• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > インフラメンテナンスを取り巻く現状

1. インフラメンテナンスを取り巻く現状

自然災害がますます激甚化・頻発化,あるいは切迫する中にあって,これまで整備してきたインフラが期待される防災・減災機能を発揮するためには,平時からの適切なメンテナンスが不可欠である。
例えば,最近では,平成30年台風第21号の際に大阪平野の浸水を防いだ木津川水門等の大阪湾の防潮施設や,令和元年東日本台風の際に狩野川本川の氾濫を防いだ狩野川放水路はいずれも適切なメンテナンスにより災害の本番でその機能を遺憾なく発揮した(写真-1,2)。
今後,建設から50年以上経過するインフラの割合が加速度的に増加する見込みである中で,これら国民の安全・安心や社会経済活動の基盤となるインフラの維持管理・更新を計画的に進めていくことが極めて重要である。
また,新型コロナウイルス感染症が拡大し,諸活動が制限される中,道路や鉄道等の交通基盤が適切に機能し物資が滞りなく行き渡る等,インフラメンテナンスの重要性があらためて認識されたところである。
 
一方,多くのインフラを管理する市町村においては,土木部門の職員数が減少するとともに,十分な予算が確保できていない状況が続いている(図-1,2)。

平成30年台風第 21号による高潮来襲から市街地を守る木津川水門

写真-1 平成30年台風第 21号による高潮来襲から市街地を守る木津川水門(大阪府提供)


洪水を分派する狩野川放水路

写真-2 洪水を分派する狩野川放水路


洪水を分派する狩野川放水路

図-1 市町村における職員数の推移


市町村の土木費の推移

図-2 市町村の土木費の推移



 

2. 持続的・効率的なインフラメンテナンスの推進に向けた主な取組み

国土交通省では,2012年12月に発生した中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故を契機に,2013年を「社会資本メンテナンス元年」に位置付け,2014年に「インフラ長寿命化計画(行動計画)」(2014~2020年度)を策定し,これに基づき,インフラの老朽化対策に係る取組みを推進してきた。
また,当該計画は2021年6月に,「予防保全」への本格転換や新技術の活用,インフラの集約・再編の取組み等を盛り込んだ内容に改定(2021~2025年度)したところである。
 
本稿では,国土交通省がこれまで行ってきた主な取組みとして,1)予防保全への転換,2)自治体への支援に関する取組み,3)包括的民間委託の導入促進に関する取組み,4)機能向上型更新へのパラダイムシフト,5)新技術・データ利活用に関する取組みについて紹介する。

1)予防保全への転換

2018年11月,国土交通省は,経済財政諮問会議のワーキンググループにおいて,所管する分野のインフラについて,30年後までの維持管理・更新費の推計結果を示した。
インフラの維持管理・更新について,不具合が生じてから対策を講じる「事後保全」から,不具合が生じる前に対策を講じる「予防保全」へ移行することにより,30年間の維持管理・更新費の合計費用が約3割縮減される見込みとなった(表-1)。
この結果からも明らかなとおり,今後,事後保全から予防保全へ転換させることにより費用の縮減・平準化を図ることで,持続的・効率的なインフラメンテナンスを推進することが必要である。
 
しかしながら,例えば,国内に約72万橋ある道路橋梁については,点検の結果,約10%の約7万橋は不具合が生じる可能性が高い,あるいはすでに不具合が生じており早急に対処が必要な状態にあるなど,予防保全に本格的に転換するには,まずはこれらに対する措置を早期に講じる必要がある(表-2)。
 
このように,インフラ老朽化対策は「待ったなし」の課題であり,2020年12月11日に閣議決定された「防災・減災,国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき,予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けて,早期対応が必要な施設への集中的な老朽化対策の加速化を図っている。

「予防保全」の推計と「事後保全」の試算との比較(長寿命化等による効率化の効果)

表-1 「予防保全」の推計と「事後保全」の試算との比較(長寿命化等による効率化の効果)


早期に対策が必要な施設数

表-2 早期に対策が必要な施設数


2)自治体への支援に関する取組み

地方自治体は,道路・下水道・住宅・公園など非常に多くの施設を管理する必要があるにもかかわらず,維持管理に関わる土木部門の職員は減少しており,点検・補修を行う予算も十分ではないといった課題を抱えている。
このため,国土交通省では地方自治体に対し,2020年度から新たに道路や河川の分野において老朽化対策に係る個別補助制度を創設し,地方自治体が計画的かつ集中的に老朽化対策を進められるように支援を行っている。
 
また,地方自治体の技術職員も対象に含めた研修の実施,「道路メンテナンス技術集団」による直轄診断等の市町村に対する直接的支援など,市町村を対象とした取組みを推進している。
 
さらに,関係機関で連携して,道路・河川・港湾・空港の各分野で,各地域でメンテナンス会議を開催し,国・地方公共団体等の施設管理者が一堂に会し,技術的助言や情報共有,PFIや包括的民間委託等による民間活力の活用の推進を図っている。

3)包括的民間委託の導入に関する取組み

インフラメンテナンス分野においても,民間活力の活用により,効率化やコスト縮減を図っていく必要がある。
国土交通省では地方公共団体におけるインフラ維持管理を効率化するための民間活力の活用手段として,特に包括的民間委託に着目している。
この方式は受託した民間事業者が創意工夫やノウハウの活用により効率的・効果的に業務を実施できるよう,巡回・維持など複数の業務や道路・公園など複数の施設をまとめて,地元建設会社等で組織する共同企業体(JV)や協同組合などに委託する方式である(図-3)。
現状,この方式は2019年度実績で上下水道以外での導入事例が全自治体の1%程度にとどまっている。
そのため,国土交通省ではモデル自治体への導入支援等を通じ,導入促進方策の検討を実施している。

包括的民間委託の概要

図-3 包括的民間委託の概要


4)機能向上型更新へのパラダイムシフト

これまでに整備されてきた排水機場等の機械設備の老朽化加速とともに,設備の陳腐化により,部品の再調達が困難となっている。
そこで,来るべき大更新時代に備え,コスト縮減やメンテナンス性等の向上を目指し,老朽化した設備を同じ製品で置き換える「単純更新」から量産品や新技術を利活用した「機能向上型更新」へのパラダイムシフトを実現するために河川機械設備小委員会において検討を行っている。

5)新技術・データ利活用に関する取組み

インフラメンテナンス分野においても,新技術の導入による作業の省人化・効率化を図る必要があり,実装事例を増やし,広めていく必要がある。
このため,以下の取組みを実施している。
 
①新技術の活用を促進すべく,2021年度から,コスト縮減効果の高い新技術の採用を予定している事業の優先採択や交付金の重点配分対象とする仕組みを導入している。
 
②インフラメンテナンス国民会議(2021年6月末時点:会員数2,374者)を通じ,施設管理者のニーズと民間企業のシーズのマッチングによる新技術導入の支援等を推進している。
 国民会議を通じて紹介された技術の社会実装数は着実に増加している(2021年3月時点:8技術,73件)(写真-3)。
 
③インフラメンテナンスにおける新技術の活用により,計測・点検・補修等の膨大なデータが得られるようになり,これらの情報を利活用するためには,各管理者がそれぞれに保有している維持管理情報をオープンデータ化していくことが必要である。
 そこで,国土交通省や地方自治体が保有する維持管理に関するデータベースの整備・連携方法について検討し,2020年度に10のモデル自治体で国土交通データプラットフォームとの接続試行を行ったところである(図-4)。
 
④インフラメンテナンスに係る優れた取組みや技術開発を表彰するため,2016年に「インフラメンテナンス大賞」という表彰制度を創設している。
 2021年度(第5回)では,計7省での合同開催により,247件の応募から33件の表彰を選定した上で,2022年1月に表彰式を通じて好事例の全国展開を進める予定である(写真-4)。
 
⑤自治体における新技術の活用促進に向けて,2021年3月に「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」を作成,公表したところである。
 
以上については,次項で紹介する。

現場ニーズと技術のマッチング等による新技術の社会実装の事例

写真-3 現場ニーズと技術のマッチング等による新技術の社会実装の事例


国土交通データプラットフォームと地方自治体データベースとの接続試行

図-4 国土交通データプラットフォームと地方自治体データベースとの接続試行


第4回インフラメンテナンス大賞表彰式 開催概要(R3.1.8)

写真-4 第4回インフラメンテナンス大賞表彰式 開催概要(R3.1.8)



 

3. 「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」

新技術の活用に向けて,小規模自治体等が単独で技術導入を検討することは困難であるため,自治体横断的な新技術の普及・展開を図る必要がある。
そこで,2018年度から「官民研究投資拡大プログラム(PRISM)」を活用し,自治体におけるモデルケースの実施を通じて,「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」(以下,「新技術導入の手引き」)を作成し,2021年3月に公表したところである(図-5)。
 
「新技術導入の手引き」は,インフラ維持管理に課題認識を持っているものの,新技術導入の具体的な進め方のイメージが持てない,新技術導入について関心があるものの,何から考え始めればよいか分からない市町村などの自治体において各種インフラの維持管理業務を担う職員を読者と想定し,作成している。
 
新技術の導入は,それ自体が目的ではなく,業務高度化・効率化のための手段であるため,普及があまり進んでいない最新の技術だけでなく,実用化が近い技術や既に普及している技術も含め,より適切な手法を検討する必要がある。
そこで,「新技術導入の手引き」では,導入のプロセスを5つのステップに分けて記述しており,それぞれの段階でポイントを整理している(図-6)。
 
今後は,「新技術導入の手引き」の普及・周知を行うとともに,手引きの記載内容等について改善を行い,充実したものとしていく。

インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1

図-5 「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」


「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」導入に向けた5つのステップ

図-6 「インフラ維持管理における新技術導入の手引き(案)Ver0.1」導入に向けた5つのステップ



 

4. おわりに

本稿では,持続的・効率的なインフラメンテナンスの推進に向けた主な取組みについて紹介した。
 
今後,少子高齢化に伴う人口減少や激甚化する災害等の従来からある課題に加え,新型コロナウイルス感染症を踏まえた新たな社会への変化に対応していく必要がある。
そのため,リアルな構造物であるインフラのメンテナンスは,ある程度は現場で対応することが不可欠であることを前提としつつも,民間活力の活用や新技術・データの活用によりさらなる省力化・効率化・高度化を図ることがより一層求められる。
国土交通省としてもこうした動きをリードしつつ,持続的・効率的なインフラメンテナンスの推進をしていきたい。
 

(参考文献)
社会資本メンテナンス戦略小委員会HP
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s201_menntenannsu01.html

 
 

国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課 情報企画係長
萩野 皓介

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2022年2月号
積算資料公表価格版

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品