたい。
本テーマが取り上げられているのは第5回,第11回,第13回,第14回である。
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/e_index.html
 
2.住宅・建築物のみでカーボンニュートラルを実現するということではなく,住宅・建築物を含めたわが国社会全体でカーボンニュートラルを実現するということである。
 
3.エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画の見直しが進められており,省エネ量についても現行計画における削減目標量(原油換算で約5,000万kℓ)から2割増しの約6,200万kℓを目指すこととされ,新築・省エネ改修による省エネ対策の強化により約890万kℓの追加削減が必要となっている。
 
4.エネルギー基本計画(パブコメ案)より(現行計画においては22〜24%)
 
5.再生可能エネルギーを導入した場合であっても,それに伴うエネルギー消費量の削減分を含めず,一次エネルギー消費量の削減量を現行の省エネ基準値から20%削減するもの
 
6.住宅について強化外皮基準および再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から20%削減,建築物については再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネ基準値から用途に応じて30%または40%削減(小規模建築物は20%削減)

 
 

ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス):
省エネ対策により省エネ基準から20%以上の一次エネルギー消費量を削減した上で,再生可能エネルギー等の導入により,
①100%以上の一次エネルギー消費量削減を満たす住宅を『ZEH』,
②75%以上100%未満の一次エネルギー消費量削減を満たす住宅をNearly ZEH,
③再生可能エネルギー等を除き,20%以上の一次エネルギー消費量削減を満たす住宅をZEH Oriented
と定義している。
(ZEHロードマップフォローアップ委員会資料「更なるZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性等について」(令和3年3月31日,経済産業省資源エネルギー庁))。
集合住宅に関してはZEH-Mの定義が行われている。
 
ZEB(ゼブ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル):
省エネ対策により省エネ基準から50%以上の一次エネルギー消費量を削減した上で,再生可能エネルギー等の導入により,
①100%以上の一次エネルギー消費量削減を満たす建築物を『ZEB』,
②75%以上100%未満の一次エネルギー消費量削減を満たす建築物をNearly ZEB,
③再生可能エネルギー等を除き,50%以上の一次エネルギー消費量削減を満たす建築物をZEB Ready,
④延べ床面積が1万m²以上の建築物のうち,事務所や工場,学校なとで40%以上の一次エネルギー消費量削減,ホテル,病院,百貨店,集会所などで30%以上の削減を満し,かつ,省エネ効果が期待されている技術であるものの,建築物省エネ法に基づく省エネ計算プログラムにおいて現時点で評価されていない技術を導入している建築物をZEB Orientedと定義している。
(平成30年度ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ資料(経済産業省資源エネルギー庁))

「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」(2021年8月,脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会)資料より

 
 
 

国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2022年冬号
建築施工単価2022年冬号


 

 

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