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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 下水道技術の善循環を目指すJS新技術導入制度

はじめに

わが国の下水道を取り巻く環境は大きく変化しており,事業主体である地方公共団体は,さまざまな技術的課題に直面している中,近頃では脱炭素社会の実現に向けて目指すべき下水道の在り方や必要な方策等について国を中心にした議論が活発化しています。
これらに対応し得る新技術は,できるだけ早期に実施設に導入され,全国に普及展開することが望ましいのですが,地方公共団体における新技術の導入は容易ではないのが実情です。
 
日本下水道事業団(JS)では,地方公共団体のさまざまな課題やニーズに対応するため,優れた新技術を受託建設事業に積極的に導入し「技術の善循環」を円滑に実施するため,平成23年度から新技術導入制度を運用しています。
JSではこれまでに41技術(令和3年11月現在,うち5技術は有効期間満了)を新技術として選定し,多くの新技術を受託建設事業で導入してきました。
 
本稿では,令和3年9月に新たに新技術Ⅰ類に選定された2技術について,技術の概要や導入効果等を紹介します。
いずれも,従来技術と比べて省エネルギー化やコストの削減が可能で,脱炭素社会の推進にも貢献できる技術です。

 
 

1. 汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システム

[技術選定を受けた者:水ingエンジニアリング株式会社]

1-1 技術開発の背景・目的

下水汚泥のエネルギー化率の向上・有効利用の促進は,国の施策においても重要な課題であり,下水汚泥の広域利活用や共同化計画策定などの推進が求められています。
 
今回,技術選定された「汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システム」は,乾燥機に投入される脱水汚泥の性状変動に対して自動制御により乾燥製品の含水率を安定させるとともに,乾燥汚泥の有効利用先が要求する品質に応じた乾燥製品を安定的に低コストで製造することができる技術です。

1-2 技術の概要(特徴)

本技術の概略フローを図-1に示します。
 
本技術の特徴として,低圧蒸気を熱源とした乾燥方式であるため,従来技術の熱風乾燥機(かくはん機付熱風回転乾燥機,気流乾燥機および間接加熱乾燥機)と比較して無駄となる放熱量を改善することで燃料使用量を削減することができます。
また本技術の乾燥機では,セキ高さ(充満率),蒸気圧力(伝熱面温度),投入水分量を自動制御することにより,脱水汚泥の性状変動(粘性,含水率の変動)に対応して乾燥製品の含水率を安定かつ任意(20~40%)で製造することができます。
 
各自動制御の特徴は以下の通りです。
 
①セキ高さ(汚泥の機内充満率):
乾燥機排出部に設けるセキ板の高さを調節することにより,乾燥機内での汚泥の充満率を変化させることができます(図-2)。
これにより汚泥性状の変動に対して,乾燥速度を調節し乾燥製品の含水率を安定させることができます。
 
②蒸気圧力(伝熱面温度):
乾燥用蒸気の圧力を調節することにより,伝熱面の温度を変化させることができます(図-3)。
これにより汚泥性状の変動に対して,乾燥速度を調節し乾燥製品の含水率を安定させることができます。
 
③乾燥機への投入水分量:
乾燥機に投入される脱水汚泥の含水率と汚泥投入量を連続測定することにより,乾燥機へ投入される水分量を把握できます(図-4)。
これにより脱水汚泥の含水率に応じて,汚泥投入量を自動制御することで,乾燥機内に投入される水分量を調節し乾燥製品の含水率を安定させることができます。

汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システムの概略フロー

図-1 汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システムの概略フロー


セキ高(汚泥の機内充満率)の調節

図-2 セキ高(汚泥の機内充満率)の調節


蒸気圧力(伝熱面温度)の調節

図-3 蒸気圧力(伝熱面温度)の調節

投入水分量の調節

図-4 投入水分量の調節


1-3 適用条件および推奨条件

本技術を導入する場合の適用条件は,表-1のとおりです。

汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システムの適用条件

表-1 汚泥性状変動対応型蒸気乾燥システムの適用条件


また,本技術の導入効果が大きく見込める推奨条件としては,既存設備(脱水設備,乾燥設備あるいは焼却設備)の更新や新設・増設の際に処理場の近隣に乾燥製品を肥料や燃料として有効利用するユーザーがいる場合,または本技術を導入する処理場内や近隣施設に使用できる消化ガスや蒸気などの余剰エネルギーがある場合などで燃料使用量削減に伴う維持管理費の低減により導入効果が増大することが期待できます。

1-4 導入効果

低圧蒸気を熱源として使用することでシステムの効率化,小型化により従来技術と比較して燃料使用量を大幅に削減することが可能となります。
対象汚泥を消化汚泥および混合生汚泥とした場合の各施設規模における燃料使用量について,従来技術と比較した試算結果を示します(図-5)。
燃料消費量は従来技術と比較すると消化汚泥で約40%(平均),混合汚泥で約30%(平均)の削減効果が見込まれる試算結果となりました。
 
また,建設費と維持管理費(燃料費,上水,ボイラ薬品費,脱臭剤,電力,補修費など)を合わせたライフサイクルコスト(LCC)についても同様に各種対象汚泥,各施設規模における従来技術と比較した試算結果を示します(図-6)。
LCCは従来技術と比較すると消化汚泥で約19%(平均),混合汚泥で約9%(平均)の削減効果が見込まれる試算結果となりました。

燃料使用量の比較

図-5 燃料使用量の比較

LCC の比較

図-6 LCC の比較



 

2. 回転加圧脱水機Ⅳ型

[技術選定を受けた者:巴工業株式会社]

2-1 技術開発の背景・目的

汚泥の難脱水性化に伴い低濃度汚泥の脱水に苦慮している下水処理場は全国に多数存在しています。
また,重力濃縮設備などを省略し未濃縮汚泥での脱水処理が行われている処理場もあり,低濃度汚泥の脱水工程は脱水性能のみならずエネルギー面での効率も悪く,今後の改築更新事業では汚泥処理システムの見直しが必要となります。
 
今回,技術選定された「回転加圧脱水機Ⅳ型」は,低濃度汚泥の濃縮脱水を効率的に実施することを目的に開発された技術です。

2-2 技術の概要(特徴)

本技術の濃縮脱水フローを図-7に示します。

回転加圧脱水機Ⅳ型の濃縮脱水フロー

図-7 回転加圧脱水機Ⅳ型の濃縮脱水フロー


本技術は濃縮部と脱水部より構成され,凝集・濃縮・脱水工程を一体的に行うことで濃縮脱水を効率的に行うことができます。
 
まず,濃縮部では,1%程度(0.5~1.5%未満)の低濃度汚泥に無機凝集剤(ポリ鉄)を添加し,無機凝集剤反応器で汚泥とポリ鉄を反応させることで緻密な汚泥フロックを形成させます。
 
次に,高分子凝集剤の添加により凝集槽で撹拌混合することで強固な凝集フロックを形成させた後に濃縮機で3%程度まで汚泥を濃縮します。
その後,脱水部(回転加圧脱水機)で脱水を行います。
 
これら一連の工程をユニット内で効率よく動作させることにより,低濃度汚泥を低薬注率かつ低動力で濃縮脱水が可能となり,さらには大幅な低含水率化が可能となります。

2-3 適用条件および推奨条件

本技術を導入する場合の適用条件は,表-2のとおりです。

回転加圧脱水機Ⅳ型の適用条件

表-2 回転加圧脱水機Ⅳ型の適用条件


また,本技術の導入効果が大きく見込める推奨条件としては,低濃度汚泥(1.5%未満)の脱水処理に苦慮している処理場や,造粒調質ユニットを有する汚泥脱水システムの更新を検討している処理場などが挙げられます。

2-4 導入効果
(1)濃縮・脱水性能

回転加圧脱水機Ⅳ型の適用条件における標準脱水性能を表-3に示します。
本技術では目標とする脱水ケーキ含水率に応じて2液法(ポリ鉄と高分子凝集剤を併用),1液法(高分子凝集剤のみ使用)を選択できます。
また,処理能力に関しては,ろ過速度を調節することで含水率優先運転,ろ過速度優先運転が選択でき,合わせると4つの運転方法が選択できます。
 
2液法の場合,従来技術(造粒調質ユニット+ベルトプレス脱水機)と比べ高分子凝集剤薬注率,ポリ鉄薬注率を下げた運転において脱水ケーキ含水率を含水率優先運転で最大6ポイント,ろ過速度優先運転で最大1ポイント低下できます。
なお,1液法の場合では,ろ過速度を2液法と同等とした場合でケーキ含水率は2ポイント高くなります。

適用条件における回転加圧脱水機Ⅳ型の標準脱水性能

表-3 適用条件における回転加圧脱水機Ⅳ型の標準脱水性能



 

(2)経済性

本技術の経済性(ランニングコスト,LCC)について比較した結果を図-8および図-9に示します。
比較対象とした他の濃縮機,脱水機は,ベルト濃縮機,造粒調質ユニット,回転加圧脱水機Ⅱ型,機内二液調質型遠心脱水機,ベルトプレス脱水機とし,脱水工程の後段では焼却設備を想定して試算を行いました。
 
なお,試算条件は流入水量 50,000m3/ 日における濃縮,脱水設備(焼却設備を除く)を新設した場合とし,
 ●ランニングコストは,濃縮,脱水設備および焼却設備の運転に係る年間経費
 ●LCCは,上述のランニングコストに減価償却費(耐用年数15年)と修繕費を足した合計額
を比較しました。

上記の条件による試算の結果,本技術では
 ●ランニングコストに関しては,他の濃縮+脱水システムより総じて低くなっており,特にポリ鉄を使用しないで低含水率化ができている1液法(含水率優先運転)での効果が大きい
 ●LCCに関しても同様に,1液法(含水率優先運転)での効果が大きい
ということが判明しました。

ランニグコストの比較

図-8 ランニグコストの比較

LCC の比較の比較

図-9 LCC の比較の比較



 

おわりに

下水道が脱炭素化社会の実現に向けて積極的に貢献していくためには,省エネ化による化石燃料由来の温室効果ガスの排出量の抑制だけでなく,創エネルギーや再生可能エネルギーの活用を優先する等,大胆に対策を講じることが必要と考えています。
 
本稿で紹介した2つの新技術は,JS技術戦略部が実施してきた技術開発成果のごく一部です。
今後,下水道施設の改築更新などに合わせて脱炭素化に向けた取組みを検討中の地方公共団体の皆さまにおかれましては,JS技術戦略部にご相談頂けますと幸いです。

 

 
 
 

日本下水道事業団 技術戦略部 資源エネルギー技術課長
新川 祐二

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2022年1月号
積算資料公表価格版

 

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